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2013年6月の「天翔ける風に」、7月の「ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL」についてのインタビューです。
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■「天翔ける風に」
-「天翔ける風に」溜水という役に最初に出会って感じたことは?
圭吾:いろいろな人たちがいろいろな思想の元に生きている舞台の中で、正直に生きてる人だなって思いました。思想の違いで、人からは悪者に見られるだろうと思うけど、本人は別に、悪役だと思ってない。
-自分に疑いのない人ですよね。
圭吾:うん。けっこう人のために尽くしてるんだけどね(笑)。
-奥の深いキャラクターで、かなり試行錯誤があったのでは。
圭吾:あったねえ。最後の智さんとのところとか、何度も稽古した。行き当たりばったりじゃどうにもできない、しっかり中身を埋めていかないといけない。稽古が終わるギリギリまで、チャレンジが続きました。 本当に難しかったけど、役に向けての情熱みたいなものがあったので、すごく愛せましたよ、役を。
-顔の傷の理由を教えて下さい。
圭吾:あれは前妻にやられたの。で、処置が良くなかったんだね。あんなにお金持ってるのにねー…。本当は、謝先生が「綺麗過ぎる」っていうから。傷をつけることで、そこに引け目とか負い目みたいなものが、見えたらいいんじゃない?って。…まあ別に、負い目とかはなかったんだけど(笑)。
-大変リアルに見えましたが、貼りつけるものですか?
圭吾:両面テープで傷を貼って。あとは自分でメイクを加える。 なかなか上手に描けたよね。やるたびに「…うまいな!」って(笑)。でも、ちょっと離れるとあんまりよく見えないんだよ。こんなにグラデーション入れていろいろやってるのに。俺ときっしー(岸祐二さん)は二人部屋で、二人とも傷メイクとか老けメイクで汚くしてるから「ゾンビ部屋」って言われてた。先生が入ってくるといつも「うわ、ゾンビ部屋!」
-序盤の英とおみつ婆さんの場面、後ろで「ええじゃないか」を踊っていたメンバーは?
圭吾:亙さんと福永さんと、照井君と大輔君と、かなみさんときっしーと、俺。
-既に溜水のメイクだったのでしょうか?
圭吾:うん。ほっかむりして、傘で見えないようにしてました。
-おみつが殺される場面でも、後ろでパネルを回転させながら「ええじゃないか」を踊る。
圭吾:うん。照井君のアイデアで、殺されるおみつさんと同じポーズしたらどうですか?っていう事になって。最初きっしーと三人だったんだけど、せっかくパッタンパッタンがあるんだから「これを使おう」って俺が言ったら「もっと多いほうがいいな」ってことで六人になりました。稽古場の二階は(回転扉が)作れなかったから、自分でステンダーを持って回して、練習してた。
-影歌も含めると、かなり忙しいですね。
圭吾:そうでもないよ。志士たちに比べたら!
-登場の場面、才谷の前で踊り出すところはインパクトがありましたね。
圭吾:あの衣装で踊れるのか?って思ったんだけど。本当は(草履売りの天秤を振り回すところで)袴の下とかも通したかった。上に回した後、跳んでる下でも回す予定だったんだけど、衣装を着てみたら、やっぱり袴が危なすぎたので、やめました。
-龍馬を誘ったり勤皇の人たちをたきつけたり、暗躍していますね。
圭吾:時代が動けば楽しいじゃん?プロデューサーみたいなものですよ。 いろいろ「手づる」で情報収集して、忙しいんですよ。カギ持ちだからね!
-大抵、カギかお金を持っていますね。聞太には、どんなに近くても投げて渡すという。
圭吾:そうそう(笑)。
-聞太さんに敬語で通すのも、印象的でした。
圭吾:そうだね。別に、人間を見下したりしてるわけじゃない。 そういう人間ではない風に作りたかったから、全部敬語に直したの。志士の人たちに対してもそうだし、そういう「おい、なんかやれよ」っていう雰囲気じゃない人間でありたいなと。
-結納の場面で、鯛を持って現れるのは…。
圭吾:「鯛、持って現れたいです」って言って。とりあえず自分で魚、作って持ってったら採用になった(笑)。結納の席だから、手ぶらで行っちゃダメでしょう。鯛のひとつぐらい持って行きたい、それぐらい俺は結納を楽しみにしてるんですよ!…っていうことを表したかった。…ただ、本番あけてみたら、こんなに笑いが起きちゃうか!と思って。鯛に気を取られて、本質が見えなくなったら困る。だから鯛を右手に持つようにして、聞太さんと会ってからは、隠れるようにしました。
-清さんの「尾頭付きのいわし」の台詞にうまく重なりましたね。
圭吾:そうそう。尾頭付きの鯛になった。
-智さんと関わる場面は少ないですね。
圭吾:うん、だから難しい。結納の場面と、最後しかないからね。だから、あの結納のところの、智さんに対する執着心っていうのを大事にしました。ここで「これほど好きなんだ」っていうところをやっておかないと、最後のあのシーンには繋がりづらいだろうと。
-「お嫁さんを狂い死にに追いやった」のは、実際に嘘なんでしょうか。
圭吾:ええ嘘ですよ。だってあれは女の嫉妬心ですから。「私が無類の女好きだから、嫉妬心で死んじゃったんですよ。」
-全部、彼としては本当のことを言ってるんですね。
圭吾:そうそう。あの「女は多かれ少なかれ…」の台詞も全部、本音です。
-智さんとはどういう出会いだったんでしょうか?
圭吾:もっと前から知ってたんだよね。彼女たちが江戸に出てくる前。だって英さんの妹だからね。
智さんに何を感じたかというと「この人は、ちゃんと向かい合ってくれる人だ」ということだよね。 この人は、お金の力でポンポンついてきてしまう人じゃない。 自分を折らないっていうか、きっと共に高めあってくれる、そして自分を戒めてくれる人だと思ってる。 きっと前妻たちは、そこへはたどり着けなかった。そこに行く前に、自分で死んじゃったりしたんだよ。
-ピストルの場面での智さんへの思いは、そういうところから来ているんですね。
圭吾:「ちゃんと向かい合ってくれる」っていうことを求めている。ピストルが出た、 うん、いいよ、僕も向かい合ってるからって。この向かい合ってくれる高揚感の中だったら俺は死んでもいい、あなたに殺されるんなら死んでもいい。本当に撃ったよ…なんていう、エクスタシー。…難しいね、言葉で言うのは(笑)。 「もう一回撃ちなさい待ってますから」っていうのはホントに真実だよね。
-お芝居上、英さんとのやりとりはありませんね。
圭吾:俺から見てることはあるんですよ。二幕の英を。
-聞太が捕まるタイミングで、歌う英を後ろから見つめているところですね。
圭吾:あれが、なんかこう「出会い」のシーンみたいに見えたらいいなと思って。「こんな出会いでした」「こんな風に見てました」的な。
-他の人に向ける目つきとは、全く違っていましたね。
圭吾:ちょっと嬉しそうでしょ?そこが(「同じ種類の人間なんです」に)かぶればいいなと思って。 …そんな思いがあると、あのシャンソン(「踏み越える」)も、行けるわけですよ。「英さんと私はこういう人間なんだ」っていう、楽しい時間を過ごせるわけです。
-二人の会話があっても面白かったかも知れませんね。
圭吾:うん。でも、やりとりがないから良かったっていうのもあるかも知れないね。かたや見てる、かたや歌ってるとか、歌ってる後ろで歩くとかさ。そういう関係性のほうが面白いのかなって。
-「貴方が殺したんです」の場面でも、後ろに佇んでいますね。
圭吾:先生が、あれは英を見ないほうがいいねって。稽古の時は、歩いてる途中で、英の方を見たりしてたんだけど。それは、見ないでまっすぐ歩いて行ったほうがいいっていうことで、ああなりました。
-他の人の台詞で特に好きなのは?
圭吾:やっぱり一番、肝になるのは「三条英、私が、殺しました」で、もう「…!」だね。いつも袖で聞いてるんだけど、あそこでグッと来る。「ありがと!」と思う。
-自分の台詞では、どうでしょうか。
圭吾:好きっていうより、誇らしい台詞は、いちばん最後のとこだね。「アメリカに行くと言っていたと答えなさい。生まれ変わって、新しい世界に行くと」って、誇らしく散りたかった。
-あらためて、「天翔ける風に」のご感想を。
圭吾:今までとはまた違うキャラクターができてよかったです。この作品に出られてよかった。本当に面白かったです。
■ONE-HEART Musical Festival!
-「ONE-HEART」盛り上がりましたね。
圭吾:まず稽古場で、これは楽しいだろうな!と思いました。いろんな人たちが集まって来て、面白いなーと思って。 ミュージカルの人たちがいっぱい。で、騒いだー!って感じでした。 …なんだろう…ほとんど「ヴァンパイア」やっちゃった感じだった(笑)。
-ヘルベルトだけで考えれば、ほぼ一通りの出番をカバーしたことになりますね。
圭吾:そうそう(笑)。なーんか、「ヴァンパイア」やった感じがするんだよ。
-選曲はどのように?
圭吾:いくつか自分で候補を出して、あとは「こんなのどうですか」って選曲してもらった曲をやりました。
-セットリストが毎回変わって、大変だったのでは?
圭吾:そうでもないです。大変だったのはトークだね。他の人の早替えがあるから、今日はこの曲では残ってなきゃいけないとか、そういう時が大変でした。
-ハプニングはありましたか?
圭吾:千秋楽、「ちょっぴり」の歌詞を忘れちゃって。400回以上やってるのに、びっくりしました(笑)。 ノリノリでやってたら「あれ?(「チョッピリオツムに」の歌い方が)速いほうだっけ遅いほうだっけ?どっちだっけ!…でも、そろそろブルータス(「ブルータスよお前もか!」)の時間だからブルータスやればなんとかなる!」と思って。
-シカネーダーの客席降りでは、通路ぎわの人の落とし物を拾ったり、置いてあった帽子を取ってかぶせたりしていましたね。
圭吾:うん。物を拾ったおじさんを、(二幕のホットスタッフで)舞台に上げちゃった…。
-不思議と、いい絵でしたね。いつまで続けるかと思いましたが…。
圭吾:横で「そろそろいいんじゃないですか?」「帰してください…」って言ってた。可哀想に。
-ホットスタッフの白アフロの人は、可愛いドレスでしたね。
圭吾:そうだね。ちょっと、(ウェディング・シンガーのフィナーレの)ホリーのドレスに似てるでしょ?ホリーと二人で立ってみたかった。
-曲といいトークといい、突き抜けた時間でしたね。
圭吾:トーク中に、知寿さんと藤岡君が(次の曲の準備で)いたときがあって。 知寿さんと「夢から醒めた夢」ごっこしようかと思ったけどやめといた。きっと(手を伸ばせば)反応してくれたはず…。
-レイザー真司HGさんとのトークも不思議な雰囲気でしたね。
圭吾:がんばりました(笑)。俺の心積もりでは「人見知りですよね」っていう話をして、「そうですね」って返ってきたら「僕もそうですよ」って返そうとしてたんだけど。でも実際は「そんなことないですよ」って(笑)。「でもあなたには開けませんよ…」って言うから「オープンハート!」…たまたま出たんだよ。
-一瞬でひざまずいて、大きく手を広げたあれですね。
圭吾:樹里さんとのトークも面白かった。「サタデーナイト」が一幕だった日か。「ちょっぴり」も、出番がサタデーの次だったから、もう「出番が遅い」って話は使えないなあと思って「ママどこなの」を。
-「寒いんだー!」ではむしろ、客席の寒さを期待されたのでは?
圭吾:そう。そういう意味での「寒いんだ!」だった。…でも結構あったかかった(笑)。この人何を歌いだしたんだろうっていう空気がたまらない(笑)。
-樹里さんバージョンのサタデーナイトでの共演、よかったですね。
圭吾:そうだね。面白かった。最後、水かけるのもやれて楽しかった。いえーい。俺の涙だからね!サミーの涙を浴びやがれ、って。
-あの象さんのじょうろは…
圭吾:「じょうろ用意して」ってお願いしました。
-「星から降る金」に続くときは「昔むかしあるところに…」と男爵夫人の台詞に重ねる流れでしたね。
圭吾:あの繋がり、よかったよね。
-その他、ご自分のアイデアは?
圭吾:「檜風呂にしてください」「桶、用意して」「最後、鯛は使います」。 前楽の日に、「(千秋楽のキスミーケイトでは鯛は)使わない」って言ってたから。「じゃあ鯛、俺が使います」
-千秋楽のヘルベルトが抱えていましたね。溜水さんの鯛より、かなり生きがよかったですね。
圭吾:(笑)バッタバッタして。違う方法をとったからね。あの鯛も、(溜水の)ちっちゃい鯛と同じつくりだったんですよ。ああいう(震える)感じに風になるように。すごいなー、上手にできてるなー、って思いました。
-「待って。ひのきぶろ」も評判でした。
圭吾:せっかく檜風呂だから(笑)。今回はカーテンがないからね。どうやってインパクトを出すかっていうのにこだわりました。
-久しぶりにああいった衣装を着たお気持ちは。
圭吾:ああ…怖いものはなくなるよ。はずかしさの「は」の字も感じなかった。 あと最後「(アルフレートが)噛まれちゃう」っていうのも、お願いした。「これ、噛まれちゃったほうがいいんじゃないですか?」って。
-佐々木さんのアルフレートも似合っていました。
圭吾:そうだね。アリだな!と思いました。面白かった。
-去り際に「サラはどこへいったんだー」と叫んでいましたね。
圭吾:噛まれたくせに「サラ」とか言いやがって(笑)。あそこで「サラなら次、(ゾロの曲で)出てくるわよ!」って言おうかと思ったんだけど、次の歌に引きずるわけにいかないから、言わないほうがいいなと思ってやめました。
-一番ドキドキした瞬間を挙げるとすると?
圭吾:初日の「愛のデュエット」やるときにむちゃくちゃ緊張した。
-また違った雰囲気の伯爵とサラでしたね。
圭吾:そうだね。噛むときに、噛もうとした後のあの「いけない、理性を持て」がちょっと面白いんですよ。…なんか面白い。「ああいけない…いけない…理性を持て…。」あれを味わえて面白かったです。なるほどねー、父上、こんなことをしてたんだなー…と思いながら。
-他の人のナンバーで、好きだった曲は?
圭吾:「百万のキャンドル」あれ、いい歌だね。この曲いいな!と思った。
-過去に出演された作品のナンバーも多かったですね。
圭吾:「君と腕を」の時に、ちょっと小芝居したかったな。俺がジャン・ミッシェルで出てきて「アルバンなんて、お母さんじゃないや!」みたいな(笑)。そして岡田さんが「待ちなさい!」って追っていって、(ジョルジュの)禅さんが出てきて「アルバン!アルバン!」って呼び戻す…ってやったらちょっと面白いなと(笑)。
-フィナーレも楽しかったですね。
圭吾:うん。フィナーレやってる自分がいちばん生き生きしていた。俺、楽しんでるな!っていう瞬間でした。
-舞台に入ってくるヘルベルトの歩き方が懐かしかったです。
圭吾:ハハ。いいでしょ、あの猫背が。
-「ONE-HEART」全体のご感想を。
圭吾:楽しみました。ホント、いい勉強になった。 いろんな人が、自分が歌ってない曲をやったりしてたじゃない。俺もそれをやってみて人のも聴いてみて、もっと、他の曲も歌ってみたいなと思った。イベントの時とか、けっこう自分の曲を歌うことが多いけど、歌ったことのない曲も出していきたいな、挑戦していきたいなと、思ったことが収穫でした。