アップルは復活するか

今週(98年10月第3週)は、マッキントッシュ(Macintosh:Mac)のユーザーにとっては、久しぶりに明るい週でありました。アップルの最高経営責任者(CEO)ジョブズが、10月14日(米国)に記者会見して、「アナリストの予想を打ち破る好四半期決算」を発表したのです。なんせ、3年ぶりの年間黒字ですから、アップルにとっては奇跡の(大げさかな)復活と言えます。ましてや、天下のウインテル(Windows+Intel)を相手にしてシェアを挽回したのですから、パソコン業界としては大きなニュースなのです。それにしても、17日に売り出されるMacの新OSである、MacOS 8.5を見ても、この先マイクロソフトの影を踏まずに生き残ることは難しいのでしょうね。

アップルの売り上げを助けているのは、ひとえにiMacでありますが、アナリストが評価しているのは、その内容のようです。アメリカの調査会社によると、iMacを買った人の29.4%が全く初めてパソコンを買った人であるとのこと。もしも、iMacのユーザーが既にMacを使っている人ばっかりであれば、驚くに値しなかったというのです。さらに、金融アナリストによれば、もしこれが35%まで上がれば、アップルの将来は安泰であると見なせるのだそうです。日本でも、PC Watchのマーケット情報によれば、8月24日以来、いまに至るまで、デスクトップ機のトップはiMacなのですから、まだまだiMacは売れるでしょう。もっとも、売上額の数字をみると、黒字にしたのはリストラの効果でも有りますね。というのは、売り上げ額としては、通年で前期を下回っているからです。つまりは、不要な部門を切り捨てることで、黒字にしている効果も大きいということですね。とはいえ、企業としては健全になったことは確かで、Macのユーザーにとっては非常な安心感である訳です。この感覚は、多分、Windowsユーザーには分かってもらえないと思うなぁ。

もちろん、そうした明るい話題の中でも、まだまだ、アップルがこの先も業績があがるかどうかはわからないという記事もあります。例えば、CNETの記事では、さらに売り上げ増加率を保つ必要が有ると書いています。また、ZDnetの記事でも、iMacで個人ユーザーをつかんだら、つぎは企業ユーザーをつかまないといけないと評論しています。この、企業向けの需要については、なかなか難しいと思いますね。個人ユーザーの場合は、ネットワークとの接続はモデムを考えればすみますが、企業の場合は、必ずイーサネットなどでLANに接続することを考えないといけません。企業でパソコンを使う場合は、LANでデータを共有したり、プリンタを共有したり、外部のインターネットとの接続をしたりするのが当然です。しかし、一度、マイクロソフトの製品群でネットワークを作ってしまうと、異機種の導入は混乱の元になります。既に、マイクロソフトのバックオフィスを立ち上げた環境にMacをつないだところで、データや通信プロトコルの互換性に問題が生じてしまって、使い物にならないかも知れないのです。もしも、ドキュメントをHTMLやPDF形式にするようにしてあれば参照できますが、現実問題、Windowsばかりの環境でそこまで気を使うことはないでしょう。また、データの共有も、たとえ同じWordで書かれた文章でも、フロッピーでやりとりするなともかく、ネットワーク上のファイルを直接ソフトから開くようにするには、特別なソフトでもいれないと面倒です。Macを無理なく企業に導入させるには、アップルシェアのインタフェースで、マイクロソフトネットやNTドメインに接続できるようにするなど、そのままWindowsのファイルシステムに入り込めるような工夫が不可欠だと思うのです。

iMacが好調に売れている一方で、アップルは10月17日に新しいOSである、MacOS 8.5を売り出しました。このOSの特徴については、ZDnetの記事を参照してください。多分、MacOS 8.0のユーザーにとっては、特別変わった感じはしないはずです。改善点としては、PowerPCにチューンして動作速度を上げたということ、検索機能を強化したこと、インストールを簡単にしたこと、インタフェースの改良などだそうです。動作速度は確かに速くなったようで、例えば、この記事に出ているファイルのコピーに付いて言えば、40%位は速く感じます。検索機能については、今までコマンド+Fで起動したファイル検索が、シャーロックというソフトに統合されています。このシャーロックは一番のウリのようで、このソフトからインターネットの検索サーバーのエンジンを使うことができます。試しに、akabeiで検索したらeXciteでいくつか、私のページが引っ掛かりました(^_^)。また、ローカルディスク上のファイルの索引をつくっておいて、自然文検索をすることもできるようになりました。例えば、赤兵衛を含むファイルをディスク上から探しだすことができます。これは、便利かも知れない。インストールについては、「インストール中マシンの前についている必要がない」などと書いてありますが、わたしのインストール時には、サードパーティーのハードディスクのドライバーが更新できないといって、止まっていました(^_^;。インタフェースについては、右上の起動中のソフトを示すアイコンに名前も表示できるようになっていますね。これは、下にドラッグするとメニューバーから外して、デスクトップ上に起動ソフトのリストとして表示できます。でも、Windowsの様に、それが横に並ぶわけでは有りません。コントロールパネルについては、いくつか改良されているようです。そうそう、アップルメニューの「システム・プロフィール」がいやに詳しくなっていたな。

一つ気になったのは、インストール後にデスクトップに「WWWブラウザ」と「メール」のアイコンが出ます。これらは、インターネットイクスプローラ(IE)とOutlook Expressなのですね。先程のシャーロックで検索されたサイトをクリックすると、IEが起動しますし、IEで設定したインターネットのオプションは、シャーロックなどのシステムに反映されます。つまり、MacOS 8.5は、アクティブデスクトップはないものの、IE4.XをインストールしたWindows95に近いものがあります。多分、ネットスケープを使いたければ、入れ換えることもできるのでしょうが、まったく初めてのユーザーは、そのままIEを使ってWebを見たり、Outlook Expressを使って電子メールを読むことになるでしょう。もっとも、個人的にはどうでも良いことのように思います。もはや、ブラウザについてはネットスケープだから安全とか、IEだとだめだなんてこともない。どちらも、危ないのは同じなんですから(^_^;。ただ、どこか、初心者でも簡単に見つけられる場所に、ブラウザの入れ換えが簡単にできるメニューなりあればベターだとは思います。それにしても、このへんを見ていると、アップルも商売をするのにマイクロソフトの影響を避けられない状況に有るようですね。もはや、マイクロソフトに対抗するとか、そういう話ではなくて、スタンダードとなっているものは、そのまま受け入れて、その世界でシェアを上げていくというのが、当然ということなのかもしれません。ただ、Mac信奉者にとっては、インターネットにつなぐたびに、マイクロソフトのロゴを見なくてはいけない状態は悲しいかも。そういえば、このOSからは、コマンド+TABでアプリケーションが切り替わります。これは、Windowsユーザーを意識していますね。日常で、MacとWindowsの両方を使っている私にとっては、便利かも知れない(^_^)。

少なくとも、iMacで、アップルは個人ユーザーにシェアを広げることができました。で、この先、さらに広がっていくのでしょうか。それには、まずはWindowsユーザーにMacの使い勝手の良いところを見せるのが効果的って事で、Windows画面をMacにしてしまう冗談JavaScriptが一部で話題になっています。これを試す場合は、IE4.0以降を使いましょう(IE3は止めたほうが良い)。IE4だと画面全部に表示されるので臨場感が有ります(笑)。これを起動すると、いきなりコンソール画面になって、Windowsのドライバーをびしばし外していきます。そのあと、Cドライブのファイルをどーんどん削除します。で、Macユーザーおなじみの起動画面になって、Macのインタフェースが表示。めでたくWindowsマシンでMac体験、というところですが、本当のMacユーザーから見ればちょーっと違うような感じ。でもね、多分、Macの生きる道は、このソフトの様にWindowsをごみ箱に捨てるのではなく(本当に捨ててある:笑)、Windowsとのファイル、及びネットワーク互換性を上げて、WindowsとMacの間を自由に行き来できるようにするとこるから始めるべきだと思います。Macのインタフェースが優れているなら、自然に人はMacに流れてくるでしょう。

1998.10.16
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