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前回「この街TOUR 2019」を見たのが3年前のことである。 会場は愛知県芸術劇場。 まさか、あのツアーが断続的とはいえ 3年も続くとは当時は考えもしなかったが、こうならざるを得なかったのはやはりコロナ禍のせいだろうか。 それでも 中止や延期になることなく 再びこの愛知県芸術劇場に戻ってきてくれたことは ただただ嬉しい。 ところで今回のツアーが前回と違うというのは まずチケットの形式をあげる事ができる。 それは電子チケットの導入である。 もしかして前回も存在したのかもしれないが、今回は紙のチケットと電子チケットのどちらかを選べるという二者択一となっていたのである。 いつもはチケットを記念として残しておく自分だが、噂では電子チケットの方が良席が得られると訊き その情報を信じてみようと電子チケットを選択した。 そして前回と違うのはもうひとつ。それは開演時間の変更−16:30であった。 通常なら18:00あるいは 18:30ぐらいの開演時間が普通なのだが、コロナ禍になって色々なライヴも早めに始まっているようである。 前回と違ったのはまだあったのだが、それはライヴが始まってから気付いたことである(最もそれが大きいものであったのだが)。 開場時間は15:30。 16:00前ぐらいには会場に到着出来るように自宅を出発。 無事に2年ぶりに愛知県芸術劇場前に辿り着いた。 入口前には入場列などで人だかりとなっていた。 スマフォに「チケプラ」のチケット画面を表示させ、列の最後尾に並んだ。 このチケット画面に、電子スタンプを押す。というのがネットには書かれていたが、どのようになるのか興味深く思っていた。 カメラチェックの後、係員がスマフォに向けて小ぶりのデバイスを近づけると、チケット画面には『THANK YOU FOR COMING!』と表示されたのだった。 「こうなるのか!」とちょっと感心してしまったが、こう思うこと自体が既に時代遅れなんだろう(苦笑)。 会場内に入り、ロビーに足を踏み入れると視界に入ってくるのはCDやDVDの物販コーナー、そしてグッズの販売コーナーである。 注目はグッズ販売であるが、毎回、2階へと続く階段に長蛇の列が出来て開演時間までに間に合うのかヤキモキするのが常だったのだが、今回はコロナもあって通信販売が強化され、列に並び密になるのを控えてか長蛇の列は形成されていなかった。 これなら余裕で客席に行くことは出来そうだ。と列に並んだ。 その読みは当たり、10分ほどでパンフを購入し いよいよホールに入っていった。 今回、電子チケットで入手出来た席は12列目、通路側であった。 前回の席と比べても列数は変わらないぐらいで、電子チケットにした効果は一応あったように思えた。 12列目とはいえ、ステージはそれほど遠くには感じない。 また客席も 此処から見た感じでは粗方、埋まっているように見えた。 ただ このホールの特徴である4階席、5階席に人影は見えなかった(どうやら閉鎖されていたようだ)。 各々の席では マスクを通したボソボソとしゃべる声が聞こえてくるが、その声量はコロナ前とは比べるべくもなく小さい。 今回、自分にとってコロナ禍となって初のライヴであった為、ライヴがどのように行われているのか全く判らなかっただけに、ライヴ前のこのような客席の状況には驚かされた。 そんな状況の中、再びステージに目を転ずれば 暗闇ゆえ よくは見えないが、それほど派手なステージセットは無さそうである。 このステージで森高さんがどのようにパフォーマンスをするのか夢想しながら、しばし開演までの時間を過ごした。 場内アナウンスが終わり、SE代わりに鳴り響いていた森高さんの曲が終わると時計は16:30を示していた。 いよいよ開演である。 やがて暗闇の中、ステージには何人かの人影が垣間見えてくる。 それを見つけ、客席では突然、拍手が湧き上がり、それは次第に大きな手拍子へと変わっていく。 手拍子が最高潮になったと同時に、ステージのドラムセットにスポットライトが当たり、曲が始まった。 「素敵な誕生日」である。 ドラムセットに座るは もちろん今夜の主役−森高千里。 その人である。 自分の席からはドラムセットがやや見ずらいという感じなのだが、曲調そのままに楽しそうにドラムを叩き、歌う森高さんが見える。 「素敵な誕生日」を終えると、我々の盛大な拍手に迎えられ ヘッドセットを外した森高さんがセンターマイクへ歩み出てきた。 「みなさん こんにちは 森高千里です。今日は森高千里「この街」TOUR 2020-22 愛知県芸術劇場大ホールへようこそいらっしゃいました〜ありがとうございます」 挨拶を受けて 大きな拍手が森高さんに送られた(前回同様、会場である「愛知県芸術劇場」が言いづらそうな森高さんであった 苦笑)。 この1回目のMCでは その2019年 前回の公演を振り返りながら(長いツアーゆえ)季節によってセットリストを変えていること、衣装も昨日(伊勢公演)から変えていると発言。 1曲目の「素敵な誕生日」に掛けて「今日、誕生日の人っていらっしゃいますか?」と森高さんが客席に向かって問いかけると、何人かが手を挙げた。 森高さんは その結構な人数に驚きながらも「おめでとうございます」と伝えると、客席は祝福の拍手で溢れたのだった。 そして森高さんが「私も もうすぐ誕生日(4月11日)ですけれども...」と発するやいなや、客席は先程以上の大きな拍手に包まれた。 またライヴの諸注意という訳ではないが、コロナ禍では今やお馴染みとなってしまった〜マスクをしたまま見ることになりますし、声を出すこともできない、立ち上がることも遠慮していただくということを改めて森高さんから言われるとコロナ禍という非常時のエンターティメントのあり方を改めて考えてしまうのだった。 それでも「みなさんに思いっきり楽しんで貰おうと一生懸命、やりますのでぜひ、最後まで楽しんで帰ってください」と言われると森高さんだけではなく このステージに関わる全ての人達を応援したくなるのだった。 「これから私の大好きな夏の季節になります。そんな季節にピッタリな曲を用意してきましたので聞いてください」 と曲を紹介すると、郷愁を誘う分厚いキーボードの音がイントロを奏で始めた。曲は森高千里ディスコグラフィー夏部門の代表曲の一つ「夏の日」である。 思えばこの曲を生で聞くのは随分、久しぶりである(後で調べると、もしかしたら初めて生で聞いたのかもしれないと判って驚愕している)。 そして私が今回のライヴで最も気持ちが高ぶったのは 3曲目に選ばれたこの曲。アルバム「ROCK ALIVE」に収録された「夏の海」である。 1992年のROCK ALIVEツアーで披露されて以来、(私にとって)実に30年ぶりに再演されたこの曲の登場は もうただただ懐かしさしかなく 涙さえ出てきそうになった。 そんな感情が心を満たしながらも、間奏のギターソロはしっかりと双眼鏡で確認する周到さも忘れはしなかった。 ROCK ALIVEツアーでギターを弾いた当時の松尾弘良さんは、ソロにおけるロングトーンはボトルネックを使っていたのに対して、本バンドの鈴木マリアさんは手首のヴィブラートで音のうねりを作り「海の波」を表現して感心してしまった。 すぐさま、この部分だけでもコピーしたいと思ったのだった。 4曲目は「海まで5分」であった。 アルバム「Sava Sava」に収録され、この曲の登場はそのSAVA SAVA ツアー(1998年)以来、24年ぶりとなった。 この夏特集のブロックは 奇しくも24年ぶり、30年ぶりという懐かしさ溢れる曲ばかりで自分を90年代の世界に誘い、幸せな気持ちにしてくれた。 自分にとって 今夜のライヴで間違いなく至高の時間であったと断言できる。 そんな幸せな時間の後の2回目のMCは、前回は出来たツアー先での「街歩き」が今回はコロナの為、出来ずに残念。それでも昨日は伊勢神宮まで足を伸ばすことが出来たことを報告する森高さん。 また、ここ名古屋の印象に話が及ぶと、前回は熱田神宮の周りを見て周ったことを思い出したり、東山動植物園にいるイケメンのゴリラ(シャバーニ)、オアシス21の屋上からの眺望、大須商店街、新しくなった久屋大通公園〜という単語がポンポンと飛び出してきた。 それに加えて3日前に出来たばかりの「丸栄ガレリア」まで話に出てきた時は大層、驚いてしまった。 おそらく午前中に放送されたローカル番組(中京テレビ「前略、大徳さん」)の特集を視聴したからだと思うが、ライヴ前には地元ネタを細かくチェックされているんだなと感心したのだった。 ただ森高さんから「丸栄ガレリアに行った人?」と客に挙手を求めるも、その反応はパラパラ....(笑)。苦笑いするばかりであった。 「もう1曲、夏を感じる曲を聞いてください」とMCをまとめ、始まった曲は「SWEET CANDY」。 先程の夏曲3曲が 正に弾けるような曲調だったのに対し、終わりゆく夏を切なく思う「SWEET CANDY」は森高さんがメロウな歌唱を堪能できる曲である。 6曲目は打って変わって お馴染みの「勉強の歌」。 イントロと共に手拍子が場内に響き渡る。それをバックに舞い踊る森高さん。 ステージ上手、下手を行き来し、コロナ時代の(声のない)”コール&レスポンス”を観客と繰り広げる。 ラストの激しいダンスも昔となんら、変わらない。 次曲「ララ サンシャイン」もその昔、「めざましテレビ」(フジテレビ系)のテーマソングになっていた朝曲。 歌詞にあるように ひたすらポジティヴに明るく、それをパフォーマンスで体現していく森高さんに我々、観客は自然と笑顔になっていた。 3回目のMCは 森高さんのライヴでは昔から定番とも云える「名古屋名物・名古屋の美味しいモノ」紹介が中心となった。 森高さんは 前回のライヴツアーからインスタグラムでツアー先で食べたモノを載せているのだが、前回の名古屋では「ひつまぶし」を食べたことを思い出し、鰻はあまり好んで食べてこなかった森高さんが名古屋のひつまぶしを食べて鰻を食べれるようになったとナゴヤ民としては嬉しい言葉が聞けた。 そして 味噌煮込みうどん、エビフライ、味噌カツとお馴染みの名古屋名物の名前が並び、今回、初めて食べたモノとして「あんかけスパゲッティ」が挙がった。 これには客席からも大いなる同意という感じで拍手が沸き起こったが ”あんかけ”という名前から もうちょっと甘めな味かと思っていた森高さんは胡椒の効いたピリ辛風味に驚かれたらしく「なんで あんかけにしたんだろう?」と疑問に感じたものの、この癖になる味は好印象だったようだ。(なお あんかけスパゲティでは元祖の「ヨコイ」の物を食べたとのこと) また 名古屋に来ると必ず食べるという大好きな「天むす」(千寿)、出来るならライヴの後にビールと共に食べたい「風来坊の手羽先」「元祖鯱もなか」「しるこサンド」(今回は柔らかい「生しるこサンド」)、「クッピーラムネ」(「生ラムネ」)「大須ういろ」「スライムのういろ」「覚王山「吉芋」の芋けんぴ」とライヴ前に食べたモノが次々と紹介された。 生ラムネや、生しるこサンドなど ナゴヤ民でも 耳馴染みのない商品がポンポンと森高さんの口から出てきて 大いに参考になった(ぜひ、今度、食べてみよう!)。 食への探究心が衰えない森高さんは MCの最後には、名古屋のオススメをSNSで教えて下さいと付け加えるのを忘れないのであった。 名古屋名物でひとしきり盛り上がったMCの後、森高さんは「またこの後、2曲ほど(ドラムを)叩かせていただきます」と言って、ドラムセットへと移動した。 「1曲は叩くのが難しい曲だったりするので(ドラムの)坂本くんに手伝ってもらいます」 と曲前に宣言されたので、双眼鏡で覗くとステージ下手側にもう一台、ドラムセット(?)があるのが見えた。今まで気づかなかったが新たに用意されたのか? やがてキーボードが聞き慣れた曲のイントロを奏ではじめ森高さんがドラムを叩き始めるやいなや、突如、ブレイク。 「ごめんなさい 間違えました」 とミスを謝る森高さん。 叩くのが難しい−という意味を観客も理解したのではないだろうか。 しかし 30年以上、森高さんのライヴを見てきてドラムでミスをするのは初めて見たという気がする。 逆にレアな瞬間に立ち会えたと嬉しさを感じてしまうのはファンとしての哀しい性か? 気を取り直し、ドラムの連打で始まった「二人は恋人」。2回目はバッチリだった。 PV発表時から「二人は恋人」は森高さんのドラム演奏が大きくフィーチャーされた曲であったが、時折、オカズのフレーズが入る複雑な曲を叩きながら歌えるなあとあらためて感心してしまう。 と思ったら、ドラムを叩きながらの「二人は恋人」はどうやら私は初めて生で見たようである。 TVでは見たことがあったのでライヴでも、と思ったがそうではなかった。もちろん、関東で盛んにやっていたライヴハウス等では既に披露されているとは思うが。 ドラム演奏連続2曲目は「ザルで水くむ恋心」。 冒頭の「Ah 鰻のように〜」「Ah 鰻のような〜」の歌詞からしてインパクトが大きく「これぞモリタカ!」と云える楽曲であるが、2013年のライブ活動復活の狼煙となった東名阪ツアー以来の披露となった。 当時もドラム演奏をしながらの歌唱であったが、緩やかで大きなリズムに乗って歌う森高さんの声は非常に心地良いものであった。 水を飲み一呼吸置いて始まった4回目のMC。 「昨日とは曲を変えて、変えたのでちょっと緊張してしまって...」と先程のミスを謝る森高さんであったが、大したことではないよと観客は拍手で応援した。 そんな我々に対して森高さんは「みなさん温かくて、この街に来てくれてありがとうと言ってくれて、10代から歌手をやってきて この歳になってもステージで立っていられるんだなと感謝の気持ちしかありません」と伝えた。 「この曲は、女性の方に声を掛けていただくと『この曲 大好きなんです』と言って頂くことが多い曲です。「雨」 聞いてください」 鈴木マリアさんがバンドに加わって以来、ハードなアレンジが加わり「ロッカバラード」へと進化した森高さんの代表曲の一つ「雨」。 マリアさんにとって、中間のギターソロ、そしてアウトロのソロが最大の見せ場である。(後のMCでこの曲を「雨」(ロック・ヴァージョン)と改めて紹介された。) 場内が歪んだギターの音で満たされた後は、今度は中近東風のシンセメロディが鳴り響く。 ステージ上で森高さんは衣装の上に、エプロンを合わせている。 曲はもはや 説明不要な「ザ・ストレス」である。 森高さんの立ち位置近くに用意されたミニテーブルに 置かれていた銀のトレイを手に持ち、舞い歌う。お馴染みの光景だ。 曲途中に組み込まれた早口言葉「青巻紙赤巻紙黄巻紙〜」も今夜も完璧。場内から拍手が上がった。 「ザ・ストレス」が終わると同時に 軽やかなシンセサイザーのメロディーがリズムを刻み始めた。 それと同時に 自然と手拍子が湧き上がる。 そしてお馴染みのメイン・メロディが響き渡ると これまた説明不要の「17才」である。 森高千里というアーティスト(当時は”ミュードル”とも呼ばれた)を知らしめた当時の鮮烈なイメージそのままに、令和の今も再現している。 もちろん、あの特徴的な振りも含めて。 ただ昔と違うのは「動かないで」や「空も海も」、また「好きなんだもの」の客とのコール&レスポンスが出来ないこと。 コロナで仕方ないとはいえ、やっぱりちょっと寂しい。 そんな自分の気持を汲んでくれたのか、森高さんは直後のMCで 「心の声はちゃんと聞こえてました。ありがとうございます」と感謝を述べたのだった。 そして「ベース 横山雅史」「ドラム 坂本暁良」「キーボード 山上佑」「ギター 鈴木マリア」「ギターでバンドマスター高橋諭一」と一人ずつバンドメンバーを紹介。 あらためてバンドを「ホワイトクイーン」と名乗った。(そういえば、90年代、森高バンドはツアーごとにコロコロ、名前が変わっていた。「香港警察」とか「ジャネット・ジャクソンズ」とかいっぱいあった。流石に この長いツアーでは バンド名変更は無さそうである。) MCが終わり、13曲目に披露されたのは代表曲「渡良瀬橋」。 男性ファンが中心だったあの頃、女性にも注目されるようになったのはこの曲の存在もあってこそだろう。 またこの曲での注目箇所は、今も昔もなんと言っても 中間部での森高さんのリコーダーのソロである。 かっては時折、失敗してしまうことも有ったが、今回は完璧な演奏であった。 しっとりとしたミディアム・テンポの「渡良瀬橋」から一転して、明るいメロディーが場内を駆け巡る。 すると自然と手拍子が始まり、場内津々浦に拡がっていった。 曲は「気分爽快」である。 ひたすら明るく、盛り上がるこの曲は サビの「飲もう 今日はとことん盛り上がろう〜♪」での振りが非常に印象的だ。 2015年の、私にとって15年ぶりとなった森高さんのライヴでも 森高さんの振りの指導が入る映像が公式チャンネルに残され とても思い出深いが、今夜も全ての観客が〜というぐらいその特徴的な振りを森高さんと一緒に行っていた。 ピチッと揃っている振りはステージから見れば さぞや壮観な風景が広がっていうのだろうと想像された。 ステージ上手、下手と移動する森高さんが、我々、観客を煽る風景も見慣れたものであった。 ヒット曲連続披露となった3曲目(都合15曲目)は「私がオバさんになっても」である。 このライヴの日から8日後、53歳を迎える森高さんだが、最近、よく言われるのはこの曲のタイトルに引っ掛けて”森高千里は いつオバサンになるのだ?”問題である。 歌番組で歌唱したり、ツアー記事が掲載されたりするたびに この問題は浮上するのだが ずっと森高さんを追っかけてきたファンにとっては嬉しくもあり、何を今更?当たり前じゃん。という感じにもなる。 そんな事を思いながら、森高さんのパフォーマンスを体感する。 ステージを左右に移動しながら、客に手を振る森高さん。我々も、当然ながら振り返す、この光景も昔と何ら変わらないものである。 これもある種のコール&レスポンスだと思う。 「残り3曲になってしまいました。残り3曲。ここからは立っても大丈夫なので...」と直後のMCで 我々のスタンディングOKの号令が遂に発動された。 これまた前日の伊勢公演からスタンディング解禁となったそうで、このタイミングで夏曲へのセットリスト変更、スタンディングOKは嬉しすぎた。 観客の誰もが立ち上がる中、軽快なリズムが響き渡った。 それに合わせて「タ・タ・タン」という特徴的な手拍子が自然発生的に起こった。曲は森高ファンにはもうお馴染み「あなたは人気者」だ。 踊りだしたくなるような楽しい曲だが、この曲も2015年のツアー以来の登場であった。 あの時は、事前に振り付け指導が森高さんによって行われ、今も公式チャンネルに映像が残っている。非常に思い出深い曲である。 17曲目は、より激しいドラムの連打で始まった。 森高さんの「1、2、3」のカウントが響き渡ると、バンドが分厚いリフを奏で始めた。曲は「夜の煙突」である。 元々は直枝政太郎氏が率いるロックバンド「カーネーション」のカバーなのだが、もはや森高千里の曲と言っていいぐらいの楽曲になっている。 「はしごをのぼる途中で ふりかえると僕の家の灯りが見える」というメルヘンチックな歌詞に不釣り合いなぐらいのハードなロックンロール。大きな盛り上がりを見せた。 盛り上がりそのままに 本編最後の曲へとつながった。 このツアータイトルでもある「この街」である。 イントロで「今日は本当にありがとうございました。楽しかったです」と感謝を伝える森高さん。 サビの「でもこの街が好きよ 生まれた街だから〜」「この街が大好きよ のんびりしてるから〜」の振りも、これまた説明不要。観客の皆がマネをしている。 この統率の取れた一体感に 森高ファンとしてこの上もない幸せを感じる。多幸感に溢れた時間であった。 そして 後半のセリフ部分に地元の名産を挟むお約束は、今回は「天むす」「手羽先」「ういろ」− と森高さんの好物で占められた。納得である。 「この街」を終えると、森高さんは笑顔を振りまきステージを降りていった。 するとすかさず、アンコールを求める手拍子が始まった。 コロナ禍以前ならば「チサト〜!」とか「モリタカ〜!」というコールが沸き起こる.....。 −というのが当たり前の光景だったが、当然ながら今、現在それを望むことは出来ない。 しかし、それならばとコールを手拍子で代用すればいいじゃないか!と誰か考えたのだろうか? いや、そこまで厳密な意思決定があったとは思わないが、おそらく これまた自然発生的に始まった事なのだろう。 「チ・サ・ト」を「タ・タ・タ」あるいは「タン・タン・タン」と手を叩く事で表現すれば、その代わりとなるというのが判った時、ちょっと感動というか感心してしまった。 流石だ 森高ファン。と心の中で呟かずにはいられなかった。 しばらく 特徴的な手拍子が続きそれが最高潮に達した時、いきなりドラムのカウントと共に軽快なメロディが場内に響き渡った。 曲は「私の夏」だ。森高さんはブルーとシルバーに彩られた宇宙的な衣装に着替えて現れた。 先程のオレンジ色の衣装よりも、よりミニスカートが際立っている。 ライヴの前半、森高さんは より夏向けのセットリストに変更したと言っていたが、それはアンコールでも生きていた感じである。 ただただ楽しいサマーソングに手拍子で我々、観客は身体を揺らしながら盛り上がったのだった。 「アンコール、ありがとうございます。温かい拍手、ありがとうございました」とステージ上手、下手と移動し、はたまた1階奥、2階席の観客に手を振り、感謝を伝える。 「6月までツアーが続きますが また会いに来てくれると嬉しいです」と残りのツアーへの参加と、再び声出しライヴが可能になることを祈って 「それでは この曲を歌って終わりたいと思います。コンサートの夜、聞いて下さい」といよいよ最後の曲が始まった。 森高さんのアカペラで始まる「コンサートの夜」。 卒業式の帰り、友達同士で行ったコンサートの思い出を綴るこの曲。 卒業によって、離れ離れになっていく切なさが描かれる曲であるが、自分はどうしても1990年の「"古今東西 鬼が出るか蛇が出るか"ツアー」名古屋公演直前に、交通事故で亡くなった大学時代の友人を思い出してしまう。 彼とはこのライヴに一緒に行く予定で、しかも2列目あたりで見られるというプラチナチケットをゲットし ライヴ後にこの喜びや感動を共有出来ると喜んでいたのだが.....。 ライヴ当日、目の前に森高さんを感じながら 横にポツンと空いた空席を切なく感じたことを思い出す。 そんなことを回想しながら 今夜最後の曲も終わってしまった。 「皆さんの声は聞こえなかったけれど、心の声は届いていました。またコンサートで会いましょう。ありがとうございました」 と最後、挨拶をしてステージを降りていく森高さんに、我々、観客は名残惜しそうに手を振るのだった。 コロナ禍という中で、初めて見るライヴとなった今回の「「この街」TOUR 2020-22」。 歓声、声援、コールがないライヴとは こういうものなんだ。という事を提示してくれた。 それはやっぱり、ちょっと寂しいものではあったが、力強い拍手、手拍子はそれに変わるものになることを証明もしてくれた。 アンコールを求める手拍子の光景はしばらく忘れられないほど、心に残るものになった。 今後、コロナがどのようになっていくのか 全く判らないが、この経験がエンターティメント業界や 我々観客にも良い糧になってくれることを信じたい。 数年後にはそんな事もあったよね。と振り返れるような時代になっていることを願って。 |
SET LIST | |
1 | 素敵な誕生日(on drums 森高千里) |
MC 1 | |
2 | 夏の日 |
3 | 夏の海 |
4 | 海まで5分 |
MC 2 | |
5 | SWEET CANDY |
6 | 勉強の歌 |
7 | ララサンシャイン |
MC 3 名古屋の美味しい物紹介 | |
8 | 二人は恋人 (on drums 森高千里) |
9 | ザルで水くむ恋心 (on drums 森高千里) |
MC 4 | |
10 | 雨(ロック・ヴァージョン) |
11 | ザ・ストレス |
12 | 17才 |
MC 5 バンド「ホワイトクイーン」メンバー紹介 | |
13 | 渡良瀬橋 |
14 | 気分爽快 |
15 | 私がオバさんになっても |
MC 6 | |
16 | あなたは人気者 |
17 | 夜の煙突 |
18 | この街 |
・・・Encore・・・ | |
19 | 私の夏 |
MC 7 | |
20 | コンサートの夜 |