将来の家庭内LANは無線か

ソフトバンク[softbank]が、2000年の夏に月々千円くらいで10MB/s以上の常時インターネット接続サービスを始めると発表[MYCOM]しています。この価格が本当に実現すれば、もはや電話回線を利用する既存のプロバイダーの存在意味はなくなり、サービスが最初に入る首都圏では他のプロバイダーが無くなるくらいの影響が出るかもしれません。ソフトバンクが他のプロバイダーに回線のリセールをするとしても、この会社の独占にはかわらないので、この業界の勢力図は大きく変わるでしょう。ましてや、インターネットアクセスの価格障壁の象徴となっているNTTにとっては、データ通信に適しているとアピールしているISDNサービスの顧客を、このネットワークに取られることになるかもしれません。とはいえ、常時接続が普通になれば、インターネットの使い方も変わっていくし、ますます家庭内ネットワークに現実味がますと思います。

家庭内にネットワークがどのように入っていくかについて興味があって、ここでも1999.5.211999.3.5など、何度か取り上げてきました。家庭内にネットワークが入ってくるとき、インターネットへの入り口は電話回線でつながった冷蔵庫になるのか、テレビの上のセットトップになるのか、あるいは、電力メーターになるのか、いろいろな提案がされてはいるものの、決定的なイメージはできていないように思います。場合によっては、複数のネットワークが作られて、それらがサーバーを経由して接続するような形になるかもしれません。しかし、どのような形になったとしても、意外と困るのが家庭内の配線です。すでに配線されている電力線を通して信号を送るLonWorksという方法も考えられますが、10kbpsはすでに高速とは言えません。すると、新たに配線しなくても使える無線で接続するのが簡単そうですね。最近売り出されたアップルのノートパソコン、iBook[apple]はそういうユーザーのために、家のどこからでもケーブルなしに回線に接続する機能がついています。

iBookについているAirPort[apple]は、オプションのインタフェースカードと、AirPort Base Stationというインターネットへの入り口となるハードを買うことで、11Mbpsの無線通信が家庭内でできるというものです。Base Stationには56kbpsモデムとイーサネットポートがついているので、インターネットとの接続速度は主にその先の回線の速度できまるでしょう。イーサネットのポートは、アメリカで普及しているCATVやDSLといった高速回線用のモデムとの接続を考えているようです。一方、Windowsマシンのユーザーにも、11Mbpsは無理でも、似たようなものが売られています。たとえば、すでにPHSでインターネット接続しているのであれば、ISDN対応の電話を買うだけでOKというものもありますね。これは、ISDNコードレスホンW-1000P[nttca]なるもので、DSUというISDN回線の終端器も内蔵されているので、単純にこれをソケットにつなぐだけで設置が終わります。他の部屋からインターネットにつなぐときは、PHSのデータ通信機能(PAFS)を使って、最大64kbps(実効58.4kbps)の通信ができます。PHSなんか使ってないという人には、別売のパソコンアダプタというものが用意されていて、これをパソコンの通信ポートにつなげば、デスクトップパソコンも無線でインターネットに接続できます。電話器はあるから、TAと無線でつながれば十分という人には、そういう商品も出ています。

たとえば、NECのAtermIW50[cplaza]というTAは、やはりPHSの電波を使って家庭内の無線通信をします。上で紹介したコードレスホンと同様に、すでにPHSでデータ通信をしている人は、このTAを通してisdn回線に接続することができます。他の部屋にあるデスクトップパソコンと接続する場合は、リモートステーションという箱にパソコンの通信ポートをつなぐことで、TAとの通信が可能になります。いずれも、最大64kbps(実効58.4kkbps)の通信速度になります。Atermのホームページにもあるように、データ通信用の配線というのは意外と面倒です。もちろん、最初からそのつもりであれば、家を建てるときに壁の中にイーサネットケーブルを張っておく手もありますが、建て売りの家を買ったり、中古だったり、マンションだったりすると、あとから床にケーブルを張ったり壁に穴をあけるのは面倒です。その点、無線なら配線工事がいらないので簡単です。もちろん、盗聴の危険性は無きにしもあらずですけど、いまや電線に入ってしまった後に盗聴されてる可能性の方が大きいものね。でも、ここで紹介した二つのの家庭内無線接続は、インターネットにつなぐことはできても、家庭内のパソコン間でTCP/IPなどをつかった通信をすることはできないので、本当の意味の家庭内ネットワークというわけではありません。

家庭内ネットワークというからには、パソコンの間でファイルを共有したりプリンターを共有したいものです。いまのところ、これをするには、10BaseTのハブを家庭のどこかにおいて、それとパソコンをケーブルで接続するのが一般的でしょう。もちろん、業務用には無線LANというのも売られていますから、家庭内のネットワークを無線で実現できないわけでもありません(例えば[NEC])。こうした、無線LANはオフィス内の配線を減らしたり、ポータブルなパソコンとLANの接続を容易にするのが目的です。これと、ダイヤルアップルーターをつなげば、家庭内無線LANの出来上がり。でも、パソコンを3台くらいしかつながないのに、128台までつながるようなシステムを買うのは大げさな感じもします。ダイヤルアップルーター[zdnet]というのは、TAに10BaseTのハブがついたようなもので、ハブに接続されたパソコンの間でTCP/IPなどの通信が可能になります。パソコンのブラウザーを起動すると、このルーターが自動的にインターネットに接続し、通信がなければ自動的に回線を切ってくれます。そういう意味で、このルーターに、小規模な無線LAN機能がついたものがあれば、話は簡単なんですけどね。

もし、ソフトバンクのシステムのように、家庭のユーザーとプロバイダーとのあいだの通信が無線になるとしたら、将来の家庭内ネットワークは、屋外の電波を屋内のパソコンに中継するリピーターだけになってしまうかもしれません。そうなると、ダイヤルアップルーターもハブもいらなくなります。意外と、未来の家庭内ネットワークは、パソコンにアンテナが立ってるだけだったりするかもしれませんね。

1999.08.13
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