田川ヒロアキ with Friends
Tour 2010 "Time to hit the Road"







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 5曲目もイントロから小気味よいギターカッティングが響いた。
 当初、私は何の曲が始まるのか全く判らないぐらいだったが歌が始まってようやく判った。それは地元、八王子で行われるWeekday liveでも度々、披露しているというBeatles「All My Loving」であったのだ。
 斬新なアレンジに私は衝撃を受けたが、アウトロのギターソロは田川さんらしいフレーズ満載でもはやBeatlesの曲というよりは田川さんの曲と云っても言い過ぎではなかった。
 「All My Loving」を終えると、田川さん以下、ファンキーさん、和佐田さんが一旦、ステージを下り其処には半田さんだけが残された。
 半田さんのソロコーナーの始まりである。
 このコーナーではオリジナルの「お気に入りの人」という曲が半田さんの弾き語りで披露された。メロウなピアノの調べに載せてしっとりと歌を聴かせる半田さんに、先程まで分厚い音を屈指してHRを奏でていたとは到底思えないぐらいであった。
 演奏を終えた半田さんに促された田川さんがたった一人でステージに再登場した時、彼の肩には見慣れない、真っ赤なテレキャスタータイプのギターが掛けられていた。これが、本ツアーに間に合わせるように製作されたという田川さん初のシグネイチャーギターである。
 ピックガードの無い深紅のボディはスポットライトによって本来持つ色以上にステージ上で栄えて見えた。
(そのギターのピックアップ配列はハムバッキング二つにシングル一つのHSH。これは長年、使用してきたAriaのレスポールタイプのギターに倣ったのかもしれない。)
 兎に角、ステージ初披露のこのギターは田川さんばかりでなく、我々、観客も大いに納得するほどの音を奏でてくれたのだった。
 半田さんの事を改めて紹介した後、ギターの調子を確かめるように田川さんの指がフィンガーボードを勢い良く滑っていく。もちろん、ネックを上部から握る”逆手奏法”によってである。
 クリーントーンで軽く爪弾いた後、歪んだ音でSweep Pickingを交えた早弾きを披露し、アンプからの出音を一通り確かめると(アンプはMarshallのJMD501というコンボタイプが一つ。)田川さんはギターのボリュームを絞っておもむろに話し始めた。
 ここでのトークは自分にとって、とても感慨深いものとなった。
なんと「ヘビーメタル・シンジケート」の話が出たからである。
 この愛知県が、放送エリア内であるというのもあるだろう。前述したように私にとってこの番組は特別なものである。それだけにこのサプライズは心に響いた。
 ただ、残念だったのは「ヘビーメタル・シンジケート」を話題にしても客席からは反応らしきものもなく静まりかえるばかりだった事。
 こうなったら私が率先して盛り上げていかねばと思い、それは結果的にステージ上の田川さんと私の間で会話のキャッチボールが行われる事となってしまったのだ。普通のライヴだったらこんな出しゃばった真似など絶対しない私だが、これも気心を知れた仲だったから成立した出来事だったと思う。
 そして−「ヘビーメタル・シンジケート」の話題が出たという事は案の定、私と田川さんの出会いとなった、あの曲−番組ジングルである「宛先ミュージック」を田川さんは唄い弾いてくれたのだった。



 『郵便番号 101-8454 東京都千代田区 神田 錦町 1の 12の 3の4F バーン ヘビーメタル シンジケート 御中』




 まざまざと蘇る、深夜のラジオから聞こえてきたあの旋律。

 ラジオで聴かれたように決して細部まで作り込まれた演奏ではなかったが、ギターを掻き鳴らし親しみ易いメロディラインを唄う田川さんは、10年を経ても本質は何も変わってはいなかった。ほとんど、私の為だけに演奏してくれた(?)田川さんに感謝したかった。
 ソロコーナー最後に用意されたのはJimi Hedlix「Little Wing」
 これまで、Eric Claptonをはじめとして近年ではアイルランドのThe Corrsなど様々なミュージシャンがカバーしてきたロッククラシックの金字塔である。
 この名曲を田川さんは、誰にも似ていない(唯一、その先進性から云うならばオリジナルであるジミヘンが一番近いのかもしれない)アプローチで掘り下げていく。間違いなく今回のライヴで白眉の一つであった。
 演奏後、客席はそのパフォーマンスの壮絶ぶりに唖然とし、それはしばし拍手を忘れた程であったが”凄い”という簡単な言葉だけでは言い表せない、言い表してはいけないほど厳粛な空気が其処には流れていた。
 感動的なパフォーマンスでソロコーナーを終え、再びバンドメンバーをステージに呼び入れた田川さんが10曲目に選んだのは、本日発売のCD「Keep Flying / やっと、ずっと」から初披露の「Keep Flying」だった。
 田川さんが『東京へ行くきっかけになった出来事を唄った』というこの曲は作詞に本格的に挑戦したという曲でもあり、Produceを担当したLoudnessの二井原実さんとファンキーさんが歌詞作りのアドヴァイスを行ったというスペシャルさが心をときめかせた。そういう事前紹介があった事もあるだろう。曲−特にサビの部分の歌メロなどに二井原さんが Loudnessやソロ作品で見せたスタイルの影響を感じさせた。いずれにしても田川さんのこれまでの楽曲とはひと味違うタイプであったのは確かであった。









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