家電パソコンiMac

アップルの新製品iMacがアメリカでも日本でも売れまくっているようであります。このリンクの記事はアメリカの話ですが、アップルが新たに投入した新製品であるのに、他のアップル製品の売り上げを食うどころか、逆に増やしているということです。日本でも、iMacの売れ行きが好調なので、パソコン市場に活気を呼んでいるとのこと。アップル社では、そろそろ製造が販売に追いつかなくなってきていて、外部の企業に生産委託も考えているのではと推測されています。これが成功すれば、パソコンメーカーのトップ5に返り咲くであろうということですから、最近になく景気のよい話です。まだ、iMacとはなにか知らない方には、PCマガジン・オンラインの特集記事が参考になるでしょう。Windowsマシンとの比較記事もあります。もともとアップルは、Macintosh SEの頃から、オールインワンと呼ばれる、なんでも付いているパソコンを作るのが得意だったとは言え、これほどiMacが(単一モデルとしては驚異的に)売れているのは、家電製品に指向した設計によるものが大きいのではないでしょうか。

なぜに、iMacが売れるのかについては、アナリストがいろいろ書いていますが、中でも使い勝手がシンプルである事が重要らしい。つまり、アップルのコマーシャルにあるように、買ってきたら電源と電話線をつなぐだけ(本当はキーボードとマウスもね)でスイッチを入れれば、とりあえず使うことができる。これまでのパソコンと違って、こうした簡単なセッティングは、初心者にとても分かりやすいですね。だからか、iMacを購入した人には、はじめて買った人の比率が多いようです。アメリカでは、6人に1人が初めてのパソコンとして購入しています。それから、比較的年齢層の高いユーザーの比率が多いのも特徴で、これもアメリカの調査ですが、家庭でiMacを使っている人の28%が50才以上だということです。こうした、初心者や高い年齢層のユーザーが買おうとすることは、パソコンを家電製品として売るときにとても重要だと思うのです。これからは65才以上の退職者世代の生活にパソコンを入れていくことが、必要になってくるでしょう。インターネットをして出会いの機会を増やすほかにも、この先、足が弱って銀行に行くのが大変な人が、口座振り込みの手続きを家庭からするようになるでしょうし、もしかすると、日常の買い物もインターネットで注文して、配達してもらえるサービスが出てくる可能性もあります。そのような時代になっても、まだ、パソコンの後ろで配線をひね回していたり、わけのわからないIPX互換プロトコルがどうの、シリアルポートがどうのパラレルポートがどうのと説明していたら、高齢者はついていけないと思います。

iMacがこうした問題にどれだけ対処できているかは、自分で買っていないので分かりませんが、家庭での利用者の28%が50才以上で、17%が初心者であるというアメリカの調査結果を見れば、ある程度は使い勝手がシンプルであるという要求を満たしたと言えるのではないでしょうか。もちろん、起動してからちゃんと使えているかというフォローは必要です。私は、MacOS 8をインストールしたPowerPC機を日常の仕事で使っていますが、Windows 95よりは数倍簡単に使えるものの、まだ、高齢者が迷わずに使えるレベルではないと思うのです。例えば、コントロールパネルの中身が多すぎると思う。本来のOSのコントロールパネルと、インストールしたソフトのコントロールパネルが入り交じって、わけが分からない。もちろん、そうした疑問に答えるために、「Macintoshの手引き」という手取り足取りソフトが付いていますが、基本は野菜は八百屋にいけば買えるという、直感的な場所の認識をパソコンのOS上で持てることが大切だと思うのですね。八百屋に行ったら、お総菜もあったけど、大根がそれに埋もれていたなんて状態が、最近のパソコンでは、まま見受けられます。もちろん、それは、ユーザーが、八百屋でもお総菜を売ってもらえるとありがたいと要求してきたからなんでしょうけど(^_^;。

家電製品としてのパソコンは、この業界の新しいパイであることは明らかで、iMacはそこである程度成果を上げ始めています。しかし、他の大手メーカーは必ずしも追随するつもりはないようです。この記事では、似たような構成のNetPCでもうからなかったことが原因であるとか書いています。でも、私は、本当はWindows 98やWindows CEで同じものを作っても、シンプルなものは実現できないからだと思いますね。Windowsなんか、いきなりアクティブデスクトップが現れて、こんなものいらーんと思っても、まずこれを表示しないようにする方法が分からなくて初心者を悩ませたりしますからね(^_^;。そもそも、Windowsが使いやすいからと言って、AT互換機を選んだ初心者はどれくらいいるんでしょ。安さとスピードで選んできたのではないですかね。こんな書き方をすると、それじゃあ、あんたは全部のパソコンが、iMacみたいなちゃっちぃおもちゃもどきになればいいとでも言うんですか、なんて言ってくる自称パワーユーザーもおられるでしょうね。別に、そこまで言っているわけじゃないんですよ。ここで、議論しているのは家電製品としてのパソコンですから。趣味の対象としてのパソコン、事務機器としてのパソコンは、使う人にスキルを要求しても構わないのですよ。でも、家電製品は、ユーザーにスキルを要求してはいけないと思うんです。そりゃ、ちょっと昔の炊飯器は水加減にテクが必要だったかも知れませんが(^_^)。そういう意味で、Windows CEをOSとする冷蔵庫とか電子レンジなんてのは、考えもんかも知れない(^_^;。

この先、iMacに続くものがあるかどうかは疑問ですが、すでに、iMacそっくりのAT互換機(笑)なんてのはアナウンスされているようです。CPUにインテルの333MHz版Celeronチップをのせ、値段はiMacの半分近い599ドルだって。これには、フロッピーディスクもつくけど、これは、Windowsの修復ディスクを作るためのものでありましょう(^_^)。アナリストも、iMacユーザーの10%はウインテル(Windows)機のユーザーだったけれど、その内の何パーセントがデザインだけで決めたか疑問だといっています。ここまで書いてきた議論に従えば、iMacに形が良く似たWindowsマシンなんてのは完全に外したマーケティングだと思います。でも、安いから、そんな議論は置いといて買う人がいるかもね。それにしても、廉価版Windowsマシンを作ろうとしない日本のメーカーは、iMac的なものには、もっと興味を示さないと思います。数が出ても、儲けは少ないから。使いにくくても、値段が高くても、企業が導入してくれるようなパソコンの方が収入になりますものね。だから、家庭で簡単に使えるパソコンを欲しい人は、アメリカからiMacを買いましょう。貿易収支のバランスにもよいでしょうし(^_^;。

1998.09.18
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