馬呆 BAHO
LIVE TOUR 2004








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 偶然か、必然か

 はたまた前世からの繋がりか。
 「人の出会い」はかくも不思議なものである。
 それゆえ恋人、一生の伴侶、友達、就職先.....etc 人は至上、至高の「出会い」を目指す。
 だがその思いは人それぞれ。
 イケメン、美女、高収入、高身長、人も羨む好環境 が全ての人の「希望条件」ではあり得ない。
 音楽の世界においても またしかり。
 楽譜が読めて、絶対音感もあり、楽器のテクニックは ずば抜けて、歌を唄わせれば3オクターブは裕に出る。
 なんてクラシックや一部のテクニカルバンドならいざ知らず 豊か過ぎる才能は最後には内部崩壊を促してしまう事も多い。
 結局はエゴやプライドが高すぎるって事なのだろう。



 冒頭からまた脱線してしまったがここにも奇跡的な出会いが その後の日本のROCK史に大きな足跡を残す事になった。
 と言ったら大袈裟であろうか。


 間違いなく日本のギターヒーローとしてギターファンばかりでなく一般の音楽好きからも一目置かれる竹中尚人。通称、チャー
 大阪R & B界でSOOO BAAD REVUE、GAS、THE VOICE & RHYTHMなどのバンドで知られざる存在として活躍していた石やん石田長生
 いわゆる”東京のギター馬鹿””大阪のギター阿呆”ががっちり四つに組んだ「馬呆」もその成り立ちはひょんな事からであった。
前回のライヴレポでも書いたが、この二人の出会いは30年前の名古屋に遡る。
 ジョー山中のライヴの同じ前座であった二人が楽屋等でどれだけ意気投合したかは今となっては想像するしかないがその後の「馬呆」での15年に及ぶ活動を見ているとおのずとその答えは見えてくるような気がする。


 そんな結成15周年を迎えた「馬呆」が今年も動き出した。
 ツアーとしては2年ぶり。名古屋では会場を前回の「想い出の地」名古屋市公会堂から お馴染みダイヤモンドホールへ移しての開催である。
 ネット上の前評判としては「今までの馬呆の集大成なもの」になるというだけに 私は敢えてその内容を知ろうとせず頭を白紙のままにしてライヴに臨んだ。


 今回もチケットで事前に席が決まっている為、割とゆっくりめに出陣。
 会場最寄りの新栄町駅に降りると同じ馬呆ライヴに向かうと思われる人々もチラホラ見受けられた。
 私も彼らに負けじと(?)会場に急ぐ。
 交差点を渡り、通い慣れた道を歩いてライヴハウス、アポロシアターを越えていくとダイヤモンドホールのあるビル入り口に辿り着いた。
 いつものように奥のエレベータホールから階上に上がろうとするが、そこまで行く間に一枚の張り紙が..。
 それによると混雑を避ける為、エレベータを使わず階段で上れ....云々という指示。
 私は何度もココでライヴを見ているがこんな張り紙は初めてである。
 一様に面食らってしまう。それと同時に客の入りが良すぎて席は確保されずに 昔のようにオールスタンディングになってしまったのではないか?という 一抹の不安も感じた。
 指示された通り、階段でダイヤモンドホールのある5階まで急ぎ足で上っていくと さすがにヘトヘトになる。
 やっとの思いでカメラチェックをくぐり抜け会場内に入るとロビーには 人が溢れていた。予想以上の入りに先ほどからの不安は益々大きくなっていく。
 急いでその人をかき分け、客席に入っていくと.........果たしてそこには 一面にイスが引き詰められ、既に多くが埋まっていた。
 なんとか席は確保されているようだ。これを見て一気に気が抜けてしまった。
 早速、自分の席をチェックして腰を落ち着ける。配置的にはPA卓の通路を挟んだ 左横という具合で音響的にはグッドポジションかもしれない。
 しかし、いかんせんステージからは距離があり過ぎだ。
 考えてみれば馬呆のライヴは数多く通ってきたが、未だ近距離で見た事が無い。
 この障壁を乗り越えるには強力なコネか、チャーのファンクラヴの会員にでも為らない限り無理なのだろうか。


 開演までの暇な時間をどうしようかと例の如く、文庫本を用意してきたものの 今ひとつ読む気にはならなかった私は導かれるようにロビーに向かった。
 ダイヤモンドホールに足を運んだ事がある方ならご存じだろうが、ロビーとは言うもののその規模は小さいものである。
 片隅ではマーチャンダイズの臨時販売やバーカウンターで飲食が用意されている為、余計に手狭に感じてしまう。
 ただ今回、秀逸であったのはロビーに用意された固定式のモニターに最近発売されたばかりのジョニー、ルイス&チャー伝説のライヴCD&DVD「Free Spilit 1979.07.14」の映像が紹介されていた事。(但し、この時はまだ発売前であった)。
 ファンサイトでは大きく盛り上がっていたが映像を見るのはこれが初めてだっただけに私はしばらく見入ってしまった。
 音は周りの雑音にかき消されてしまっていたが迫力ある演奏は映像だけでも伝わってくるようであった。(画質が当時のホームビデオ並というのが唯一、残念であったが。)


 開演予定7:30になっても一向にライヴが始まる様子をみせなかったが 開演15分を過ぎた頃になると突然、場内に流れていたSEが変わった。
 ストリングスが奏でる室内管弦楽風の曲はライヴに不釣り合いな気もするが そうではなかった。
 なにせ演奏している曲がジミヘンの「PURPLE HAZE」なのだ。
 前回のライヴでもSEは凝りに凝ったものでそれは客席大爆笑だったのだが やはり馬呆のライヴはイントロから一筋縄ではいかないようだ。
 (注:この「PURPLE HAZE」のストリングスには大きな意味があった。
 なんとチャーと石やんが初めて”合体した”1989年6月9日のライヴのSEがこの室内管弦楽版「PURPLE HAZE」であったのだ)



 PM7:50。場内が暗転、ライヴ開演。


 しかし、馬呆は登場しなかった。
 拍手の中、現れたのは白と黒のスーツに身を包んだお二人。
 もちろん、本日の主役である石田長生=石やん、竹中尚人=チャーなのだが その扮装ぶりからまたまた我々を驚かすべく仕掛けがあるように感じられた。
 白イメージの石やん(おまけに金髪!!)、黒イメージのチャーがそれぞれ持ち寄ったギターはお馴染みのTACOMA。前回のツアーでも使用されたあの”3弦ギター”である。
 − と言うことは偶数弦がチャー、奇数弦は石やん担当か。
 驚きの登場から間髪を置かず、注目のお二人が繰り出した曲は誰もが知っている往年のギタークラシック「禁じられた遊び」であった。
 前回の”3弦ギター「二人で一人ギター」”は ベンチャーズメドレーという有る意味無謀な挑戦で、技巧派二人をもってしても息絶え絶えの演奏であったのに対し今回の挑戦はなぜか余裕さえ感じさせる程であった。
 その余裕は チャーの「開放弦を弾く」時のコミカルな動きにも象徴されており いつまでも終わらない、繰り返される演奏と共に笑いを誘っていた。
 演奏が終われば、二人共深々と客席に礼。
 拍手と共にそれぞれが舞台袖に消えていった。

 それを見定めたように場内に響き渡るチャカポコ、チャカポコ、リズムマシーンの音色。
 吊られて始まる我々、観客の手拍子も最初から大きく非常に規則正しい。
 これら馬呆では定番のリズムに乗って今回、リズム隊(ドラム)として帯同が予定されていたMAC清水氏が暗闇に紛れ、所定の位置に着いた。
 すかざず連打されるボンゴの音がリズムマシーンの繰り出すリズムと絶妙なハーモニーが場内を満たすと、それを見計らったようにステージ袖、左右それぞれから登場する馬呆の二人。歓声の中、ステージ上に用意されたイスに腰を落ち着けると徐ろにギターを弾き始めた。ギターは二人とも先ほどのTACOMAから持ち替えて、いつものOvationである。
 チャーはお馴染みOvationのEliteあたりなのだが(もしかしてチャー・シグネイチャーだったか?)、石やんのOvationがフルっていた。
 特徴あるギターボディを阪神タイガーズの黄色と黒のツートンカラーが覆っていたのだ。
 正にこれこそが「虎目(トラ目)」!!。
 この迫力は実機を見た人じゃないと判らないだろう。
 1回戦、まずファーストインパクトで石やんの勝ちと言った処だろうか。
 コードカッティングを中心にしながらも、要所要所でそれぞれがオブリガード=おかずを入れて盛り上げていくのはいつもの馬呆。
 ビートルズに始まりおちゃらけた(?)メロで爆笑を取るのももう手慣れたものである。そこに「BA , BAHO , BA , BA , BAHO ♪♪」と言った単純な歌詞をのせ、チャーが観客にコーラスを強制(笑)。
 次第に観客の声も大きくまとまって一旦、曲がブレイクすると、石やん独特のニューオリンズスタイルのカッティングが始まった。
 ほとんどの客は既に何の曲かは先刻承知なれど「アミーゴ」と石やんがコールすると歓声が大きく沸き上がる。
 「アミーゴ」は石やんとチャーの呟きととも取れる言葉のフレーズの応酬が醍醐味なのだが今回も名古屋ならではのネタを用意してくれていた。

 「今年はやられた中日ドラゴンズ」

 この一言だけでも地元民としては嬉しい限りであった。もちろん大の阪神ファンである石やん(チャーも)の悔しさが歌詞に現れたのだが。
 「アミーゴ」が終われば、一瞬、静寂が会場を支配するがそれをうち破るように各がフレーズを繰り出す。
 JAZZライクなフレーズを得意とする石やん、根っからのROCKギタリストなチャー。ちょっとしたギターバトルでも面白いぐらい差異が際だっている。
 プチバトルも石やんがスパニッシュギターフレーズを弾き始めると、やや趣も変わってきた。
 チャーもつられ同じようにスパニッシュフレーズを奏でれば、今度は石やんはギターでなく「ヤリスギ〜♪」と中近東メロディに乗せて歌い上げる。
 これに負けじとチャーも同じ節回しで「ヤリスギ〜♪」と石やんよりも語尾を大幅に延ばし熱唱する。
 これには会場の端々から笑いがこぼれたが、演奏を再開しあの曲が始まるとそれは嬌声に変わった。
 「MIDNIGHT SHUFFLE」は歌詞からも判る通りどこか都会的な匂いのするCoolな曲である。
 チャーの熱い歌声に石やんのJAZZフレーズが華を添え、先ほどまで観客から笑いを取っていた人達とは見紛うばかりだ。  正に「カッコイイ」という曲の後は小休止。今回初のMCの時間となった。

 「久しぶりの叶姉妹です。どうぞ よろしく」

 という石やんの一言で始まったMCは爆笑、爆笑、爆笑。
 ただ、いきなりチャーの「業務連絡」で始まった真横のPA卓の係の兄ちゃんとの”技術セッション”には驚いた。
 笑いをとりながらの進行であったが、ライヴは冒頭から機材関係のトラブルで綱渡りな状態であったのだ。
 そんな事を微塵も感じさせなかった事はさすがこの道、何十年のベテラン。慣れたものである。
 そして冒頭の1曲「禁じられた遊び」転じて「禁止された遊び」を披露した自称”ウクライナ出身の国民的バンド”「グキ」(偶数弦、奇数弦を単独で使う事からその名前に由来している......感の良い方なら既にご承知ですね)の紹介するあたりからMCも全開。
 石やんが最近、凝っているという「テレビショッピング」司会者の独特な口調「〜です・か?」の真似には大いに笑わせてもらった。
 ひとしきり馬呆結成時から今までの想い出や、自分達の影響の受けた音楽(ZepやDeep Purpleなど)を語り合った後は以前も披露した事のあるあのメドレーが再現された。
 ハードロックをJAZZ風にアレンジするこの「HARD ROZZ」はDeep Purpleの「Highway star」から始まってCream、Zep、ジミヘンと移り変わって「移民の歌」での”チャーの雄叫び”付きという新機軸で笑いを取ったが最後の「Highway star」でのあの有名な三連のギターソロをユニゾンで完璧に再現する素晴らしい演奏には方々から感嘆の声が上がっていた。
 常々思うことだが、石やんやチャーの世代ってこの時代(60年代末から70年代初め)のROCKが好きなんだなー、身体に染みこんで血と為り肉と為っているんだなあと感じる。私など完全に後追いなのでROCKに大きな力と魅力のあった時代に青春を過ごした二人に羨ましさを感じてしまう。
 歓声や大きな拍手で演奏を称えられた後は再び、MCタイム。
 この時も先程よりパワーアップしたぐらい面白かったのだが、印象に残ったのは石やんのこんな話だった。


 「俺、一回、大阪でプロレス見に行って、ロビーにいたら、俺にしゃべり掛けたそうで我慢してたヤツおってん。それで勇気出して遂に俺に話かけて 『すいません チャーさんですか?』」 爆笑。

 「まだ チャーに間違われるんはええねん。奈良でプロレスみた時は『すいません 渡辺香津美さんですか?』全然、似てへん(苦笑)。
 俺、もちろんハングルで答えたよ」
 大爆笑!

 それに対しチャーは

 「そいつ、俺が送りこんだヤツやねん」とボケをいれ笑いを増幅。
 石やんも「送り込んだてって そいつ何の仕事やねん」


 − とツッコミも忘れず、演奏だけでなくしゃべり=漫才トークも絶好調なところを 証明してくれた。
 爆笑MC後は馬呆では大定番のベンチャーズメドレー
 前にも書いたかもしれないが、私がベンチャーズに本格的に興味を持ったのも馬呆のライヴアルバム盤「HAPPENINGS」がきっかけだった。
それもベンチャーズの曲が劇中大きく使われている映画「青春デンデケデケデケ」を見に行った帰り際に購入したというのも今思えば、何か因縁めいたものさえ感じる。
 観客も判ったものでベンチャーズとコールされれば大きな手拍子が会場に響き渡り演奏をサポートする。
 「小さい秋見つけた」フレーズを組み込んだ「DIAMOND HEAD」はその後、「ケン・ケ・ケ・ケン......マツダイラケン」などの言葉遊び、いつものロシア風民謡、クロードチアリ風クラシックなどに変遷。
 ベンチャーズだけに収まらない幅広い選曲で今回も楽しませてくれた。
 馬呆においては和みの場であったベンチャーズが終われば、再びMCの時間。
 今回、話の中心はチャー。笑いの中でも結構、真面目な事を語っていた。


 「たまーに音楽学校に頼まれて講演に行ったりするのですが.........大阪でいわゆるギタークリニックをした時、『よーし セッションしようか』と言ったらですね。『どういうのですか?セッションっていうのは』とその生徒が言うんですよ」

 「セッションという概念が無いからね.最近は」
と石やんもチャーに同調する。

 「それで じゃ『Aでブルースやろうか』というと今度は『Aでブルースって何ですか』とまた言う訳ですわ」(苦笑)

 そして今度はチャーのバンド仲間が経験した話にまで及んだ。

 「うちのバンドの沢田くん(沢田浩史(b))もね、ベースクリニックで先生をやっているだけど、俺と同じような事を経験したようで、今の子は決まったパターンしか弾けないみたい。それで今後、どうやっていけばいいですか?て訊かれたからマジで『はなわくんみたいのもいいんじゃない』って言ったら(学校で)問題になったらしくて。こういう教え方は困るって。」

 「そんなこたーないよなー バンド組んでみてーよ 俺もあいつと」

 とチャーは声を荒げて爆弾発言(?)。


 確かに、エレキでもアコギでもなんでも”誰のマネでもない”自分だけのスタイルを持つということはミュージシャンにとっては必要な事。
 そういう意味では はなわも立派なミュージシャンであると言えるだろう。そんな事情も何も判っていない”お堅い頭の”音楽学校関係者には私も呆れてしまう。
 そんなチャーのぼやきが終わると、話はギターを弾き始めた頃に遡っていった。


 「ギターていうのはコードですがみなFで挫折するんですわ」

 と言うと会場の無数のギター経験者から笑いがこぼれる。

 「で、フォークソングだとサビになるとFが出てくるんですが。するとこんな風になっちゃうんですよ」

 とチャーはギター初心者がよくやる”指に力が入らなくてしっかりとポジションを押さえる事が出来ない”Fのコードを弾き、そして

 「〜未だに石やん、ブチブチやるもんね」

 といきなり話をふったりしたものだから、石やんは顔を真っ赤にして

 「公衆の面前で よう君はそんな事を言えるな.....(苦笑)」
 とやや怒りながらも「こういうのをファンキーって言うんだ」
 と釈明も忘れなかった。

 その後、何故か石やんは

 「こうみえても 俺、コクジンやで....コクジンて言うても 残酷の酷。君、ハクジンやろ、薄い人って書く...」

 と言い出してチャーの思わぬ攻撃に対するギャグの切り返しに会場は笑いの渦に包まれたのであった。









まだまだ続く





SET LIST
0- SE・PURPLE HAZE (クロノスカルテット) -
1禁止された遊び Performed by グキ
2intro "BA BA BAHO" 〜
3アミーゴ
4Spanish Jam 〜 MIDNIGHT SHUFFLE
5HARD ROZZ
6ベンチャーズ・メドレー
7GSメドレー
 君に会いたい (ザ・ジャガーズ)
 長い髪の少女 (ザ・ゴールデン・カップス)
 エメラルドの伝説 (テンプターズ)
 シーサイド・バウンド (ザ・タイガース)
 恋のドクター (スパイダース) 〜
 ブルーシャトー (ブルーコメッツ)
 あの時君は若かった (ザ・スパイダース)
 君に会いたい (ザ・ジャガーズ)
8サークルKの歌
9ぼにんの島
10RESTAURANT 名古屋 version (Johnny,Louis&Char)
11ALL AROUND ME 日本語詞ver 2918
12ONLY LOVE CAN BREAK YOUR HEART (ニール・ヤング)
13CRAZY LOVE (ヴァン・モリソン)
14BLACK SHOES 〜 Percussion Solo 〜 気絶するほど悩ましい 〜 BLACK SHOES
15ラ・ジ・カ・セ
16ANYTIME
17HAPPINESS 〜
・・・Encore ・・・
18〜 HAPPINESS
19UNCLE JACK
・・・Encore 2・・・
20IKO IKO (Dr.ジョン)
21漢字ひらがな対決 - 上を向いて歩こう -
22BAHO'S RAG











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