スプリンターズステークス

(1999年12月19日 中山競馬場 芝1,200m)

 

(ごくごくかんたんなレースの説明)

 今となっては想像するべくもないが、かつての日本競馬は明らかに「短距離軽視」という風潮が主流で、4歳馬以上の重賞レースには長い間1,200mのレースは存在しなかった。そのようななか、1967年に4歳以上の馬にとって唯一の1,200m重賞競走として新設されたのが、このスプリンターズステークス。第1回の優勝馬はオンワードヒル(騎手:牧野三雄)。
 その後、1984年のグレード制導入と同時にGVに格付けされ、3月開催ということもあって安田記念のトライアルレース的な色彩を持たされていた。87年にはGUに昇格したものの、開催時期の問題などもあって今1つメンバーには恵まれないでいた。
 しかし、90年、短距離路線をさらにマイル路線とスプリント路線へと細分化させようという動きのなか、スプリンターたちの頂点を決める競走として、1,200mの競走で初めてGTレースに認定された。GT昇格後の最初の優勝馬はバンブーメモリー(騎手:武豊)。1分7秒8のレコード勝ちで、「電撃の6ハロン」競走初のGTとして強烈な印象を残した。
 94年からは外国馬にも門戸を開放し、国際競走として海外からスピード自慢のスプリンターたちが参戦してきているが、最高成績は95年のソーファクチュアルの3着で、連対馬はまだ出ていない。GT昇格後の優勝馬は97年までは全て1番人気馬か2番人気馬で、単勝はかなりカタく収まる傾向にあったが、98年は一転。これが引退レースになるタイキシャトルで磐石とレース前は思われていたものの、ゴール前に差し切り勝ちを見せたのは7番人気の伏兵マイネルラヴ(騎手:吉田豊)。タイキシャトルはシーキングザパールの逆転も許し、3着と若干不本意な形で競走生活を締めくくることになった。一方、馬券的にはタイキシャトルがとんだことによって馬連は15,920円と万馬券となった。
 歴史に残る名勝負としては、96年のフラワーパークとエイシンワシントンの大接戦。同着と言っても差し支えないほどの僅差で、写真判定は10分以上にも及んだ。その結果、その差1cmという本当の意味での「ハナ差」でフラワーパークに凱歌があがった。ちなみに、GT昇格後に牝馬で勝利を収めたのは3頭。91年ダイイチルビー(騎手:河内洋)、92年ニシノフラワー(騎手:河内洋)、そして96年フラワーパーク(騎手:田原成貴)。そのいずれもが、それ以前にGT勝ちの経験がある馬だった。
 GT昇格後は、一貫して12月第3週、最終開催の中山6日目に行われていたが、来年2000年からは9月の中山開催最終8日目へと時期が移行され(2000年はカレンダーの関係で10月1日開催)、秋GTの第1戦として生まれ変わることになる。

(過去10年間の勝ち馬)

年度 優 勝 馬 性別・
年齢
重量 騎 手 人気 タイム 馬場
状態
1989 ウィニングスマイル 牡7 57 田村正光 1.09.3
1990 バンブーメモリー 牡6 57 武豊 R1.07.8
1991 ダイイチルビー 牝5 55 河内洋 1.07.6
1992 ニシノフラワー 牝4 53 河内洋 1.07.7
1993 サクラバクシンオー 牡5 57 小島太 1.07.9
1994 サクラバクシンオー 牡6 57 小島太 R1.07.1
1995 ヒシアケボノ 牡4 55 角田晃一 1.08.1
1996 フラワーパーク 牝5 55 田原成貴 1.08.8
1997 タイキシャトル 牡4 55 岡部幸雄 1.07.8
1998 マイネルラヴ 牡4 55 吉田豊 1.08.6

  ★89年まではGU。
  ★タイムの「R」はレコード

    

(Ryuの予想)

   ◎ 10.ブラックホーク
   ○ 5.アグネスワールド
   ▲ 1.マサラッキ
   △ 13.キングヘイロー
   △ 16.マイネルラヴ
   △ 6.レッドチリペッパー
   △ 3.キョウエイマーチ

 まったくの余談なのですが、3歳の頃から追っかけているマイブームのウマがいます。その名は、ジョンカラノテガミ。97年ジャパンカップを見に行ったとき、同日の未勝利戦に出ていたウマです。あんまり名前がおかしくてかわいらしいので複勝100円買ったら、きっちり2着に入ってくれて200円にして返してくれたという…。それ以来、密かに見守り続けてきていました。かつて「風来坊」でも取り上げたことがあったのでご記憶の方もいることでしょう。
 今回のスプリンターズステークス、そのジョンカラノテガミも登録していました。が、いかんせん本賞金2,100万の格上挑戦の身ではいかんともしがたく、あっさりと除外されてしまいました。がくー。新潟の1,200mレコードホルダーでもあるだけに、除外されなければちょっとだけ楽しみだったのですが…まあ、またの機会を待ちましょう。
 では、本題に入ります。
 今回のレース、フランスGT馬アグネスワールドが断然の1番人気になるであろうと思われます。僕も最初は「今回はアグネスワールドで鉄板」と思っていました。が、ここに来て、考えが揺らいできました。「アグネスワールドが勝ったのって、小倉の北九州短距離ステークスといい、アベイユ・ド・ロンシャン賞といい、平坦コースだけだよなあ。最後に坂のある中山で大丈夫なのかなあ…」という考えが頭によぎってきたのです。
 昨年もここで言った通り、僕は、「1,200mのレースは、1,200mのスペシャリストが来る」と思っています。ただ、平坦小回りの中京競馬場で行われる高松宮記念と違って、坂のある中山競馬場で行われるスプリンターズステークスでは、これまでも「マイルより1,200mの方が得意だけど、マイルでもある程度実績を残せているウマ」の方が良績を残しています。バンブーメモリー、ダイイチルビー、ニシノフラワー、タイキシャトル…いずれもマイルのGTも制した経験のあるウマです。それはなぜかというと、「中山の最後の坂を駆け上がるだけの底力が求められているから」に他ならないでしょう。超スプリンターがスピードで押し切るのではなく、マイルにも対応できるスプリンターが最後に力でねじ伏せる、スプリンターズステークスはそういうレースだと思います。
 アグネスワールド、確かに1,200mまででは無敵です。しかし、マイル実績に見劣りがします(シンザン記念2着はもはや実績とは言えまい)。崩れるときにはあんがいモロく崩れてしまうのではないでしょうか。というわけで、◎は打ちません。とはいっても、○以下には評価は下げられませんけど。やっぱり1,200mでは強いし。
 そこで、今回僕が◎に抜擢したのはブラックホーク。マイルチャンピオンシップ3着はエアジハードを負かしにいってのもので、マイルでも対応する力がありそうだし、1,400mのスワンステークスでは勝ってるし。もしかしたら、1,200〜1,400mの方がいいウマなのかもしれません。これまで成長を妨げてきた脚元の不安もなさそうだし、狙いどころでしょう。
 軸は上記2頭で固いとして、続くヒモ候補。▲には高松宮杯馬マサラッキ。やっぱり、1,200mのスペシャリストは捨て切れません。前走CBC賞もそこそこだったし。ただし、中山での実績が乏しい点はその分だけマイナス。このウマも「平坦巧者」だったらどうしよう。
 キングヘイローの取捨は迷いました。初めての1,200mがどう転ぶか、とんと検討つかなかったからです。が、最終的には「中山記念で勝ってるから中山の坂もノープロブレム。1,200mは…かかりやすい性分からすると、むしろいいのかも」と買うことにしました。ここで好走するようなら、来年こそマイル〜スプリント路線で暴れてくれるかもしれません。
 マイネルラヴ、本当ならバッサリ切るところなんだけど…中山での実績がある(なんといっても昨年の勝ち馬!)だけに切れませんでした。前走はトンコロでしたが、このウマ案外惨敗の次走の方が良績残してるし、これも人気落ちしている分だけ狙い目かもしれません。
 さて、今回はWINSで買うので、初のワイド馬券を購入したいと思います。候補はレッドチリペッパー。いや、後ろからの差しがハマれば、3着はあるかな、と。穴候補です。ワイドでもかなりの配当になるし、いってみましょ。そして、キョウエイマーチ。いや、これは「ありがとうキョウエイマーチ、さようならキョウエイマーチ記念馬券」です(←かってにこれで引退って決めるなよ…)。総流しにしようかとも思ったけど、さすがに薄そうなところは切りました。複勝も記念に100円だけ買います。

(Ryuの買い目)

   (単勝)
    10.ブラックホーク  500円
   (複勝)
    3.キョウエイマーチ  100円
   (馬連)
    5−10 2,500円
    1−10 1,000円
    1−5 1,000円
    10−13 1,000円
    5−13 1,000円
    10−16 600円
    5−16 600円
   (ワイド)
    6−10 200円
    5−6 200円
    1−6 200円
    6−13 200円
    6−16 200円
    3−10 100円
    3−5 100円
    1−3 100円
    3−13 100円
    3−16 100円
    3−6 100円
    3−4 100円
    3−8 100円
    3−9 100円
    3−14 100円
    3−15 100円

   (合計) 10,400円

(レース結果)

   天候:晴 馬場状態:良 

順位 枠番 馬番 馬名 性別・
年齢
重量 騎手 人気 タイム・
着差
10 ブラックホーク 牡6 57 横山典弘 1.08.2
アグネスワールド 牡5 57 武豊 クビ
13 キングヘイロー 牡5 57 福永祐一 1 1/2
16 マイネルラヴ 牡5 57 蛯名正義 クビ
レッドチリペッパー 牝4 53 M.ロバーツ クビ
11 シンコウフォレスト 牡7 57 四位洋文 12 1/2
14 トロットスター 牡4 55 J.ムルタ 13 3/4
セレクトグリーン 牡5 57 田中勝春 クビ
マサラッキ 牡7 57 藤田伸二 クビ
10 15 ザカリヤ 牡4 55 柴田善臣 11 1 1/4
11 12 フェイマスケイ 牡6 57 嶋田高宏 16 ハナ
12 メジロダーリング 牝4 53 吉田豊 10
13 キョウエイマーチ 牝6 55 秋山真一郎 クビ
14 スピードスター 牡7 57 上村洋行 15 ハナ
15 ビッグサンデー 牡6 57 武幸四郎 14 クビ
16 トキオパーフェクト 牡5 57 岡部幸雄 1 3/4

  

   (単勝)10.380円
   (複勝)10.130円 5.120円 13.200円
   (枠連)3−5 450円
   (馬連)5−10 630円
   (ワイド)5−10 280円 10−13 450円 5−13 480円

 ◎と○を直前で入れ替えたのは会心! これなら1点でもよかった…ってのは結果論ですね、きっと。しかし、さとう珠緒が1点で的中させてるからなあ…。「めでたさも、中くらいなり」って感じですね。
 ブラックホークの末脚、見事でした。アグネスワールドがマイネルラヴに絡まれる形になる展開が向いたという側面も否定できないところではありますが、それでも強い競馬をしてくれました。マイルチャンピオンシップ後に僕は「もう少し見守ってみたいと思います」と書いたのですが、見守る間もなく悲願のGTを手にしてしまいました。おめでたう。
 アグネスワールド、ブラックホークとは逆に展開が向かなかった感もありますが、力は出し切ったのではないでしょうか。中山の坂に不安がないことも証明してくれました。武豊騎手も100%の騎乗をしていたのではないでしょうか。来年こそ…ですね。
 キングヘイローの末脚には驚きました。最後に届かなかったのは、キョウエイマーチが出遅れてしまったせいで昨年ほどのハイペースにならなかったせいでしょう。昨年同じような位置にいたシーキングザパールは2着に入っているわけだし。これも展開の綾でしょうね。でも、見せてくれました。来年が楽しみです。それこそ、3月開催に変更される高松宮記念なんて狙い目なのではないでしょうか。このウマ、寒い頃の方が調子よさげだし。
 マイネルラヴはやっぱり中山だと走りますね。地力はあるのでしょう。今やトップジョッキーの蛯名騎手もよく乗っていました。対照的に、マサラッキはらしくありませんでした。本調子じゃなかったのかもしれませんが、もしかしたら…平坦コースじゃないとキツいのかもしれません。
 最後はグチです。僕は、普段はTVを見ていてもジョッキーに罵声を浴びせることはほとんどありません。しかし、今回のレースでは、スタートした瞬間、「なにやってんだ秋山! このヘタクソ!」と思わず罵ってしまいました。スタートが信条の逃げ馬を出遅れさせるなんて…。この出遅れでキョウエイマーチのスプリンターズステークスは終わってしまったと言っても過言ではないでしょう。「体制を崩したときにゲートが開いてしまって…」との秋山騎手のコメントでしたが、それを体制崩さないように御すのがジョッキーの腕ってものではないでしょうか。確かに、将来楽しみな期待の若手です。野村調教師が多少のことに目をつぶって起用し続ける親心も十分理解できます。ナリタトップロードの渡辺騎手もそうして栄光をつかんだわけだし。ただ、今回のようなミスは、キョウエイマーチのファンとしては2度と見たくありません。サラブレッドは生身の生き物であって、練習台ではありません。それがファンの多い馬ならなおさらのことです。もし次走があるのなら(あるの?)、秋山騎手には心して臨んでもらいたいと思います。キョウエイマーチももうそんなに残り競走生活長くないんだ し。それだけの心構えというか、覚悟がないのなら、主戦を降りるべきでしょう。松永幹夫騎手に返すもよし、他の騎手に託すもよし。厳しいこと言い過ぎましたが、期待もしています。今度は頑張ってください。

(最終収支決算)

   (支出)−10,400円 + (収入)+17,650円 = (合計)+7,250円

   <今秋の合計> −20,700円(3勝6敗)

 

  

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