有馬記念

(1999年12月26日 中山競馬場 芝2,500m)

 

(ごくごくかんたんなレースの説明)

 1年のGTロードを締めくくる年末最大の祭典「有馬記念」。しかし、その歴史は意外と浅く、春に日本ダービーやオークスで盛り上がる東京競馬場と比べて中山大障害以外にこれといって呼び物のレースがなかった中山競馬場に「暮の中山に日本ダービーに匹敵する大レースを創設しよう」と当時の日本中央競馬会理事長「有馬頼寧」が提唱したのを受けて、1956年12月23日に第1回が行われた「中山グランプリ」が前身。プロ野球のオールスター戦のように出走馬をファン投票で選出するという、当時としては画期的なシステムで話題となった。優勝馬は、前年の菊花賞を10馬身差で勝ち、この年の春には天皇賞も制しているメイヂヒカリ(騎手:蛯名武五郎)。
 翌57年1月9日、生みの親である有馬理事長が肺炎のために急逝。そのため、彼の功績を称えて、暮れの中山グランプリは「有馬記念」と改称されることになった。有馬記念という名称になって初めての第2回の優勝馬は、日本馬として初めて海外重賞を制覇したことで知られるハクチカラ(騎手:保田隆芳)。
 まさに年末を飾る「ドリームレース」であり、これまでも様々なドラマが生まれていき、幾多の名馬がウイナーとして名を連ねていった。古くは、ミハルカスに馬場のいい外をカットされながらさらに外のラチギリギリのところを回り「シンザンが消えた!」と観衆をして言わしめた荒技で勝利を収め、史上初の5冠馬に輝いた65年のシンザン(騎手:松本善登)、「あれは実質2頭立てのレースだった」と語った関係者もいるという、トウショウボーイとの壮絶なマッチレースの末に勝利を収めた77年のテンポイント(騎手:鹿戸明)、2番人気の4歳2冠馬ミホシンザンを4馬身差ちぎって連覇を達成し、実況でも「もはや国内に敵はなし」と叫ばれた85年のシンボリルドルフ(騎手:岡部幸雄)。ここ10年では、天皇賞・秋6着、ジャパンカップ11着から「奇跡の復活」で涙のラストランを飾った90年のオグリキャップ(騎手:武豊)、14番人気ながらレコード勝ちし、単勝13,790円の大波乱に実況アナも「これはびっくり」と絶句していた91年ダイユウサク(騎手:熊沢重文)、骨折明けで前年の有馬記念から1年ぶりの実戦となるレースを制覇し、ファンのみならず鞍上田原成貴の涙をも誘った93年 のトウカイテイオー(騎手:田原成貴)、10年ぶりの3冠制覇に続いて並み居る古馬を完封して「現役最強」をアピールした94年のナリタブライアン(騎手:南井克巳)…etc.、その年その年ごとに印象深いシーンを我々に見せてくれている。
 不思議と、ここ10年5歳馬の勝利はない。6歳馬との1kgの斤量差のせいであろうか。また、1番人気馬の成績も今1つであり、1着2回、2着3回。不思議と「ドンデン返し」や「感動の結末」が数多く出ているレースである。昨年は、毎日王冠5着、アルゼンチン共和国杯6着と3歳時の勢いがウソのように凡走を繰り返していたグラスワンダー(騎手:的場均)が、復活を高らかにアピールするV。意外ではあるが、外国産馬が有馬記念で勝利を収めたのは初めてのことであった。
 これがラストランと宣言している4冠馬スペシャルウィーク、連覇がかかるグラスワンダー、昨年2着の借りを返したいメジロブライト、悲願のGTを手中にしたいステイゴールド、4歳代表として古馬の胸を借りるテイエムオペラオー、ナリタトップロード…。役者は揃った。1年納めの大1番。今年のドラマは…どういう結末が用意されているのであろうか?

(過去10年間の勝ち馬)

年度 優 勝 馬 性別・
年齢
重量 騎 手 人気 タイム 馬場
状態
1989 イナリワン 牡6 56 柴田政人 R2.31.7
1990 オグリキャップ 牡6 56 武豊 2.34.2
1991 ダイユウサク 牡7 56 熊沢重文 14 R2.30.6
1992 メジロパーマー 牡6 56 山田泰誠 15 2.33.5
1993 トウカイテイオー 牡6 56 田原成貴 2.30.9
1994 ナリタブライアン 牡4 55 南井克巳 2.32.2
1995 マヤノトップガン 牡4 55 田原成貴 2.33.6
1996 サクラローレル 牡6 56 横山典弘 2.33.8
1997 シルクジャスティス 牡4 55 藤田伸二 2.34.8
1998 グラスワンダー 牡4 55 的場均 2.32.1

  ★タイムの「R」はレコード

    

(Ryuの予想)

   ◎ 7.グラスワンダー
   ○ 13.メジロブライト
   ▲ 10.ツルマルツヨシ
   △ 5.ステイゴールド
   △ 11.テイエムオペラオー

 予想とは関係ないんですが、まずこの件については触れずにはいられないので…。
 大川慶次郎さんが亡くなりました。私が競馬に興味を持ち始めた頃から、いろいろな本を読んで知識を仕入れてた頃、馬券に手を出すようになった頃、そして、このコンテンツをオープンして予想なんて嗜むようになった頃、と、ずっと大川さんの予想やそのスタイルを参考にさせてもらっていました。また、予想のみならず、競馬に関する大川さんの真摯な態度は、1人の競馬ファンとして私のお手本でした。あまりに突然、私たちの前から姿を消してしまった大川さん。最後となった「日刊スポーツ」のコラムで、レジェンドハンターの件(地方在籍馬がクラシック出走に関してJRA在籍馬と比べて不利が大きい現行システム)について触れて警鐘を鳴らし、「本当に強い馬がぶつかり合うクラシックが見たい」と主張されていたのが思い出されます。2000年のクラシック、天の大川さんも満足してくれるような内容になってくれればいいなあと思います。ご冥福をお祈りします。そして、今までありがとうございました。
 さて予想。まず、最初に問題にしなければならないのは、スペシャルウィークの取捨選択について。スペシャルウィークが強いウマであることには今さら異論を差し挟む余地はありませんが、こと今回になると…どうなんでしょうか。京都大賞典から中2週で天皇賞・秋、天皇賞・秋から中3週でジャパンカップ、しかも、そのGTいずれをも1着(しかも天皇賞はレコード)したウマですよ。やはり、目に見えない微妙な疲れはたまってきているのではないでしょうか。天皇賞やJCを100とすると、いいとこ90〜95の出来なのではないでしょうか。もっとも、全然よさそうに見せなくても本番ではキメてしまうのがこのウマの特徴なんですけど…。どんなもんなんでしょうか。
 ここで物差しにしたいのは、2年前、97年の年度代表馬エアグルーヴです。天皇賞・秋1着→ジャパンカップ2着で、有馬記念では3着に入りました。ただ、エアグルーヴは天皇賞が秋緒戦でした(その前走は札幌記念)。つまり、スペシャルウィークの方が秋1戦余分に使ってるんです。実力的にはスペシャルウィークの方が上なのかもしれませんけど…連をはずす可能性もなしとは言い切れないでしょう。
 というわけで、評価を下げます。というか、思い切って消してしまいます。これでスペシャルウィークが来たら「あんたにゃ脱帽だよ。あんたの実力読み切れなかったわしがチンケだった。ごめん。あんたのこと忘れない」と素直に謝ってしまいましょう。でも、中途半端に△なんて打つよりは、いっそのことキレイに無印にしてしまいたいです。それが、今は亡き大川さんに教わったやり方。
 ◎はグラスワンダー。ただ、強いことは強いけど、彼だって磐石というわけじゃないですよ。毎日王冠の次にジャパンカップを使えなくて順調さを欠いた点は不安材料。でも、やっぱり地力ではNo.1でしょう。「連」という点では信頼置ける軸候補かも。中山は得意だし、状態も悪くなさそうだし。「5歳馬は過去10年1着なし」なんてデータもあるけど、去年から私が主張しているように「今年の5歳馬は強い」んです。エルコンドルパサーは引退して、セイウンスカイも休養しちゃったけど。思い切って、単勝も買ってしまいましょうか。
 ○はメジロブライト。昨年の2着馬です。前走11着は、展開が向かなかったのと、距離が足りなかったのが原因でしょう。今回はミディアム〜スローのペースが予想されるし、そうなると、このウマの末脚が活きるのではないでしょうか。距離延長も好材料。軽視は禁物です。
 末脚といえば、本来なら続く▲にはテイエムオペラオーを抜擢するところ…なのですが、評価を下げました。理由は、ローテーションです。菊花賞から直行なら▲、ヘタしたら○だったのですが、なぜ陣営はステイヤーステークスなんぞ使ったのでしょうか。ムダな1戦に見えなくもありません。まあ、皐月賞までのローテを見ると使い減りのしなさそうなタイプなので、大丈夫な可能性もありますけど。というわけで、消しはしませんが、△までとします。でも、あの上がりの脚は魅力的です。鞍上も、前走のテツは踏まないことでしょう。僕個人としては、今年の4歳で1番魅力的なウマはテイエムオペラオーです。あ、ちなみに、ナリタトップロードは、嫌いじゃないし、応援はしたいけど、人気になり過ぎのような気がします。菊花賞は相手は実質テイエムオペラオーとアドマイヤベガの2頭だけだったと言っても過言ではありませんが(ま、結果的にラスカルスズカは頑張ったけどね)、今回はそうはいかないはずです。オペラオーと違って古馬初挑戦なのも気がかりなところです。「だって、菊花賞馬はけっこう良績残してるじゃん」と言うアナタ、じゃあ、連に絡んだ菊花賞馬の勝ちタイムと、 トップロードの勝ちタイムを比べてごらんなさいな。ビワハヤヒデにしても、ナリタブライアンにしても、マヤノトップガンにしても、みんな優秀な時計でしたわよ。私、いまだに「トップロードには距離の壁があるのでは…」という疑念が拭い去れないんですよ。菊花賞はラスト600mだけの競馬だったし。というわけで、思い切ってトップロードも消し。菊花賞のような粘り見せて2着に残ったら、そんときゃ笑って諦めますがな。
 代わって、▲にはツルマルツヨシを抜擢します。いや、ステイゴールドとどっちを▲にしたもんかなあと思ったんですけど…今回はツルマルツヨシ。いや、このウマ、必ずGTを取れる器だと思いますよ。前走の敗因は明らかだし。長距離輸送を克服できなかった点と、中2週だった点。美浦に長期滞在し、天皇賞・秋からたっぷり間隔を取り、どちらも今回はクリアしているとあっては、買わずにはいられません。6年前のトウカイテイオー以来となるシンボリルドルフ産駒のGT制覇なるか?
 一方のステイゴールド。いや、これこそ「なんとなく…」なんですけど。大笑いしたのは、馬連の配当に対して、ワイドの配当が異常に安いこと。みんなこいつに3着期待しているとしか思えません。でも、「悲願のGT」までは届かなくても、2着なら十分圏内だと思います。夢を買って、強気に馬連で勝負します(←後でめっちゃ後悔したりして…)。

(Ryuの買い目)

   (単勝)
    7.グラスワンダー  2,000円
   (馬連)
    7−13 3,000円
    7−10 2,000円
    10−13 2,000円
    5−7 2,000円
    5−10 2,000円
    5−13 2,000円
    7−11 2,000円
    11−13 1,000円
    10−11 1,000円
    5−11 1,000円

   (合計) 20,000円

(レース結果)

   天候:晴 馬場状態:良 

順位 枠番 馬番 馬名 性別・
年齢
重量 騎手 人気 タイム・
着差
グラスワンダー 牡5 57 的場均 2.37.2
スペシャルウィーク 牡5 57 武豊 ハナ
11 テイエムオペラオー 牡4 55 和田竜二 クビ
10 ツルマルツヨシ 牡5 57 藤田伸二 1/2
13 メジロブライト 牡6 56 河内洋
14 ゴーイングスズカ 牡7 56 芹沢純一 14 クビ
ナリタトップロード 牡4 55 渡辺薫彦 1 3/4
12 ファレノプシス 牝5 55 蛯名正義 1 3/4
フサイチエアデール 牝4 53 福永祐一 10 アタマ
10 ステイゴールド 牡6 56 熊沢重文 1/2
11 スエヒロコマンダー 牡5 57 後藤浩輝 12 クビ
12 15 ダイワオーシュウ 牡6 56 柴田善臣 11 1/2
13 ユーセイトップラン 牡7 56 松永幹夫 13 3 1/2
14 シンボリインディ 牡4 55 横山典弘
インターフラッグ 牡7 56 岡部幸雄 (除外)

  ★8.インターフラッグは外傷性鼻出血のため発走除外。

   (単勝)7.280円
   (複勝)7.140円 3.140円 11.260円
   (枠連)2−4 450円
   (馬連)3−7 470円
   (ワイド)3−7 240円 7−11 620円 3−11 750円

 「これぞ世紀の名勝負!」みたいな感じにレース終了後にさんざん賞賛されたレースでした。が、私はのっけからその論調に冷や水をぶっかけるような言葉を浴びせたいと思います。「そんなに持ち上げるほどの勝負か?」。いや、グラスワンダー、スペシャルウィークともにほぼ100%のレースをしたと思います。「勝負は時の運」との言葉通り、ちょっとしたアヤが明暗を分けてしまっただけで、どちらも勝ちに等しい内容だったと思います。が、それとレースそのものの評価とは別物。私に言わせれば、レース自体は「よくあるレースの1つ。ことさらに祭り上げるほどの特別なレースではない」ということです。
 だって、だってよ、何よ、勝ちタイムの2分37秒2って。900万下のレースより1秒以上も遅くて、何が好勝負よ。そのような「超スロー」という条件のもとで最大限の好騎乗を果たした的場均、武豊両騎手はお見事だったと思います。それには異論はありません。ただ、たまたまゴール前でクロスゲームになったから名勝負に見えただけで、レース自体は「直線よーいドンの平々凡々なもの」と思います。
 本当のマッチレースって何なのでしょうか? ある人はナリタブライアンとマヤノトップガンが壮絶な叩き合いを演じた96年阪神大賞典を挙げるかもしれません(もっとも、マヤノトップガンに騎乗していた成貴さんに言わせると「あれはあくまでも前哨戦での勝負。あんなのは名勝負とは言えない」とのことですが)。また、ある人はオグリキャップとタマモクロスの「芦毛対決最終章」となった88年有馬記念を挙げるかもしれません。が、「究極のマッチレースを1つ」と言われれば、77年有馬記念、テンポイントvsトウショウボーイを挙げることに異論を挟む人は少ないでしょう。僕自身、当時8歳。確かTVで見ていたはずなのですが、内容まではよく覚えていません。当時はただ「テンポイントが勝ったー」と喜んでただけだったのですが。が、競馬をよく知るようになってから改めてこのレースを見ると、「ものすごいレースだったのだな…」と今さらながら思ってしまいます。もう、テンポイントはトウショウボーイしか見えず、トウショウボーイはテンポイントしか見えないまま、2,500mずーっと進んで、最後まで続いた叩き合い。このレースを見てから今年の有馬記念を見ると、口が裂け ても「好勝負」なんて言えません。
 ただ、繰り返しますが、レースそのものは平々凡々でも、勝ったグラスワンダー&的場均、敗れたスペシャルウィーク&武豊は、持てる能力を100%出し切ってくれたと思います。その点については、最大限の賞賛を送りたいと思います。ビデオで見る限りはスペシャルの方が分がいいように見えたのですが、首の上げ下げ…まあ、ナイス運とバッド運としかいいようがないですね。グラスは来年も現役続行とのこと。来年から外国産馬の天皇賞出走も一定枠内で可能になるので、史上初の「外国産馬天皇賞V」を目指してもらいたいものです(ただ、春はともかくとして、左回りの秋はちょっと厳しいかもなあ…)。一方のスペシャル。いや、天皇賞・秋1着、ジャパンカップ1着と来て、有馬記念がハナ差の2着なら、堂々と胸を張っていいと思います。今回のレースも、内容的には勝ちに等しいし。「競馬に勝って、勝負に負けた」という印象です。何より、無事走り切っての引退、種牡馬入りにはホッとしました。今度は産駒に夢がかかるところですね。
 さて、3着以下。テイエムオペラオーはやっぱりいいウマですね。最後の脚、いつもながら見事でした。上位2頭には及びませんでしたが、4歳でこれだけの勝負ができれば大したものです。来年の天皇賞・春でのグラスとの再戦が楽しみです。一方のクラシックホース、ナリタトップロード。引っ掛かり気味でしたね。スローに若干折り合い欠いたのかもしれません。
 ツルマルツヨシは…いや、もっと強いウマだと思うんだけど、いつかはGTに手が届くと思うんだけど、何かが足りないのかなあ。来年、ですな。メジロブライトは、現時点では精一杯のレースだったとは思いますが…全盛時ほどではないように思います。
 さて決算。いや、僕のような買い方だと「勝つときは小さくて、負けるときは大きい」よね。惨敗。春に続いて。来年頑張ります。嗚呼。

(最終収支決算)

   (支出)−20,000円 + (収入)+5,600円 = (合計)−14,400円

   <今秋の合計> −35,100円(3勝7敗)

 

  

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