Current News 29 Jan,2001
「パウロ」へ…

2001年がやって参りました。ついに主演作品「パウロ」に臨む吉野圭吾さんにお話を伺いました。

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−「世界中がアイラヴユー」のご感想は?
圭吾:楽しかったよ。ちょっと「ぽわん」ってするお話で…作品的にそれは果たせたんじゃないかな。
−ホールデンをどう思われましたか?
圭吾:そうだなあ…バカな男だね(笑)。そのバカがかわいいね!みんなが感じたままだよ。俺もそう感じながらやってたから。
−自分に似てるなと感じる部分はありましたか?
圭吾:指輪買う時のあの気持ちはわかるよ。横からなんか言われて「…そうだよね!」って言って「じゃ買おう!」って思うって気持ちすごくあるから、そんな勢いが似てるなあと。
−「MY BABY JUST CARES FOR ME」はいい曲でしたね。
圭吾:うん、良かった。でも最初の頃、あの曲歌いながら「TOY BOX」で歌った歌詞とかが出てきて困ったんだよ。「ダメダーメ」とか言ってる自分がいたりするんだ(笑)。 「スポーツも嫌い、ダンスも苦手」なんだけど、「スポーツも嫌い、テニスもダメダーメ」って言いたくなるんだよ(笑)。そんなこともありました…。
−日程的にクリスマスから年末年始で、イベント日和が多かったですね。
圭吾:誕生日の人が多かったよ。稽古期間も含めると5回ぐらいやったんじゃないかなあ。ケーキ買って「ハッピバースデイ」して。
−メンバーも多くて、楽しそうな雰囲気でしたね。
圭吾:10代やはたち前後の子たちと出れたから、若返りました(笑)。 DJやってた子が17歳で、彼女がムードメーカーだった。
−苦労したところはありますか?
圭吾:ホールデンの役作りってけっこう苦労したよ。 実際に考えてみたら、あんな、指輪はずれなくなったり、ぬけなくなっちゃうようなことはないじゃない。指輪のみこんじゃって、立ち上がってオロオロしてとか。そこをあるように見せる、そんな出来事がちゃんと現実にあるように、みたいなところで。 …まあいろいろやれて楽しかったです。 あの「悪魔」で一曲欲しかったなあ…「スカイラーとホールデンの再会」みたいな(笑)。

−まもなく「パウロ」ですね。稽古の様子はいかがですか?
圭吾:いいよぉ!まだ10日あるけど、もうムリヤリ通し稽古したし。 後半がけっこうすごい勢いなんだ。勢いっていうか、ちょっとストーリーが重いのね。 だから頭から通してみないとわからないことが結構あって、逆に通したほうが、すごくいいんだよ。今はまだ、なるようになるみたいな感じで通しちゃってるけど、早く「流れ」をしっかり押さえていかないと。ただ感情だけじゃ当たりはずれが出てくるから…これから、微調整。
−長いお話なんですか?
圭吾:ううん。たぶん休憩入れて2時間以内に終わる。
…たぶん、すごくいいよ!たぶんじゃない、絶対。俺だったら観たい!
−どんな作品を目指していますか?
圭吾:なんていうのかなあ…「キリスト」のイメージってみんな持ってるじゃない。 そうじゃなくて「パウロ」のイメージっていうものの一人者になりたいし、きっと観終わったあとに、そう思ってもらえるような作品になると思う。「あ、パウロってこんな人だったんだ。」って。でもかなり強烈な話。俺もすごく辛いし、観てるほうも途中すごく辛いと思う。
−聖書の記述だけ照らしてみても、きついエピソードが多そうですね。
圭吾:うん、きつい。でもやっぱり最後は、笑顔で終われるような作品だと思う。
みどころは…もう「のめりこめ」だね(笑)。心にビシビシ来ちゃう。「さあ、観るぞ!」って観ないと、ていう感じかな。ジェットコースター乗る前みたいな。 決してメリーゴーランドとか観覧車とかじゃないんだよ。気持ち的には、ジェットコースターとかお化け屋敷とか、なんかひとつ覚悟が要る。でもそれだけ、観る前と観た後ではぜんぜん違う感情になるっていうか、「あぁ…観た!」っていう体験、非常に「体験できた!」みたいな作品であればいいな。
…出てくる人たちは、それぞれただ一生懸命なんだよね。 それぞれ一生懸命で、信じる道があって、それを貫いて行くと悲劇が起きたり。でもパウロ的にはそこまで行かないとわからなかった。 とにかくとにかく、自分の信じている道を、突き進んでいく先に何があったかっていうような…。
−楽しみですね。
圭吾:とにかく音楽がいいよ。決してフルオーケストラとかではないけれども、すごく心に残る音楽が、全編通してちりばめられているんじゃないかと思います。その音楽を考えた人も、演出家の橋爪貴明さんっていう人も、10年ぐらい前からこの作品を練ってたんだけど、ここへ来てダーっ!とできたらしいんだ。 それも、今「やれ!」ってことなんだ、って言ってた…それに選ばれた俺もやれってことなんだ。だからみんなすごく一生懸命。
−パウロの、しかも若い頃という題材は、聖書にもほとんど語られていない部分ですよね。
圭吾:うん。そこで、飛べるんだよね!もう決まったストーリーを作り変えるっていうところじゃなくて、誰も知らないところを、「こうであったろう」と仮定してお届けする楽しさ。 だから、観おわった後に「あ、パウロってこうやって生きてきたんだ」みたいな想像ができたりするといいな。舞台の上では、奇跡は何も起きない。パウロがキリスト教に入ってからの奇跡を起こすところとかは見せられないけれども、パウロの気持ちが変わっていく奇跡はお届けできる。

−パウロという人を演じていく上で、大切にしたいことは?
圭吾:そうだなあ…決して特殊な人間じゃない、とにかく一生懸命な奴なところ。 強い意志があって、元気だし、ものすごく優しいし。…とにかく前向きに演じたいよ。
−真織由季さんの演じるマリアは架空の人なんですか?
圭吾:イメージは「マグダラのマリア」とか、ああいう感じで。娼婦で、弱者の象徴。彼女によってパウロの人生も変わる、キーワード。
…でも他にもみんなパウロにからんでくるんだよ。 ステファノもそうだし、リディアっていう、パウロの両親が亡くなってからずっと親代わりをしてきた生地屋のおばちゃんがいるんだけど、その人もキーだね。そしてパウロの友人のシモンもそうだし。いい人たちに恵まれて…決してマリアだけで変わったわけじゃないんだ。

−その時代の宗教って信仰だけじゃなくて法律も兼ねる生き方そのものですから、回心というのはとてつもない大事件なわけですよね。
圭吾:うん…そうなんだよ。 ユダヤ教の、律法の、偉い人になろうと思って、パウロはガンガン突き進んでいくんだけれども、でも出世するっていう道を追いかけるあまり、根本的なところ、人のやさしい心とかそういうものを、どんどん忘れていくんだね。その忘れた気持ちを取り戻してくれる…ちっちゃいころのそんな気持ちを思い出させてくれる鍵があって。
優しい気持ちの持ち主であったパウロが、律法を追い求めるあまりに、「ほかの宗教は絶対、この国には入れない、認めない!」ってキリスト教の迫害を起こしていくんだけれども、ある時キリストの光がさしてきて目が見えなくなって「私はキリストだ!」って声が聞こえてきて、そんなようなことで改宗しちゃうって本に載ってるじゃない? でも、それだけじゃちょっとミュージカルにするのはきついんだよ。どうしてその迫害していたキリスト教を認められるようになるか、っていうところにけっこういろいろドラマが隠れているんじゃないか。
宗教的な問題だけじゃないと思うんだよ、このミュージカルは。一応そういう、ユダヤ教とキリスト教っていいながら話は続くけれども、すごく僕的には、現代につながってるような気がするんだ。社会は、今になっても何も変わってないじゃないか。 そこにちょっと、問い掛けたい部分も含まれてる。
すごく身近なところにあると思うんだ…例えば電車でおばあちゃんが立ってる時、「どうぞ、席変わりましょうか?」って言える部分って小さい頃はどこかで持ってたじゃない。 でも今って、寝たふりしたり気付かないふりしたりする。そこへ 「そんな気持ちがあったなあ」って思い出してもらえるような作品でありたい。
大人になるとやっぱり、なんでも受け入れられなくなってくる…邪魔なものは邪魔だし、人から何か言われてもシャットアウトすることが多くなってくるし。 すぐナイフを出して刺せちゃうとか、犯罪を起こしている若者たちがいて。そういうのって、すごく続いてる気がするんだよ。…うまく言えないなあ。…まあ簡単に言うと、宗教のことは出てきますが、一番伝えたいところは「もう一度自分を見つめなおしてみようよ!」っていうところかなあ。「もう一度思い出してみようよ!」
−自分の中の善きものを
圭吾:うん、根本的なところを。「そうじゃなかったんじゃないの?」「吉野圭吾、昔はそうじゃなかったんじゃないの?」って問いかけたいし。難しいなあ…俺はそこをすごく伝えたい気ががするんだけど。
パウロっていうひとりの若者を通して、その人生を見ていく内容で、宗教やら主義やらいろいろ出てくるけれども、最終的に自分を救ってくれるものは、…愛なんじゃないのかな、っていう…。
…ま、とにかく観て下さい!「あ、こんなものがあったのか」って思ってもらえると思う。
−どんなひとに観に来て欲しいですか?
圭吾:演劇ファンの人はもちろん、そうじゃない人にも観て欲しいね。俺的には、こういう宗教もので「ジーザス」と並ぶ作品だと思ってやってます。 だから、再演・再々演て、どんどん大きくしていきたい。まだ、ちょこんて芽が出たばかりの状態だから、それを育てていきたいね。ぜひ、もう一度、もう一度、やっていきたい。僕じゃなきゃできない「パウロ」にする。…って出演者も一人一人、思ってると思うよ。

観おわった人の心の中で、何かが変わればいい。そんな思いが込められた作品「パウロ」がもうまもなくやって来ます。どんな作品になったか、作品を観てどんな思いを抱いたか、みなさん自身で確かめ、そして教えて下さい。たくさんの人がこのミュージカルに出合えますように。


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