それって本当ですか、それとも嘘...

インターネットに流れている情報は、どこまで信じられるのだろうか。自分はいんちき情報を流すような加害者になるはずはないと思っている人でも、未確認情報を第三者に転送することで、いつの間にか加害者に荷担している可能性もある。

富士通が、自社製品に関するインターネット上のデマに対して、自社のホームページに反論を出しています。このデマの内容もひどいが、大企業がこうしたガセネタに真面目に対応するようになったということは、もはや、インターネットは一部の技術者やオタクの閉じられた世界ではなく、社会の一部となっているということでしょう。こうした、ネットワークのデマなどについて、最近CNETが"TRUTH, LIES, and the INTERNET"という特集を組んでいます。これは、インターネットに流れている情報をどこまで信用できるのか、という問題について実例を交えて解説したものです。日本語訳されたものなので、インターネットを使っている人は、一度読んでおくと参考になるでしょう。このなかで、CNETはWebやネットニュースから得た情報を、一度疑ってみるようにアドバイスしています。この特集記事に書かれていることについては、実際に読んでいただくとして、私から見れば、こうしたインターネット上の情報のいい加減さは、新聞や雑誌などのジャーナリズムにも同様に言えることだと思います。たとえば、Webに載っている情報の正確さが30%だとすれば、新聞の正確さは60%程度ではなかろうか。もちろん、シリアスな情報に対しては、この30%の差は致命的ですが。

例えば、私が、ある特殊な物質の物理定数を知りたくてインターネットを検索したとします。インターネットのユーザーには科学者が多いから、ヨーロッパの誰かさんのWebに、それを見つけることが出きるかも知れない。でも、その定数の信憑性は保証されません。URLから推測して、どこかドイツの大学の学生か助手が提供している値、程度のものです。この場合、そのページに引用文献が明記されていれば、確度は10桁くらい上がります。つまり、Webの情報というのは、そこに書いてあるだけでは、電柱の広告程度の正確さしかないのです。もしかすると、その広告の内容は5年前の古い内容かもしれない。そう言う意味で、そこに表示されている情報が、必ず別の情報源で確認できることが情報の信憑性の鍵になると私は思います。逆に、確認できない情報は、デマかもしれない。もし、確認できた先がインターネット上の場合は、最終的に信用の出きるソースに突き当たるまで逆のぼらないといけない。最初に書いた富士通製品のデマの場合は、多分、その情報には出典が無かったと思います。でも、騒ぐ前に富士通のホームページに行けば解決できる話です。(もし、そこに書いてなくても、必ず窓口の電子メールアドレスがある筈です。)でもね、多くの場合は、確認もせずに電子メールで転送しちゃうんですね。

電子メディアの悪いところは、簡単に複製できることです。それが、チェーンメールという迷惑なメールも作ります。これは、実際に、私のところにもやって来ます。多くは、コンピュータウィルスの警告にからめたやつで、なぜか大手メーカーがニュースソースであるかのような書き方をします。こうしたガセネタメールの例は、シマンテックで読むことが出きます。それにしても、電子メールに転送機能があるから、"Join the crew"みたいな長文の馬鹿話がインターネットの資源を無駄遣いするのですね。もし、転送機能がなくても似たようなチェーンメールは発生するでしょうが、トラフィックは軽減されるでしょう。なぜって、もっと文章は短くなるはずだからね(笑)。チェーンメールの場合、転送している人は善意でやっているところが、困ったところです。しかし、中には悪意をもってインターネットのメディアを使う人もいるのは事実です。この例については、最近の朝日新聞に「続・情報が凶器に変わる日」というシリーズで載っています。これは、朝日新聞のWebサイトでも読むことが出来ます

ここに載ってる話は、インターネットを使っているユーザー数に比べれば、むしろ特殊な例かも知れません。でも、誰にでも起こりうることだし、同時に誰にでも「起こしうる」と言う点が、さらに恐ろしいのです。あなたにもできる。そして、それをする人間の数は一般社会で犯罪を起こしうる人間の数と同じだとしたら、もはやインターネットは特別な世界ではなく、そこらの路上と同じだと言えます。例えば、個人のホームページは、路上の掲示板と同じと考えればよいでしょう。その掲示板が、親しい人達の通る露地に立っている間は良いですが、いつの間にか駅前の雑踏の中に移ってしまうかも知れません。これは、ホームページを管理しているあなたの意志とは関係なく起きます。なぜなら、ホームページはインターネットに接続している誰からでもアクセスできるからです。そこで考えなくてはいけないのが、どこまで自分自身のプライバシーを相手に見せるかという点です。匿名だから悪いことが出きると言う考えもありますが、匿名だから犯罪から守られる場合もあるのです。所詮はさじ加減ですが、私は、個人名義でインターネットに接続する場合には、匿名が使えることは必要不可欠だと思っています。だれも、背中に自分の住所と氏名と電話番号を貼り付けて町を歩いたりはしません。むしろ必要なのは、何か起きたときに、プロバイダーがアクセスログから、問題となる情報を発信した人間を特定できることではないでしょうか。

1997.11.28
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