どうも、最近PHS(Personal Handy Phone System)が携帯電話に押され気味で元気がありません。原因は、携帯電話の利用料金がPHSに近づいてきたので、利用可能ゾーンの広さとか、高速移動時の接続のしやすさから、PHSから携帯電話の方に主流が戻っているということらしい。しかし、モバイル環境から無線でインターネットに接続することを考えると、やっぱりPHSではないかと思うのですが。 携帯電話では10円メールとか宣伝していましたが、これは、読みようによっては文字だけを送る電子メールが、携帯電話の実用範囲であることを意味しています。何故かというと、これまでは9.6kb/sが速度限界だったからです。このビットレートは一人が使える無線通信の速度で制限されるものでした。でも、最近、ドコモパケット(DoPa)っての宣伝していませんか。これだと、最高28.8kb/sが使えるということですから、PHSの32kb/s通信(実効的には最高29.2kb/s)とあまり変わらない。なぜ、今まで9.6kb/sしか使えなかった携帯電話で、28.8kb/sが使えるようになったのかというと、本来無線通信のビットレートが28.8kb/sだったからです。今まではそれを複数のユーザーでシェアしてつかっていたのですね。それをパケット通信という方法を使って、空いている他人の分まで使って28.8kb/sの通信を可能にしたというものなのです。これですと、他に誰も使っていないときは28.8kb/sを全部使えますね。ただし、使っている人が一人増えると19.2kb/s、二人増えると9.6kb/sになってしまいます。そういう事態を想定しているのか、通したビット数にしたがって電話料金を払う仕組みになっていて、遅くて接続時間がかかるから高い金を払わないといけない、といったことにならないようにしています。でも、専用線みたいに24時間つなぎっぱなしにする人が出てこないかと、いらぬ心配をしてしまいますが(^^;。(このサービスは、いまのところ全国どこでも使えるわけではないので、サービスする地域に注意してください。) ドコモパケットは、最大速度で通信することさえできれば、高速モデムと同じ速さですから、十分にインターネットできる性能だと言えます。でも、どれくらいの確率で最高速度が出るのでしょうか。特に、使う人の多い都会では、いつ使っても9.6kb/sなんてことにならないでしょうか。これと比べると、PHSのデータ通信(PIAFS:ピアフ)は条件が悪くてもビットレートが三分の一になることはありません。これは、もともとPHSでは一人当たり32kb/sの通信速度が割り当てられているので、同じアンテナを他の人が使い始めたからといって、通信速度が遅くなることはないのです。また、電波の弱いところで使ったりすることも考慮して、640ビットごとに24ビットの制御データと32ビットのエラー検出用のデータを含めて送ったり、エラー時のデータ再送の手順を工夫することで、最悪でも20kb/sという通信速度を実現しています。PHSの本体には32kb/sと書いてあるのにデータの通信速度が最高でも29.2kb/sとなるのは、別にはったりをかましているわけではなくて、訳があって速度を遅くしているのですね。それにしても、似たような通信速度の二つの無線通信方法があると、モバイルユーザーとしてはどっちを使うおうかと悩むところかも知れません。電車やタクシーの中でインターネット接続するんだと言う人は、ときには28.8kb/sで画像も受信できるかも知れないドコモパケットというのも魅力でしょう。一方で、せいぜい路線バスの中や喫茶店でモバイルする人なら、いつも安定して高速データ通信が保証されているPIAFSの方がメリットがあります。しかし、さらにここにきて、PHSでISDN並の64kb/sの接続が可能になるという話が出てきました。 この64kb/s通信というのは、最近発表された話(例えば日経コミュニケーション1月19日号)で、これが使えるようになると、わざわざTAやDSUを買ってISDN回線を引かなくても、PHSを契約するだけでISDN並の高速データ通信が可能になってしまいます。なぜ、いままで32kb/sだったのに64kb/s使えるようになるのかというと、一台のPHSで2つの通話チャンネルを使うことで、2倍の64kb/sの通信を実現しているのです。ドコモパケットと違って、一つの回線をシェアするわけではないから、途中で失速するなんてことにはなりません。(でも、電話料金は倍だろうなぁ。)それに、いままではISDN回線に入るところで32kb/sから64kb/sへ速度を調節していたのですが、これだと、そのままPHSからISDN回線まで、64kb/sで無駄なくデータを流すことができます。また、insネット64で128kb/sを使えるのと同様に、二台のPHSをパソコンにつなぐと、なんと128kb/sの通信が可能なんだそうだ。なんか、ミニノートにPHSが二つぶら下がっているっていう光景も不気味ですが(^^;。実効的な通信速度としては、電波が弱くても通信速度が保証できるようにエラー訂正をするので、64kb/sでも実効速度は58kb/sとなります。ISDN非同期接続みたいなもんだろうか。NTTパーソナルは、装置を変えないといけないから実用化は2000年と言っていますが、これが一般に使えるようになると、家にはISDNは入っていないが、データ通信はしっかり64kb/sでやっているモバイルユーザーも現れると思いますね。 こうした、PHSのデータ通信の高速化に対して、携帯電話も後を追えるのかという点が興味のあるところですね。でも、そもそも、一つのアンテナでカバーしているゾーンが広い携帯電話では、一つのアンテナを使う人数が多いので、一人で使える通信量には限度があります。PHSが高速なのは半径100m程度のゾーンにいる、少ない人数の利用者で電波を分配できるからです。だから、高速なデータ通信をしようとしたらPHSが有利という状態は、永遠に続くと思います。なんだか、最近元気のないPHS業界ですが、モバイルユーザーから見れば、路線バスから128kb/sでインターネット接続できる夢の世界が待っているのです。だから、いくら高校生がPHSを買ってくれなくなったからって、64kb/s通信を断念するなんてことはしないでくださいね。ドラえホンばかりがPHSの看板商品ではないのだから。
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1998.03.06 |
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