Impellitteri
WAR MACHINE JAPAN TOUR 2025







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Chris Impellitteri - guitar
Rob Rock - vocals
James Pulli - bass, vocalsr
Paul Bostaph - drums
Wayne Findlay - keyboads












 クリス・インペリテリが"速弾きギター界隈"で『世界最速の男』と言われて一体、何年が過ぎたのだろうか?


 インペリテリの名前がHM/HRシーンの最前線に登場したのは 1988年発表のアルバム『Stand in Line』であったことは間違いない。
 それはクリスの名前というよりも、ボーカルを担当したのがレインボー、マイケル・シェンカー・グループ、アルカトラスに在籍していたグラハム・ボネットであったという事象が大きかったと思われる。
 リッチー・ブラックモアマイケル・シェンカーイングヴェイ・マルムスティーンスティーヴ・ヴァイという この令和の時代でも一目も二目もおかれているギターヒーロー達と渡り合ってきた名ボーカリストが組むギタリストは誰なのか?
 注目されない方がおかしいくらいである。
 アルバム『Stand in Line』から同名曲がシングルとしていち早く紹介されるやいなや、グラハム・ボネットはまたもや新たなギターヒーローを発掘したと確信したのだった。
 特にこの「Stand in Line」はレインボーにも、アルカトラスにも匹敵するようなキャッチーでありながらHM/HRのツボを押さえたカッコいい楽曲であった。
 そして鬼のようにフルピッキングで弾きまくるクリス・インペリテリのギターソロ。
 注目をせざる負えないという感じであった。
 クリス・インペリテリは イングヴェイ・マルムスティーンから始まった当時のネオクラシカル・ブームの中で登場した一人であったが、ある意味「最終兵器」とも称されていたと記憶している。
 (ちなみにアルバム『Stand in Line』のドラムを担当したのは 後にMR.BIGを結成する創立メンバー 故パット・トーピーであった。当時は我々にとっては無名な存在であったが。)
 ただそのプレイスタイルゆえかイングヴェイのコピーだの、パクリだのと言われたりもしたが その後の音楽性や弾き方などを鑑みると それは大きな間違いであった事に気づくことになっていく。
 だが、この当時はまだその偏見が付き纏っていたのは事実であった。


 インペリテリが次にアルバムをリリースしたのが1992年。

 それは『Grin & Bear It』というタイトルであった。
 従来のメタルブームが去り「クリスおまえもか」と時代に日和った音楽性の楽曲を詰め込んだこのアルバムには旧来のファンから反発を食らってしまう。
 それを反省してか翌年に発表されたミニアルバム『Victim of the System』は再び、王道のHM/HRスタイルへと回帰する。
 1994年、満を持してフルレンス・アルバム『Answer To The Master』をリリース。
 私がインペリテリに『Stand in Line』以来、再注目したのがこのアルバムからであった。
 アルバム『Answer To The Master』「THE FUTURE IS BLACK」〜「THE KING IS RISING」の全9曲を収録。
 全曲ほぼ捨て曲無しのこのアルバムを私は一聴して大好きになった。
 今もその気持に変わりはない。
 このアルバムをリリースをしたこの年、クリス・インペリテリは「YOUNG GUITAR」誌の主催で ギタークリニックを銀座の山野楽器で行った。
 開催された時期は 確か9月か10月ぐらいだったと思うが、私はこのアルバムが好きという気持ちが高まりすぎて ギタークリニックの参加を決意し応募、見事当選し上京した。
 前夜は友人宅に泊まらせて貰い、整理番号を朝早くから並んだお陰で最前列を確保することが出来た。
 その結果、クリス・インペリテリの超絶プレイをかぶりつきで鑑賞することが叶ったのである。
 またクリスにはボーカルのロブ・ロックも帯同していた為、当日はギター演奏だけではなくロブも当然ながら歌で参加し、クリニック会場は一瞬にしてライブハウスへと変化したのだった。
 嬉しい誤算とはこういうことを言うのだろう。
 当日の様子はもちろん「YOUNG GUITAR」に載ったが、其処には最前列でクリスを見つめる自分の姿があった。

 流石に当時の記憶を詳細には覚えてはいないが、我々が会場へ入場を待っている階段で クリスの弾くギターの音が漏れ聞こえてきた事だけははっきりと覚えている。
 クリスにとってそれは 毎日の練習の一環だったのかもしれないが、ギタークリニックに向けて真摯に必死に練習している姿は結構、驚いたのだった。
 その姿を思い出すような出来事が 今回のライヴでもあったのだが、それは また後ほど(笑)。

 インペリテリはその後、2002年に再びグラハム・ボネットが合流してアルバム『System X』をリリースしたり、グラハムが抜けるとロブ・ロックが再加入するなどして順調にアルバムをリリースし続けた。
 またその間には8回も来日公演を行うぐらいであったため、日本での人気は安定的であったと言っていいだろう(2011年−アニメタルUSAに参加してラウドパーク11に出演するなんてこともあった)。
 80年代にデビューしたギターヒーロー達がその後、伸び悩む者も多い中 アルバムリリースと来日公演を30年以上に渡って続けてこられたのは稀有なことである。



 今回の来日公演は東名阪で行われた。

 ツアーは昨年末にリリースされたばかりの新作『WAR MACHINE』を記念してのものである。
 私はインペリテリをずっと追いかけてきたダイハードなファンではなかったが、ここ数作はネットを通して聞いてはいた。
 特にニューアルバム『WAR MACHINE』は先行シングルとして「Out Of My Mind (Heavy Metal)」「War Machine」を聞くと『Answer To The Master』の頃を思い出し、次、来日公演が有ったら行ってみようと心に決めたのだった。


 果たして来日公演の予定も発表され、其処に名古屋公演もあったことからすぐに参加を決めた。
 先日、森高千里さんのライヴ(『レッツ・ゴォーゴォー!ツアー』追加公演)のチケット抽選に落選した事もあって 不安が頭をもたげたがチケットは無事に当選した。
 しかも、整理番号は結構、早い番号だった為 「あまり人は入っていないのかな?」と思ったりもしたが、その後 東京公演の発券状況を聞くと予想を超える数がXで報告されていた為 そんな不安は全くの杞憂であった。


 名古屋公演の会場は 名古屋パルコ東館 8階にあるクラブクアトロである。
 こちらでは これまで NightRangerFirehouseJoe Satrianiポール・ギルバートなど多くのアーティストを見てきた。
 ポール・ギルバートはここがお気に入りだったのか名古屋公演は ほぼ此処で行ってきたという感じであった(今や名古屋公演さえ やらなくなってしまったが)。
 とはいえ、自分がこの会場を訪れるのはチーム・負けん気の7大都市ツアー(2015年3月15日)以来、10年ぶりなのである。
 さらに遡れば その前はポール・ギルバートのライヴ(2009年2月3日)なのだから ロックなライヴがクアトロでどんな感じで行われるのかほとんど忘れかかっていた。

 当日は整理番号もあるため、開演時間の18:00の20分ぐらい前に到着すれば良いという考えで名古屋パルコに向かった。
 名古屋パルコ東館は2021年に島村楽器が移転したり、大幅に店舗が入れ替わったりしてから個人的には足が遠のいていた。
 その為、事前にいこうと思っていたトイレさえ何処にあるかさえ判らなくなってしまっていた。
 だがクアトロのある8階につながる階段の様子は何も変わっていなかった。
 整理番号を提示した行列が促され、それに倣って列が階下までズラッと形成されていた。
 私は80番台の整理番号の列を探し階下から階段を上っていった。
 大体、この辺りだろうかと見当を付け列に加わると、既に並んでいる二人の方から番号を尋ねられた。

 「8※です」と答えると「自分は8※です」「自分は8※なので この間です」と丁寧に教えていただいた。
 それに従い、私は其処に滑り込んだ。  それからその二人の方から「インペリテリのライヴは初めてですか?」と訊かれ「31年ぶりなんです」と答えて驚かれたりもしたが、ライヴで見知らぬ方とライヴ前に盛り上がるというのも 物凄く久しぶりで新鮮であった。
 このような経験は決して 配信などでは絶対得られないものなので いかに"現場"が大事なのか痛感したのである。
 興味深いお二人の話を聞いていると開場時間まではあっという間であった。
 整理番号が順々に呼ばれ、それに伴って列が動いていった。
 クアトロの入り口でチケットをスタッフに見せ ドリンク代(\600)を支払い、場内に入っていった。
 あとは場内で何処のポジションを確保できるか.....であった。
 会場には ドリンクを置けてもたれ掛かれるテーブル席のような処があった筈だが〜と私は其処を狙っていた。
 なにせ手持ちの荷物や 暑さで脱いだ上着を置いておく場所が必要であったのだ。
 足早に入場をして すかさずその場所を探した。
 バーカウンターに近い其処はまだ全てが埋まっている訳ではなかった為、これ幸いとそのポジションを確保した。
 ステージを斜め横から見ることになるが、ステージも比較的近く見やすい場所である。
 私は以前も、ここで何回となくライヴを見ていたのを思い出した。


 一番の懸案事項であった本日のポジションが決まってしまえば、その後は気楽である。
 徐々に人が増えてくるフロアの様子を眺めながら、時折 スマフォを取り出し開演時間になるのを待った。

 最終的にクアトロのフロアには満遍なく人が入り、全体的に満員状態となった。
 あらためてインペリテリの人気の高さを思い知るのだった。

 またライヴ前に会場で流されるSEにもニヤニヤが終始止まらなかった。
 なにせ この会場に来ているであろう中心年齢層=40代〜50代を直撃する楽曲の数々。
 KISS、Def Leppard、MR.BIG、Night Ranger、Bon Jovi、Motley Crue....もう大好物ばかりである。
 こんな気持ちになるのも久々であった。


 SEの最後を飾った〜Van Halenの「Panama」が終わるとステージが暗転。
 ライヴのオープニングを伝えるカール・オルフの「Carmina Burana(カルミナ・ブラーナ)」冒頭の壮大な合唱部分が響き渡り、手拍子が拡がっていった。
 やがてクリス・インペリテリの轟音が手習いの如くちょっとずつ会場に漏れ出ていく。
 そして「Carmina Burana」の終わりが1曲目「Hell on Earth」のリフへと繋がるとクリス・インペリテリがステージ前方に飛び出してきた。
 ニューアルバム『War Machine』に収録されたこの「Hell on Earth」はド直球の王道HMリフが特徴の曲。
 不調が伝えれれていたボーカルのロブ・ロックの調子もそれほど悪くなく まずは一安心だ。
 もちろんクリスのギターソロは絶好調で、これが見たかったんだと気持ちが溢れた。


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 休みなく突入した2曲目は 不評と言われたアルバム『Grin and Bear It』から「Power of Love」
 私はその評判から『Grin and Bear It』は聞かず嫌いであったのだが、この曲は「あれ、いいじゃん」と思ったぐらいの曲であった。
 「Power of Love Never Surrender〜♪」のサビの歌詞も判りやすいし、キャッチーなメロディは耳に残る。
 高難度のギター・ソロは音数が多いのにあっという間に終わってしまう。
 それだけ超高速で弾いているということであった。
 大歓声が木霊する中、ロブ・ロックがMCに立った。

 「Good Evening Nagoya ! See You Again」

 簡単な挨拶とニューアルバムのちょっとした紹介の後、始まった3曲目では よりいっそう大きな歓声が湧き上がった。
 アルバム『Screaming Symphony』収録の大人気曲「Rat Race」であったのだ。
 先ほど階段で出会ったファンの方の話によれば前回のライヴでは演奏されなかったということで待望の披露であったと思われた。
 確かに速くてカッコいい。
 ファンがインペリテリに求めるもの、全てが凝縮しているような曲だ。
 ギター・ソロやリフなどには 何処かDeep Purpleの「Burn」を彷彿とさせる。
 次曲を紹介したロブのMCはすぐギターの轟音でかき消された。
 その曲は『War Machine』収録の「Power Grab」である。
 そのタイトルが表すように曲調は正に パワー・メタル。
 ただこの辺りで、やや高音部がキツそうなロブ・ロックの様子が気に掛かり始めたのも正直な処ではあった。
 ロブ・ロックがステージ・センターを離れ、スポットライトがクリスに当たる。
 ここからは改めて クリス・インペリテリのテクニカル・ギターの独壇場となる。
 ゆったりとしたミディアム・テンポのバッキングの演奏に対して、鬼神のように弾きまくるクリス。
 ハイ・フレットを中心としたラン奏法、スイープピッキング....目にも留まらぬ速さに観客の目は釘付けとなった。
 ドラムのカウントを合図に、クリスは緩やかにアルペジオを奏でる。
 やがて始まる力強いギターリフが次曲「Face The Enemy」のスタートを告げた。
 アルバム『Venom』収録のこの曲も コンパクトだがギター・ソロは非常に激しい。


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 演奏後、クリスが初めてマイクを取った
 観客に対して何度も「How You Guys Doing!」も叫び、観客を盛り上げる。
 そういえば、クリスの声って今まで聞いたことが無かったかもしれない(先述のギタークリニックで会っているのだから声を聞いたことがない筈はないのだが)と思いながら、こんなにも率先して客を盛り上げるんだとちょっと驚いてしまった(マア 自分がバンドリーダーなのだから当然といえば当然なのだが)。
 また「デビューして40周年?」みたいなことも言っていたが、それはちょっと時期尚早かも(笑 デビューEP『Impellitteri』を発表したのは1987年だから)。
 それに最も驚いたのは クリスが何度も冗談を言って観客を笑わせていたこと。
 こんなに陽気な兄ちゃんだったのか!とクリス・インペリテリへの見方が変わった瞬間であった。
 7曲目は「We Own The Night」
 これもアルバム『Venom』からの楽曲である。
 判りやすいメロディ・ラインを持つヘビーメタルは いつ聞いても心地良い。

 次のMCでロブはオジー・オズボーンの名前を出す。
 クリスは続いて ランディ・ローズの名前も出し、好きだと発言。
 シャウトして観客を煽りまくる。
 噂には訊いていたカバー曲のコーナーが始まるようだ。
 そして 聞き慣れたリフがクリスのギターから溢れ出る。
 「Crazy Train」であった。
 往年のHM/HRファンにとっては もはやアンセムと言っていい「Crazy Train」が盛り上がらない訳がない。
 時折、挟まれる高速なオブリガード・フレーズに驚かされるが 基本的にはオリジナルに忠実な演奏を披露した。
 特徴的なギター・ソロもランディ・ローズをリスペクトしているのがよく判る熱演ぶりであった。
 演奏終了後、MCに立ったのが 意外にもベースのJames Pulliである。
 どうやらブラック・サバスの曲をやると言っているが、何をやるのだろう?
 するとクリス・インペリテリが奏で始めたのは Doomでダウナーなメタル。
 曲は代表曲の一つ「Black Sabath」であった。
 Black Sabathと云えば「Iron Man」「Paranoid」「War Pigs」「Children of the Grave」などが思い出されるが、なぜこれを選んだのだろう?
 しかも、ボーカルをとるのはJames Pulliなのである。
 決して歌が得意そうではないジェイムスが、このようにただでさえ難しいメロディラインの曲を唄うのだから抑揚がない前半は聞いていてキツい感じがしてしまった。
 後半はノリが良くなって盛り上がる展開で、クリスの速弾きギターも見せつけて演奏は締まるのだが、この曲を選んだのはやはりブラック・サバスが今年 7月にイギリスで大規模なラスト・コンサートを行うということを鑑みてなのだろうか?
 それならば この選曲も納得出来るのかもしれない。
 曲が終わりクリスという声援が飛ぶ、すると「Good Morning!」と茶目っ気たっぷりに答える。
 場内にはアットホームな雰囲気さえ漂っていた。


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 10曲目はニューアルバム『War Machine』から「Out Of My Mind (Heavy Metal)」
 『War Machine』の中で私が最も聞きたかった曲、いやこの曲を聞いたからライヴ参加を決めたと言っていい。
 ロブがやや音程を下げて歌っている部分は気になったが、この曲で一番注目したのはやはりオフィシャル以上に長めのギター・ソロだ。
 しかし、残念だったのはソロ最大の見せ場〜8フィンガーばりのタッピング・プレイの時だけ後ろを向いてアンプに向かって弾いていたこと。
 「えっ なんで?」と呆然としてしまった。
 イチバン、見たかったのに!なんで?
 今回のライヴで残念だったのは此処だったかもしれない(名古屋公演だけか?)

 次のMCも バンドリーダーらしくクリスが率先してマイクを取った。
 ロブのFacebookにも書かれていたらしいが、2週間前にロブが交通事故に遭ったのだが痛みに耐えてこのライヴに参加していることを発表した。
 (だから歌唱の不安定な部分も多目に見てね。とか言っていたような......気がする 笑)
 その後、クリスは他のバンドメンバーの紹介に移っていった。
 まずは急遽来日が決定したキーボードのWayne Findlay
 Wayneと云えば、マイケル・シェンカーと長らくバンド・メイトでキーボードはもちろん、サイドギターも担当していた人物である。
 クリスもその辺りをしっかりと説明。歓声を浴びていた。
 (私にとっては マイケルとグラハム・ボネットの共演が叶ったライヴ以来のWayneである )
 お馴染みのベース James Pulliに続き、今回のインペリテリにおいて最も注目を浴びたメンバーPaul Bostaphが紹介された。
 ポールと云えば〜というか、言わずもがなだがSlayerとしての活動が最も有名である。
 今、現在 再結成したSlayerにおいても活動している現役バリバリのHMドラマー。
 アルバム『War Machine』のレコーディングに参加したことがきっかけでツアーにも帯同しているのだろう。
 クリスは「"ポップバンド"に居たんだ。Slayerって言うんだけどね」と笑いも取っていたが「ポール!ポール!」と連呼して 客を鼓舞したのだった。
 場内を熱くしたMCタイム後に披露されたのはインペリテリにとって記念碑的作品「Stand in Line」であった。
 拳を振り上げ、観客に力強くアピールするロブ・ロック。
 しかし「いい感じだ!」と思ったのは 歌が始まるイントロのリフまでのことだった。
 最もロブの歌唱の不調が感じられる曲となってしまったのである。
 もともとグラハム・ボネットが歌った曲であったから ロブの歌えるキーに合っていないというのもあっただろう。
 だが、今まで30年以上に渡ってインペリテリのステージでは歌ってきた曲だと思うのだが.....どうしたのだろう?。
 ロブは歌えない高いパートや サビの部分になると客席にマイクを向け合唱を促した。
 それに見事に答える我々、観客たち。
 ライヴとしては感動的なシーンにはなったが、ロブのあの声はもう還ってこないのだろうか。と不安にもなってしまった。
 クリスのギターは完璧と言っていいぐらい安定していただけに残念ではあった。
 コーラスをバックアップした我々に対して「Good Job!」「イチバンのファンです!」とクリスは叫んだ。
 ベースのジェイムスが「コンサート タノシンデイマスカ?」と日本語でしゃべり盛り上げ、次の曲を紹介した。


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 12曲目は『War Machine』収録の 疾走系の激しいHMナンバー「Wrath Child」であった。
 この曲の見所といえばポールの激烈なドラミング。
 それに単純に激しい曲というばかりでなく、ギター・ソロが途中からミディアム・テンポになって曲に緩急をつけて変化させているのも特徴的であった。
 最後は再び激しく終わりを迎えたが、クリスはそのままロングトーンで曲を繋いでいった。
 するとそれは聞き慣れたメロディラインへと変わっていく。
 『Stand In Line』アルバムに収録されていた「Over The Rainbow」だ。
 思えば「Over The Rainbow」はエリック・クラプトンジェフ・ベックが演奏するヴァージョンを何度となく生で聞いたことを思い出す。
 元を辿れば、レインボーがバンドのテーマソングという形でステージで演奏をしていた曲であり、オリジナルは映画『オズの魔法使い』の劇中歌である。
 だが、この曲を初めてはっきりと意識したのはインペリテリであった事は間違いない。
 それだけに私にとって感慨深いのである。
 しかし、この曲で次々と繰り出されるタッピング、スウィープ・ピッキング、フルピッキングの速弾きというクリス・インペリテリの代名詞とも云える演奏に、此処にいる誰もが心震わされた。
 本編最後のMCもクリスが取った。
 そして始まった曲、それは記念すべきデビュー曲「Lost in The Rain」であった。
 第一声から この曲ではロブの声の調子は先程の不調が嘘のように調子が良い。
 サビの「Lost in The Rain」をハイトーンで叫びまくっている。
 やはり自分の音域に合った曲とそうでない曲とでは 差が出てしまうということなのだろうか。
 「We Love You イチバンノファンデス」とロブが叫ぶ。
最後に「We Love You Guys Thank You ! 40 Fuckin' Years」とクリスが絶叫。メンバーはステージを降りていった。



 客席では アンコールを求める激しい手拍子が続いた。
 本編が終わって、そのままのテンションが続くというライヴも久々な気がする。
 そんな手拍子が2分ほど続いただろうか。
 暗転していたステージにメンバーが戻ってきた。
 客席から声援が飛んだ。
 「Oh Yeah 〜!」とクリスが甲高く叫ぶ。


 アンコールはクリスは徐にギターを爪弾く形で始まった。
 それはHM/HRファン、いやロック・ファンなら耳馴染みはあるだろう あの曲であったのだ。
 そうDeep Purpleの「Smoke on The Water」の有名なリフである。
 初めはギターだけだったが、其処にドラム、ベースが徐々に絡んでいく。
 最後はロブのボーカルがその演奏に乗る。
 客席はそれだけで熱狂状態になり、サビの部分は大合唱である。
 このまま1曲フルで披露するのか?と思った矢先、演奏は突如終わった。
 単にクリス・インペリテリのサービスであったようだ。
 そんなサービスは続いた。
 これまた聞き慣れたリフが場内に響いた。
 それはRainbowの「Man on The Silver Mountain」であったが、ロブ・ロックがワン・コーラス歌った処で終了。
 もっと聞きたいと思った処で終わるので客からは笑いさえ起きた。
 その後は これまたDeep Purpleの「Lazy」のイントロのリフを弾いてみせたクリス・インペリテリ。
 ここまでは つまりリッチー・ブラックモア特集であった訳である。


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 だが、この後 インペリテリにとって(同時にクリス・インペリテリにとっても)意外な曲が始まったのだ。
 なんとAC/DCの「Highway to Hell」の特徴的な力強いリフを奏でるクリス。
 ドラム、ベースもその演奏に加わり、ロブも歌い始める。
 その予想外の曲に客も大いに湧いた。
 僅かであったがクリス・インペリテリがAC/DCを弾く−かなり貴重な場面に遭遇したのではないだろうか。
 とはいえ、此処まではアンコール曲に繋ぐちょっとした余興〜サービスである。
 本来のアンコールはRainbowの「Since You've Been Gone」であった。
 ノリノリでこの曲を演奏するクリス・インペリテリ。
 アルバム『Stand in Line』に収録されていたことを考えれば、なんら不思議なことではなかった。
 幅広く良く知られた楽曲ゆえ 会場の誰もがサビを口ずさみ、盛り上がることが出来たのは最後を飾る上でとても素晴らしいことだった。
 ステージを降りていくメンバーに大きな声援と惜しみない拍手が終演後も続いたのはその証拠であったに違いない。





 久しぶりにメタルらしいライヴを目一杯経験したな。と感じた今回のインペリテリの公演。
 大好きなアルバム『Answer To The Master』から残念ながら1曲も披露されることがなかったり、ロブ・ロックの不調も気になる処ではあったが、それを上回るクリスやポール、ジェイムスらの熱演は満足感を得ることに繋がった。
 演奏以外でも、前述したように クリスがライヴでは積極的に喋り(時には冗談を言って)観客を盛り上げるなど案外 "陽気な兄ちゃん"だったことも新鮮な発見だった。
 それに大いに感心したのは、ロブなどがMCで喋っているとき クリスはギターのボリュームをゼロにしてフィンガリングの練習をしていたこと。
 こんな時にも練習か!!と驚かされたのである。
 今までギターヒーローと言われるギタリストを沢山見てきたが、ライヴ中でさえも練習していたのはクリス・インペリテリ一人だけである。
 それは30年前のギタークリニックでも、本番前にリハーサルとはいえ必死に練習していた当時のクリスの姿と重なるものがあったのだ。
 つまり今のクリス・インペリテリを創り上げたのは、このような日頃の練習の賜物であるというのを改めて実感したのである。



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SET LIST
Opening S.E. Carmina Burana − O Fortuna(Carl Orff)            
1Hell on Earth
2Power of Love
MC
3Rat Race
MC
4Power Grab
5Guitar Solo 〜 Face The Enemy
MC
6We Own The Night
MC
7Crazy Train(Ozzy Osbourne)
MC
8Black Sabath(Black Sabath)(James Pulli on Lead Vocal)
MC
9Out of Miy Mind (Heavy Metal)
MC
10Stand in Line
MC
11Wrath Child
12Over The Rainbow(instrumental)
MC
13Lost in The Rain
・・・Encore・・・
14Smoke on The Water(Deep Purple)
Man on The Silver Mountain(Rainbow)
Lazy(Deep Purple)
Highway to Hell(AC/DC)
Since You've Been Gone(Russ Ballard / Rainbow)






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