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2011年夏のミュージカル「三銃士」についてのインタビューです。
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◆目次
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-ロシュフォールを作っていく上で、難しかったことや思い出深いことは?
圭吾:最初は迷いがありましたね。カッコよくもありたいし、カッコ悪くもありたい。悪役として、非情なところも出したい、でも悪役も人間なんだっていうところも出したいし。人形劇を見ちゃったから「ああいう無機質な感じでやろうかな」とも思ったんだけど、演出家とも相談して「いや…」と。すごく人間性が出てるし、猊下との関係性とかもあるし、敵ともちょっと心が動く関係になったりするし。そういうところも、うまく形にしなければいけない。
稽古の初めの頃は、すごい迷いながらやってたな。一番最後のシーンとか。「ロシュフォール」って陛下に呼ばれて、そこで「ハイ陛下っ!」って、寝返ってしまうこともできる。
-明るく、陛下にへつらう言い方にもできてしまう。
圭吾:そう。最後に「笑い」に持っていくこともできるし、逆もできるし。作品でやりたいこととして、どっちがいいんですかね、って演出家にも相談して。いろいろ話してるうちに、祐さん(山口祐一郎さん)も来てくれて。「それだとなんか、ちょっと薄っぺらいかな」「そうですねえ…」みたいな話をした。 じゃあ、あくまでもやっぱり、猊下のことが好きな、一途な男をやればいいなと。…そんな風に話をしながら作っていきました。
最初の頃は(明るく)「ハイへいかー!」ってやってたんだけどね。
-そこでオチをつけてしまう。
圭吾:そうそう。「ハイへいかー!」って言って、ダルタニャンが、 「大変だ!時間は死ぬまであるし」っていう方へ「キッ!」って睨んで去っていく。でも、それだとダルタニャンも成長した感じが出ないよね。
でも俺が寝返らない芝居になると、今度はダルタニャンのその「大変だ」っていう台詞の言いかたが難しかったと思う。その台詞をどう言うのがいいんだろう、っていう。 だからその解決策として、その前の場面で、ロシュフォールが剣を突きつけられる時、「僕は銃士だ(戦うのは名誉のため、憎しみのためじゃない)」っていう台詞を、ちゃんと腹に落として、俺を超えたところで言ってしまえば。その後の「大変だ」っていう台詞が軽くなってもいい。 「僕は銃士だ」がちゃんと落ちて行かないと「なんだよ、相変わらず、自分勝手な男」みたいなことになってしまうから。-ロシュフォールは漫画の悪者のような台詞が多かったですが、そのあたりも楽しかったのでは?
圭吾:そうだね。全体的に、そういう漫画的な感じのほうがいいじゃん。ほんとに、アミューズメントパークみたいな感じでさ。俺、あのセット見た時「これってディズニーランドじゃん!」て思ったんですよ。「じゃあディズニーランドっぽいほうがいいじゃん!」って。
-「ばーか!」という台詞は台本にあったのでしょうか?
圭吾:ないよ。「くそっ!」って書いてあった。でも俺は「くそ!」じゃないなと思ってて…つい「ばーか!」って出ちゃった。そしたら演出家が「それ『生き』で!」って(笑)。
-名台詞が生まれましたね。
圭吾:またヘルベルトとは違う「バーカ」だからね(笑)。
-最初は殺陣の稽古から始まったのですね。
圭吾:そう。一番うまかったのは瀬奈さんだね。見せ方がすばらしい。やっぱカッコいいなあ!と思った。
-ミレディーの動きを見ているロシュフォールも面白いですね。
圭吾:以前「AKURO」で殺陣の稽古をやってるときにさ、(今回も殺陣を担当している)渥美さんが「周りが大事だ」って言ってて。なんにも殺陣がついていない周りのメンバーに対して「なんで突っ立ってるんだ、周りが真ん中を作っていくんだ」って。俺はその時はアテルイをやってたから、戦ってはいなかったんだけど、それを見てて「ああ、なるほどな」と思って。で、今回そっちの、一緒に殺陣をやる側になって。「そうだよな、そこ、大事だよな!」と。動き続けることっていうか、真ん中で行われてることに対するリアクションが大事なんだな!…っていうことを、肝に銘じてやってました。-特に難しかった動きはありますか?
圭吾:覚えてしまえば難しくないんだけど。 でも、最後の決闘のときに、ダルタニャンに俺が斬りかかっていって、フェイントするところは難しかったね。一回斬って、見合って、右に持ってた剣を左に持ち替えて、右で打つとみせかけて左で打つ!みたいな。そこが一番大変でした。手袋してるから、持ち替えがうまくいかなかったりすることがあるんですよ。あそこはいつもヒヤヒヤした。
…いや、難しいところはあそこだね、しょっぱな(笑)。一番はじめにダルタニャンの剣を折るところ。難しいんだよ…眼帯してると怖いんですよ。マントも邪魔だったりして、なかなかうまく斬れなくてね…でも自分の中では、すごく「絵」が見えるから。どうなりたいかっていう絵が。こう、ミレディーをどかしたと同時に入れ替わってシュピッ!…って切れて、カラン!って落ちる…っていう絵が俺にはあるわけですよ(笑)。
-「飛ばす」でなく「落ちる」ですか。
圭吾:当てた時にパンって折れるんじゃなくて、タン!て斬って、パカッ!て折れる、っていう絵だったわけです、俺の理想は(笑)。(「北斗の拳」の)レイじゃないけどさ、シャウ!ってやって、軌跡が見えて「しゅびっ」「くるっ!」
-時間差で剣先がカランと落ちる。
圭吾:そうそうそう(笑)。…で「そういう仕掛けになりませんか!」って言ってたんだけど無理でした(笑)。 俺の中では、何事もなかったかのように、シュビッ!…っていうのが理想だったんだけど、マントやら、いろいろな制約があるわけですよ。シュビン!って斬って、「引っ込んでろ。」「(剣先が)バキッ」ぐらいなイメージだったんだけど(笑)…ホント、あの折れるのが待って欲しい!シュビン!引っ込んでろ!パキッ!…ああっ!っていう。それが理想だった。くそー…。
-それはそうと、斬った剣先はよく飛びましたね。
圭吾:客席に行っちゃ嫌だな、と思ってた。それが怖かったです。後ろに飛ぶのはいいんだけど、一、二回ぐらい客席側に飛んで…ホント、(オケピの)ネットがあってよかった。-ルーブル宮でダルタニャンに斬りかかって、アトスに止められるところの動きも綺麗でしたね。
圭吾:あれ、いいよね。俺も好きだよ。なんかロシュフォールが「仕事してるな」って感じがする(笑)。あそこで、関係性も出るもんね。アトスと一番、仲が悪い(笑)。ちょっとライバル的な…俺的にはミレディーと三角関係。
-ミレディーへの「詰めが甘いな」という台詞が日替わりになっていったきっかけは?
圭吾:なんだろうね…ある日、楽しみを見つけてしまった(笑)
-千秋楽の「歌」は素晴らしかったですね。
圭吾:いいでしょ(笑)三拍子にはこだわった。「ああ、自分の解放ができてよかったな」と思った(笑)。
-メロディと歌詞は前もって考えていたのですか?
圭吾:「だいたい、こんな感じだろう」みたいなことは考えたんだけど、まあ「出てきた感じでいいや」って(笑)。どんなメロディーかわからないけど、出ちゃえ!やってしまってみちゃえ!と…帝国劇場で。イチかバチかでした(笑)。
-ミレディーは聞くだけ聞いてくれましたね。
圭吾:もうちょっと歌いたかった。これからサビですよ!…っていうところで「バキッ!!」(笑)。でもね、あれでいい。あれ以上やってたらダレる!
-日替わりといえば、最初は「ノートルダムのせむし男!」あたりで何か起きそうだな、と思ったのですが。
圭吾:うん。演出家ともいろいろ相談したんだけど、やらなかった(笑)。「僕はせむし男の真似をした方がいいんですかね?ちょっと、乗っちゃった方がいいんですかね?」「いやーそれはー…」。で「どのへんが?」で通した。
千秋楽、(ジェームス役の)ケンちゃんがなんか言ってくるかなと思ったんだよ。でもきっと、俺の足を気遣ってくれたのか、あんまり違うことはしてこなかった。 「絶対来る」と思って身構えてたんだけどね(笑)何が来てもやろうと。
-狩場のシーンでミレディーと「会ってしまった」動きが良かったですね。
圭吾:あの気まずい感じがいいでしょ?それを考えると、前の場面で、ちょっと気に障る状態になってるほうがいいんだよね。「会いづらい!」「会っちゃった…!」っていう。 そこを考えると(宝石箱のシーンの)ああいう変化はアリなんだなと思う。
-狩場のロシュフォールとミレディーの争いぶりは面白かったですね。
圭吾:そうでしょ?演出家の指示で、あそこで猊下を取り合うっていう。ミレディーが猊下を発見して、俺がその前に立つところで「ああ、こういう関係性か」と。
-「ばか!」「かば!」のやりとりもどんどん激しくなりましたが…。
圭吾:最後「うに」っていった(笑)。「うに!」って言ってる自分がよくわからなかった。なんで「うに」なんだよ…。
-「いぬ!」って叫んだ時は猊下が…。
圭吾:ちょっとお喜びだったね(笑)。最終日なんか(耳を押さえて屈みこんで)止めやしないんだから(笑)「どうせお前らもっと言うんだろ?」っていう感じで…「そうですか?」ってそのまま行っちゃいました(笑)。
-四人がロンドンに行くと決めるところで、ミレディーと笑い合うのもよかったですね。
圭吾:「聞いちゃった!」っていう。いい絵だなーと思いながらやってました。勝手にこう(パントマイムで)「壁」を作って。本当の壁のあるところに行くと、下手の人からミレディーが見えなくなっちゃうんですよ。だから少し上手に寄って「僕は壁がある形でやります。」と。-二幕の冒頭、芝居小屋の舞台から登場する場面で小道具の「雲」を持っていますが、あれは劇団員から奪い取ったわけですか。
圭吾:そうそう。稽古であれをやったとき、演出家が「…だよね!」って(笑)。「そりゃそうだよね!」って。まあそういう登場だよね!
-ある日、突然持ったのでしょうか。
圭吾:立ち稽古の時にね。あそこの登場はやっぱり、雲でしょう!みんながこう、流れてって流れてって、ロシュフォールになってるっていう場面だから。 …狭いんだから!あの後ろ。幕の後ろをみんなが行ったり来たり。その中でこう(縮まって直立不動の姿勢)。超、いい子で立ってたよ…。
-「ラ・ロシェルへの道」の場面ですが、骨付き肉は三銃士に対する嫌がらせでしょうか。
圭吾:そうだね、そう思う。あんなところで食わない男だよね。…だったらもう親衛隊みんなで肉を食べてたらいい。今度はそうしよう(笑)。みんなメシの時間で、三銃士だけ食ってない、っていう絵にしよう(笑)。
-とはいえ、何だかんだとロシュフォールは優しいと思うのですが…。
圭吾:やさしいよ?ホント優しいよ(笑)。悪役だから悪役に見えてるだけで、こっちはこっちの正義があるわけですよ。
-決闘シーンでダルタニャンに対して「子供はあっちへ行け」って追い払うような仕草をするところで、ロシュフォールいい人だなと思ってました。
圭吾:そうなんだよ(笑)。…斬ってしまいそうなものなのに(笑)。
-「さっきは言いすぎましたー」と言われるところ、アトスの顔が極端に近づいた次の回からは、むしろ一歩前に出るようになりましたね。
圭吾:それは負けられない(笑)。チューしてしまえと思ったもん。でも、話が続かないからやめました(笑)。
-残念ながら、博多公演は怪我のために降板となってしまいましたが…。
圭吾:本当にみなさんに、迷惑をかけました。いっぱい助けてもらった。
東京の千秋楽が終わった後は、もう、任せるしかないからさ。そこで「もう俺は、出て行かないほうがいいな」と。博多も、最後に観にいこうかと思ったんだけど、でも「会えないよ!」って思っちゃった。どんな顔してみんなに会えばいいか分からなかった。東京千秋楽をやって、それで俺は「終わったんだ」って思わないとダメだな、と。みんなが「新しいものを作ろう」って盛り上がってかないと。そう思って一ヶ月を過ごして。でも気になる自分が、いましたね。
「みんながやってるんだなあ…」って思いながら、なんか次に切り替えられなくて。次の台本もなかなか読めなかった。だけど、ちゃんと、博多公演も終わったので。その時にやっと、次の仕事のモードに切り替えよう、と思いました。
-いろいろなことがありましたね。
圭吾:うん。ほんとにね…。
怪我をしてから、みんながすごく気を使ってくれて、助けてくれて。俺を歩かせないように、近くに寄ってきてくれたりして、本当にありがたかった。いつかもし、そういう場面に出会ってしまうことがあったら、誰かが怪我したりした時には、やっぱりこうやって助けてあげたいな、って思った。
高校生の時に、演劇課でやった舞台で「ひとりはみんなのたーめに、みんなはひとりのたーめに(ユタと不思議な仲間たち)」っていう歌があったんですよ。それを肝に銘じてやってきたつもりだったけれど、あらためて今回、そこはすごく大事だと思った。 「スクールウォーズ」なんかの"One for all, all for one."もそうだけど。それって大事なんだな!って。 ちょっと恥ずかしいんだけど、口に出して言うことではないと思うけど、やっぱり、ちゃんとそれは心にあって、やるべきだな。と、思いました。
自分がしてもらったことはしっかり返したいなって、改めて思ったし…「仲間っていいな」って。ホントに。「素敵な人たちに囲まれて幸せだな」って、思ったよ。