秘 訣 6
投てき方向を向いたまま投げるな

「投げる方向に顔を向けて投げる」

 例えば,V字・回転投法において,投てき方向(海側)に振り向いてから,顔を投てき方向に固定して投げ込め,そうしないと方向が安定しないなどと忠告を受けたようなことはないでしょうか。
 このことは,ねらいを付けた方向に真っ直ぐ飛ばすための,投げの基本のように扱われています。
 しかし,遠投というフルキャスト行うにはこのような動作は不適切です。

 力一杯投げ込む(押し込む)には,身体のねじれを必ず必要とします。
 V字・回転投法など構えた段階で投てき方向に背を向ける投げ方では,当然のように顔(頭)を先行させて首をひねる動作を行います。
 重要なことは,振り向いてからの顔(頭)をどうするかです。通常は,そのまま正面を向き上方を見つめるように投げ込んでいないでしょうか。ふり向いてからはMAXパワーをもってロッドを押し込んでいきますが,その際に顔を正面に固定したままではロッドに力を入れることはできません。フィニッシュに向かって顔(頭)がずれても気にすることはなく,左肩の動き(回転)に合わせるように(意識としては左肩の動きをリードするように)ねじっていくのです。ここで注意しなければならない点は,積極的に首を振ろうとはしないことです。必ずと言っていいほどロッドを振りすぎてしまいます。
 この首(顔・頭)の先行によって,より効率的に上半身(特に肩)を回転させることができ,ラインリリース直前の力強い押し込みを可能とします。顔は左肩に沿ってぶれることになりますが,押し込んだあとには意識しなくても再び元に戻ります。

 野球のピッチャーや外野手が全力投球をする動きも全く同じです。目標をそのまま向いているのではなく,腕をスウィングさせる時には必ず首は左にねじっています。上半身の回転を利用する投てき競技にはこの動作が必ず組み込まれているのです。

 もしも,この動作を行わないとどうなるでしょうか。
 オモリは右方向に飛んでいくことになるでしょう。仮にまっすぐ飛んだとしても,腕だけで調整して方向性を合わせただけで最長は望めません。

 このようなモーションは目線を切ることになり危険であるとの見方があります。しかし,オモリはもともと見えづらいネズミ色の小さな物体であって,しかも後方頭上から飛行していくものですから,正面を見続けたとしても常にその軌道を捉えようとするのは無理があります。ですから,目線を切らないようにすることにこだわる必要はありません。
 危険・安全の観点で言えば,目でオモリを追うことよりも,投げた瞬間に,右か左かに飛んでしまったことを体感できないことの方が大きな問題です。いいかえれば,正面を向く向かないに関わらず,ラインリリースした直後にオモリの飛行方向が分からないようならば,安全の見地からフルキャストはできないということになるのです。

※飛距離を調整するようなキャストでは,正面を向いたままでも問題ありません。これは,あくまでもフルキャストの場合です。

 「投げる方向に頭を固定して投げる必要はない!」です。