暇つぶしメッセージがやってくる

AOL(America Online)が提供している、インスタントメッセンジャーというソフトは、インターネットに接続している「お友達」のリストをリアルタイムで表示し、つながっている相手のディスプレイに即時にメッセージを表示します。こうしたサービスは、マイクロソフトのMSNや、ヤフーでも提供しています。中でも、AOLのシェアが大きいので、AOLの「お友達リスト」を、MSNやヤフーのインスタントメッセージソフトからも使えるようにしようという動きがあり、それに対抗するAOLとの戦いが始まっています。先日も、マイクロソフトが、AOLのブロックを外すソフトを作ったという報道[CNET]がありました。それはともかく、こういうメッセージ配信サービスは、別のソフトで仕事をしているときでも、いきなりデスクトップの窓に相手からのメッセージが表示されるわけで、自分の好きなときに読みに行ける電子メールと違って、受け手にとっては迷惑な場合もありそうに思います。

メッセンジャーの機能説明は、それぞれ、次のリンクにあります(AOLMSNYahoo)。これによると、メッセンジャーとは、だれがネットワークにつながっているかを「お友達」リストに常時表示し、その時にネットワークにつながっている相手と即時にチャットができるというものです。お友達の状態は、それぞれのソフトがサーバーに、パソコンの前にいるか、スクリーンセーバー状態か、といった状態を定期的に送信することで実現しているようです。ですから、最初にあった、AOLが「お友達リスト」をブロックしようとした話題は、MSNのインスタントメッセージソフトが、AOLのサーバーから情報をとろうとするのをブロックしたということのようです。これをするには、AOLのサーバーにアクセスするためのパスワードをMSNのソフトに入れることになるし、勝手に他社のソフトにサーバーを使われる結果にもなるので、個人情報の扱いに問題があるとか、勝手に他人のインフラを使うのはおかしいとAOLが怒ったわけです。これらのソフトは、受信をブロックすることもできますが、利用者がたまにしか接続可能にしないようでは、このソフトを使う意味もないわけで、結局、利用者はパソコンの前にいるときは接続可能に設定するはずです。すると、やっぱり、相手の都合を無視した暇つぶしメッセージは、避けられそうもありませんね。

AOLの紹介ページにある「こんなとき便利」の例を見ても、「ちょっと、誰かと話したい話題を見つけた」とか、「言い忘れたことがあった友だちがオンラインしてきた」とか、久しぶりの友達に「ちょっと挨拶」といった使い方を想定しています。これを言い換えれば、「こっちの都合」的なトリガーではじまるコミュニケーションの形といえます。これは、電話に似ていますね。ただ、電話と違うのは、かけられたほうは「必ずつかまる」ということです。もちろん、かけられたほうも誰かさんとチャットがしたくて、ソフトを接続可能にしているんでしょうが、もしかしたら他の誰かを待っているかもしれませんよね。この、「必ずつかまる」+「こっちの都合」的コミュニケーションは、もしかしたら、メッセージを送られた相手にとっては無駄な暇つぶしに付き合う結果になりはしないでしょうか。逆に言えば、こうしたメッセンジャー系のコミュニケーションツールは、もともと、時間つぶしのためにあるのかもしれません。誰かかけてこないか待っている、あるいは、誰か時間つぶしの相手はこないかと「お友達」がオンラインになるのを待っている。どれどれ、Webでニュースでも読もうかとインターネットにつないだ途端に、メッセージが入ってきてチャットモードになる。こっちは、ニュースを読みたいのに相手が離してくれないなんて状況が起きそうですね。

メッセンジャーソフトからは話がそれますが、アメリカの3Mという事務用品メーカーのホームページに、打ち合わせのありかたについてリサーチをした結果[3m.com]が出ています。これによれば、アンケートに答えた人のほとんどが、週に1〜1.5日を打ち合わせに費やしているんだそうな。しかも、そうした打ち合わせでつかった時間の、1/4から1/2は無駄だったと感じているんだって。なんか、共感してしまいますけど(^_^)。別のリサーチ[3m.com]では、会議のどこが嫌いかという質問に対して、一番多かったのが「結論がないこと」で、次に「準備不足」「議論が議題から外れる」と続いています。アメリカでも、しょーもない打ち合わせってのがあるんですね。なぜここで、打ち合わせの話が出てきたかといえば、このサイトのニュース紹介コーナー[3m.com]に、この先、ネットワークをつかった打ち合わせってのが増えそうだと、書いてあったからです。ここで紹介されている、去年の夏のニューヨークタイムズの記事によれば、企業が旅費を削減するためにビデオ会議(テレビ会議)を使い始めているということです。これは、多分ちゃんとしたシステムのことでしょうけど、パソコンでもCU-SeeMe[wpine.com]というソフトを使えば、手軽にテレビ会議ができます。これから、データ通信の速度が速くなるにつれて、こうしたソフトを使った、お手軽な遠隔テレビ会議が普及するのではないでしょうか。そして、気軽に人を集めることができるので、ますます無駄な打ち合わせが増える(^_^;。テレビ会議やメッセンジャーといった、ネットワークをつかったリアルタイム・コミュニケーションというのは、うまく使わないと、そのまま時間の浪費になってしまう傾向があると思います。

チャットやBBSは、パソコン通信の頃からネットワーク利用を進めてきた原動力でしたが、これらは、自分の都合で書き込んだり、参加したりできました。しかし、メッセンジャーにしてもテレビ会議ソフトにしても、ソフトを起動していれば相手から呼び出しがくる、受け手にとっては受動的なトリガーでコミュニケーションが始まるものです。そこら辺は、同じように見えて、なーんか違う感じがするんですけど。そんなに嫌ならソフトを停止しとけば良いではないかってことにもなりますけど。でも、利用者が増えれば増えるほど、そういうソフトは常に受信可能にしておくことで、意味を持つように成ると思うんですね。そんなわけで、これからのネットワーク・コミュニケーションのキーワードは、暇つぶし優先カルチャーってことになるのかも。でも、私は、能動的暇つぶしの方が好き。暇なときに書き込めるBBSみたいなのがいい。BBSはビープを鳴らして、割り込んでこないもんね(^_^;。

1999.07.30
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