形でパソコンを選ぶ時代

iMac[apple.co.jp]に似すぎていると、アップルから訴えられたソーテック[sotec.co.jp]のe-oneですが、東京地裁はe-oneの製造と販売を中止しろという仮処分[impress]を出しました。パソコンの形は、どれくらいパソコンの売り上げに影響するものなんでしょうか。これまで、あまり見分けがつかないパソコンを使ってきた私たちにとって(^_^)、見分けがつかないという理由で仮処分が出るという、今回の話ではいろいろ意見が分かれそうな気がします。

どれくらい、これらのパソコンが似ているかは、上の記事の写真を見ていただくとわかります。この決定に対するソーテックの意見と、これまでの経緯については、ソーテックのサイトにあるニュースリリース[sotec.co.jp]に書かれています。また、アップルの方のアナウンスは、短いですがこちら[apple.co.jp]にあります。ソーテックの言い分は、e-oneとiMmacが消費者にとって見分けがつかないという理由で処分を受けるのは納得できないというもので、とりあえず販売を中止しても、さらに、裁判で争うつもりのようです。論争の中心は、どうやら、形が似ているので消費者が間違って買ってしまうかもしれない、というところにあります。人気のある、おしゃべりぬいぐるみファービーの類似品を、間違って買ってしまうのににてますね。間違いやすいという意味では、ファービーの類似品なんか、私には名前でしか区別がつかないくらいに似てますけど。そんなわけで、ソーテックの方では、e-oneはWindowsマシンだから、Mac OSのiMacと消費者が混同するはずが無い、と誰でも考えそうな反論をしています。そうね、区別がつかないというなら、e-oneの登録カードの「本製品を選ばれた理由」の欄に「iMacと間違えて買ってしまった」と書く人がいてもよいはず。もっとも、そんなものソーテックが保存しておくはずが無いけど(^_^;。ただね、ソーテックの言い分にある、「楽しい」「やさしい」 をワン・パッケージにしたコンパクトな一体型パソコンというコンセプトを実現するのに、あそこまでiMacに似せる必要があるだろうかという疑問はありますね。やっぱり、素直に見れば、形をまねしたことになるよなぁ。

パソコンは、形が斬新でなくても、コストパフォーマンスがよければ、十分売れています。それはなぜかといえば、これまでのパソコンユーザーは、パソコンという機能を買っていたわけで、形はその次だったからではないでしょうか。かっこいいパステルカラー・スケルトンデザインだけど、CPUがPentium MMX 120MHzのパソコンと、だっさいクリーム色の横置き箱形デザインだけど、CPUがPentium III 500MHzのパソコンが、同じ値段で並んでいたら、今までのユーザーはPentium IIIの方を買うでしょう。だって、動作が早くて長く使えますからね。デザインなんて、箱がディスプレイの重みでつぶれなきゃいーのさという感じ。ただ、iMacを買った人には、初めてパソコンを買った人も多かったようですね。こうした、始めてパソコンを買う人は、もしかしたら、性能よりもデザインに目が行くかもしれません。部屋に置いてかっこいいかどうかが、この先のパソコンの新しい判断基準の一つになる。パソコン市場がそうなったときには、かえってソーテックの様なやり方はできなくなるのではなかろうか。つまり、間違えて買うということよりも、絵画の盗作のように、デザインが似ているということだけで、売り上げに影響するようになるわけですから。こういう話をしていると、そんなこと言ったら、冷蔵庫の形はどれも盗作ではないかという意見が出ます。色が同じで、下の引き出しが冷凍庫で、そのうえに野菜室があって、一番上が冷蔵室になっている設計はどこの会社も同じです。でも、間違って買うかもしれないから、引き出しの順番を変えろなんていう裁判が起きたなんて話は聞いていません。だから、iMacとe-oneの形が似ていたからって、冷蔵庫やテレビの形の画一性にくれべりゃ、まだましではないかという意見もある。

アップルがe-oneに目くじら立てるのは、これまでもパソコンの形を重視してきたという、歴史的背景があるように思います。それに対して、MS-DOS以来のPC-AT互換機の世界は、アーキテクチャを公開したという経緯からか、形までどこか互いに似ているような感じです。横置きタイプだったら、左にフロッピー、右にCD-ROM。厚みがあれば、その下に拡張ドックのフタが並んでいるとか。これに対して、アップルの製品は、Macintosh Plusの頃から、形にこだわりがあったと思います。そして、その形をマーケティングに積極的につかって、MacintoshといえばSEやPlusのディスプレイ一体型の形が思い浮かぶくらいに宣伝しました。MacOS 8になるまえは、起動時に画面にMac SEの線画とWelcome to Macintoshの言葉が表示されていたものです。それが、スティーブ・ジョブズ[fujitv.co.jp]がアップルを追われたころから、PC-AT互換機とあまりかわらない見かけになってきて、一部のファンから不満もでました。その後、経営の悪化したアップルに、再びジョブズが帰ってきて作らせたのがiMacなわけです。パソコンの形にこだわるのがアップル。でなきゃアップルじゃない。その結果、ミニタワーのPowerPCはG3[apple.co.jp]の様な取っ手が突き出た半透明の形になったし、ノート型のパソコンもiBook[apple.co.jp]の様なおしゃれな形になってしまった。もちろん、この形が好みかどうかは賛否あるでしょう。私の職場にも数台のG3がありますが、仲間内では不評でした。取っ手がついてるので、外付けのフロッピードライブなどが上に置きにくい。ただ、同じパステルカラーのiMacは女子社員の間で根強い人気がありますけどね(^_^)。

ソーテックは少しだけiMacと色がちがうe-oneを売るらしい[impress]ですが、これまでMacintoshを使ってきた私としては、パソコンの形にも独創性を認めるべきかなと思います。斬新かどうかの判断はあいまいですが、iMacの形を売り出すについては、アップルはそれなりのリスクを抱えていたわけです。ブレークしたから良いけど、あの形だから嫌だという人もいるわけですからね。それを、売れてるから似せちゃえというのは、ちょっとPC-ATカルチャーがすぎるようにおもうな。もっとも、書いてる本人は、形よりも性能優先ですけどね(^_^;。

1999.09.24
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