2004年12月はこの1公演

 


THE SHAMPOO HAT「ゴスペルトレイン」

THEATER/TOPS 12/7〜12/12
12/11(土)マチネ観劇。座席 F-3(招待)

作・演出 赤掘雅秋

 医者である金田(赤掘雅秋)は、半年ほど前の雪の日に、妻を自殺で失っていた。金田の勤務先の近くで電車に飛び込んだらしい。病院から目撃していた患者の伊藤(日比大介)の話によると、買い物袋を持ったままだったらしく、金田にはその理由がわからなかった。それから毎日、病院の屋上を訪れ、眼下の蛇のように走る電車を眺めては、理由を考え続けていた。しかし、その屋上は、金田が感傷に浸るにはあまりにも不適切な場所であった。そこに建つ物置小屋で、親の病院を引き継ぐであろう医者の山本(野中孝光)と、医者の道を反れてアルバイト人生を送っている兄のイサオ(多門優)が、患者相手に売春を行っていた。しかし、売春婦は久美(滝沢恵)一人だし、客も三木(児玉貴志)一人だけ。三木は毎日のように屋上に通っては「明日退院します」と口癖のように繰り返す。退院予定はゼロなのに・・・。そんな、売春宿にはうさぎと名乗る人物からの脅迫文が貼られていた。
 ある日、新たな入院患者、宮沢(黒田大輔)が向かいの新病棟から移送されてきた。宮沢は三木に話を聞いて、早速屋上の売春宿へとやって来たのであった。しかし、屋上では「天気が続くのは“妻の呪い”だ」と、雨乞いの儀式を金田と伊藤が始めていた・・・。
 “死の病棟”と噂されるいわく付きの病棟。その屋上で、さまざまな悩みを心に秘めた人達の思いが交差する・・・。

 “屋上”という舞台設定からか、若干『みかん』とかぶる印象を持った。しかし、今回の方が、人間の悲しさ、辛さが重くのしかかってきた。様々な【死】や売春婦が子供を産む【生】、病棟での先のない恋愛、兄弟の葛藤・・・様々な要素が詰まり過ぎた感は否めないが、作者の葛藤が作品に表われ、それが説教じみているわけではなく、困惑のまま舞台に上げられている。そのもがき具合が登場人物達とリンクする。ただ、兄弟の葛藤に関しては、前作『肉屋の息子』にかぶった感があり、残念ではあった。関係性は全然違うけどね。

 今回特に良かったのが金田の描き方。妻を自殺で失った悲しさ。その理由がわからない辛さ。しかし、天気はバカみたいにいい。その心情が苦しいくらいに伝わってきた。ちょっと自分に関わる部分もあり、余計に鋭く心に突き刺さった。浮気とか具体的な“事実”がない“真実”ほど辛いものはない。久美と宮沢が心を許し、じゃれ合う姿を屋上の縁でカエルのマスクを被ったまま金田が見つめる。そのシーンが最高であった。まぁそこでは“真実”を見つけてはいないのだが、そのシーンで終わっても良かったくらいに金田の姿が悲しかった。

 買い物袋にあった“ある物”で妻の心を知るのだが、それが自殺の動機とどう繋がっているのか、その時の妻の心までは描いていない。映画『幻の光』同様に“電車に引き込まれてしまう誘惑”に負けてしまったのか。何か心に引っ掛かる。自分にもそんな弱い所があるからかもしれない。生きて行くのが辛い訳ではない、死を選ぶ理由もない。しかし、ちょっとした孤独感で人は死んでしまうのかもしれない、と感じてしまった。


“THE SHAMPOO HAT”自分が観た公演ベスト
1.肉屋の息子
2.ゴスペルトレイン
3.月が笑う
※THE SHAMPOO HAT presents“エスラボ”は除いてます。

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クロムモリブデン
「ボウリング犬エクレアアイスコーヒー」

王子小劇場 12/29〜1/3
12/29(水)観劇

作・演出 青木秀樹

申し訳ありません。まだ書けていません。

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