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−Treasure every meeting , for it will never recur − 私が彼の事を知ったのは、今から10年ほど前の事である。 彼を語る上で、重要なキーワードはいくつかあるがその一つに日本のロック創世記の重要人物である成毛滋さんと、その成毛さんがMCを務めたラジオ番組「パープルエクスプレス」を挙げなければいけないだろう。 「パープルエクスプレス」は1982年から1991年の間、文化放送をキーステーションに全国津々浦々で土曜日の深夜、放送されていた伝説のギター講座ラジオ番組。HR/HMのギタープレイを音声のみというラジオの世界で、視覚的に教えるという或る意味、画期的な番組であった。 私も高校生の頃、偶然にこの番組を見付けそれ以来、土曜日の必聴番組となったが、田川さんも地元でこの番組を愛聴するリスナーの一人であった。 しかし、番組は惜しくも1991年に終了し「パープルエクスプレス」はもはやリスナーの間だけで静かに語られるものとなったが、ある時期からそれに新たな光が充てられるようになった。90年代後半から活発となったインターネット上での活発な意見交換がそれである。 その意見交換の場の一つに、番組でギターの巧みさから一リスナーからMCまで上り詰めた古川博之さんという(放送当時は学生)方が開いているサイトがあった。そのサイトの掲示板では日夜、ギターの弾き方や音楽の話題はもちろん、番組の思い出話、果ては日常の雑多の話題まで活発に話し合われ盛り上がっていたが、私はそのようなサイトが有る事など露知らず、私のこのHPを見た(機材頁で「パープルエクスプレス」の事を言及している為)ある方からメールで教えて頂き初めてその存在を知ったのだった。 それからというもの、私にとってこの掲示板は重要な情報源となりそれは今となってもなんら変わる事はない。 田川さんの事も、この掲示板で何度か話題になっていた。 『凄い盲目のギタリストが居る』 − と。 滅多に日本のギタリストを褒める事のない成毛さんも推すギタリストとは一体、何者なんだろうか?私は興味をそそられずにはいられなかった。 それから1年ぐらいが経っただろうか。また、もう一つのラジオ番組が田川さんとの出会いに華を添える事となった。その番組とは現在も放送中の「ヘビーメタル・シンジケート」という音楽番組である。 雑誌「BURRN !」を発行するバーンコーポレーション取締役社長(当時)である酒井康氏がパーソナリティを務めるこの番組では以前、プレゼントコーナーのジングルとして幅広く全国から募る企画を行っていた。HR/HM中心の音楽番組ゆえ、全国から腕自慢の猛者がHR/HMな演奏を投稿し、番組で毎週紹介された。それはあたかも公開オーディションのようであり、やがては番組の名物コーナーともなっていった。 そして−そのコーナーに他の投稿者とは一線を画す演奏と楽曲を応募する者が現れた。誰あろう、それが田川さんであった。 噂に聞く田川さんがなぜ、ここに?と私は最初、訳が判らなかったが彼が作り出した音楽には人を惹き付ける確かな力があり、私もすぐに夢中となった。そこで私は興奮しながらも早速、古川さんの掲示板へ書き込みを行ったのだった。 半年後、田川さんもこの掲示板に現れると交流が始まりそれは今なお続いている。 あれから10年。 今、思い出してもあのジングルを聴いた時の感動と興奮は忘れる事が出来ない。 投稿者の多くがテクニックをひけらかすだけの早弾きや奇抜さだけで個性を主張しようとする中で、田川さんの演奏と歌には文字通り、歌心があり彼独自のスタイルが確立されていたのだ。後日、この頃既に地元で楽曲制作などセミプロ的な音楽活動を展開していた事を知ったが、それも私には至極、納得できるものであった。 − Time to hit the Road − 田川さんの演奏は、2007年の二井原実ソロツアーで初めて目に触れて以来、横田基地での二井原実バンド・イベント、今年5月の、和佐田パーティと計3回見ていた。 しかし、田川さんのソロとしての場面はその中でも数えるぐらいしかなく、彼の魅力の一つである歌を聴かせるシーンがほとんどなかったのもファンとしては物足りなさがあった。 それだけに、今回のソロライヴは今までの不満を払拭出来るものとして大いに期待していたのだった。 ライヴは全国的にも名の知れたライヴハウス、Erectric Lady Land −通称 E.L.Lの3号店とも云うべきell.SIZEという処で行われた。私にとって此処は未踏の地でもあった。 ライヴは今ツアーのオープニングアクトである竹内藍さんのパフォーマンスから始まった。竹内さんは和佐田パーティの時も参加されていた和佐田達彦さんの秘蔵っ子である。演奏も当然、和佐田さんがベース、Keyには田川さんのバックも務める半田すなおさんが脇を固め竹内さんはボーカル選任という形をとっていた。和佐田パーティでは竹内さんがKeyも兼務され全編、弾き語りスタイルだっただけにこれはこれで新鮮であり、半田さんの煌びやかなフレーズは竹内さんの曲に良くマッチしていた。 最後の曲を従来のたった一人の弾き語りで終えた竹内さんがステージを捌けるといよいよ、田川さんのライヴが始まった。 暗闇の中、慌ただしくバンドメンバーがそれぞれ所定の位置につこうとしていた。 一旦、ステージを降りた和佐田さん、半田さん、そして後ろのドラムキットにはファンキー末吉さんの姿が見えた。 最後に本日の主役、田川ヒロアキさんがマネージャーのMさんに手を引かれ登場、アンプにプラグインしてスタンバイOK。ギターはお馴染みの濃紺ストラトタイプのギター。サドウスキー製である(Sadowsky R1 Deep Blue Metallic)。 場内を優しく包んでいたCCRの「雨をみたかい」が田川さんの合図でボリュームが絞られると半田さんのキーボードから分厚いコードフレーズが鳴り響き始めた。半田さんの演奏が数小節続くとそこに田川さんのギターが鋭く突き刺さる。曲はお馴染みの「Seascape」。ライヴの幕開けには相応しい曲である。 ほぼ無伴奏ソロとして始まった「Seascape」の後を引き継ぐようにドラム、ベース、Keyが渾然一体となったバンド演奏が始まると、やがて聞き慣れたギターリフが耳朶を打った。昨年、発売された初のソロアルバム「FLY AWAY」に収録された「Passion On The Strings」である。 遂にこの曲で、私は田川さんのボーカルを聴く事が叶った。Helloween ばりのスピードメタルに歌を載せる。とてもじゃないが私には真似出来ない芸当だ。中間部のギターソロにおいては、田川さん十八番のSweep Pickingも冴え渡り素晴らしい。 再び、インストに戻った3曲目はアルバムのタイトルトラックである「Fly Away」。 イントロから猛烈な早弾きが披露されるが、メインはロングトーンを生かしたメロディアスなフレーズだ。その合間合間にもSweep Pickingなどオカズを入れてライヴらしさを出しているのが嬉しい。 オープニングから3曲、途切れなくフルスロットルで駆け抜けた田川さんだったが、ここでひとまず小休止。中央マイク前に躙り出た田川さんが挨拶に立ち、我々観客に謝辞を述べた。 4曲目「Journey In My Heart」は驚きのアレンジで始まった。 「Journey In My Heart」と云えば、田川さんが長年、演奏してきたファンには定番とも云える曲なのだがイントロからカッティング中心のファンク色豊かな曲へと変貌し、吃驚してしまった。それに加えて唄うメロディも所々、節回しを変えてかなりアグレッシブだ。中間部、アウトロのギターソロもオリジナルとは全く違うライヴ仕様に私の心を熱くさせた。 |
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SET LIST | |
1 | Seascape |
2 | Passion On The Strings |
3 | Fly Away |
4 | Journey In My Heart |
5 | All My Loving (Beatles) |
6 | お気に入りの人(半田すなお) |
−Solo Corner− | |
7 | Introduction |
8 | 「HEAVY METAL SYNDICATE」宛先ミュージック |
9 | Little Wing (Jimi Hendlix) |
10 | Keep Flying |
11 | 男なら (YOSAKOI SONG) 〜 Key/Ba/Dr Solo |
12 | Get Back (Beatles)with ポツダムレッドけいじ |
13 | たいやきやいた (爆風スランプ)with ポツダムレッドけいじ |
14 | 平和の風 |
15 | My Eternal Dream |
・・・Encore ・・・ | |
16 | やっと、ずっと |