アップルが、一般消費者向けのマッキントッシュiMacを発表しています。アメリカでは夏に発売される予定だそうですが、既に販売店の受けが良くて、PC-AT互換機から買い替える人も出るだろうと言われています。何が受けるのかといえば、安くて(1299ドル)、かっこよくて(半透明筐体のディスプレイ一体型)、そこそこ性能が良く(233MHzのパワーPCプロセッサー、4GBのハードドライブ)、なんでも付いている(ネットワーク10/100Base-T、33Kbpsモデム、CD-ROMドライブ、IrDA赤外線ポート、ステレオスピーカー)ということなんだそうだ。確かに、形は初めてMac Plusを見たときのように、新鮮な印象を与えています。パソコンのほとんどが、職場で使っていてもおかしくない真面目な形を持っているのに対して、これは、ちょっと職場で使うにはリラックスしすぎているくらい家庭向きです。アップルは、「Think Different」をモットーにしているということですが、確かにこれは違うという気にさせるものです。それにしても、他のメーカーがこれと同じ発想でパソコンを設計できるかというと、ちょっと疑問に感じます。 まず驚いたことに、これにはフロッピードライブが付いていないのです。多分、PC-AT互換機メーカーは、こういうことはしないでしょう。なんせ、Windows 95がクラッシュしたときには、まず再インストールの起動フロッピーディスクを差し込むことから始まりますから。Macintoshの場合は、ハードディスクが壊れたとしても、CD-ROMから立ち上げることができるので、iMacのようにCD-ROMドライブさえあれば問題ないのです。では、ソフトをインストールしたり、データを他のパソコンとやり取りするのに不便ではないのかという疑問が出ますね。これに対して、アップルの公報担当は、多くのソフトは肥大化してCD-ROMで配付されているのが現状だし、ファイル交換もネットワーク経由でするのが普通になりつつあると言っています。確かに、自分のMacintoshの使い方を考えると、フロッピーを使うのはネットワークにつながっていないパソコンに、データを持っていくときくらいです。ネットワークがつながっていれば、アップルシェアやWindows Networkをつかって相手のディスクにファイルを放り込むのが普通になっています。では、それでもフロッピーが必要だったら、という問いに対しては、USB対応の外付けディスクドライブを使ってくださいということらしい。このUSBポートが、またまた、iMacを他のパソコンと違うものにしています。 なんと、だるまさんのようにつるんとしたiMacには、拡張ボードを差す場所が無いのです。かろうじて、拡張メモリースロットはあるようですが。今まで、自分が触ってきたパソコンを考えても、拡張ボードを差す場所がないパソコンは見たことがありません。拡張性の少ないノートパソコンでも、PCカードスロットがついているのは当たり前ですし、どんな、コンパクトな設計のデスクトップパソコンでも、一枚くらいは増設できるものです。つまり、iMacの場合は、ボードに差すようなものは既に内蔵されているし、拡張性はUSB対応の周辺機器で足りるだろうと割り切っているのです。ふむ、そういえば、マッキントッシュの後ろに刺さっているボードといえば、ビデオボードくらいなもんだなぁ。iMacはそれも内蔵しているから、不便になることはないのかもしれない。とはいうものの、USB対応の周辺機器がまだ出始めの状況だから、すぐに飛びついて買ったとしても、しばらくは、ちょっと不便かも知れませんね。そのかわり、既にMacintoshを持っている人なら、Ethernetでつなげば、たとえフロッピー提供のソフトがあったとしても、なんの不自由もなく使えることでしょう(ShrinkWrapという無料ソフトを使えば、メモリー上にフロッピーイメージをロードして、普通のディスクの様にデスクトップにマウントできる)。 はたして、どれくらいのPC-AT互換機ユーザーが、iMacを買うかどうか興味深いところですが、かっこ良いものが大好きなアメリカ人だから、結構売れるかも知れませんね。子供に一台、奥さんに一台ってなぐあいで買えるから。買ったら、そのままネットワークを使えるし。拡張ボードとか、ディスプレイの接続といった、初期設定がいらないから、テレビ並に簡単にセットアップできる。これは、昔のMac Plusの頃のMacintoshの感覚に戻った感じですね。もっとも、あくまでMacintoshですから、ネットワークの設定などは、他のパソコンと同様に、マニュアルを読みながらする必要はあるでしょうけど。それにしても、これは日本でも売れるでしょうか。まず、学校などで使うには最適だと思いますね。パソコンを最初に触る人には、一番適した形のパソコンだと思う。ただ、パソコン大好き人間がメインに使うには、物足りないかも知れない。なんせ、フロッピーディスクも拡張スロットも無いから、あるがままに使うしかないもの。でも、これは大事なことだと思うのです。これまでのパソコンは、何でもできる「かも知れない」というだけで、めったに使わない機能とか、いざ使おうとすると設定が面倒くさいような機能が満載されてきました。買うほうも、そうした、使うかも知れない機能がついている機種を選ぶから、使いにくいハードやソフトの入ったパソコンが蔓延するのです。そろそろ、パソコンメーカーも、まるっきり、あるがままで使ってくださいといいきれるパソコンを出しても良い時期だと思うのですが。でも、OSがWindowsじゃ、しょせん無理か。
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1998.05.15 |
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