2004年2月はこの4公演

 


THE SHAMPOO HAT presents“エスラボ”
「『みかん』(ザ・コンディショナーバージョン)」

ザ・スズナリ 2/7〜2/15
2/11(水、祝)13:00 観劇。座席 G-7(招待)

作・演出 赤堀雅秋

 舞台は警察官の独身寮の屋上。元旦の夕暮れ。カップ麺が出来上がる3分の間に“だるまさんがころんだ”に興じる千葉(小池竹見)と原(玉置孝匡)。原は、万引きの中学生に偶然出くわし、驚いた少年が逃げた弾みに交通事故を起こし死亡してしまった事に対して、心に深い傷を負っていた。勝手に逃げて勝手に死んだのだが、その少年の瞳に映っていた自分のまぬけな制服姿が頭から離れず、それが原因なのか、制服を着ると全身に痒みが走るという奇病に悩まされていた。洗濯物をこみに屋上に来た浅野(菅原永ニ)は、二人の姿(原は痒みに耐え切れずパンツ一枚になっていた)を見て不信感を抱く。小野(なすび)は、「私は神です。この街を司る神です」と、この町を守っているのは自分だと屋上から叫ぶ。しかし、その声は誰にも届いてはいない。
 岡田(児玉信夫)は、通勤時の電車での痴漢行為が発覚し、警察官を懲戒免職になっていた。未練の残る岡田は、原の制服を無断着用し、寮の前をたまたま通った南(ぼくもとさきこ)と偶然屋上にいた浅野を人質にとり屋上に立て籠もる。原も又、自分は神だと名乗り、自殺する勇気もないくせに、「神は今日でいなくなる」と叫びながら銃を振りかざす。しかし、一向に目的はわからない・・・。岡田が屋上を離れた隙に、浅野は、物干し台につながれている南の手錠を外す。こたつの電気を消したか不安な南は、そのまま屋上から飛び降りてしまう・・・。屋上に戻った岡田は、南がいなくなった事に対して詰め寄る。しかし、浅野は弁明するどころか、突然岡田にキスをする。浅野は同性愛者であった・・・。
 岡田は寮にいる全ての人間を屋上にあげる。屋上から飛び降りた南もこたつの確認をし終え戻ってきた。切迫感があるようでない時間が過ぎていく。岡田の部屋には状況を知らない田舎の母から、大量のみかんが送られていた。追い詰められた岡田は、屋上の縁に立つしかなかった・・・。

 爆発できない内なる狂気、と言うか爆発5秒前で鎮火みたいな不完全燃焼な狂気、う〜ん、うまく表現できないが、そんな狂気が全体を覆っていた。好みから言えば、完全なる狂気の方が好きなのだが、これが現実なのではないかと思う。この屈折した感情って誰もが持っている狂気の一面ではないかと思うのだが、(そんな感情を抱いているのは自分だけ?!)それをみごとに表現していた。最近では感情をすぐ爆発させてしまう人も多いみたいだが、多くの人は、煮え切らないやるせなさを抱えたまま生きているんだと思う。そんな感情をちょっとだけ心から取り出し、実行に移してしまった大人達。完全なる狂気に走らせず、どこか間抜けなままなのは、作者の人間に対する愛情なのだろうか。

 以前見た(4年も前だけど)THE SHAMPOO HATの公演「月が笑う」の感想を読み返すと、そのつまらさに不平不満をぶちまけていた。“不器用に生きる人間たちがすれ違い、あるいは触れ合う姿をセンチメンタルかつシニカルに描いた作品”ってコンセプトは今も変わりがないように思う。その時の自分の好みと合わなかったのか、コンセプトは同じでも描き方が変わったのか、そこいら辺はよくわからないのだが、今回観て心が揺り動かされたのは確かである。今後も注目したい劇団の一つになってしまったのも確かである。

 最後になってしまったが、美術が素晴らしかった事を付け加えたい。コンクリートの割れ具合とかディテールの素晴らしさに感激してしまった。

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THE SHAMPOO HAT presents“エスラボ”
「『みかん』(ザ・シャンプーバージョン)」

ザ・スズナリ 2/7〜2/15
2/11(水、祝)16:30 観劇。座席 I-3(招待)

作・演出 赤堀雅秋

 物語はザ・コンディショナーバージョンと同じ。
 配役は、原:野中孝光、岡田:日比大介、浅野:多門優、小野:児玉貴志、千葉:赤掘雅秋、南:福田暢秀。

 ザ・コンディショナーバージョンの数時間後に続けて観たのもあるが、ちょっと眠くなってしまった。醸し出す空気は好きなのだが、一つにまとまった空気(気心知れた空気っていうか、あうんの呼吸っていうか)が、この作品には合っていなかった。やはり他人という冷たい空気があってこそ、人間関係の駄目さも見えてくる訳で、シャンプー版ではその緊張感、距離感が欠落していたと思う。微妙なんだけどね。シャンプー版はどこまでがあて書きなのかわからないが、ザ・コンディショナーバージョンは役に合った人を選んだ(と思う)という点でも差が出てしまったと思う。

 ただ、微妙じゃなく、はっきり違和感があったのが、南の存在。南は、警察官でない唯一の登場人物で、どちらかというと正常な人間だと思う。まぁ取った行動は異常なんだけど、その行動は状況が追い込んだかもしれないし。シャンプー版を先に観ていたら感じ方が違ったかも知れないが、南は女性の方が断然良いと思う。奇抜な行動も女性となれば“不思議ちゃん”的かわいらしさも出てくるのだが、男性(それも汚い)となると、危なさが際立ってしまう。屋上から飛び降り戻って来てもさほど驚かないし。それにより、関わる警官の異常性が薄れてしまい、全体がただのダメ人間集会で終わりかねない雰囲気でもあった。やっぱり、異常な環境に普通な人(でもないけど)が加わる事により芝居のコントラストがはっきりし、おもしろくなってくるのだと思う。その点がシャンプー版のマイナス要因でもある。

 今後“エスラボ”という企画は、どんな形になっていくのか知らないが、まったく同じ作品を2チームでという形は、あまり意味を持たないと思った。演出が違うとか大きな違いがあるなら別だけど・・・。あっ、それと余談だけど、客入れの音楽が井上陽水だったのだが、バージョン違いで替えてもいいんじゃないかと思った。


“エスラボ”自分が観た公演ベスト
1.『みかん』(ザ・コンディショナーバージョン)
2.『みかん』(ザ・シャンプーバージョン)

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ブラジル「バレンタインデー・キス」

王子小劇場 2/11〜2/16
2/12(木)観劇。座席 自由(最後列中央あたり:招待)

作・演出 ブラジリィー・アン・山田

 2月13日、バレンタインデーの前日。佐藤早紀(佐藤亜紀)は、普段使われていない倉庫に同じ高校に通う近野英輝(近藤英輝)を呼び出した。ちょっと期待の近野だった(近野は佐藤が好きらしい)が、佐藤の口から出た言葉は「近野くんにチョコレートをあげたいって子がいるんだ・・・」。そして、倉庫に積まれたダンボール箱の横から出てきたのは、近野の幼馴染で巨漢の辰巳智子(辰巳智秋)であった。近野と辰巳は二人だけにされたが、気まずい空気が流れるだけ・・・。
 そんな空気を壊す(救う?)ように、倉庫の入り口から口論しているのが聞こえてくる。声の主は、この倉庫をアジトにしていた強盗の一味であった。ウラ金を持っている会長の家へ強盗に入った、ハソガワ(ハセガワアユム)、ヤズモト(安元遊香)、ヒエイダ(日栄洋佑)、クボキド(久保貫太郎)、ブチヤマ(岩渕敏司)であったが、金庫に金はなかった・・・。おまけに、ブチヤマを現場に置き去りにし、金を持ち帰れなかった代わりに、クボキドは、会長の息子を誘拐してしまったのである。誘拐は足がつくので殺してしまおう、いやダメだ、そんな感じの口論が続いていた。しかし間抜けなことに、会長の息子だと思った男は白仲(白坂英晃)で、金庫に眠るウラ金の情報を流した仲間であった・・・。そんなイライラ状態の強盗一味に見つかってしまった近野と辰巳。秘密を知られたからには、みたいな危険な空気が流れたが、ブチヤマから電話が入り一旦冷却。そして、クボキドを残して一味は外へ。
 実はクボキドと辰巳は生き別れ(と言うかクボキドは父親殺しの罪から逃れる為に、死んだことになっていて、逃亡生活を送っていた)の兄妹であった。しかし、この兄には悪い性癖があった・・・。昔みたいに悪い癖を出しそうなところへ、トランクを引きずったブチヤマが現れる。ブチヤマは会長の息子・糸藤(伊藤伸太郎)を誘拐してきたという。
 で、そんなところへ辰巳がいち早く近野にチョコレートを渡すという情報を聞き付けたナナ(内山奈々)、ユリ(石川ユリコ)、マユ(中谷真由美)が乱入したり、ヤズモト達が戻ってきたり、ユリのボーイフレンドの武藤甚平(武藤心平)がメール連絡を受け助けに来たり、教師の古田先生(小田さやか)が来たり、ヒエイダのメールを盗み読み、横取りしようとミツコ(近藤美月)が新しい彼氏のアトウ(佐藤春平)と乱入したり、会長の息子・糸藤の秘密が暴かれたり、実は近野に恋心を抱いていた佐藤が戻ってきたり・・・。なんやかんやで、結局17人が入り乱れてのドタバタ騒ぎ。さてどうなることやら・・・って物語。

 ありがちなバレンタインデー(前日だけど)の風景が、強盗っていう非現実な世界に巻き込まれていく、そんな巻き込まれ型シチュエーションコメディ(なのか?)。
 途中までの展開は目まぐるしくて飽きさせない。が、17人集まってからの拳銃を奪ったものが優位に立つって展開の繰り返しがしつこくて、あきてしまった。拳銃を持った者の物語が奪ったとこから始まり、終わったとこでガシャガシャと拳銃の奪い合いが始まり、物語の語り部のリセット。そんな事の繰り返し。そこが大きく減点。又、殺すぞって言ってるわりには、撃たない。拳銃を恐れない。緊張感がない。だから最後の辰巳の超人的な行動(拳銃の弾を素手で受け止めるとか)も大バカに転換するわりには、おかしさが爆発しない。全体的にもう少し現実的な緊張感があったなら、ラストの非現実さも「愛の力」なのね、ってそのバカっぽさに感動できたかもしれない。まぁそうであっても、拳銃を奪い合うだけの内容のなさにはがっかりではあったんだけど・・・。
 で、辰巳の超人さも、せっかく劇場の高さがあるのだから、ワイヤーアクションなんかしちゃって、人をビュンビュン投げ飛ばすような“バカっぽさ”に拍車をかけても良かったのではなかろうか、と考える。芝居の内容が薄くたって、それを補うくらいの勢い、芝居なんか壊しちゃっていい、ってくらいの破壊力があったなら、自分の好みの作品になったかもしれない。なんて、この劇団の作風も知らないのに、勝手気ままな発言は、失礼極まりないっすね。

 役者では全ての女優がなかなか個性があって良かったと思う。でも悲しいかな、一番良かったのは、水を得た魚のように女子高生役にはまっていた辰巳智秋だったりする。って女優じゃねぇって。

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カムカムミニキーナ「黒船来襲」

スペース・ゼロ 2/18〜2/22
2/21(土)観劇

作・演出 村松武

申し訳ありません。まだ書けていません。

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げんこつ団「大拳骨祭」

下北沢駅前劇場 2/25〜2/29
2/27(金)観劇

作・演出 吉田衣里

申し訳ありません。まだ書けていません。

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