Current News 13 Dec,2001
THIS YEAR

2001年を振り返って。「パウロ」再演を中心にお話を伺いました。

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−「パウロ」再演のご感想を。
圭吾:よかったと思います。自分的には、いい意味で力を抜いてできた感じがするし、全体的には、ひとつひとつのキャラクターが濃くなって、 関係性とかがすごく、よく見えたんじゃないかなと思う。 それぞれの人生とか、歩いている道が見えたんじゃないかなと。 だからすごく、深くなったなと思う。
−初演版を一つ一つ練り直していく中で、こだわったのはどんなところでしょうか。
圭吾:やっぱり最後の場面だね。あと、一幕の、マリアとばったり再会するところ。お芝居中、マリアとパウロはあんまり逢わないんだよね。いちばんはじめに逢って、それからステファノが処刑されてバッタリ逢うまで、 二幕の半ばぐらまで逢わないから、一番はじめの「久しぶりに逢った!」っていうところがすごい重要だと思ったんだよ。真織さんもそうだし、俺もそう思ったし。まあ前回もそう思ってやったんだけど、もっと練り直した。本番当日にも演出家と相談して、「こうしたいんですけど」ってまたそこで変えたんだ。もうちょっと色濃くしたいなと思って、「これぐらいやっていいですかね」って本番の日に変えて。そこらへんまでねばった。
あそこ、微妙なんだよね。 マリアの「こんな姿を見られたくない」っていう感情、今の娼婦としての正体を明かしたくないっていうのがあるんだけど、でもそんなことも、バッタリ逢ったことで忘れてしまうぐらいの勢いでもってかないときっとダメだろうと。 そんなことはそっちのけで、逢えた喜びを感じるっていうか。 で、それを「忘れさせられる」のはこっちだろうな、と思って。それに乗ってきちゃえばぜんぜん不自然じゃないと思ったし。 そこを大事にしとかないと終わりまでもたないなと。 根強くお客に焼き付けとかなきゃ…と、思ってそこはすごいこだわった。
あとは最後の場面。やっててどうしても、 曲が、「(初演の)あの曲じゃないんですよ」って言ってはじまって、 演出家も「そうなんだよねー。なんかが違うんだけど、うまく表現できない」と。で、 やっぱり、この場面で何が言いたいかっていうと、こう「歩き出す」「一歩踏み出す」またあらたに一歩踏み出すパウロが、見せたい。パウロっていうかその、ひとりの人生を歩き出す姿が見せたいんだよね。 で、やっぱり、あの終わりから、一番はじめの、じいさんになった「信じるのだ…」っていう歌に、ちゃんとつながらなきゃならない。 じゃあ!やっぱり終わりは「信じるのだ」じゃないんですか、と。 「歌詞はみんなで(フィナーレで)歌う方のやつで行きましょうよ」… 「そうだねじゃここはちょっと変えて」とか手直しして。それでやってみたら、 「あれ?…終われたんじゃない?」(笑)
−感動しました。
圭吾:回心の場面で一人で言うセリフはね、あそこも原稿があったんだけど、 「…なんか違うんですよね…これじゃないんですよ…うーん…」って言ってたら 「じゃあ明日、通しでやってみて」と言われ「えっ…うん、わかった!」(笑)。そして次の日、そこの場面だけエチュード(笑)。 台本も原稿もなしで…でも「ああいい機会だ」と思って。 きっと演出家も、パウロが自分自身で、自分自身の口、心から発する「声」が聞きたいんだろうと。
で、やったさ。…なっげえ長え!!(笑)長かったし、 ブツブツ喋ってたから目の前の演出家ぐらいしか聞き取れなかったらしいんだよね。 で、演助がメモって、そのまま脚本にしたのがあの言葉になったんだ。
そんな風に作ってるんだよ。俺だけじゃなくて、もう、ひとりひとりが。 こうやって作ってくのは好きだよ。そういうことさせてもらえたっていうのも嬉しいし、こうやって作って行ける作品があるっていうのは、すごく自分の宝だと思う。
あと、こだわったのは、シモン、リディア…結局、全部こだわったんだよね! 「これは、いいだろう」っていうのはなかったよ。とにかく全部こだわった。全員が。兵士のところも、娼婦達のところも、ステファノもそうだし。それぞれが、全部にこだわったよ。ほんとに、「あきらめないでー」って感じ(笑)。 そんなようなことでできあがったのが、今回の「パウロ」です。

−パウロでいちばん好きなナンバーをあげるとしたら?
圭吾:旅立つ前の日に歌う、「バイバイ・エルサレム」っていう歌が好きなんだ。でも、ほん…っとに歌いづらいんだよ(笑)。「あれこれ、合ってるのかな?!」って思いながら歌ってた。でもとにかく「希望ー夢ー」あそこは最高に気持ちいい(笑)。
−ハプニングはありましたか?
圭吾:俺が舞台で「ズルッ」てコケたときに、客席が「ああっ!」って反応したのがおかしかった(笑)。「ああ、びっくりした!」って言ったら、みんな笑ってたけど。 あとは何かなあ…ステファノの処刑の時の血のりがロープにつくんだよね(笑)。2回公演の時、あの血のりが一幕頭の「信じるのだ…」やってるときヌルヌルしてるんだよ(笑)。「おいユキオさん血のりついてるよ…」
あとは…最後の歌の歌詞を間違えた!でも、大した事にはならなくて、ちゃんと帰れたからよかったんだよ。一番最後の「信じるのだ 自分の心見つめて 魂の声に 耳をかたむけて」で、「憎しみがめばえ 苦しみにもだえようと」っていう歌詞なんだけど、でも一番はじめのシーンの歌詞の「憎しみにまかせ」まで言っちゃったの!そのまま行くと「憎しみにまかせ、殺しあう罪人たち」なんだよ。…あっ!このまま続けられない!…「苦しみにもだえようと…」…うわあ、天才!!(笑) ヘビの歌で間違えてほにゃほにゃ言ってた頃に比べたら成長したなあと思った(笑)。
−終ったときの気持をひとことでいうと
圭吾:「ああ、無事に終わってよかった」と思った。やっぱ小さいカンパニーだからさ。とにかく無事に、誰一人欠けず、スタンディングのなかで舞台を終われて、ホントみなさん、ご苦労さまでしたって感じかな。
−また「パウロ」をやりたいという気持ちは?
圭吾:もちろん。心から。何年も続けていきたいと思う。

−今年の公演は「パウロ」で終わりということで、お疲れさまでした。
圭吾:お疲れさまでした。…もう仕事納めか。そんなことないよ!年内は「42ND STREET」の稽古があるから(笑)。
−2001年をふりかえってひとこと。
圭吾:いやあ…いろんな役やったよね!よくやった(笑)。
今年も、よくやりました。「屋根の上のヴァイオリン弾き」が終わった時に、西田敏行さんがみんなに「とにかくこの2ヶ月やった自分を、みなさん誉めてやってください」ってずっと言ってましたけど。ホントに、今年一年、いろんな役をやれてすごく濃い一年だったなと、思うわけでございますよ。 「世界中がアイラブユー」から始まって、「パウロ」やって「ウナ・ノーチェ」やって「バイオリン弾き」やってまた「パウロ」やって。「TOY BOX2?!」もやったし。
きっと、観てても楽しいよね、いろんな役やってて(笑)。本人も楽しいけど、きっと、みなさんも楽しんでいただけたんじゃないかと思います。 「ウナ・ノーチェ」やって芸の幅が広がったし、ホント今回の「パウロ」やって「あ、役者なんだな」って実感した部分があった。これが、仕事なんだなって。
小池修一郎さんとの出逢いもあったし、それもすごく面白かった。いろんな新しい出逢いがあって…西田敏行さんと出逢って、そこでもまたすごく勉強になった。「屋根」の後に「パウロ」の再演をやったじゃない?西田敏行さんみたいなことはできないけれども、「お芝居の芯に立つっていうことは、どういうこと?」っていうのを、すごく勉強した。 「屋根」では同じ高校の後輩(堀内敬子さん)と一緒にやれた、っていうところもすごく嬉しかったし。ホントに充実した一年だったと思います。
−来年の公演へのいきごみを。
圭吾:やるよ。何回でもやるから。そんないきごみです。…まあ観においでよ(笑)。
−また来年もひと勝負ですか。
圭吾:うん。もう、勝負だらけでしょ。
今年は勝負の年だって言ってたよね。ホントに、そんな年だった。 きっと、やってる限りそうなんだね。先のことはわからないからとにかく、その場その場を、ホントに生きた仕事をやれることがいちばんいいかな、と。

昨年の今ごろは「ワンス・アポン・ァ・マットレス」と「世界中がアイラヴユー」の合間で、もうすぐ主演作品の「パウロ」だ!濃い一年になりそう…となんというかファン的な武者震いに震えていた時期でございました。そのころはまさかパウロ「2回」観ることになるとは思いもしませんでしたが…倍、濃かったですね>みなさま。
まもなく博多「42ND STREET」。これまたスゴイ「勝負」が控えておられるわけで。
さて2002年、どんな年になるでしょう?今年の圭吾さんに感謝を込めつつ2001年の「CURRENT NEWS」を締めさしていただきます。
みんながよいお年を迎えられますように。
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