今となっては想像するべくもないが、かつての日本競馬は明らかに「短距離軽視」という風潮が主流で、4歳馬以上の重賞レースには長い間1,200mのレースは存在しなかった。そのようななか、1967年に4歳以上の馬にとって唯一の1,200m重賞競走として新設されたのが、このスプリンターズステークス。第1回の優勝馬はオンワードヒル(騎手:牧野三雄)。
その後、1984年のグレード制導入と同時にGVに格付けされ、3月開催ということもあって安田記念のトライアルレース的な色彩を持たされていた。87年にはGUに昇格したものの、開催時期の問題などもあって今1つメンバーには恵まれないでいた。
しかし、90年、短距離路線をさらにマイル路線とスプリント路線へと細分化させようという動きのなか、スプリンターたちの頂点を決める競走として、1,200mの競走で初めてGTレースに認定された。GT昇格後の最初の優勝馬はバンブーメモリー(騎手:武豊)。1分7秒8のレコード勝ちで、「電撃の6ハロン」競走初のGTとして強烈な印象を残した。
94年からは外国馬にも門戸を開放し、国際競走として海外からスピード自慢のスプリンターたちが参戦してきているが、最高成績は95年のソーファクチュアルの3着で、連対馬はまだ出ていない。GT昇格後の優勝馬は97年までは全て1番人気馬か2番人気馬で、単勝はかなりカタく収まる傾向にあったが、98年は一転。これが引退レースになるタイキシャトルで磐石とレース前は思われていたものの、ゴール前に差し切り勝ちを見せたのは7番人気の伏兵マイネルラヴ(騎手:吉田豊)。タイキシャトルはシーキングザパールの逆転も許し、3着と若干不本意な形で競走生活を締めくくることになった。一方、馬券的にはタイキシャトルがとんだことによって馬連は15,920円と万馬券となった。
99年はそれまで同様に2番人気−1番人気というカタい決着となっものの、昨年、またしてもスプリンターズステークスは大波乱の舞台となった。1着となったのは、シンガリ16番人気のダイタクヤマト(騎手:江田照男)。単勝は25,750円、2着が1番人気のアグネスワールドであったにもかかわらず馬連も25,700円の大荒れとなった。
歴史に残る名勝負としては、96年のフラワーパークとエイシンワシントンの大接戦。同着と言っても差し支えないほどの僅差で、写真判定は10分以上にも及んだ。その結果、その差1cmという本当の意味での「ハナ差」でフラワーパークに凱歌があがった。ちなみに、GT昇格後に牝馬で勝利を収めたのは3頭。91年ダイイチルビー(騎手:河内洋)、92年ニシノフラワー(騎手:河内洋)、そして96年フラワーパーク(騎手:田原成貴)。そのいずれもが、それ以前にGT勝ちの経験がある馬だった。
GT昇格後は、一貫して12月第3週、最終開催の中山6日目に行われていたが、2000年からは9月の中山開催最終8日目へと時期が移行され(カレンダーの都合で2000年は10月1日開催)、秋GTの第1戦として生まれ変わった。
年度 | 優 勝 馬 | 性別・ 年齢 |
重量 | 騎 手 | 人気 | タイム | 馬場 状態 |
1991 | ダイイチルビー | 牝5 | 55 | 河内洋 | 2 | 1.07.6 | 良 |
1992 | ニシノフラワー | 牝4 | 53 | 河内洋 | 2 | 1.07.7 | 良 |
1993 | サクラバクシンオー | 牡5 | 57 | 小島太 | 2 | 1.07.9 | 良 |
1994 | サクラバクシンオー | 牡6 | 57 | 小島太 | 1 | R1.07.1 | 良 |
1995 | ヒシアケボノ | 牡4 | 55 | 角田晃一 | 1 | 1.08.1 | 良 |
1996 | フラワーパーク | 牝5 | 55 | 田原成貴 | 1 | 1.08.8 | 良 |
1997 | タイキシャトル | 牡4 | 55 | 岡部幸雄 | 1 | 1.07.8 | 良 |
1998 | マイネルラヴ | 牡4 | 55 | 吉田豊 | 7 | 1.08.6 | 良 |
1999 | ブラックホーク | 牡6 | 57 | 横山典弘 | 2 | 1.08.2 | 良 |
2000 | ダイタクヤマト | 牡7 | 57 | 江田照男 | 16 | 1.08.6 | 稍重 |
★タイムの「R」はレコード
★2000年までの馬齢表記は旧表記(数え年)を使用。
◎ 9.ダイタクヤマト
○ 6.ゼンノエルシド
▲ 2.メジロダーリング
△ 3.ジョンカラノテガミ
△ 1.ビハインドザマスク
まずはレース展開の予想から。ユーワファルコン、テネシーガールらの大逃げで、ハイペース→決め手勝負のレースになると私は見ました。
そうなると、浮かんでくるのはダイタクヤマト。前走は、「休み明け」「重め残り」「斤量59kg」の三重苦を克服して、最後にカルストンライトオをかわしての2着は「意義あり」だと思います。7枠もいいですね。2連覇、充分あるのではないでしょうか。
ゼンノエルシドは前走の内容を評価したいと思います。いかにハンデに恵まれたとはいえ、強い勝ち方でした。レコード勝ちですし。切れ味という点ではダイタクヤマトより上かもしれません。ただ、1,200mという距離には一抹の不安があります。また、一線級との対戦がない点も。とはいえ、勢いは買えます。
メジロダーリング、ここのところの強い勝ち方は評価するものの、中山の坂に若干の不安が残る分、この評価に留めました。とはいえ、控えて末脚爆発させた前走は圧巻でした。ハナにこだわらなくても勝てるようになったのもプラスでしょう。
さて、一昨年のこのレースの項でも紹介していたジョンカラノテガミが、遂にGT初挑戦となりました。このウマ、97年にジャパンカップ見にいったとき(勝ち馬はピルサドスキー)に未勝利戦走ってるのを応援して以来「いつか大舞台に」と密かに見守っていたのですが、紆余曲折を経てここまで来てくれました。感無量です。
で、予想ですが、最初は「いくらなんでも、このメンバーに混ざって走るには実力的にどうなかあ…」と半信半疑だったのですが、「調教は最高だった」と聞いては押さえずにはいられません。流れに乗れて脚をためることができれば、今の状態ならあるいは…と思います。期待しましょう。ちなみに、複勝はあくまでも「記念馬券」ですので(笑)。
ビハインドマスクは追い込みの脚の鋭さで押さえ。気性的にアテにならない部分はあるものの、ハマれば面白いと思います。ただ、昨年同様の最内枠はマイナスですね。仮柵を外したAコースでは、先行馬はこぞって馬場のいい内に殺到するでしょうし、そうなると追い込み馬の最内枠はキツいでしょう。コースロスを承知で外に持ち出すか、行き場がなくなるかもしれないのを承知で内を進むかの2択を迫られることになります(と、昨年と同じ文章をペーストしてみたりなんかして(笑))。あくまで「押さえ」です。
(単勝)
9.ダイタクヤマト 1,000円
(複勝)
3.ジョンカラノテガミ 500円
(馬連)
6−9 500円
2−9 500円
(ワイド)
6−9 500円
2−9 500円
2−6 1,000円
3−9 100円
3−6 100円
2−3 100円
1−9 100円
1−6 100円
1−2 100円
(合計) 5,100円
天候:曇 馬場状態:良
順位 | 枠番 | 馬番 | 馬名 | 性別・ 年齢 |
重量 | 騎手 | 人気 | タイム・ 着差 |
1 | 4 | 4 | トロットスター | 牡5 | 57 | 蛯名正義 | 4 | R1.07.0 |
2 | 2 | 2 | メジロダーリング | 牝5 | 55 | 田中勝春 | 3 | クビ |
3 | 7 | 9 | ダイタクヤマト | 牡7 | 57 | 江田照男 | 2 | ハナ |
4 | 6 | 7 | シンボリスウォード | 牡6 | 57 | 後藤浩輝 | 9 | 1/2 |
5 | 3 | 3 | ジョンカラノテガミ | 牡6 | 57 | 佐藤哲三 | 10 | アタマ |
6 | 1 | 1 | ビハインドザマスク | 牝5 | 55 | 福永祐一 | 6 | クビ |
7 | 7 | 10 | トキオパーフェクト | 牡6 | 57 | 木幡初広 | 12 | クビ |
8 | 6 | 8 | ブレイクタイム | 牡4 | 57 | 松永幹夫 | 5 | 3/4 |
9 | 8 | 12 | フィールドスパート | 牡3 | 55 | 藤田伸二 | 11 | 1/2 |
10 | 5 | 6 | ゼンノエルシド | 牡4 | 57 | 横山典弘 | 1 | ハナ |
11 | 5 | 5 | ユーワファルコン | 牡4 | 57 | 柴田善臣 | 8 | 1/2 |
12 | 8 | 11 | テネシーガール | 牝4 | 55 | 山田和広 | 7 | 4 |
★タイムの「R」はレコード
(単勝)4.810円
(複勝)4.270円 2.200円 9.120円
(枠連)2−4 2,950円
(馬連)2−4 3,000円
(ワイド)2−4 1,030円 4−9 510円 2−9 390円
トロットスターねえ…。鉄砲だし、太目っぽかったし、調教イマイチそうだったし…で消したんだけど、さすがGT馬ってところですかね。グイグイ伸びてきたのはさすがでした。逃げ馬のペースが速かったのに助けられてとはいえ7年ぶりのコースレコード更新だし、完勝でしょう。その強さは称えたいと思います。
そのトロットスターとタイム差なし、クビ差の2着に入ったメジロダーリング、ここ何戦かの強さは本物だった、って感じです。懸念されていた中山の坂も今では気にしていないようでしたし、ホントに強くなりました。「来年も現役続行」とのこと、高松宮記念に期待しましょう。
ダイタクヤマトも、3着とはいえ、よく頑張ったと思います。最後にメジロダーリングにハナ差屈したのは悔やまれますが、それはまあ勝負のアヤ。ディフェンディング・チャンピオンの名に恥じないレースぶりだったと思います。かろうじて2着−3着のワイドにからんでくれたことには礼を言わないといけませんね。
ゼンノエルシド、前走の反動か、はたまた「アブない1番人気馬」だったのか。これが「GTの壁」ってヤツなんでしょうか。手痛い洗礼を受けてしまった形になりました。
ジョンカラノテガミ、直線で内が空かなくて馬場の悪い外に持ち出した分だけ届きませんでしたが、この内容、この着順なら大健闘でしょう。やっぱり状態よかったんでしょうね。ぜひ来年の高松宮記念にも出てきてほしいものです。
よくよく考えてみれば、1着−2着の2頭は、一昨年のこのレースでトロットスター7着、メジロダーリング13着、昨年に至っては揃って除外されてたんですから…たった1年間でスプリント界はメンバーも力関係も大きく変わってしまった…ってことなんでしょうね。