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先日のオリコン・デイリー・チャートではちょっとした”珍事”
が報告された。 それはネットニュースでも取り上げられる程であったのだが、同時に今の日本の音楽業界の現状を如実に表す結果ともなっていた。 http://www.new-akiba.com/archives/2009/01/159.html つまり、その日のチャートを席巻したアーティスト及び楽曲が一般人(?)には耳慣れないものばかりであったのである。 具体的に言えば、それはアニメ・声優関連の曲であるのだが、2位の声優・歌手である水樹奈々をはじめとして、Buono!、ALI PROJECT、声優の佐藤利奈・井上麻里奈・茅原実里のカップリングが10位圏内にずらっと並んだ様子は一昔前には考えられなかった光景である。 それだけ既存のアーティストが持つ訴求力の低下、CDを購入すべき中心年齢層の購買力の弱さ、諸々が露呈してしまった事でもある。 またアニメ・声優関連のパッケージメディア(CD/DVD)を購入するファンの「購買のひたむきさ」や従来の所有欲、コレクター願望の強さもこの現象の一端を支えていると言えるだろう。 アニメ・声優関連の作品を数多くリリースしているLantisレーベルの斉藤滋プロデューサーはある雑誌に 「CDやDVDの売り上げが全体的に落ちてきている中、アニメファンや声優ファンはCDやDVDを必ず購入してくれる。決してダウンロードやレンタルで済ますことはない。」 と語っていたが、正に言い得て妙である。 レーベルやメーカー側にも、彼らに買わせたくなるような”おまけ”や割高な初回豪華特典を付加するなど巧妙な戦略もあるのだが、それも購買者の行動心理あってこそのものだろう。 前置きが長くなってしまった。 さて、今やこのシーンを牽引する一人となった(上記したアーティストの一人でもある)茅原実里のライヴに行ってきた。 彼女のライヴに参加するのは昨年の1stツアーの追加公演以来、1年ぶり二回目である。 茅原実里は声優として「涼宮ハルヒの憂鬱」(長門有希役)「みなみけ」(南千秋役)「らき☆すた」(岩崎みなみ役)「喰霊-零-」(土宮神楽役)など当たり役を演じ、”ドル(アイドル)声優”の一人として数えられているが、元々、歌手志望なだけあってデビュー当時からその歌唱力には 定評があった。 2007年、歌手活動再開後に出たアルバム「Contact」は茅原実里の方向性を提示し、それは昨年発売されたアルバム「Parade」でも受け継がれている。 今回のライヴはその「Parade」をお披露目するツアーであり、セットリストもアルバム全曲披露と、かなり力の入ったものとなっていた。 会場となった「愛知県芸術劇場」はクラシック公演やオペラ上演を目的したホールで5階席まで配置されたオペラハウス様式の内装は、格式高くひたすら優美である。 私はG3のライヴ以来、二回目であったがその雰囲気にやや圧倒されそうにもなった。ただ、予想外の席の狭さには辟易も ....まあ ライヴが始まってしまえば(スタンディングで)関係なくなったのだが。 それにしても、開演前から場内の暑さはいったい何だったんだろう。 空調はどうしたんだ?と思えたぐらいの温度の高さ。ひしひしと伝わってきた。 あきらかに人の熱気によるものなのだが、ここまでは私も経験したことがないくらいであった。 そんな熱気を帯びた客席を見渡せば、所々に青い法被を身につけた熱心なファンやイベンターという輩が目に付く。 彼女のライヴでは今や、お馴染みの光景だが、過激な応援などが周囲との軋轢を生み、昨年の自分も参加したライヴ後に茅原実里公式サイトから<<オタ芸禁止のお願い>>という異例の通達が出たくらいだった。 その通達は今回のライヴツアーでも有効で、ライヴ中の警備は厳しくなることが予想されていた。 混沌とした会場内の雰囲気を冷ますように薄く流れるクラシックの調べだけがここが「芸術劇場」である事をかろうじて認識させてくれた。 開演時間10分前になって、ギターテクニシャンがステージに登場し最後の調整を施し、試し弾きをする。ワウを踏んで派手な音で確認もするが、それに対し客席の反応は無い。 ロックのライヴならこのデモンストレーションに多少なりとも歓声を上げるなど反応をするものだが、このあたりがファン層の違いを如実に見せつけられているような感じであった。 「茅原実里のパレードへようこそ」 予定開演時間を過ぎ、スピーカーから流れる音は先程よりも大きくなった。 18時06分。 暗闇の中、ステージ上にバンドメンバーが現れた。それぞれが所定の位置に付くとバンドマスター、ケニーの指先から紡ぎ出された流麗なピアノの調べが場内を満たした。それはドラム(ガンちゃん)のマーチなリズムを僅かに促し、観客の誰もが息を飲んで次に起こるであろう事を期待した。 やがてドラムのシンバルの連打と共にギターがパワーコードでリズムを刻み、ベースがルートを鳴らすとスポットライトがステージセットの高い位置に構える本日のライヴの主役を照らし出す。もちろん登場と同時に客席からは大歓声だ。 純白の衣装に、小さなシルクハットを頭に申し訳程度に載せた彼女は(「Fairy Tune」の歌詞にもシルクハットが出てくる。それをイメージしたものだろう)神々しささえ感じさせた。曲は自身のネットラジオ「radio minorhythm」のOPテーマとなっている「Prism in the name of hope」。スタートには正しく相応しい曲である。 客席も、程なくして「みのりん」コールが始まった。そして、サイリウム、あるいはペンライトが曲のメロディ&リズムに合わせ振られ一瞬にして一面が青い光に包まれた。ステージから見ればさぞや壮観なことだろう。 ステージはバルテノン神殿を思わせる柱のオブジェを何本か配置した二階建て(と言っても高さは10m弱ぐらいあり、かなり高さを感じた)のセットに、二階から中央とステージ下手に回り階段を要する”アルバム「Parade」のジャケットの世界観”を表現した様は昨年のツアーよりもあらゆる面で何倍もパワーアップした事を示していた。 そんな会場全体を見渡す事の出来る程のステージセットの天辺で 「名古屋行くよー」 と観客を煽る茅原さんに、アニメ声で喋る普段の可愛らしさは微塵も感じられない。 誤解を恐れず言えば、この時の彼女からは男らしい勇ましささえ醸し出していたぐらいである。 留まることなくギターの轟音と共に始まった2曲目「FUTURE STAR」も同じように勢いのある曲。息が切れることなく易々と歌い上げる彼女に、観客も「Hi Hi」や「Hey Hey」と歓声で応える。 ケニーのKeyソロも含み序盤からステージと客席はヒートアップだ。 優しげなピアノのメロディがイントロとなった次の「蒼い孤島」も、アルバム「Parade」の中では1、2を争うほど勢いのある曲。「Hi Hi」や「Hey Hey」という掛け声と「みのりん」コールが激しく交差した。特に「Sail」や「Fail」というフレーズで客席と一体化する様は爽快でもあった。 ここまではアルバム「Parade」の中から、割合、アップテンポで勢いのある曲を選曲してきたが4曲目は前作「Contact」アルバムから「too late? not late...」。 これもアップテンポな曲に分類されるものである。 ライヴ開始から4曲。ほとんど息つく暇なく全速力で駆け抜けた彼女もようやくここで小休止。 それでも全く息が上がっていないのは流石としか言いようがない。 「茅原実里のパレードへようこそ」で始まった最初のMCは「今日は、この愛知県芸術劇場で一つになりましょう。最後の最後までよろしく〜」と実に短かったが、それは経験豊かな女性ロックボーカリストさえ彷彿とさせるものだった。 5曲目「ふたりのリフレクション」のイントロ時には、しばしステージを捌けて衣装チェンジ。 赤い大きな花飾りを頭に付け、白に模様入りのワンピースを赤い巻スカート系でコーディネイトしたファンシーなその姿には登場と同時に大きな歓声があがった。 序盤の激しい曲から一転、可愛い曲調と声優時のアニメ声も入り交じった歌声で我々を包みこみ 彼女の「せーの」という掛け声による先導で左右に手を振り(もちろんほとんどがサイリュウム を持っている)乱れなく動作が決まれば、茅原さんも「綺麗だよ」という声もつい出てしまう。 続く「Fairy Tune」も「ふたりのリフレクション」と同系列で「Parade」アルバムの中で最もファンタジックな世界観を体現するものである。 また、この曲ぐらいからだろうか、今回のライヴツアーでの大きなサプライズ−バンドに初めて加わったヴァイオリン奏者が、その特徴的な弦の調べを遺憾なく発揮し楽曲に眩しい輝きを与えたのである。なんと素晴らしいことか! その後、始まった−2回目の、本日初の本格的なMCでは、会場の大きさにあらためて驚嘆し、1階から5階までの客席を順に目で追いながら「高いね〜」と更に驚く茅原さん。楽屋裏話として(会場の余りの広さに)「朝からどうしよう、どうしようと楽屋を走り回ってました」と笑いをとっていたが、確かにこの会場の大きさはステージから見れば尋常ではないだろう。追加のパシフィコ横浜公演を除けば、今回のツアーでは一二を争う会場の大きさなのである。 一言ずつ貰うことになりました−と茅原さんの約束決めで始まった『バンドメンバー紹介』もギターのナベちゃん(鍋島圭一)の「たばこは心の日曜日」というその後のツアーで定番となるフレーズもこの頃ではまだ新鮮であった。続く、今やバンドの顔、ドラムのガンちゃん(岩田康彦)が話し始めると或る意味、驚愕な話が。 なんと小学生にあがるまで(名古屋の)北区に住んでいたという事が語られたのだ。 昨年はそんな話など全くおくびにも出さなかったというのに...。 それからは正月に名古屋城を見学した話から何故か世界平和まで(笑)。ライヴ経験が長いと話題も豊富であった。 次がいよいよ初お目見えのヴァイオリン奏者、大先生室屋さん(室屋光一郎)の紹介。 彼は開口一番、客席を見て「凄いですね」と一言、述べた後、今までの茅原さんとの仕事内容を語った。 その後、茅原さんからの「大先生と呼んであげてね」のリクエストに、すぐさま「大先生!」の大歓声 には御本人も大いに照れていたのが印象的であった。 ベースのなおやん(山本直哉)は短めに自己紹介。 しかし、最後に「みんなついてきてくれるかな」とタモリ的な煽りを行えば、客席からは「いいとも〜」と即座に大きな反応が返ってくるなど、客の心を捉えるツボも忘れてはいなかった。 最後はバンマス、Key、ケニー(須藤賢一)が綺麗にまとめこのコーナーは終了した。 メンバー紹介の後は、茅原さんのこのツアーへ掛ける意気込み、昨年の「Contact」ツアー以来の出来事、アルバム「Parade」へ込めた思いをひとしきり語り、「Parade」への布石となったある曲への紹介へと移った。 これが客前では初披露というその曲は「雨上がりの花よ咲け」。 Contactの楽曲の世界観を一新したその明るい曲調はPVの映像でもはっきりと表されていた事が思い出された。 「雨上がりの花よ咲け」のエンディングで再び、ステージを捌けた茅原さん。ステージには大先生を含めたバンドメンバーだけが残された。 すかさず始まったインストのバンドジャム。これが非常にカッコ良い。 ケニーの鍵盤ソロを手始めに、ナベちゃんの目立ったリフ・バッキングで大先生がヴァイオリンソロを際立たせ、ミディアムテンポからアップテンポへとリズムが変わる中、ギターソロ、ドラムソロと各々が持てるだけの技量を披露していった。ジャムの終わりでは予想外のヴァイオリンの独奏。 これが次の「詩人の旅」へと繋がり、このスリリングな展開にはライヴ慣れしている私でさえも久々に鳥肌が立つ程であった。 「みんな行くよ」という茅原さんの高らかな宣言で歌い始めれば、客席からは「Hey Hey」と大きな反応が為された。 この時、ステージに現れた茅原さんの衣装は黒い上下のドレスに赤い衣装を重ね着したコーディネイトでファンにも人気あるこの曲を丁寧に、パワフルに熱唱し、大歓声を浴びた。 |
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1 | Prism in the name of hope |
2 | FUTURE STAR |
3 | 蒼い孤島 |
4 | too late? not late... |
MC 1 | |
5 | ふたりのリフレクション |
6 | Fairy Tune |
MC 2 (バンドメンバー紹介) | |
7 | 雨上がりの花よ咲け |
8 | Band Insturumental Jam |
9 | 詩人の旅 |
MC 3 | |
10 | 光 |
11 | その時僕は髪飾りを買う |
12 | Melty tale storage |
MC 4 | |
13 | Lush march!! |
14 | Voyager train |
15 | 輪舞-revolution |
16 | 君がくれたあの日 |
17 | Paradise Lost |
MC 5 | |
18 | 透明パークにて |
・・・Encore・・・ | |
19 | everlasting... |
MC 6 | |
20 | 純白サンクチュアリィ |
MC 7 | |
21 | 花束 |