銀次郎物語 第六章 −初勝利を目指して−
銀次郎、3歳の春。牧場に放牧に出されている間に、3歳クラシックの第1冠、皐月賞がおこなわれました。銀次郎は皐月賞出走はおろか、まだ1勝もしていない。このまま牧場で飼い殺しのような運命になるのでしょうか。
もはや半分あきらめていた私に、朗報が届きました。5月2日、銀次郎が再び美浦トレーニングセンターに向けて旅立ったのです。レースをしなければ何にもならない競走馬ですから、レースに出られるチャンスがもう一度やってきたわけです。銀次郎は放牧されていたといっても、全く休ませているわけではありません。銀次郎はいたって元気で、その牧場の最も多い運動量をこなしている馬の1頭でした。きっと近いうちにターフに姿を見せてくれることでしょう。
しかし、喜んでばかりはいられません。3歳未勝利の銀次郎がレースに出走できるのは、あと半年もないのです。それまでに1勝をあげて上のクラスに行かなければ、銀次郎が出られるレースは無くなってしまうのです。いや、正式には上のクラスのレースに出られるのですが、その様なことをするのは極まれです。ある程度結果が見えてしまっている3歳未勝利馬を管理するよりも、まだ夢も希望もたっぷり詰まっている2歳新馬を管理した方が、厩舎にとっても利は大きいのです。
まだ1度もまともな成績を残せていない銀次郎は、もう崖っぷちに立たされているのです。銀次郎を管理しているS厩舎では、早くも2歳馬が何頭も入厩してきています。もし、銀次郎が次も競馬にならないような走りをしたら、それだけでもう見切りをつけられてしまうかも知れません。そうならないためにも1勝しなければならないのです。
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この物語はフィクションであり、実際の馬、人物、団体等とはたぶん関係ありません。
写真と本文はたぶん関係ありません。