Current News 11 Aug,2010 5 Month
2010年2月の「ガランチード〜生きた証」、3月から6月にわたって上演された「レベッカ」についてのインタビューです。
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めがねっこ
-「ガランチード」といえば思い出すことはどんなことでしょうか?
圭吾:一丸となってみんなでやったってことだね。…あと「1941年」の歌が覚えられなかったこと(笑)。きつかったー。どんどん曲が流れていくし、一瞬でも言葉が止まるともう、間に合わないし。
-「砂の戦士たち」とは違って、中心になって苦悩するリーダーの役だったわけですが…。
圭吾:うん。リーダーって言っても、自分から名乗りを上げてやったリーダーではないからね。劇団のほうの話は、あの短い中で、リーダーとしての自覚とか役割を発見していく物語じゃないですか。これからもまだまだ頼りないリーダーですが、やっと一歩、歩みだしたところで終わる。で、ブラジルのほうの話も、無理矢理リーダーにされた…と俺は思ってるの。「やってください」とか言われて。「逃げ出してきた」っていうバックボーンを持ちながら、でもやっぱり自分が押さえられなくなって、自分の過去を告白して、そこでまたひとつ深まるもの、絆が深まるものもあり、っていう。…リーダーは大変ですよ(笑)。

-先輩も同期生もいる中のリーダーということで、そこで生まれる人間関係の見え方も細やかでしたね。
圭吾:そうだね。今回そこをすごく追求した。そういうほうが面白いと思うし、劇団ぽいし。
-坂元さん演じる「紀元」とはかつて、劇団の同期生だったわけですね。
圭吾:うん。いい同期感だったでしょ? 「昔、同じ釜の飯を食った者としてのつきあいかたっていうのを、 みんなといないところでしたい」っていう話をして。他のみんながいない場面では、そういう雰囲気が出るように心がけていました。
-特に印象に残っている曲は?
圭吾:俺が好きなのは「青く…」ってやつだね。「遙かなる祖国」あのシーンが好きです。
-カポエィラも今回は本格的でしたね。
圭吾:練習、練習ですよ。「やるなら裸足だろう!」って。俺は裸足にした。

-特に劇団の物語では、ほぼ全員の反発を受ける役どころでしたね。
圭吾:もうねー、大変だよ(笑)。ほとんど10対1とかじゃん。芝居の上ではそうなっちゃうから、ウォーミングアップの時に、進んで「みんな、バレーボールやろ!」って(笑)。毎朝、日課でしたね。
-円陣パスのようなものでしょうか?
圭吾:そう、円陣になって、みんなで「そーれ!」ってやるんだけど。ひとつのボールをみんなで追うことで「つながり」ができてくるし、せりふの勉強にもなるの。ボールを俺から誰かにパスしたときに、それを、うまく受けてくれるのか、次の人に渡せるのか、もしくは失敗してしまうのか。それですごく、人が見える。これって芝居と同じだな、と思って。人が隣どうしになって、間にボールが落ちたときにどうするか。隣が動くのか自分が動くのか。…勉強になるね。「これいいなあ」と思った。会ったばかりの仲間って、さっぱりわからないから、そういうのって大事だなって思う。
-隣の人との関係も影響しますね。
圭吾:そうそう。お互いに知ることができるし、性格まで見える。昔、横山(由和)さんが「坊っちゃん」の時に言ってたんだけど、どんなボールでも受けて、相手の胸に返す、それは芝居も一緒だと。それを、痛感した「ガランチード」でしたね。
-リーダーの役どころの上でも役に立ったのですね。
圭吾:うん。いつもは外側で見てる。そんな俺が「やろう!」と(笑)。あの役にはそれが必要だった。 知らないうちに「何人集まる」みたいなことになっちゃって。後から来たやつもどんどん、入ってきて。謝先生も入り。 …あれは、すごい大事な時間だったね。俺的には、あれがあったから成功したっていう感じでした。

-「レベッカ」4ヶ月の公演が終わったときはどんなお気持ちでしたか?
圭吾:ほっとしましたね。公演が長いじゃない。一ヶ月半ぐらいだったら、「おぉー!やったーっ!」て感じがするんだけど、そういうピークは通り超してるの(笑)。公演が生活の一部みたいになってる。「終わったのか…」「終わったんだ…」っていう感じでした。
-逆に、喪失感がありませんでしたか?
圭吾:もう次の日から稽古だったんで(笑)そういうのもないんだよ。次の日からは次のことが精一杯で。いろいろ覚えることやら思い出さなきゃいけないことがいっぱいで、もう「次」に切り替わってました。

-長い公演中、時にはハプニングもあったことと思いますが。
圭吾:「おお?」って思ったのは、あの化粧前に乗ったら鏡台がズズ!って動いたこと(笑)。帽子を取りに行って片足だけかけたら、化粧台が乗ってる台が、ズズズズ! あと、ベッドに寝転がったらベッドがズズっと動いたり。驚いたよ。
-「お茶でもいかがですか?」と誘われるところでのダンヴァース夫人との無言の会話が面白かったですね。
圭吾:「よろこんでー」うんうん!で、ダニーのほう見て「えへ、えへへへ」みたいな(笑)。難しいんだよあそこ。これ以上やると笑いが来ちゃうな、っていうギリギリのところでやめないといけない。
-ダンヴァース夫人とのやりとりは印象的でしたね。
圭吾:いちばん怖いのは「決して心、許さなかった」っていう顔。でもその顔に対して、 ヘラヘラしながら「彼女の箱ー」っていうところがたまらなく気持ち良かったです。

-「流れ着いたもの」で心がけていたことは?
圭吾:…「瞬発力」(笑)。曲の中で台詞を入れていかないといけないから、言われたことに対して速攻、対応できるようにしてかないと。…口と頭がつながらなくなったときはどうしようかと思ったね。あれはピンチだった。
-「覚えていてくれた」が大変なことになった時ですね。
圭吾:おぼえて「いてて」くれた…いてて?…おぼえてて、いてて…え?誰だっけ誰だっけえーと 「…ミセスドウィンター!」。…あれには参った。「俺もう、ダメだー!」と思いました。あれが3ヶ月の間でいちばんひどかった。 ロング・ランは、そういうところが大変ですね。慣れでしゃべってしまうとやばいんだよ。だから、わざと「慣れさせない」努力をした。

-審問会が始まるところでマキシムに挨拶をしかけるシーンは、ご自分のアイデアで?
圭吾:そうだね。「ここで目、合わしていいですか?」ってお願いして。
-初演とは立ち位置が変わりましたね。
圭吾:近いな!って感じでした。最初、居場所に困ったんですよ。「じゃ、座ってみようか!」って稽古の時に一回、ダンヴァース夫人と二人で座ってみたことがあったんだけど「いや、座るのも違うな(笑)」って、今の形に落ち着きました。初演の時の、あの二階から見下ろしてるのも良かったね。
-審問会が休廷になるところでの動きは細かかったですね。
圭吾:「わたし」が倒れて、「おぉっ」って見にいって(大佐に槌を)ゴンゴン!てやられたあと、 自分がシュッ!って(直立してすまし顔に)なるところが楽しかった。自分で「これ今、俺カワイイ」と思ってました(笑)。

-「もちつもたれつ」のフィニッシュが再演で加わりましたね。
圭吾:ソファを(背もたれに手をかけて)ぐるんて回って最後に座るじゃない。あれが、いちばん始めにやったのと変わってきてるんですよ。 「こんな簡単に行くはずがない!」…のに、簡単なの。でもそれは、うまくできてるんじゃなくて、なにか違う。
-客席では評判でしたが、ご自分では、感覚が違うわけですね。
圭吾:見た目は良かったのかも知れないんだけども、自分でやってて「こんなはずじゃ…。こんなにあっさり座れるわけがない!」 回ってるから、鏡でチェックしようと思っても見えないわけですよ。でも、やるにつれて見えるようになってきたの。一回、回ったときに、テーブルの上のグラスを蹴ったことがあって。それからというもの、回りながら自分の足がすごく見えるようになった。不思議なもんだね。

-書斎のシーンでは、ファヴェルの台詞の節々で、雷の音がとても効果的に入っていましたね。
圭吾:うん。音響さんのセンスだね。…でも、その雷に一回、裏切られる(笑)。
-フランクが電話をかけるタイミングですね。
圭吾:ビクってしてる(笑)。貧乏ゆすりしたりしてるところへ、あの雷で「おぉぉっ!」ってなって「…別に?」ってすまして(笑)。
-ずっと雷に背中を押してもらっていたのに…
圭吾:あそこで雷に驚かされる。そして最後には「レベッカに殺意を抱いていた旦那が」で雷が助けてくれる。どうだ(笑)。やっぱりよくできてる。
-その後、大佐に肩を掴まれて。
圭吾:俺、ネコみたいになってる(笑)「ニャン!」て言いそうだもん。あそこでオケの人がいつも笑ってる(笑)。肩を掴まれてビクっとして、「もう!」って振り払ったときにちょうど下をむくんだけど。オケピの人が、いつも笑ってる(笑)。

-大佐が現れたところから、しゃべり方が急に殊勝になりますね。
圭吾:うん。「芝居」を、していますよ。「お芝居中お芝居」をしてます。
-ファヴェルにとってはあの場の即興なわけですが、それなりに準備はしていたんですね。
圭吾:そうだよ。ベンにも「見た」って話を聞いてるし。
-一幕で宝石箱を探しながら手帳を開いてるのも、二幕の伏線になっていたのでしょうか。
圭吾:そうそう。あそこも大事なんですよ。でもあんまり長く調べてると次のことが始まっちゃうから、 パラパラっとめくって「ああ思い出ね、思い出が書いてあるね。」っていう雰囲気だけ。
-結局ベンに裏切られ、ダニーに裏切られて、散々なファヴェールですが。
圭吾:(笑)ダニーに裏切られ。そして、誰もそこの話題を引きずろうとしないところがまた(笑)。すぐ次の話題にいっちゃうじゃん…「あれ?!俺の愛人問題はどこへ行ったんだ?」っていつも思うんだよ(笑)。
-ダニーとファヴェルにとってだけは大問題なんですよね。
圭吾:ダニーにああ言われて「えー?」って、ちょっと悲しくなるんだよ(笑)えぇー?…えー今俺みられてる…あはははは…やばい!…って帽子に隠れるんだけど。「あれれ、もういいんだ?」って。

-悪党の役の面白さはどんなところでしょうか?
圭吾:やっぱり、楽しいよね。変化球が投げられるから。 「夫とは名ばかりだった男の嫉妬だ!」って言った後に、いつまで空気を止めて、指さしていられるか、とか(笑)。 マキシムに向かっていつまで目、開けてられるか。「わかるよなあ?」って言った後も「はやく、次の台詞言って、もう、目が限界です!」 (笑)。「間」が勝負なところが面白いね。勉強になります。
-ファヴェルという人に対して贈る言葉を。
圭吾:「そのまま正直に生きてください」
-あれからファヴェルはどうなったんでしょうね。
圭吾:あれから?どうするんだろうね…まだどっかで何か狙ってる。ダニーも死んじゃったしな…ダニーの部屋でダニーのものを漁ってる。で「わたし」に、「出てって」って言われる(笑)。そんなことが繰り返されていくんでしょう。車、売れないし。
-オープニングとエンディングで少し皮肉に笑うファヴェールは印象的でしたね。
圭吾:そう。「そんな綺麗ごとで、終わらない方がいいな」と思ってて。あの綺麗な言葉の裏に隠れたものっていうのが見えるといい、と思ってました。オープニングも最後も。
-「レベッカ」再演でよかったと思うことはなんでしょうか?
圭吾:またこの役に挑戦できてよかった。自分がすごく、成長できる役だし、年をとってもできる役だし(笑)。 前回よりちょっとは、自分が思うように表現できたかなと思う。なんにしても、毎日、面白かったな。
前回より気負わずにできたことも良かったです。でもまだまだ課題はありますね。自分のとこもそうだし他の人のところもそうだし、「レベッカ」という作品自体もそうだし、 もし次やる機会があれば、そういうところも、解決していきたいなって思います。

-4月に行われた東京會館ミュージカルサロンでは、入場の曲が大変工夫されていましたね。
圭吾:「しょっぱなになんか、一つ欲しいですよね!」って。「レベッカ」だけじゃ面白くないなと。で「ヴァンパイア」とか禅さんも俺も出たミュージカルの曲が流れて、 「違う!」「違うよ!」みたいな感じで、やってみましょうよ、と。…ちょっと「TOYBOX」みたいだったね(笑)。
-「レ・ミゼラブル」が一瞬かかったときには大変盛り上がりましたね。
圭吾:「でんでーん!」てね。「ハハン」(オーバーチュア〜囚人の歌)はやっぱり、わくわくするね。よくできてるわ。
-衣装はそれぞれ、ご自分で選ばれたのですか?
圭吾:うん。示し合わせたかのように、お互い、白黒でした(笑)。羽織るものは、違う型を買うかどうかで迷ったんですよ。そしたら禅さんがそれを持ってた。「ああ、やっぱり趣味、似てるなあ!」と思って(笑)。危ない危ない。

-この夏は「タン・ビエットの唄」再演ですが、改めて作品のみどころを。
圭吾:パンフに書いたんだけど、ベトナムに帰ってきて、姉探しの旅に出るフェイとともに一緒に旅をして、いろんなことを、目をそむけずに観てほしい。そういうことかな。 フェイとともに、次のシーン、次のシーン、追っていってほしいです。
-ベトナム戦争で起こったことを元に、舞台を作っていくことで、難しい部分もあると思うのですが。
圭吾:難しい。難しいよ。だって想像するしかないんだもん俺たちは。想像して、舞台の上に立つしかないからさ。 できる限り追求していきたいと思うけど。「そんなことじゃないだろう」って思われるかも知れないし。 観るほうもきっと疲れるからね。「でも、観にきてねー!」(笑)。最後には救いもあるから。
-冒頭の「シクロ」など、他の役も楽しみですね。
圭吾:ハイ。前回とちょっとキャラクター変えてるからね。シクロのつくりもちょっと変わってる。 みんながみんな元気にわーって行くんじゃなくて、もっと疲れた人もいるっていう…で俺は疲れた人をやってる(笑)。 その後の(町を横切っていく)爺さんの役は、変わらないんだけど。
-今回は演劇鑑賞会公演が多いので、全国のいろんな人に見てもらえますね。
圭吾:うん。「タン・ビエットの唄」も、またあらたに練り直してるから。前回よりいいものができるといいなと思っていますよ。 やっぱり最後は希望がある作品にね!したいと思います。

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