2002
エマニュエル・シカネーダー役で3ヶ月間駆け抜けた「モーツァルト!」、その千秋楽の翌日は「4 Knights Special Concert」と休む間もなかった吉野圭吾さんにお話を伺いました。 |
−96公演、終えたときのお気持ちは?96公演の「モーツァルト!」、その千秋楽の余韻さめやらぬままコンサートと、ファンにとっても長くて濃い年末でございました。
圭吾:95公演目ですっごく感激したね。「ああ…よかった!」とか思って。 カーテンコールの時、ひさびさに舞台上で大泣きした…横で男爵夫人(久世星佳さん)が「泣くんじゃない!」ペシっ!と(笑)「まだ終わってない、あと一回あるんだから!」…こっちは「うぅぅぅぅー…」(笑)。 千秋楽は小道具やら衣装やらいろいろ片付けながらだったから、あれよあれよという間に終わっていってしまいました。
−キャストの皆さんとは3ヶ月間以上の長い長い付き合いでしたね。
圭吾:よくも飽きずに3ヶ月、居酒屋やったよね(笑)。楽しい一座だったよ。 …別に、女、はべらしてるわけじゃないからね、あれ。うちの劇団員、座員だからね!そこ誤解しないように(笑)。
−男の座員もいるんですよね。
圭吾:いるよ。だって二幕(魔笛)に出てるじゃん(笑)。
−名乗りの場面の前、女優達と乾杯しているシーンですが、千秋楽では何か特別なことはありましたか?
圭吾:別にしてなかった。たぶん、それどころじゃなかったんだよ!※
−彼らとしては(笑)
圭吾:しても(笑)。もう支離滅裂っていうか、まともに答えが返ってこない状態だった(笑)。 舞台に出る前に「座長、どんなことがあっても、あたしたちが助けますから!」って、それだけは言われてた。 「…ふーん…どんなことがあっても、助けてくれるんだ…じゃあ、どんなことがあっても、やろーよ」(笑)。んで、出てった。
−そして「エマニュエル・シカネーダー!」ですか。
圭吾:うん。「ああ、来た。」って思った(笑)。もう始めっから反応が違うんだもん。「盛り上がってるねえ!」って言った時にこっちを見上げる、みんなの顔が違う(笑)。 ニヤニヤした顔でさあ…後から聞いたら、みんなもうあそこから「エマニュエル・シカネーダーを知ってる」芝居をしてたんだって。「あぁ、シカネーダーだ!」っていう顔をしていたらしいよ。
−なるほど。
圭吾:でも、おかしいよ(笑)。「私が誰だかご存知か?」って言って見回しても、一瞬なんかシーンとしてるんだよ。 (誰が言うんだよ…どうすりゃいいんだよ…)みたいな空気が流れて。そんな中、 「あ…来る、のか」(笑)。
−そして来たみたいな。
圭吾: 夜中に電話があったらしいよ。プロデューサーからダンスリーダーに「やれ」と。「吉野さんが支離滅裂になって、話が続かなくなったらどうするんですか!」って、まわりはけっこうドキドキしてたらしい(笑)。 …それでプロデューサーは悔しがってました。 「お前のもっとオロオロする姿が見たかったのになあ」って(笑)。でもそのプロデューサーに「吉野くんにやってもらえて本当に良かった」って言われたのが一番嬉しかったですね。
−再演を望むお気持ちは
圭吾:ありますよ!うん…そしたらもっと、また新しく、一から考えていこうかなあと思う。
−また新しい作品として出会えたら。
圭吾:うん、いいんじゃないかな。タップなんかも踏んじゃったりしてさ(笑)。※「千秋楽のいたずら」についてご存じない方はこちらをご覧下さい。
−長い公演の間、ハプニングなどはありましたか?
圭吾:大阪公演の時、仮面舞踏会の場面で、紐に引っかかって袖から出られなかったんですよ。モーツァルト幕っていうんだけど、「MOZART!」って書いてある大きな幕を上げ下げする紐があるんですよ。その紐が、出のところにすごく近くって。速攻で出ていかないと間に合わないんだけど、それに俺が引っかかって、みんなも引っかかって、からまって(笑)、えらいことになりましたね…そんなこともありました。 それ以来、袖でも何か引っかかるものはないかなと出の前に必ず確認して行くようにしてます。 …舞台は魔物が住んでるなと。
−なるほど
圭吾:それから…こけたこともあった(笑)。 「盛り上がってるねえ!」って言って、階段の上に飛び移ったら、ズルってこけて、後ろのパネルにもガーンて当たってパネル揺れるわ、 立ち上がろうと思ったらなんか自分の裾、踏んでて立てないわ(笑)…なかなか起きれなくって(笑)。
−その後、どうしたのですか?
圭吾:何事もなかったようにやったよ(笑)。おかしい…マジで焦ったね。
−魔物ですね。
圭吾:うん。またそこでやられた。あと、「知らない?」って聞いた後に「無知こそ(人間の最大の悲劇なり)」っていってステッキを床にカンて打ち付けるところ… ステッキを床に平行に打ち付けてバン!て音を立てるんだけど、あれでステッキが壊れた(笑)。ステッキの先っちょが割れて、カーン!カランカランカランて…反面が取れて落ちてった。オケの人たちから「あぁっ!」って声が上がって(笑)。で、俺はその壊れてるほうを前に向けないようにくるって回して、ずーっとその向きを考えながら進めていた(笑)。
−ステッキの裏側がない状態で。
圭吾:それ以来ちょっと弱気になって、打ちつける音がちっちゃくなった(笑)。
−シカネーダーに贈る言葉はありますか?
圭吾:「精一杯、自分の限りを尽くし、やらせていただきました… いかがだったでしょうか!
この次、もしやる機会があれば、また新たなお知恵をお貸しくださいませ。
BY・エマニュエル・シカネーダーからエマニュエル・シカネーダーへ!」…とんでけー。
−千秋楽の直後に「4 Knights」のコンサートということで、お稽古が大変だったのでは。
圭吾:ハイ(笑)。なんだかあっという間に終わりました。
−いろんな曲がありましたが、特に苦労したところは
圭吾:それはもうあれでしょう…「すっべってはゲェム!」※でしょう(笑)。あれは苦労したね。
いや、気持ちいいんだよ?あれ。最高に気持ちいいんだよ。出だしから半ばぐらいまではすごく気持ちいい。でもあまりに気持ち良さすぎて、「辞めます!」って言った瞬間に、何かが切れちゃうんだよ(笑)「やめます!」って言った瞬間、もうわけがわかんなくなる… 考えるのをやめちゃうの(笑)。その後は「あーあーあーあーあー…THANK YOU」だよ(笑)。気がついたらセンキュー(笑)。頭がグルグル回ってる(笑)。
−特に気に入った曲は
圭吾:やっぱり「サンセット」かな。
−フルオーケストラの演奏も良かったですね。
圭吾:豪華で良かったね。…気持ちよかったなあ。よく響くし。
−昼公演のメドレーの前のトークでは、皆さんきょとんとしてらっしゃいましたね。
圭吾:おっかしい…後で聞いたらさ他の人たちも「次、なんだっけ?」って思ったんだって。みんな「なんだっけ」って顔してるから、「…メドレー、ですよねえ?」(笑)
−白いコートが評判でしたが、あれは自前ですか
圭吾:そうです。燕尾とタキシード以外は全部自前。
−暑そうでしたね
圭吾:うん…でもずっと着てた(笑)。
−またあんな企画があるといいですね。
圭吾:そうだね。もうちょっと時間があるところでやりたいです(笑)。もう…怖い怖い。今回すっごいもう、一か八かだったもん。ホントに、一か八かでした(笑)。※"WHAT YOU OWN"