なつめの夜の夢
Current News 5 Apr,2010

 

was there.

2009年11月から12月にかけて上演されたミュージカル「グレイ・ガーデンズ」、2010年1月の「なつめの夜の夢」についてのインタビューです。

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-「グレイ・ガーデンズ」公演を通してのご感想を。
圭吾:面白かった。勉強になりました。 曲がいいよね!「グレイ・ガーデンズ」終わってからもずーっと頭の中で流れてました。
-ピアノは相当、練習されたのでは?
圭吾:うん。「ヴァンパイア」の頃からやってました。「Will You」と「Drift Away」練習して。舞台のピアノは、音は鳴らないようになってるんだけどね。
-そうは思えないくらい、自然な演奏でしたね。
圭吾:稽古してるときに、稽古ピアノの人が弾いてるのを観察して「あ、こんな感じかな」ってやってました。「弾いてるのが当たり前」っていう役柄だからね。自然に、気にならずに「弾いてるんだな」って感じで見てもらえたらいいなって思って。
でも、難しかったですね。いくら音が出てないっていっても、弾いてるふうにしたいから、例えば弾いてる鍵盤が違ったとしても、正しいように指使いをしていきたいじゃない?でも、それをしながら「しゃべる」っていうのはすごく難しいことで。本当は指はただ適当に動かして、しゃべりに集中すればいいのかも知れないんだけど、そうもいかないと思うので。ピアニストの人に聞いても、弾きながらしゃべるってすごく難しいんだって。曲のリズムに乗ってしゃべるんならいいけど、でもそうじゃないから。弾いているメロディやリズムとは違う感情での言葉の返し、っていうのは難しかったです。
-二重に動かなければいけない。
圭吾:うん。ノリノリの曲でノリノリの喋りとかだったらいいけどね。
-「ダイナおばさんの粗引きトウモロコシ」は楽しそうでしたね。
圭吾:あれは楽しいね。本編だとやっぱり、イーディスとグールドが一緒に歌うっていうことは少ないじゃないですか。本当は、共に生活して、一緒に歌って、音楽という共通のものでつながっていたんだけど。だから「めしだ!めしだ!」のハモリも、勝手にやりだしちゃったんです。
-日本版の場合、もともとはソロなのですね。
圭吾:彼女のね。「絶対いっしょに歌った方がいいよ」って。…あれは最高に楽しい。 歌う前に、二人がなんか、いろいろやってるの見えてる?イーディスが「あーあああっあっあっあっあー」って歌ったあと。次に歌う、ばあやの曲についてアドバイスしたり、いろいろ芝居をしてるんですよ。 「自由の賛歌だから、自由に!」とか「もう黒人も白人もない!そんな世界を思い描いて!」「土を感じて!」「大地を踏みしめる!」「よし、このノリで!」みたいな(笑)。 そういう芝居を、カーテンの中でしていました。
-グールドの曲は難しい曲ばかりですね。
圭吾:「Will You」とかちゃんと弾けるんだけど、 自分のピアノは音が鳴ってないじゃないですか。 だから、押さえるところもどんどんわからなくなってくるんですよ。で、しばらくしてから音の出るピアノでちゃんと弾いてみたら、さっぱりわからなくなって(笑)。 で、もう一回、練習しなおしました。
本番、オーケストラで僕のピアノを弾いてくれてた人と、稽古ピアノの人と、僕の稽古に付き合っていろいろピアノ教えてもらった人は同じ人なんですよ。「一心同体で行こうね!」って言ってました。毎日、始まる前に「よろしく!一心同体で!」と。…「一心同体・少女隊!」って言ったらわからないって言われました(笑)。「そうか、知らないかー」…でも、ずーっと言ってた「一心同体・少女隊!」。

-グールドはある程度、年かさな役ですよね
圭吾:うん。演出家が言ったのが、40代半ばぐらいだったから、それくらいのつもりでやっていました。パンフに載ってる年代で計算すると、30いくつらしいんだけどね。
-歩く動作などもゆっくりめでしたね。
圭吾:そうそう。段差をピョンと飛び降りるとか、そういうのはできるだけ我慢して「よいしょ」と(笑)。
-グールドとイーディスはすごく仲がいいけれども、恋人ではない、不思議な親密さでしたね。
圭吾:難しいよね。演出家がすごく言ってたのが、「対等にいてほしい」。 ただの囲われてる若い男の子ではない。対等に物事をいえる、何かについて対等にものを話せる、そういう仲でいてほしい、と。そこを心がけていました。ソウルメイトだっていうところを見せるために、ゲイだっていうことを前に出したりね。

-冒頭の「5時15分」は楽しそうでしたね。
圭吾:いいよね。"FIVE FIFTEEN"っていう歌なんだけど、あの一連は、楽しいね。
-新聞記者から電話がかかってくるところでは、イーディスとパーティの打ち合わせをしているのでしょうか?
圭吾:ブルックスに呼ばれる前?そうそう。「5時に髪をセットして、6時に…」みたいな。「髪をセットするの?どんな感じにするの?」って言って、「こういう感じに」「そんな長くないじゃん、それ何、カツラ?」みたいな(笑)「いいねえゴージャスだねえ」とか、そういう話を。 あそこでも、やっぱり「対等」感が出せると思うわけですよ。だから、なるべく対等に話してる感じ、を心がけたのね。あんまり一緒にいられる機会もないので。
-グールドはあの一幕の物語の後、すぐ「グレイ・ガーデンズ」を出て行ってしまったのでしょうか。
圭吾:うん。そんなつもりでやってました。もう一ヶ月以内に。 …なかなか難しいよね!あの短い間に、楽しくやってた人が突然出ていく理由って、それはまあ、想像してもらうしかないからね。「楽しそうに見えますが、なんで出ていくんですか?」っていう質問とかもけっこう多かった。あの場面だけが出て行く理由じゃないからね。

-グールドはリトル・イディに対してはお父さんというほどではないですが、やはり家族の雰囲気がありましたね。
圭吾:そうだね。面倒を見てきたんだろうな。
-イディが電報を読んで同様する場面、グールドの居方が独特だったと思うのですが。
圭吾:酔っぱらってるからこそ言えるような台詞が多いよね。「(パパは)来ない」で「あっはっはっは」って…笑っちゃうんだ!みたいなさ。
-グラスがいいタイミングで「カラン」となりますが、本当に鳴っているのでしょうか?
圭吾:鳴ってる鳴ってる。難しいんだセッティングが(笑)。 氷がお互いにはまっちゃうと動かないし。中身もけっこう飲み干しとかないと鳴らないんだよ。鳴らないときは「ぷるぷるっ」「くるりん!」とかいうだけ(笑)。「あ、これだめだ。ごめん!」
-電報で愛人の名前が出たところでの「リンダ」の言い方も凄いですね。
圭吾:「リンダ…!」…難しいよね(笑)。「リンダって名前だったんだー」っていうニュアンスを「リンダ」のひとことだけに込めてやるのって(笑)。
-あの電報の酷さをグールドの態度がさらに助長していますね。
圭吾:たいへんだったなあ、あのくだり…ホントに。俺だけじゃなくてね。
-一幕の最後にカーテンの向こうで、イディが階段かけおりる所ですが、一瞬、イディと目を合わせていますね。
圭吾:合ってる合ってる。目があって、「鞄。…ああ、やっぱり出ていくんだね。」

-セットも凄かったですね。
圭吾:よくできてたよね!一幕二幕の、新しい屋敷から古い屋敷に変わるところが、大変だったと思う。スタッフさんがんばったよ。最初の頃は50分とか40分とか、それぐらいでやってたんだから。それが25分とかで、できるようになったし。
-ピアノの部屋も二幕では、猫の場面しか使わないんですね。
圭吾:ひどい壊れようだよねピアノが(笑)。ぜったいイーディスが壊したんだ。ハンマーでこわしーの、肖像画破きーの…。

-二幕で猫たちが、過去の亡霊のように登場してくる場面で気をつけたことはありますか?
圭吾:最初の頃は、みんな「猫っぽくいようぜ」って、やってたんだけど、でも後半になって演出家に「猫っぽくしなくていいから」と。普通にいて、で、もっとこう「上から目線」な感じっていうのを、求められましたね。きっと猫の体を借りてやってるってことは、変わらないと思う。子供たちだって穴から出てくるし。だけど、別にあえて猫っぽくしなくていいってことなんだろうな。
-イディが缶を持って「猫のえさかレバーパテかわからない」というのに「ニャーオ」と話しかけますが、どういうニュアンスでしょうか?
圭吾:「それでいいんじゃない?」(笑)。で、「きっとパテよ」で「ハハハハ。残念でした。ざまー」…っていう「ニャオ」(笑)。

-二幕の後半でイーディスの隣に座っていますが、あの場面ではグールドとして居るわけですよね。
圭吾:そうだね。…切ないよね「年とりすぎて忘れちゃった。あれはいつだったかしら」って。
-壁際でイーディスとイディの大ゲンカを見守るところも印象的でしたね。
圭吾:うん。…おもしろかったです。あの二人のやりとりをあんなに近くで見てるっていう。
-グールドは全く動かない。
圭吾:いるだけだね。「ただ、そこにいるだけ」の空気が、あのシーンでは大事なので。
-かえって難しそうですね。
圭吾:それより、あそこから(「次にお送りするブログラムは」という)ラジオの声になるところが難しいね(笑)。あの暗い空気のところに、ポン!と明るく入ってくっていうのは、なかなか難しかったです。
…あの台詞が終わって歌がはじまって「あなたのコップの」って言った後は、もうグールドだね。ラジオの声はグールドたちの助け船っていう考え方もある。

-大竹しのぶさんとの共演はいかがでしたか?
圭吾:面白かったですね。やっぱり、あのエネルギーはすごいですよ。
-皆さん、ほぼ初共演でしたね。
圭吾:うん。それぞれが宮本亜門さんに出会い、今までの自分の癖だったり、そういうものを取り払っていくっていう作業に苦しんだ作品でしたよ。
ミュージカルって言うよりもストレート的な雰囲気でやっていきたい作品だったからさ。ミュージカル畑としては「次に歌に向かっていくためには、こうしてああして」とかいろいろ考えちゃうけど、でもそれがストレートの見え方では仰々しかったりすることが多々あって。ホントに、「歌は『語れ』、でも、台詞は『歌うな』」というところが凄く求められた。 本当に、勉強になりましたね。 普段、ミュージカルをやってると、音に乗っちゃうっていうか、台詞もそういう「リズム」になってきてしまうので。そういうことを破棄して、っていうところがすごく課題でした。
-ミュージカルの要素とストレートの要素がそれぞれ、複雑に求められるお芝居だったのですね。
圭吾:うん。本当ににそれぞれ、課題が多くて。みんなが大変だったと思う。 どこを壊していったらいいのかとか、どこが合ってるのかとか。 「自分はなんだ?!」とか、じゃあ今までやってきたことは何だったんだ、とか、いろいろ思っちゃう。これでどうだ!違う、これでどうだ、違う、これならどうだ!…違う。
本当に勉強になった。宮本亜門さんに出会って、役者の仕事って何かっていうことを、もう一度しっかり考えなきゃいけないなって思った。そういう作品でした。

-2009年の最後を飾る作品でしたね。
圭吾:公演中に、なつめさんが亡くなって、…なんかね、大変でしたよ。この「グレイ・ガーデンズ」で、役者として本当に考え直そうと思ったこともあり、なつめさんのこともあり、また一回一回しっかりやろうって、なんか改めて、思った。2009年の締めとして、「グレイ・ガーデンズ」が良かったんだろうな、と思うね。
作品によって、役柄によって、求められること、できなきゃいけないことってあるじゃないですか。ジェイだったら、ギター弾けなきゃいけない。グールドだったらピアノ弾けなきゃいけない。「ガランチード」だったら、カポエラとかできなきゃいけない(笑)。舞台ってそういうところが大変でもあり面白いところでもあり。やっぱりそこ…役柄をふくらましていく作業を、もっともっとつきつめて行きたいなと思います。
ここまでやってきたことを今ふりかえって、そういう、役の準備ってうか役作りを、もっとしっかりしないとな、て思う。もっと俺の知らない自分がいる気がするんだ。 …「ダウンタウン・フォーリーズ」もそうだし、「CLUB SEVEN」もそうだけど、いろんな役をやっていく中で、そこで、もっといろんな「人格」がそこに存在するはずだと思いながら、それを極めていきたいな、って思います。

-「なつめの夜の夢」では、「チェ・タンゴ'99」で大浦みずきさんが歌われた「ロコへのバラード」を踊られましたね。
圭吾:そうですね。やっぱり、なつめさんがやりたいと思ってた舞台なんで。それに俺が参加するということは、やっぱりなつめさんがそこにいるものとして、なつめさんとやりたいなと思って、「ロコへのバラード」を選びました。
-ご自分のライブなどでも何度か歌われている曲ですよね。
圭吾:稽古のはじめのうち、自分で作ったロコの歌詞が出てきてさ。なつめさんの歌詞とはちょっと違うから、あっちこっちと「あれ?…あれれ?」(笑)。
-前田清実さんによる振付で、また新たな「ロコ」になりましたね。
圭吾:うん。本番は…後半、心のままにやったら、最後のほうが全然ちがう振りになっちゃって(笑)。でもほんとに、大浦さんの最後の公演に出演させていただいて、よかったです。
で、もう一曲「ガランチード」を歌わせてもらったんだけど、あれは謝珠栄先生から、「なつめさんに届けて欲しい」ということで、歌わせていただきました。けして番宣…劇宣ではないです(笑)。
-フィナーレも楽しそうでしたね。
圭吾:フィナーレね。汗かいちゃってね…ズボンが中で脚にくっついちゃって、「脚、上がらな…っ!重!重ー!」…ベッタベタでね!すっごい汗だった。「たったあれだけで、 なにこの汗!」びっくりしちゃいました。でも、ああやってみんなで踊るの楽しいね! 久しぶりに「42ND STREET」以来の、ワクワクする感じで。女性に囲まれてキャー言われながら(笑)。
登場するところの振りは自分で考えたんですよ。 「シックス・エイト自分で考えて」って言われて。みんなで踊るところとかはいっしょなんだけど、その前はね。後ろ向きで「じゃっ!」て…シカネーダーかと思ったでしょ(笑)。
-一夜限りのゲスト出演でしたが、素敵な舞台でしたね。
圭吾:うん。…なんかね、凄く「ガランチード」と似てるんですよ。 スタジオの子たちが一生懸命やってる姿とか、初日終わってからのみんなの感じとか、前田清実さんが言った言葉とかもさ。すごく「ガランチード」の劇団員達と、かぶった。
-なつめさんとの、素敵な共演作品になりましたね。
圭吾:うん。俺も、やりながら見えたもんね。「ああ…なつめさん、そこにいるわ」と。
「ありがとうございました」って言ってました。

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