GPS騒ぎの教えたこと

先日(99年8月22日)、「GPS(グローバル・ポジショニング・システム)週数ロールオーバー」というのが起きて、メーカーにカーナビの不調を訴える問い合わせが殺到したというニュース[mainichi]がありました。このニュースによれば、当日だけで2200件の問い合わせがあったとか。この、ロールオーバーというのは、米軍のGPS衛星(18,000km上空に27台ある)の時計が1023週までしか数えられないために、定期的におこるものだそうです。1024週目にはいったとき、衛星は、今がゼロ週の最初の日の0時だという情報をカーナビなどに送るので、それと実際の時刻との対応をちゃんとできない受信器は、誤動作をするとのこと。この問題が生じるカーナビは、主に1996年以前に売られたものが多いので、全てのカーナビが誤動作をするわけでもありません。それにしても、マスコミは、随分問題が発生したかのような報道をしていましたね。

一方で、この問題は、コンピューターのカレンダーが誤動作する2000年問題の練習になったという見方[WIRED]もあります。現象としては確かに似てますね。コンピューターの方の2000年問題も、1999年までしか数えられないOSやハードを使っていたために、2000年になったとたんに誤動作が生じるというものですから、1024週目にゼロに戻ってしまうGPSと原理は似ています。また、GPSの問題も、計算機のソフトを2000年対応にすると同様に、受信器のソフトを書き換えることで対処できます。GPSロールオーバーについては2000年問題ほど騒がれませんでしたが、それでも、マスコミには以前から上がっていた話題だと思います。メーカーも去年の早い時期からアナウンスをしていたようです(例えばパイオニア)。私も、いつごろかは思い出せませんが、3年以内に発売されたものは大丈夫というようなニュースを見て、なんだ、自分のはOKだなと思った記憶があります。それで、実際に、2000年問題の予行演習としてのGPSロールオーバー問題は、どれほどの社会的影響を与えたのでしょうか。アメリカの方では、GPSではほとんど混乱はでなかったから、これなら2000年問題も大丈夫ではないかと報道[WIRED]しています。

この報道によれば、沿岸警備隊も船舶に重大な遭難事故がおきたという報告はないし、カーナビ販売会社が大手の取引先を調べたところでも、大きな問題は起きなかったと書いてあります。一方で、日本ではカーナビメーカーのパイオニアに数百件の問い合わせがあったと書いてある。なんでまた、アメリカでは騒ぎにならなくて、日本では苦情が殺到したような報道になってるんでしょうねぇ。多分、アメリカでもカーナビのユーザーは多いはずだから、日本と同じくらい不調になった人はいると思うのですが。それとも、アメリカ人は、ちゃんと事前のアナウンスにしたがって自分のGPSのソフトを更新していたのでしょうか。似たようなことは、アメリカのジャーナリストも感じたようで、News.COMの方の記事[NEWS.COM]は、「可否が入り交じった報告(Mixed reports)」があったと報告しています。こちらは、日本語サイトには載っていないので英文で読んでいただくしかないのですが、やはり、アメリカの沿岸警備隊などの機関は重大な問題は起きなかったと、WIREDニュースと同じような話を書いた後で、一方、日本ではGPSロールオーバーはスムーズにいかなかったと書いています。で、なんで日本で大きな騒ぎになっているかについては、日本では道に名前がついてないし、複雑な土地の境界線を縫って道が走っているので、特に都市部のドライバーはカーナビに強く依存しているのだ、と説明しています。

道に名前がついていないわけでもないけど、裏道が入り組んでいる上に、一方通行も多い都市部では、宅配会社などがカーナビを積極的に使って仕事をしているのは事実のようです。それはともかく、この2000年問題の予行演習の結果をまとめると、アメリカは意外や安泰だけど、日本では来年大騒ぎになる?ではなくて(^_^;、壊れると困る人はちゃんとあらかじめメーカーの指示にしたがって、ソフトをアップデートしておけば重大な問題には遭遇しないというところでしょうか。あるいは、カーナビがなくても目的地に行けるアメリカのドライバーがそうであったように、パソコンがだめでも生活に支障のない人は、問題にならないかもしれません。最近、日付がへんでさー、程度の問題だったりして。では、パソコンがまともに動かなくなると生活に困るような人、あるいは会社の場合はどうかというと、積極的にメーカーにコンタクトして、事前にチェックする必要がありますね。とはいえ、カーナビはメーカー1社に電話すれば済みますが、パソコンとなると本体のメーカーのホームページをチェックしただけではだめで、使っているソフトを全部当たらないといけなくなる。これは、けっこう手間です。

2000年問題については、企業のように大きなシステムを動かしているところは、それなりに組織的に対応できますが、個人の場合はほとんどメーカーからの注意を見過ごすでしょう。で、動かなくなったソフトを前にメーカーにクレームを付けると、「もう、3年も前からアナウンスしてるじゃないですか、よく読んで頭で理解してくださいね」と言われるわけです(^_^;。パソコンも、使い込んでいると、意外と多くのソフトを使っています。バージョンアップをさぼっている古いソフトについては、もしかしたら2000年の初仕事でいきなりつまづくかもしれません。でも、個人的に使うパソコンの場合、それでもしゃーないという広い心が必要な気がします。毎日起動するソフトは最新のバージョンにあげておけば、とりあえず安心?そうでないソフトは、この際だから、動作しなければぽいしちゃう。神経質に、全部のソフトを2000年対応にバージョンアップしていったら、お金がかかってしかたない。そんな、感じがしますね。アメリカの、ドライバーを見習いましょう。え?動かないの。しゃーないな。でも、これ使わなくても困らないから、そのままでいーや。

1999.08.27
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