電話でインターネットかインターネットで電話か

インターネット電話が、日本でも一般の電話機から使える時代になりました。インターネット電話というのは、普通の電話が電話会社の専用線を使って音声をやり取りするのに対して、みんながWebデータを転送しているのと同じ方法で、インターネットを使って音声データを送るものです。インターネットの回線が混んでいると転送レートが落ち、音声が途切れてしまう可能性もありますが、特に海外との通話では値段が安いというメリットがあります。

このサービスを始めたのは、アメリカの電話会社のATTで、専用のプリペイドカードを買うと、どこからでも、カードの値段に応じた時間だけ世界中に電話をかけることができます。さらに、このカードはローソンで買えるので、事実上、だれにでもどこからでも、特別な登録無しに、国内はともより海外(110ヵ国)まで、インターネット電話が利用できるシステムです。通話料金はかけた先によって異なりますが(国内:1分28円、アメリカ:1分42円)、距離に比例するわけではないところが、一般の電話とは違っています。これを利用するには、まず、携帯やPHSも含めた一般の電話機から、フリーダイヤル(携帯電話とPHSの場合は一般回線利用分は有料)のアクセスポイントに接続し、音声ガイドに従って、カードの裏面に記載してあるID番号とパスワードを入力した後、相手の電話番号をダイヤルします。あとは、通話するだけ。ATTによると、高信頼性と低料金が売りらしいですが、品質はインターネットが頼りということですね。インターネットは、昼休みと深夜に混雑するから、そういうときは音が途切れちゃったりするんだろうか。

こうした、インターネット経由の電話というのは、ATTばかりではありません。他にも、NiftyServeが同様のインターネット電話による海外通話サービスを始めています。こちらの方は、世界168カ国に国際電話が可能だそうで、アメリカだと1分39円だそうな。ATTの方は1分42円だから、ここにも相場というものはあるようですね。さらに、NiftyServeの方は、ほとんどの経路を専用線で経由するので、品質が高いということです。また、インターネット電話の技術というのは、専用線で使うこともできるので、同様の方法で全部専用線を使って国際電話サービスをするというのをNTTインターナショナルが発表していたりします。さすがに、こちらは、インターネット電話ではなくてIP電話と名付けていますね。この会社は、インターネット電話用のデータ変換装置も扱っています。それにしても、IP電話のように、プロトコルがIPであるというだけで、流している部分が専用線ということになると、いったい一般の電話と何が違うんだとも思ってしまいます。そんなわけで、インターネット電話の先進国であるアメリカでは、どの法律でをインターネットプロトコル(IP)使った通信を規制するのかという点で、議論が始まっています

それにしても、普段私たちは、家庭からインターネットにつなぐときには、プロバイダーのアクセスポイントに電話して接続しています。もし、インターネットで音声をやりとりできるのであれば、家庭の電話からいきなりインターネットのプロトコルで流してもよいように思いますね。当然のように、こうした発想の技術を実用化しようという動きがあって、Voice over IPという名前で、アメリカのルーセント・テクノロジーズが発表しています。これは、通常の電話線に高速の信号を流すADSL (Asymmetric Digital Subscriber Line)という技術で、家庭と電話会社を結び、この中をインターネットプロトコル(IP)に載せた音声を通すというものです。ただし、電話会社に届いた段階で通常の電話回線に流れる信号形式に戻してしまうので、そのままインターネットに声が出ていくわけではありません。でも、この先、インターネットプロトコル(IP)が広く使われるようになると、既存の電話回線とインターネットの回線の境界は見えなくなっていくのではないでしょうか。

例えば、現状では、電話をかけながらインターネットをするには、ISDN回線を家に引いて、使える2つのチャンネルをデータ通信と通話でわけて使います。でも、データも音声も同じインターネットプロトコル(IP)で送るなら、インターネットで、同じ回線を大勢のIPパケットで共有しているように、通話のデータが少ないときにはデータ通信の割合を増やすような方法も使えるでしょう。こうなると、電話機とは、単純に音声をインターネットプロトコル(IP)にリアルタイムで変換する機械になる。そして、できれば、その頃には、LANの様に常に回線を接続できるようにして欲しいな。流れるデータの量だけ課金するようなシステムになれば、電話と同じように即時にインターネットに接続することもできるようになるから。そして、その頃には、テレビもデータ通信で番組をリアルタイムにダウンロードして表示する様になっているかも知れませんね。

1998.06.12
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