Current News 20 Dec,2000
The KING and MINSTREL and I

2000年11月、青山劇場で上演された「ワンス・アポン・ァ・マットレス」。千秋楽後すぐに次の作品「世界中がアイ・ラヴ・ユー」の稽古に入った吉野圭吾さんに「道化」の一ヶ月を伺いました。

前のニュース(2000.11.15) 次のニュース(2001.1.29) 目次 最初のページにもどる

−1ヶ月間の「ワンス・アポン・ア・マットレス」のご感想を。
圭吾:楽しかったですね。役的にもはまり役だったかなと思うし、メンバーが良かった。鶴田さんとジェームスさんと俺と3人でいることが多かったけど、この3人だからやれたなあっていうのはすごくあります。3人、助け合いながら千秋楽を迎えたと思いますよ。
−一幕の「吟遊詩人と道化と私」ですが、何度も練習されたのでは?
圭吾:本番10分前には、三人で袖に集合するんですよ。で、必ず一回合わせるんだ。あの曲ではもう絶対、毎回、決まりごとのように。 短いほうと長いほうがあるけど、両方ともやるし、2回公演の日は2回ずつ。 王様の通訳するにしても、そこで合わせとくと、鶴田さんのその日の体調だったり、呼吸だったりも、なんとなくわかるんだよ。しゃべり方も「あ、今日はちょっとゆっくりめなのかな」とか。できるだけ自分勝手に通訳しないように…鶴田さんがこう来るからこう訳すとか、鶴田さんがしゃべりたいようにしゃべれたらいいなと。毎回、そういう風に思ってやっていました。やっぱり、しゃべれないで手だけでやるっていうのはすごく困難だと思うし、鶴田さんはすごく我慢が要ったと思う。役者だからしゃべるのが当たり前なのに、それを手振りでやるって、すごく欲求不満が溜まると思うんだ。毎日、家でもやって来てたみたいだよ。家でひと踊りして、本番前にまた踊って。
−2曲目のほうは相当長い曲でしたが。
圭吾:ハイ…もう途中で挫折しそうになる時がある(笑)。けっこう、声色変えるの辛いんだ。喉が辛くなってくると、うまく王様の声に返らなくなるんだよ。それが後半ちょっと辛かった。
でもジェームスさんと二人で歌っててよかったよ。たまに歌詞間違えると、むちゃくちゃなことになるから。出だしがいっしょで、2曲とも「さんにん」から始まるから…「三人いるーのに」か「三人よれーば」か、それが怖くて。 音楽座でヘビの歌をやった頃にも、同じメロディーで最初は短くて、後半が長い歌があったんだけど、しょっぱなに後半の長いほうを歌っちゃって、ムニャムニャムニャムニャ言ったときがあって。それを思い出すよ。
…でも一番期待してたのは、吟遊詩人が始まりの歌と終わりの歌を間違えないかなあってことだったんだけど(笑)。しょっぱなに「めでたしめでたしー」って来ないかなーと思って。言ったら俺が「おい終わってどうすんだよ!」って突っ込んでやろうかと思ってた(笑)。

−王様の通訳の時の声ですが、どうやって作っていったのでしょうか?。
圭吾:NHKのアニメで「おじゃる丸」くんていうのがいるんだけど、あれを思い出したの(笑)。最初、声色を変えたほうがいいのか、それとも俺の声のまま通訳したほうがいいのか、いろいろやってて、「あっ!これだ!」と思って、変えるんならおじゃる丸くんだと。
で、(道化と王様の)どっちをその声にしようか迷ったのね。俺のしゃべる声をそっちにして、王様の時にはしっかりとしゃべろうか。稽古場の一番初めの時点では、今のとおりにやってたんだけど、演出家と「もしかしたら、声色を逆に使うべきなのかも知れないんですけど」っていう相談をしたの。で、「いや、今のまんまでいいんじゃないかな」と。やっぱり、道化が声色を変えると、自分の言葉をしゃべる真実味が薄れるんじゃないか、っていうことで。まあ、これが正解だったのかなと思いました。

−今回、特に大変だったところは?
圭吾:長い台詞が多いから、それに耐えられなくなって来るんだ。一番怖かったところは、姫の部屋に行く場面。そこが俺の中で一番のヤマだった。
−王様と一緒にプリンセスに会いに行く場面ですね。
圭吾:精神的に辛いのはそこで、 声が一番辛いのは実況中継(笑)。 稽古場でやってるのが一番辛かったよ。声を張らないとみんながリアクション取れないから、もうガラガラになっちゃって。あれが声的に一番辛かった。
プリンセスに会いに行くところを乗り切っちゃえばもう、気持ち的にはどうってことないんだ。
何しゃべってんだかわからなくなっちゃった時もあったよ。「もう少しで目までお見えに見えなくお見えに見え見え見えなくなりましたー」みたいな(笑)。 「目まで見えなくおなりになるところでした」なんだけど、 「目までお見えに」っていっちゃって…で「目までお見えに見えなくお見えになり見え見えなりました」…あーあー(笑)。 何百人ていう人たちに、素で笑われてる自分が恥ずかしくて。
−秘密の通路から脱出する時、出口のフタが閉まらなくなったこともありましたね。
圭吾:どうしようかと思っちゃったよ。 フタの(蝶番の)金具が、開けたときに反対側に行っちゃったんだ。いつものとおり開けたら「パキ!」って音がして。「あっ!」て思って、「わー」って引っ込んだら案の定、閉まらなくて。そのあとカエルが来て、どんどんどんどん上に乗ってムリヤリ「バコー」っと閉めて(笑)。そんなこともあったよ。
−脱出後、いつもオケピの人が笑ってるんですが、何かしてらっしゃるんでしょうか。
圭吾:ちょっと交流を(笑)。他にも、袖から「行くぞ!」って合図したり、迷路の後ろからアイコンタクトしたりしてました。

−道化は、場面によって性格的な雰囲気が違いますよね。
圭吾:そうだね…王様といない時は違うから。マートンや吟遊詩人と話してる時は同志として。やっぱり、あの魔術師と道化と吟遊詩人ていうのは、あのお城の中で特別なんじゃないかな。
…結局「道化が一番悪いんじゃないか」っていう、影の話があるんだけど(笑)。后は最後にツノが取れるのに、道化は最後まで取れないし。 最後「種明かし!」とか言って、鎌持った姿がジョーカーだし(笑)。
−似合ってましたね。
圭吾:怖いよね…はまるね!ああいうの持つと(笑)。
−ある程度、ブリッ子な面があるのでしょうか。
圭吾:そうだね。だって王様の心が読めるんだよ?ただ者じゃないよ…すべて、裏で手を引いてたの(笑)。影の支配者だったんではないかと。…お話も全然「めでたしめでたし」で終わってないと思うんだけどね(笑)。お后さましゃべれなくなっちゃうしさ。
−「吟ちゃん」「道ちゃん」という呼び方は脚本にあったのですか?
圭吾:ううん、ないよ。「『吟ちゃん!』って言おうよ」って言って稽古場でやってみたの。ホントはあの台詞のあとに、王様のパントマイム、ジェスチャーゲームみたいのがあったんですよ。そこが大爆笑のところだったのに、ゲネプロでカットされちゃったんだよ。王様の見せ場だったのに、そこをお見せできないのは残念でしたね。

−自分的に、「ワンス・アポン・ァ・マットレス」でベストナンバーを挙げるとしたら?
圭吾:一番思い入れがあるのはやっぱり「吟遊詩人と道化と私」。 一番気持ちいいのは「ソフトシューズ」かな。 一回どこかで「親父ー!」って叫んでやろうかと思ってたんだけど。それ、できなかったのが悔しいね(笑)。親父を思い出して、賛美しながら踊るナンバーだから、踊ってる最中にどこかで「オ、ヤ、ジーっ!!」とか言いながらできないかなーとか思ってたんだけど(笑)。
−今回、ほかにもいい出会いはありましたか?
圭吾:うん。いろんな人に逢えて良かった。宮川浩さんや、飯塚雅弓ちゃんもおもしろいし。 でも本当に道化は、鶴田さんあっての道化だと思いました。
−カーテンコールまでずっと道化のキャラクターでしたね。
圭吾:うん。ありゃ普通でいられないでしょ。悪魔出ちゃうからさ(笑)。 …悪魔といえば「世界中がアイ・ラヴ・ユー」の後半、楽しみにしていただきたいね! 楽しい衣装が一着あるんだよ。
−では最後に「世界中がアイ・ラヴ・ユー」のみどころをお願いします。
圭吾:一人が何役もやるところかな。俺は3役ぐらいしかないんだけど、10役以上やる人もいる。 映画の通りにやるから、展開が速いんだよ。その展開がうまくできると面白いと思うよ!ポンポンポンポン移ってくから。…面白いよ。よくできてるというか。 すごく展開速いから、飽きはしないかな。果たしてその速さについてこれるかな?ってところが課題かも知れないけど。

あっという間に過ぎた「ワンス・アポン・ァ・マットレス」(とその後の日々(^^;))でしたが、お話も歌も踊りもコンビネーションも、いまだ心の中に鮮明に残っています…3週間しか経ってないんですけれどもまもなく「世界中がアイ・ラヴ・ユー」の初日がやって参ります。とてつもなく贅沢な年末年始、目を大きく開けて全部受け止めましょう(^^)。


前のニュース(2000.11.15) 次のニュース(2001.1.29) 目次 最初のページにもどる