テレビでインターネットを使う人って

先週、テレビ電波にhtmlをのせて放送するインターキャストの話を書きましたが、今週になってINTERNET WatchにオラクルがNCTVなるものを公開したという記事が出ていました。この記事には、テレビにホームページが表示されている写真が出ているので、これを見ればテレビがインターネットにつながるとどんな感じなのかというイメージがつかめるかも知れませんね。NCTVの場合は、Webページの中に小さなテレビ画面を表示させて放送を見たり、Webで提供される番組表をクリックすると、その番組に切り替わるといった機能がつかえるのだそうです。他にも、9チャンネルを分割表示させたり、テレビ画面を取り込んで電子メールを出したりできるとか。そんな、電子メールなんに使うのかな。ほらほら、うちの子がテレビに映ったのよ、みたいなメールを、大量に親戚や友達にばらまいたりして。

NCTVも、この記事にも出てくるWebTVも、先週書いたインターキャストとはちょっと違います。インターキャストは、htmlデータをテレビ信号のすき間に混ぜて放送するわけで、言ってみれば文字放送のhtml版みたいなものです。ですから、その画面にあるリンクをクリックしたからといって、テレビ電波で、そのリンクのページが送られてくるわけではありません。その場合は、多分、電話回線をインターネットにつないでデータを持ってくることになるでしょう。これに対して、NCTVやWebTVは、Webページを始めから電話回線やCATV回線を使ってダウンロードします。ですから、Web表示専用のパソコンをテレビにつないでいるようなもので、Webページを表示しているときのテレビは、パソコンのディスプレイと同じです。これでは、パソコンを買ってきてインターネットに接続する方がいいような気もする。なにしろ、ホームページはパソコンの解像度で表示するようにレイアウトしていますから、パソコンで見たほうが見やすいのは当然です。たしか、WebTVの場合は、テレビ画面に収まるようにレイアウトし直してから配送していたはず。すると、これらが普及する鍵は、本当に「いつでも、誰でも、テレビと電話さえあれば、専用端末とつなぐだけで快適なインターネットが始められる(WebTV)」かどうかと言うところですね。

私などは、パソコンを使うのに抵抗がありませんから、いまさらテレビでインターネットしようなんて考えません。だから、ターゲットはパソコンに触ったこともない人たちですね。最近は、小学校でパソコン(Windows 95じゃないかもしれないが)を使った授業をする時代ですし、サラリーマンだって一度はパソコンを使ってみようと思うでしょう。すると、あえてパソコンを使わずにテレビでインターネットを体験しようとするのは、60歳以上のお年寄りでしょうか。それにしては、NCTVやWebTVの作りは年寄り向きには見えません。あるいは、普段パソコンなどに縁のない職業の人たちが、家に帰ってからテレビでインターネットするというケースかな。これなら、ありうるでしょうか。でも、そういう人はインターネット自体に興味が無いと思いませんか。そう思ったからか、NCTVの場合は、Webページにテレビ映像をはめ込んだりして、Webの機能をテレビ番組にリンクさせていますね。これなら、パソコンでインターネットしている人も、ちょっと使ってみようかという気になるかも。しかも、WebTVのホームページが固定されているのに対して、NCTVではプロバイダーがそれぞれのホームページを設計できます。すると、すでにパソコン用に契約しているプロバイダーがNCTV用のサービスを始めると、契約者はテレビにアダプタを接続して、NCTVの方も使うようになる可能性もあります。でも、それもパソコンにチューナーボードがつくようになるまでですね。

パソコンにチューナーボードが標準で付くようになると、当然、インターキャストのサービスを使うようになりますね。そして、自分のプロバイダーが運用しているNCTVの方も便利であれば使うでしょう。画面も高精細だがら、一度こっちに慣れてしまうと、わざわざ画面の粗いテレビで使おうなんて思わないのではないかな。ということは、WebTVやNCTVが、お茶の間に簡単便利にインターネットをつなぐことができるなんて言っているのは、実は当たっていなくて、結局、フタを開けたら既にパソコンでインターネットしている人たちが、テレビでもWebサーフィンできれば面白いかという興味で使い始めるのが本当なのかも知れません。もしテレビを使ったインターネット接続を普及しようとするなら、テレビ局も積極的にこの機能を使うべきだし、インターネットの方のコンテンツもテレビの解像度に合わせ、テレビとリンクするメリットを表に出したものであるべきです。でも、そうしたサービスは、テレビ番組の中でも、またインターネットの中でも主流とは言えません。そう考えると、やっぱり、テレビでインターネットを利用する人の多くは、すでにパソコンでインターネットを利用している人ということになる。したがって、テレビをインターネットにつないだからと言って、急にインターネット接続の普及率がテレビに迫るようにはならないと思いますね。

1998.04.24
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