なぜネットワーク越しに喧嘩をするのか

インターネットには、ネットニュースのような掲示板システム(BBS: Bulletin Board System)が昔からありますが、どの言語でも喧嘩は絶えないようで、ネチケットと呼ばれるインターネット使用者のガイドラインができています。ネットワークのエチケットという意味なんでしょうね。まだ、ご存じ無い方は文字通りネチケットホームページという場所がありますので、一度は読んでみてください。ここには、喧嘩はやめよう的なアドバイスばかりでなく、インターネットの利用に関する、細かな注意点が並んでいます。この文書は、IETF(The Internet Engineering Task Force)という、インターネットの標準規則をまとめている世界的な機関が、RFC(Request For Comments) 1855という文書としてまとめたものです。つまり、世界共通にこうしたエチケットで行こう、というガイドラインなのです。決まり事には興味はないが、エチケットには興味があると言う方は、ネチケットに関係したコラムをかいている、「ネチケットを笑い飛ばせ」というホームページも参考になります。ただ、ガイドラインがあるとはいえ、ネチケットに書かれているような、「メッセージに対して感情的な応答をする時、送信する前に一晩待ってみましょう」というようなアドバイスを読んでいたとしても、多分、ネットワーク越しの喧嘩は続くのではないでしょうか。

争いが絶えない原因の一つとして、私はBBSという文字による情報伝達メディアそのものが、喧嘩を生みやすい要素を持っているのではないかと思うのです。文字だけの情報というのはモールス信号と同じで、順番に頭に文字が入力されていきます。しかし、流れていく文字列だけではなかなか内容の理解が難しいので、今までに読んだ文の情報を思い出しながら、こいつは何を言いたいのかと考えるわけです。この段階で、文章が下手な人は議論に加わってはいけないことが分かります。文頭と文末が整合していないような文章は、話を混乱させるだけです。ましてや、自分で書いた文章を読み直さない人は書き込まないで欲しいですね。BBSを文章の長いチャット(文字によるリアルタイムな会話)だと思ってはいけません。ところが、感情的になると、この手の長文チャットが横行する。こうした文章が、喧嘩のきっかけにもなるのです。これは、意図の分からない文章を読まされると、その文章の一部だけが頭のなかでクローズアップされ、言葉尻だけに反応してしまうことになるからです。また、読むほうの問題としては、自分に理解できない部分を読み飛ばす傾向があることです。これも、相手にとっては、言葉尻をとらえて反論しているという印象を与えます。

例えば、ネットニュース閲覧ソフトの設定を間違っている人への注意からは、こんな戦いが始まります。(注意:これは、私の創作です。)

(A氏) 初めて投稿するものです。以前、ここで、ソフトによっては漢字が読めない話がありましたが、私の文章は正しく漢字が読めますでしょうか。
(B氏) 漢字はともかく、あなたのメッセージIDは正しくないので直してください。それと、このボードは意見交換する場所ですので、書き込みのテストはあなたのネットワークのローカルなボードでしてください。
(A氏) ソフトの設定を変えてみました。これで、正しくなったでしょうか。
(B氏) 馬鹿だな、何度も言わせないでください。ここにテスト投稿をするなと言ったでしょう。
(A氏) こっちは、分からないから書いてるんだから、馬鹿はないだろう。

まず問題なのは、A氏は、B氏の文章のうちの、メッセージIDが正しくないという部分だけに応答していることです。なぜそうなるかというと、A氏には「ローカルなボード」が何を意味するか分っていないのです。分からないくせに、理解できた部分だけに反応して文章を書き始めているのです。で、B氏の方も、こういう間違いをする初心者があまりに多いので、つい「馬鹿」という言葉を使ってしまう。さらに、それを読んだB氏は、いきなり「馬鹿」という言葉だけが頭に残るので、それだけに反応して、戦闘開始となったわけです。

喧嘩になりそうなときは感情的にならないようにしましょうというのが、ネチケットの言っていることですが、書いてる本人は感情的にさせる相手の書き込みが問題だと思っているものだから、世界はいつまで経っても平和にならないのです(苦笑)。そうそう、いま使ったカッコ付きの(笑)とか、顔文字(^^)も有効に使いましょうと、ネチケットに書いてありましたね。つまり、感情も挿入することで誤解を防ごうというものです。文字だからって、感情が伝わらない訳ではない。小説のように読者を感動させる文章もありますから。ふむふむ、小説風の書き込みっていいかも。

(A氏) ネットワーク初心者のAは、初めての投稿に心が高鳴ったが、一方で自分の投稿が他の読者に正しく読めるか不安を感じるのであった。
(B氏) BにはAの文章は読めたが、そのメッセージIDが正しくないことに気がついた。しかも、Aが議論の場であるボードで書き込みテストしていることに、少々腹を立てていた...。

なんてのはどうだろう。インターネットにも文化の香りが。でも、なんだかとっても書くのが面倒くさいぞ(爆笑)。

1998.01.30
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