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Current News 23 Aug,2007

 

T-A-K-A-R-A-Z-U-K-A

2007年6月から7月にかけて、全国9箇所に渡って上演された「宝塚BOYS」についてのインタビューです。

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◆目次
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-「宝塚BOYS」公演を振り返ってのご感想を。
圭吾:いろんな畑の違う人たちとやれて、面白かったし、勉強になりました。
-ストレートプレイは「暗い日曜日」以来でしたが。
圭吾:歌がないから、自分の感情を歌に乗っけていくことができなくて、難しかったです。ミュージカルの場合、メロディが流れてそこに感情を乗せちゃえば、その役の感情っていうものが伝わるじゃないですか。芝居だけだと感情は当然「台詞」に乗っけていかなければいけない、そこに苦労しました。メロディがないっていうのは、すごく大変なことだと思うし、芝居だけでやってる人たちと比べて、自分の表現が浅いなって。
例えば竹内を責めるところも、もしミュージカルだったら「実もフタもない世界だって言ってるんだよ!!」で曲がダララッ!!って入って「俺の親父は…」って歌いだすとか(笑)、そういう風に行くところじゃないですか。それができないってことは、その「メロディ」も全部自分で創作していかなきゃいけないということで。
-高まっていく感情の部分を。
圭吾:もしもそこに歌があるのならば。ミュージカルだったらそこに曲が入って、自分の感情をそれに合わせていく…っていう作業ですむんだけど、台詞一本だと、今度はその長台詞に自分のメロディを与え、そこに感情を乗っけていき、譜割りを考え、…っていう作業を全部してかなきゃいけない。ミュージカル的に考えると。でも、本当はミュージカルでも、それが当たり前だなと思うんだよね!そこを改めて考えさせられた。すごい根本的なことを。そこが、すごく勉強になりました。
それとやっぱり、相手がしゃべってるときの「居方」っていうのが、勉強になったね。いつも、だいたい七人いるじゃないですか。その中で、人の台詞を聞いてる間の芝居っていうのが重要で。本当に、大事に作っていかなきゃいけないなって思いながらやってました。
-特に難しいのはどんな部分でしょうか?
圭吾:自分がその時にどんな感情でその輪の中にいるのかで、いろんな聞き方、捕らえ方がちがってくるじゃない。「あいつのことが嫌いだ」っていう奴が喋ってたとする。そしたら、そいつの喋ってる言葉は、すんなり入ってこないかもしれない。でも「あいつのことは好きだ」って思ってるけど、表面では嫌いな態度をしている、そういう人間がしゃべってる台詞っていうのは、すんなり入ってきて、「それもそうか」って思ったりする…けど態度には現さない、とかさ(笑)。
本当に今回は一人一人が違ったから。立場も違うし、環境も違うし、そこの場面の居方も違うし、それぞれ、背負ってるものが違うし。そうした中で一人一人が「しゃべってる相手に対してどう思って聞いているか」っていうのがすごく大事だった。本当は自然に、そういう感情が流れてると思うんだよね。 会議してる中でもそうだと思うし、飲み会とかでもそうだと思うし。それをどう位置づけていくかっていう、面白さと難しさがありましたね。メンバーの一人一人が「自分が誰をどう思ってるか」ってことを明らかにしていないと、 きっとそこにたどり着けない。竹内のことをどう思ってるか、太田川のことをどう思ってるか、長谷川のことをどう思ってるか。
-誰を認めているとか誰を大事にしているとか、そういうことは台詞には現れないんですよね。
圭吾:もう、態度しかないんだよね。そうやって思っていないと、きっと、なかなか外には見えてこないと思うんだ。小劇場ならちょっとした動きとかでもわかるんだけど、そうじゃない時は少しオーバーアクションにしないと、客席には伝わらなかったりするし。
-誰を中心に観るかで、印象が違ってきそうですね。
圭吾:きっと、どこを追っても面白いだろうな。

-ダンスレッスンの場面の初心者的な雰囲気は、それぞれ自身で作っていたのですか?
圭吾:自分で作ったり、演出家に言われたり。いちばん始めにあの場面をやったとき「これを忘れないで」って演出家が言ってました。「今の、この下手さを忘れないで!」(笑)。練習が進むとみんなどんどんうまくなってきちゃって。「みんな、忘れてるよ!あの、できなかったころを!」(笑)
-星野だけはまともな振りを踊る、という場面でしたが。
圭吾:「みんな、いいなあ…俺もやりたいなあそういうの」って思ってました。だって俺がちゃんと回って、すぐ後ろで山田が回るとみんな笑ってて楽しそうじゃない(笑)。稽古場の頃から、スタッフもみんな大爆笑しててさ。 「いいなあ…でも俺がここでちゃんとやらないと、あれもないしなあ…」

-「吉野塾」と呼ばれていたダンスの特訓はどんな風に始まったんですか?
圭吾:ダンスが初めての人が多かったので、まずは体を動かすことだなと。 自分の体がどうなってるのか知ることだ。で、「Mozart!」でKENTAROさんがいつもやってくれてたメニューを一緒にやりました。
みんな、まじめな人たちだったから、踊りに関しては、ほんとに熱心だった。こっちも気合が入っちゃって…あとから聞いた話だけど、俺に捕まるとみんな大変だったらしいよ(笑)。
-一幕の最後でも長谷川に「飛行機回り」を教える場面がありましたね。
圭吾:いつも俺が稽古場で教えてるくらい、永遠に続くようにやって…って言われたの。 「永遠に続くようにやってください」「えぇー?俺ってそうですか?!」みたいな(笑)。 ちょっとできだすと「じゃあ次はこうしてみよう」それができると「あとはこうしたほうがいいんじゃない?」って、どんどんどんどん終わりがないから、そう見られてるらしい(笑)。
-あれは本当に「飛行機回り」というんですか?
圭吾:本当は「エアプレーン」ていうんだけど。きっとあの時代はエアプレーンて言わないんだろうなと思って「飛行機回り?」って(笑)。
-フィナーレは相当、練習されたのでは。
圭吾:うん。稽古の最初のほうで振り付けて。それからずうっと稽古して。毎日欠かさずやりました。稽古場でもずっとやってたし、地方でもやったし。みんなが、踊りが楽しくなった!って言ってたから、よかったです。

-恋文事件で上原の部屋に怒鳴り込むところで、勢いよく襖を閉めますが、外れそうになりませんでしたか?
圭吾:稽古場でバーンて閉めたときに、えもんかけがバタンて落ちたことがあって、これいいなあ!と思った(笑)。本番でもそうならないかなーって思ってたんだけど、なかったですね。ていうかその後、山田の部屋をドンて叩くじゃないですか。「おまえのせいでこんなになってるんだよ!」っていう(笑)。あのドアが外れるんじゃないかと、そっちのほうが心配だった。
-その後、そのままの勢いで竹田に話しかけるのも面白かったですね。
圭吾:(笑)八つ当たりだから。星野は竹田のことは可愛がってたんだよね。
-最終的には、山田ともすごく仲が良くなりましたね。
圭吾:後半ね(笑)。やっぱ一番仲悪い奴って、仲良くなるもんなんだよね。ケンカして最後には「ハハハハハハ!」みたいな(笑)。そういうのが表現できてよかったです。
-「おお宝塚」を歌うところで、長谷川と肩を組んで歌うところもよかったですね。
圭吾:ああ…俺が、偶然ホントに転んだときがあって。そしたら長谷川が起こしてくれて。「これ、いいじゃん!」と思ってやりはじめたんです。

-雷や虫の声などの音も、効果的に使われていましたが。
圭吾:そうだね、ヒグラシの声とかよかったね。ずっと聞いてたかったもん(笑)。「うまく言いくるめられただけじゃないのか」っていうところの前、いつまで黙ってられるかなあ、って思いながら聴き入ってました(笑)。
なかなか、ミュージカルにはない使い方なんです。 音響さんが何するかっていうと、その場面の感情のところに音を乗っけていくの。例えば俺が「さすがにもう限界だ」っていう場面で、「ここでみんな何をやってるんだ!」って言った瞬間に、電車の音が、ファーーーンダダンダダン…って入る。その中でみんなは「何をしてたんだろう」…って考えるわけだ。 「そういうことなのか…!!」と思って。本当にそうやって効果音が助けてくれてるんだなあって、すごく勉強になった。 ミュージカルだと、電車の音とかそういう、生々しい音はなかなかない。「なるほどなあ…」と思って。

-前半は山田とのいがみ合いも面白いですね。
圭吾:登場して池田さんの話を聞いてるときから、(山田が星野を)チラチラ見てるから、あの辺からもうはじまってるよね(笑)。
-山田は虚勢を張って大きな態度を取っていますが、最初に稽古場に入ってきた星野にもそういう部分があったのでしょうか?
圭吾:もちろん虚勢張ってます(笑)。なめられないようにね。初めて高校とか行って、みんなに会ったときに、なめられないようにしてるような感じです。前はそういうところがあったな…。
今はそういうところはぜんぜんない。自分がニュートラルでいないと、いろんな色に染まっていけないんですよ。まずは真っ白で、稽古場に行きたいなと思ってます。 そこから作品を作っていく中でどんどん色がついていけばいいと思うし。
-星野はそこが青いと。
圭吾:若いからね(笑)。…俺も劇団にいた頃は、何かと文句言ってた。なんか、気に入らないことがあれば、まず突っかかるし。そういう時代を思い出しました。
-真剣さが、どういう風に外に現れるかということでしょうか。
圭吾:そうだね。いつだって多分真剣だったと思う。真剣にやらないと、あいつの吐く全部の言葉が嘘になる。「真剣」がゆえの間違った言葉だったり正しい言葉だったりするなら、それはそれで星野らしいじゃないですか。

-後半では、その真剣さが情熱になって爆発する感じですね。
圭吾:パリーのあたりか。あそこで生き生きしないとね。あそこが一番ヤマ場だと思うし。みんなが、ホントにこれが最後の「これは信じていい!」っていう思いでいるから。「公演がなかった」「また、なかった」「なかった」…で、今度こそ「ある!」って信じたときの、みんなのキラキラさがあそこで表現されないと、最後に行けないから。それでも裏切られて「ホントにもう限界だ。やめます!」っていう、ところまで行かなきゃいけないし。
-はじけた部分がたくさんあった場面でしたが、それぞれの動きは脚本からあったのでしょうか?
圭吾:そうだね、もとからあったんだけど、徐々にいろいろわかってきたっていう部分もありました。「あ、もっとやっていいんだ」と(笑)。マリーの座り方も偶然ああなっちゃった。…千秋楽なにをとち狂ったか、「シャンソン風で!」っていうところで、言葉が出てこなくて「パリー風に!」とか出てきちゃって(笑)。 あまりの高ぶりに自分でもよくわからなくなった(笑)。
-上原さんが唖然としていましたね。
圭吾:「パリ?!」(笑)それくらいテンション上がっちゃった…まだまだだな俺も(笑)。基本的に今回はアドリブとかはなしだったんです。全部、計算されてるから。
-「おばちゃんだってきっと昔は少女だ!」のところの仕草も、ほとんど全員が同じ振りになっていましたが。
圭吾;増えてきたんだよね(笑)公演中にどんどん増えてきた。…そうやって拾いあえる、楽しいメンバーでした。
-君原さんに対する優しさは格別でしたね。
圭吾:マザコンだから(笑)。「基本的に星野さん、マザコンですから」「そうですね」と(笑)。
-マリーの役をやってもらおうとする場面では、星野としてはうまく行くだろうと思っていたのでしょうか?
圭吾:そうだね。でもあんなにうまくなるとは思わなかったんだね。女性にやってもらったほうがいいでしょ!っていうだけで。蓋を開けてみると、おばちゃんはむちゃくちゃうまかった。星野もびっくり!みたいな(笑)。でも長谷川の「うますぎるー!」で拍手がダーって来ちゃうから、次の俺の「おばちゃん何者だ!」っていう台詞が、どんなに叫んでも聞こえなくて(笑)。どうしようかなあと思って、できるだけマイクの近くで「おばちゃん、何者だー!」って言ってたんだけど。
でもほんとに光栄でした。初代マリー・アントワネット様と、ああやってデュエットできるなんて凄いですよ。

-いろいろな土地での公演がありましたが、思い出深いことはありますか?
圭吾:広島公演で、あのキノコ雲の話をするのはつらかったですね。あと、兵庫で、本当の宝塚男子部の人たちが観に来てくださって。最後に明かりがついたときに、客席で涙をぬぐってる姿が見えて。「う、わぁー…」って思った。
…もう最後にはね、なんか、本当に宝塚にいた気になってるんだよね!たぶんみんながそうだと思うんだけど、俺だけじゃないと思うんだけど。そういう仲間だった。ホントに「宝塚男子部」にいた感じがするんだよ…稽古場の段階からずっと。
-「宝塚BOYS」再演を期待したいですね。
圭吾:そうだね。ぜひ同じメンバーでやりたいですね。そしてまた新たな「宝塚BOYS」を作りたいと思います。 ホントに思い出深い作品になりました。応援ありがとうございました!


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