"in me"
2013年10月〜11月の「エニシング・ゴーズ」、12月の「CLUB SEVEN 9th Stage!」についてのインタビューです。
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◆目次
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■「エニシング・ゴーズ」
-久々の帝劇、いかがでしたか。
圭吾:広さでの苦労はあんまり感じなかったですね。今回、苦労したのは「板目(いため)」ですよ、板目。船の床が、舞台と平行じゃなく、若干、斜めになってる。舞台自体も少しアーチになってるから、どこが正面なのかわからない。正面に立ってるつもりが斜めに立ってることがあったりするわけですよ。それに慣れるまでが大変!板目のマジックにもう、ほんとに翻弄されました(笑)。
-皆さん、同じ苦労があったのですね。
圭吾:そうだよ。真ん中で踊るのはまだいいけど、いっぱい踊る人たちは、それぞれ「何番に立って」とかあるから。 ちゃんと床に番号も振ってあるんだけど、板目が斜めになってると、板目に対して直角に立ちたくなるわけ。だから番号も、板目じゃなく、舞台に対して直角に番号を置いてもらって。
-感覚が混乱するわけですね。
圭吾:そう。で、酔う!気持ち悪い!ほんとに、船に酔う(笑)…そこが一番大変でした、「エニシング・ゴーズ」。
-今までにないキャラクターでしたが、作っていく上で苦労したところは?
圭吾:あんまり苦労してないんだよね。なんかすごく、想像できたんですよ。「これでいける」って。 演出家も「高貴な、俗世間ではないところにいてほしい」っていう希望だったから。じゃあこれだろう、と。
-それが「ジプシー」で豹変するわけですね。
圭吾:「ジキルとハイド」のようになってほしいって言われました(笑)。「飛んでしまってほしい」と。あの音楽が始まってそれに乗っていくんではなく、僕が先に立って、あの音楽を呼んでほしい!って言われた。「わかりました」で、ああいう風になりました。「ミス・スウィーニィ…」。…自分なりの味が出せたと思います(笑)。
-イヴリンとして、特に心がけたことはありますか?
圭吾:「がんばらない」ようにしていた。吉野圭吾はがんばるけど、でもイヴリンはがんばらない。 ジプシーに変身してからは別だけど、あとはがんばらない、違う次元にいるんですよ。
-イヴリンが螺旋階段を下りてくるところで、サーベルが階段に当たって鳴りますが…。
圭吾:あれは偶然生まれたの。稽古場には螺旋階段はなかったから、舞台稽古で初めて、降りてったら、剣がカンカンカンカンカンって…。で、山田さんと
「…これ、慣らさない方が、いいですか?」
「いやー吉野君…」
「…ですよねー(笑)」
って(笑)。あれは本当に、偶然の産物でした。もう山田さんと「やったね!」って(笑)。「またひとつみーっけ!」っていう感じでした。
-サーベルはいい仕事をしましたね。
圭吾:うん、したした。ホントした。(剣を収めようとして)鞘に入らないっていうあれも…でもあれをやったことで、彼女の話を聞いてなくて、「なんです?」って言いやすくなったんですよ。
-大ナンバーがたくさんありましたが、いかがでしたか。
圭吾:振付を覚えるのが大変だった。だって長いんだもん一曲が!「ジプシー」なんて終わりそうで終わらないからさ。初めて聴いたときは「え?まだ終わらない?…え?!まだ…?!」でも、結果、長くてよかったなと思います。
-振付は、様々な方が担当されていましたね。
圭吾:そうだね、(大澄)賢也さんが振付けたところもあるし。「エニシング・ゴーズ」はトークライブでもお世話になった佐々木先生。「吹け!ガブリエル」と「ジプシー」はKAZUMI-BOY先生の振付で。初めて振付をしていただいて面白かったです。すごく体のきく先生で、大柄な俺には、大変なんだけど(笑)。
ジプシーの前半は、俺のアドリブを元にしてくれたんですよ。振付がまだない頃に稽古で勝手にやってたのをビデオに撮られてて「あ、これいいじゃん」って。で、それに手直ししてもらって…だってそのビデオ見ながら大笑いしてたんだもん先生。「わー!」「いやー(笑)」とかって…そんなに喜んでもらえてよかった!と思った。
-後で使われる「遊んだ相手がジプシー」の振りもアドリブが元になっているんですね。
圭吾:そうそう。「ジプシーがー!」まで画期的な俺のエチュードだから(笑)。「ここで二階上って」とか「二階から飛び降りる?…飛ばねえのかよ!」っていうのも。…いろいろ生かしていただきました。
-「ジプシー」はハードなナンバーでしたね。
圭吾:船の下でいつも「ああ…来た…」と思いながら待ってました。
-登場して「月明かり」を吟じるところも、歌のようでした。
圭吾:そうだよ!詩だから、歌だから。「甲板をー歩くー男ー…男はー寂しい…」
-共演者の方も豪華でしたね。
圭吾:面白かった!知寿さんとまた共演できて嬉しかったです。けっこう、お母さんともいいコンビだったよね(笑)。賢也さんにも仲良くしてもらえたし。
-トークショーで「ほんとにホイットニー」という歌を作曲したという話題がありましたが。
圭吾:そうそう(笑)。甲板でホープと「行きましょ」って船室に入ろうとして、ドア閉められちゃうところ。俺が入ってから、あそこの裏で歌ってる。「ボン・ボヤージュ」があるから、そこで待ってる間に。
-逆さ言葉がたくさん出てきましたが、覚えるのは難しかったのでは?
圭吾:そうだね…でも、普通の台詞を覚えるのとあんまり変わらないんだよね。ちゃんと意味をわかりながら、考えながら言う。
-パーサーとの会話も面白いテンポでしたね。
圭吾:そう。俵君と話して。あそこはお互いに、対決っていうか、裏返し言葉とか流行り言葉の対決だから、「こう来るか、じゃあ俺はこう来る」「こう来るんならじゃあ、ここへ来る」っていう風にしていかないとダメだなって。
-作品全体のご感想、今回良かったと思うところは。
圭吾:自分として良かったのは、面白く役作りができたっていうところですね。あのキャラクターで正解だなと思っていて、それでちゃんと最後までやり通せたことは良かったと思います。 古い作品だし、曲もいいし、「全員参加」のコメディだし…こういうのって「ミュージカル」って感じだよなと。なんか初心に帰った気がした。「あ、ミュージカルって、こういうんだ!」って思いました。そりゃあ細かいところを突けばいろいろあるんだけど、そんなことも忘れてしまうほどバカバカしいというか(笑)、細かいことが気にならないぐらいに、面白い。…っていう作品に出られて良かったし、みんなでそういう作品に作り上げられたことが楽しかった。
-「42nd. Street」などもそうでしたが、シンプルで大掛かりなエンターテイメントでしたね。
圭吾:そうだね。なんか、大きな波だよね。そしてそんな中で、恋愛に発展する役でよかったなと(笑)。帝劇で、ああやってバカができてよかった、またパンツで踊れてよかったです(笑)。ミレディーとのかなわぬ恋もかなったし。
-「三銃士」ロシュフォールの三年越しの恋ですね。
圭吾:そう、よかったです(笑)。 …ホントに、持てる力をすべて出し切った。俺の演劇の素材をいっぱい使った。「稽古場でどれだけ、自分を壊せるか」っていうところも…あとは「どれだけ調子に乗るか」とかね(笑)。
-素敵な作品でした。
圭吾:ええ。ぜひ、またやりたいです。
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■「CLUB SEVEN 9th Stage!」
-10周年となった「CLUB SEVEN」9thのご感想は。
圭吾:体力的には、今までやった中でも一番しんどかったです。なんせ、覚えても覚えても終わらなかった。「時間がない…時間がない…!!」っていう感じ。もう、何度悪夢で起きたことか(笑)。悪夢にうなされて「あぁーっ!」って起きて「俺、けっこう追いつめられてるな」と(笑)。
-稽古期間が3週間というのは、これまでの「CLUB SEVEN」でも最短だそうですね。
圭吾:「もうあと何日しかない!」って。でも、やるしかない。俺、もの覚えが悪いんだから、とにかくやるしかないから、とりあえず、やるだけやってみよう!…って自分に言い聞かせた(笑)。
-特に覚えにくい演目はありましたか?
圭吾:なかなか体に入らなかったのはヴァンパイアとか、チアとかですね。今となっては、なんでそんなに覚えられなかったんだろうって思うんだけど。タップも、あんなに苦労して覚えたのに終わっちゃったよ…テンポが凄くゆっくりだから、かえって難しいんですよ。五十音順も難しかった。きゃりーぱみゅぱみゅが、もう…細かくてさあ(笑)。
-一幕は出ずっぱりでしたが、休める時間はありましたか。
圭吾:ちょっとだけの余裕があるのは、あの教官の前。「鯉の家族」やってる間だけ、休める。 あとは着替えて速攻スタンバイ。
-オープニングから「鯉」までが忙しかったのでは。
圭吾:そう、チアが超、大変(笑)。直人さんの早替えの速いこと!「…え?!」ホントに速い、あのスピード!俺の半分の時間で着替えちゃうから「すげー!」と思ってました。
-タップの衣装や、ミッキーのアンダースコートなどは…。
圭吾:あれもう、最初から履いてます。できるだけ、手数を減らさなきゃ。
-レスキューの上官の衣装の下も、ヴァンパイアなのでしょうか。
圭吾:ズボンだけ履いてました。ヴァンパイアはマントが重くて、跳ぶのが大変だった。
-レスキュー隊員を一人ずつ呼ぶところ、最後の橋本さんの名前はもともと「ボンジュール」だったのでしょうか?
圭吾:もともとは「本田」って書いてありました。「でもこれはやっぱり、最後は名前が違う方がいいだろう」と思って。…いろいろやったけど「ボンジュール」がやっぱり一番良かったな。
-「さん」づけする時と、しない時がありましたね。
圭吾:名前のインパクトでしょう。これは「さん」があったほうがいいな、っていうのは。「陳」より「陳さん」のほうが面白いじゃない。…「キャンディー」じゃないでしょう「キャンディーさん」でしょう(笑)。陳さん、王さん、アマゾン、キャサリン、ブラジル…「カルロス」がとうとう言えなかったなー…。
-稽古場でも違う名前があったのでしょうか?
圭吾:どうだったかなあ。最後の方で「ボンジュール」に変えた気がするんだよ。まあ「本田」って呼んだことはない。
-霊媒師の織田さんですが、カセット止めるのはもともと。
圭吾:そう、台本に書いてある。あそこであんなに受けるとは思わなかったです(笑)。あの尺八は、笹本玲奈ちゃんのコンサートでやった虚無僧のイメージ。…台本には「奇声を発している」って書いてあったんだけど「いや、これです。」尺八が鳴ってるんだからこれで行きたい、って。
-藤堂プロデューサーは、もともとああいうキャラ設定で?
圭吾:「俺は外人でやります」って。 もともと名前は「藤堂俊介」だったんだけど。俺が外人キャラにしたら、本番では「D」が入ってました。
-登場で「母を訪ねて三千里」の替え歌を歌っていましたが…。
圭吾:「おお、シーンとしてるぜ…でも俺はやりきるぞ!」と思って続けてました。ひとちゅかんでくもへー…絶対面白いと思うよ、俺の世代は(笑)。
-特に好きな無茶振りはありましたか?
圭吾:俺は「貧乏な親子」の二人が好きだった。ホント面白い、すっげー似合う…あの二人の話を作って欲しい(笑)。
-「五十音順ヒットメドレー」で、一番時間がないタイミングは?
圭吾:「風立ちぬ」から蚊とか…まあ、どれも時間はないけど。
-宗形コーチのボールトスの掛け声が凄かったですね。
圭吾:ほんっと、あれは吉野ワールドだね。しゅえwらじゃfじゃdkl…あの適当さ加減。「ジプシー」の掛け声につながる、適当な言語。当たって砕けろっていうか…もう、一人エチュードでした(笑)。
-モンキーマジックは鮮やかでしたね。
圭吾:いや、出すだけだから(笑)。モンキーマジックでマジックなんだけどな、そんなに笑いが起きなかったな…。
-自分がやった中で、特に好きなキャラクターや衣裳はありますか。
圭吾:「風立ちぬ」が意外に似てたね(笑)。あの「おわり」もいいでしょ?ジブリっぽくて。「『おわり』って書いたらどうですか?ジブリみたいに」って発案しました。
-全体を通して、楽しかった瞬間はいつでしょうか。
圭吾:いい歌だなって思うのは、「僕にできること」。あの曲いいなあと思いました。よく走った…走って、叫んだ。(頭を)ポンポンした。ホント、俺にできることはこれです、って提示したシーンでした。
-五十音順の終盤で、凄いパワーを発揮していましたね。
圭吾:だって、走りきりたいじゃん。毎回、最後まで、限界まで使うことができてよかったです。 「ここまでやれるんだな」って思えるところまで行けたのが、よかったな。