銀次郎物語 第三章 −明け2歳−


 年が明け、銀次郎も明け2歳になりました。順調にいけば今年デビューするかも知れません。放牧地の変更などがあり、牧場のスタッフが乗る馬にも多少変更がありましたが、銀次郎にはまた私が乗る事になりました。銀次郎とのつき合いがもう少し続きます。
 正月期間中、明け2歳馬の乗り運動は休みになり、3歳以上古馬の運動のみになりました。また連休で銀次郎の調教が崩れないか不安でしたが、いらぬ心配だったようです。運動を再開した銀次郎は今までのことをちゃんと覚えていて、私を喜ばせました。もちろん今回はウラホリも完璧でした。
 私が休日の日、銀次郎には主任が乗ったそうで、次の日主任に
「楽な馬だな。」
 と言われました。楽な馬ということは、騎手の指示にちゃんと応じているということになるので、調教をつけていた私も満足です。ただし、馴致のときを思い出すと、今こんなに素直でいるのが不思議なくらいで怖いです。1つ上の半姉も結構うるさい馬でしたし、いつ変わってくるかも知れないので注意が必要です。
 現在私の牧場では馬の乗り運動を縦列でおこなっています。先頭になる馬は毎日交代で変化をつけます。銀次郎は2番手以降なら問題はないのですが、先頭が苦手です。いわゆる物見というやつで、何かあるとすぐに乱れます。馬の耳を見ていればわかるのですが、前に馬がいる場合は銀次郎の耳は私の方向に向けてます。ですが先頭のときは耳をいろいろな方向に動かして落ち着きがない状態です。そういうときは声をかけたりしながら馬に安心や集中をしてもらいます。
 そんな感じで怪我もなく調教も順調に進み、ついにキャンターをするときが来ました。また1人前の競走馬に1歩近づきます。

−5−

BACK     NEXT

銀次郎物語目次に戻る
この物語はフィクションであり、実際の馬、人物、団体等とはたぶん関係ありません。
写真と本文はたぶん関係ありません。