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2011年冬の「江戸の青空 弐」、2012年の「集まってみちゃう?」「ジキル&ハイド」についてのインタビューです。
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◆目次
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-「江戸の青空 弐」について。久々のストレートプレイでしたが、特に刺激的だったことは何でしょうか?
圭吾:やっぱり、歌や踊りに逃げられないところですね。言葉で全部なんとかしなければならないところが、刺激的でした。あとは松尾貴史さんの、頭の回転の速さ(笑)。何でも知ってるし、なんだろうね、あの知識は。すごい!黙ってはいられないのかも知れないけど、それも意識的にやってるとしたらすごいなあって。 松永(玲子)さんも、すばらしい女優さんだったし。いっぱい教えてもらったり、お稽古つきあってもらったりして、すごくお世話になって。植本(潤)さんも、あの多彩ぶりに、いろいろ刺激を受けました。「ああ、今度そういうキャラクターがあったら使ってみよう」とか(笑)。朝倉あきちゃんも、すごいがんばり屋だった。あのがんばりは見習いたい。そして「宝塚BOYS」から何年かたったシゲちゃん(戸次重幸さん)は、前にも増してパワフルになっていた(笑)。花緑さんと三人で、よく「モン・パリ」や「すみれの花咲く頃」を合唱したね。楽しくて懐かしかった(笑)。
-文化の違いを感じたことはありますか。
圭吾:花緑さんも巳之助君もそうだけど、「和」の世界にいる人はすばらしいね。ああやって着物を着た時の振舞い方とか、すごく自然で。そこは、いろいろ教えてもらいました。
-冒頭の湯屋に出てくる浄瑠璃の若い衆はずいぶんと高い声でしたね。
圭吾:ハチ、ちょっとオネエなの(笑)。 スタンバイが寒くてね。開演5分前から上半身裸でいるから、「寒いよー!」って言いながら後ろで動き回ってた。
-唐茄子屋の新吉の回想に出てくる「兄貴」はどういう方なんでしょうか。
圭吾:おおらかな人(笑)。で、はっきりしゃべる人。台本に「○○したらいい」って書いてあったんだよ。「泊まっていったらいい」「早く行ったらいいー!」って書いてあるから、じゃ語尾は全部「いいー!」がいいじゃん、って台詞を作りました。「そこは自由に作って」って言われたから、途中のところを変えて「飲んでしまえばいいー」とか。演出家には「すごい早送りぐらいな勢いのシーンにしたい」って言われてて、ああなりました(笑)。
-唐茄子屋ソングは自分で作ったのですね。
圭吾:うん、そうだね。もともと、あの歌はなくて(徳三郎に)「良かったな、売れるぞ!」って言って、二人を見送っておしまいですよ。「それから一ヵ月後」っていう台詞があって、最初の頃は、二人がいなくなった後、お客さんのほう向いて(ぶっきらぼうに)「一ヵ月後ー。」て言って、帰ってたの。
-セバスチャン調ですか…
圭吾:それも好きだった(笑)。「一ヵ月後」って言って、ただ帰る。だけど「せっかくだから歌ってみるか!」と思って。歌もすぐ思いついた。家に帰って、夜「唐茄子屋のこれ、歌ってみたらいいんじゃないの?…………あ、できた。」
-彦六さんは徳三郎とはもともと知り合いだったんですよね。
圭吾:うん。でも、あんまりしゃべったことはないんじゃないかな。出入りの職人的にはきっと、あいさつぐらいで。おせつさんはお嬢様だから、雲の上の人で、初対面と変わらない。
-相撲で勝負する前、わざわざ草履を履いて、舞台袖に蹴り込む動きが評判でした。
圭吾:あそこで草履を脱いだままで相撲をとった時に、場面転換で草履が残るから、どうしたらいいっていう話になって。「じゃあ、一回、履いてすぐ脱ぎますよ」って(笑)。…照明に乗っちゃったことがあったらしい。袖にライトが置いてあって、上に釣ってあって、その上に乗っかっちゃったんですよ。
-彦六さんが最後に徳さんと戦うのは、おせつさんのためもあったのでは。
圭吾:うん、それもあるだろうね。
-淡い思いが芽生えるような、微妙な雰囲気が良かったですね。
圭吾:そうだね。二幕の「どうぞ…」のところは、もっときわどいところで終わりたくて、こだわってました。結婚式の前。ホントに好きになっちゃったの?みたいな。
-今回、アドリブを受ける側でしたが、笑いをこらえるのが特に大変だったことはありますか?
圭吾:新どんとのお別れのところで、ああやって一所懸命、泣きながら「おいらは○○なんだよ〜!」って言って、なんとも中途半端なところで去って行くじゃないですか。それに、なんか涙が出てきたことがあった。なんだっけ、健康のマークをやった時…。
-トクホのマーク風のポーズで締めて、去っていった回ですね。
圭吾:トクホ。なんか、泣けてきて!心にすっごく響いたんだよ(笑)。お菊さんが出てくるところまで、泣きっぱなしだった。後でみんなに「なに泣いてんの」って言われました(笑)。 何かに触れたんだね、心のどこかに。「嫌だ」とか「何で?」とかそういうんじゃなくって、すごく歓迎してるんだけど、いい意味で深いところに刺さったの。その泣いてる自分も不思議で「この初めての感覚は何?!」…で、その感覚を芝居に入れてる自分にもちょっとグッと来て(笑)。「なんて俺は幸せなんだろう!」っていう瞬間でした。植本潤さんに「ありがとう!」って思いました…なんてすばらしい振りなんだっていうのもあるし「今までに味わったことのない感覚にどうもありがとう」なんだよね。
-そんな感動が。
圭吾:あれはびっくりした。一番の刺激だったね。「中途半端なところでいなくなる」ってすごいな、って思うんだよ(笑)。俺もぜひやってみたいと思う。どこかで。
-彦六さんが何か一言、返していた頃もありましたね。
圭吾:はじめの頃は答えてたけど、この「答えられない」っていうのがすごいなって思って(笑)。その方がいいやと思って、呆然としてました。…(朝倉)あきちゃんががんばって。「さて彦六さん!」って仕切り直してくれた。
-トクホの回はおせつさんも、堪えきれない風でしたが…。
圭吾:俺が泣いてたんだもん(笑)。
-なるほど。あの場面では新どんを舞台袖まで見送っているのでしょうか。
圭吾:見送ってるよ。最後の別れだなーと思いながら。「さあ、新どん、これを持って行きなさい」って。「だっておいら…おいら、こういうとき何て言ったらいいかわかんないよ」ってホントに泣いてる感じだから「そうだよな!ホント申し訳ない!」っていう感情でいるわけです。そこへ「おいら47歳なんだ」ホントはなんとかなんだー!、って言われて、去られた時にもう、いとおしくて!(笑)
-さまざまな発見や体験があったのですね。
圭吾:そうだね。たぶん「江戸の青空」だったから、そういう刺激的なことが多かったんだろうと思う。本当に、いいチームだったと思います。プロフェッショナルな人たちの中に入れて、自分もすごく勉強になって。そういうお芝居の深さとかを、ミュージカルでも使いたいなと。音楽とか、踊りとかに流されてしまわないで、内容を深く持ちたいな、ってストレートに出る度に思う。今回、G2さんとやらせていただいて、すごく丁寧に丁寧に作っていって、「ああ、そこまで掘り下げるか…」と思った。そこでやっと見えてくるものってあるんだよね。みんなで掘り下げていくことで、個人個人が掘り下げるラインを、超えていくんだよ。そこがすばらしい。ミュージカルもそういう風に作って行けたらなって思う。個人プレーでなく。そういうことができるように心がけて行きたいなって思います。
-ストレートの良さはそんなところにもあるんですね。
圭吾:そうだね。…歌も踊りもないから、ちょっと物足りないけどね(笑)。役者としての勉強にはすごくなる。早く「暗い日曜日」やりたいなあ。
-1月に行われたファンクラブイベント「集まってみちゃう?」について。タイトルはどのように?
圭吾:「なんにする?」って話になって…「そうだなあ、じゃあ、みんなで集まろうよ」「じゃあ『集まってみちゃう?』でいいじゃない」(笑)。「じゃ、やっちゃおか!」みたいな勢いがあって、いいじゃないですか。
-ロビーの入り口が花のアーチになっていましたが、あれもご自分のアイデアで?
圭吾:そうだね。「絶対、アーチあったらいいよね!」って、お花屋さんに飾り付けてもらって。「ここから夢の世界!」みたいな、学園祭的なものにしたかったの。もっとチープなものにしようと思ったんだけど、なかなかそれも難しく。「買った方が早いか」って(アーチの骨組を)自分で買いました。
-参加型もたくさんありましたね。
圭吾:やっぱり参加型って、当たって出てくる人って、面白かったりするよね(笑)。なんでだろうね。やってくれるんだよね…面白いね…(笑)。
-自分が着替える間「役作りしていて下さい」と舞台に置き去りにするのは可哀想でしたね。
圭吾:よかったでしょ?猊下の放置プレイ(笑)。
-朗読やお芝居をされた方も、上手でしたね。
圭吾:うまかったね。すごいなあと思っちゃうよ。俺だったら絶対できない、自分が客席にいたら嫌だもん。ホントやだ、そんなイベント(笑)。
-笹木重人さんも大活躍でしたね。
圭吾:「いつもいろいろ助けてくれてありがとうございます。」という気持ちです。そして一緒に楽しんでくれて。参加型の部分も、俺は一人でやるからいいよって言ったんだけど「いいよ、やるよ」って協力してくれて。ほんとに感謝してます。
-「僕の大親友」と紹介されていましたね。
圭吾:「貴重ーな友達の一人」だから(笑)。
-オリジナル曲も久しぶりに歌われましたが、再発見はありましたか?
圭吾:「出会えた」は名曲だなと(笑)。すごい前に作った曲なのに、なんかこう「すたれない」感じ。今、歌っても「古くさいな」とか、俺はあんまり感じない。
-素敵なイベントでしたね。
圭吾:楽しみました。またぜひ、やりましょう。一緒に楽しむ会だからね!
-「ジキル&ハイド」について。今回は「友達」という役どころを強く追求されたのでは。
圭吾:そうだね。やっぱり、ヘンリーとの友人関係がしっかりしてないと、どうにも話が終われないじゃないですか。だからそこはやっぱり一番大事だと思って、こだわってました。「親友」に見えるように。
-「どん底」から戻って、帰る間際にジョンが振り返ってヘンリーの方を見る仕草など、象徴的ですね。
圭吾:うん。脚本には別に「振り返る」とは、書いてないけど、僕が勝手にやってました。
-「どうしたんだ、何か問題があるのか」の場面もどんどん深まって行きましたね。
圭吾:一回、(ヘンリーの)手を取っちゃって。ちょっとこれってやりすぎかな、と思って(笑)石丸さんに「手を取っちゃったんですけど、ちょっと、行き過ぎですかね」って聞いたら「いや、いいんじゃない?」て言ってくれたから、とりつづけた(笑)。
…ちなみに「ジキルとハイド」の好きな台詞は「なんてことだよヘンリー!」っていうところでした。本当は「何やってんだよヘンリー!」って言いたい(笑)。その「何やってんだよ!」っていうニュアンスを、「なんてことだよ」に懸命に入れてやってました。…でも、もっとたっぷりやりたいのに、曲がせまっててさ。ばんばんばんばん進んで行くし、テンポいいしさあ…。まあ、あの余裕のなさが、切迫感があっていいんだろう。どんどん音楽に追いつめられて行くからね。
-ヘンリーとは「一緒に解決してきた」という台詞がありますが、過去にどんなトラブルがあったのでしょうか。
圭吾:俺が考えてるのは、あいつが医者になってぺーぺーの頃、医療ミスがあって。それの弁護を頼まれたり、いろいろなことがあった。勝手なことするから大変なの(笑)。「ダメだ」ってことするから。でも変に馬が合う。
-エマとも仲がいいですね。
圭吾:仲いいね。よく呼ばれるから。あの家に。
-花火を企画したのもジョンなんでしょうか?
圭吾:そう。ダンヴァース卿にいろいろ頼まれた。「幹事やって?」「ああ、やりますやります」って(笑)。
-「嘘の仮面」の人物はジョンとは別人とも考えたのですが…。
圭吾:あれはジョンだよ。それぞれのキャラクターも全部そう。登場人物全部が、その役で行っていながらも、それぞれに裏表を持ってるだろう、っていう曲です。ルーシーもエマもね。
-同じメロディに違う歌詞が乗るナンバーが、難しそうでした。
圭吾:「事件、事件」が覚えられない。たいへん苦労しました。
-全員が忙しい場面ですね。
圭吾:たいへんだよ、みんな、殺されてから(別の役に早替わりして)速攻で出てくる。
-階段の上でストライドと何を話しているんですか?
圭吾:「聞いたかい?殺人鬼がまた出たらしいよ。」…で「急ぐんで」って言われてすかされる(笑)。それがいつの間にか、二人でバッて見合って、お互いに「急ぐんで」って別れるようになった(笑)。
-警官とのやりとりは…。
圭吾:「どうなってるの?」って聞いて「すみません!」(笑)。ほら呼んでるよ…。そこへダンヴァース卿が来て。「我々が疑われてます」「本当か!」そんな話をしていました。
-銃が重要な小道具でししたが、神経を使うところだったのでは?
圭吾:そうだね、拳銃の音が鳴らないときは焦る。いちおう予備の弾も入ってるんだけど、時々、鳴らないときがあるの。鳴っても、一発足りなかったり、使い切っちゃったり。いちばんいいところで鳴らないのは、いちばん焦る。頼むから「頼む俺を自由にしてくれ」って言われた、その後の一発は鳴ってくれ!と。パン、パンパン。理想はパァンと、向かってきてパンパーンがいいんです。でも、三発撃ちたいけど二発しか鳴らないということは何度かあったね。 …あれで鳴らなかったら口で「パン!」て言うしかない(苦笑)。
-二幕後半はずっと銃を携帯していますね。
圭吾:途中で使う銃と、最後に使う銃は別なんですよ。楽屋で最後に着替えてるときに、弾が入ってる銃に入れ替える。いつも銃を一回はずして、またつけて、上着を着て出ていくんだけど。そこで、楽屋に忘れないように忘れないようにっていつも思ってました。怖いよ、銃がなかったら。
-同じ銃を使わないのは何故でしょうか。
圭吾:もしかしたら(前の場面で)暴発するかも知れないから。稽古場でよくやってたんだけど、(実験室で)ハイドからジキルになるのを見て、拳銃をしまって「ヘンリーに神の助けを!」ってダーッて去っていくときに、拳銃がよくこぼれ落ちてガガガガーンって。だから(銃をしまう時に)ホルスターにホックをかけなくちゃいけないんだけど…「ちゃんとホックをする」っていうのがまた難しいんだよ(笑)。ヘンリーの話を聞きながら、「なにやってんだよヘンリー!」って言いながら、手では懸命に(胸のホルスターの)ホックを探してるわけ。
-そこで手元は見たくないんですね。
圭吾:見たくないね。「どこだ…どこだ…」ぱちっ!…大変なんだよ。しまう意味もわからない(笑)。でも銃をしまわないと、今度は手紙をもらったりするし。ヘンリーにも「大丈夫か!」ってやりたいのに…。
-いちいち両手がふさがっていますね。
圭吾:いろいろ大変でした。「…前の人はどうやってやったんだよ!」って(笑)。
-今回、特に苦労したところは。
圭吾:だから拳銃をしまうところ(笑)。「なんてことだよヘンリー!」って言いながら拳銃をしまうところ。そしてパシリが多いところ(笑)。やたらと手紙を渡されて、これを誰に届けろ、あれをもってこい…。
-ヘンリーから受け取った手紙とルーシーに渡す手紙は…
圭吾:同じです。手紙をもらって下手にはけて、その後、上手まで一気に走るんです。 上手で(ルーシーの部屋のセットに)乗り込んで出てくるから。でもその「ぜーはー」感が、またいい風に作用するなって思って。わざとゼーゼーするように大回りして、全力で走ってました。
-「どん底」まで走って来た感じを出したわけですね。
圭吾:そうそう。ルーシーの家までね。けっこう苦しいんですよ。
-結婚式の場面はジョンの語りで始まりますが、タイミングは時系列の通りとも、後日ともとれますね。
圭吾:ああ。でも…結婚式の、最後の結果までは知らないんじゃないかな。
-結婚式の話に移る前の、表情の切り替わりが印象的でした。
圭吾:プレッシャーですよ、あそこ。「対決」でジキルとハイドが「やめろー!」って盛り上がってるわけじゃないですか。あれを袖から見てて、「おおー!いいねーいいねー!」って思うほど、次に俺がこけるわけにいかない(笑)。いい経験でした。
-ジョンは結婚式では、ヘンリーが変貌してしまう可能性も考えていたのでしょうか。
圭吾:そうだろうね。
-ヘンリーを介抱しながらハッとする一瞬がありますね。
圭吾:「うそぉ…」って(笑)。「うそぉ…いやいやいやいやいや…!…やっぱりなあぁー!」って。いちばん貧乏くじひいて…。
-ヘンリーとジョンの関係からすると、最後にはジョンがけりをつけるしかなかったのかな、と思いました。
圭吾:そういう風に、理解していただけてればいいね。撃ってしまうことにうなずける、って思ってもらえればいいなって思う。「え、なんであの人撃っちゃうの」みたいなことに終わらないように、そう思ってやっていました。
-今回の公演で特に良かったと思うことはなんでしょうか。
圭吾:「江戸の青空」で持ち帰ったものが、すごく「ジキルとハイド」に生かせたなと思いました。その中で石丸さんと、「ああしようこうしよう」って理屈で考えるんじゃなく、稽古場で出たとこ勝負をしながら芝居を作っていけて、それが面白かった。 そういうキャッチボールができてよかったなと思いました。そして全員で、丁寧に作っていくことができたと思います。ぜひまた、ご一緒させていただきたいです。