家庭向けパソコンとは

アメリカで開かれたCOMDEX'99では、この先のPC(ポストPC)がどのような形態を持つのかで、企業の間で意見が分かれている[cnet]ということです。基本的にパソコンは、インターネットに接続する情報端末としての役割がメインになり、それが家庭に浸透していくという見方は同じようですが、そのための形はWindowsマシンの流れなのか、パームパイロットの様なPDAなのか、はてはインターネット冷蔵庫なのか、企業間の思惑がそれぞれ違っているようですね。

家庭で使う情報端末に向けたパソコンの「形」としてはいくつか市場に現れています。たとえば、コンパックがiPaq[cnet]を、AMDがEasyNow[cnet]を発表しています。IBMやDELやHPも[cnet]こうしたトレンドに加わろうとしているようですね。これらは、現在のパソコンの延長にあって、特別な飛び道具を持っているわけではありません。共通するのは、家庭でも花瓶のかわりに飾っておけるような小型で派手なデザイン。複数台買ってもよいと思わせる、1000ドル以内の安い値段。それと、これも流行語になりそうな「レガシーフリー(Legacy-free)」なインタフェースですね。これは、早い話が、今までついていた「旧来の」インタフェースを捨てて、USBなどで置き換えてしまうということです。たとえばフロッピードライブはつけないのが当たり前になりそうです。これは、iMacに倣ったのか、最近の東芝フォロッピー訴訟問題[pcweb]に反応したのかわかりませんけど。Windowsの修復ディスクはどうやって作るんでしょうね。すでにWindowsマシンを使いこなしていて、新しくこうしたパソコンを買う人たちは、みんな、Mac G3やiMacのユーザーの様に、USB対応のフロッピードライブを買うのかな。いずれにせよ来年にも、こうした、かわいいコンパクトなパソコンが、家庭になだれ込んでくるのでしょう。でも、家庭の需要が増えても、OSがWindowsで、新しくパソコンを手にした人たちが使いこなせるんでしょうかね。

iMacでこうした家庭向けパソコンの方向を先取りしたアップルが、新しい基本ソフト(オペレーションシステム)Mac OS9を売り出しました。私も、さっそくパソコンに入れてみたんですが、明らかに家庭での使用を頭に入れて、新しい機能を取り込んでいるようです。たとえば、複数のユーザーが共有できるようにログイン機能をつけています。ふむ、将来、家庭でみんながパソコンを共有するようになれば、互いのプライバシーはこれで守れるかもしれない。Mac OS9のマルチユーザー機能は、アプリケーションやファイルへのアクセス権を管理できる点で、Windows NT的です。Mac OS9では、OSをインストールしてパソコンの共有設定メニューに名前とパスワードを設定した人が管理者に任命されます。この人が、ユーザー登録や管理をします。(バージョンアップで上書きインストールした人は、強制的に管理者パスワードが以前に使っていた共有パスワードと同じになるらしいので注意が必要です。)ユーザーは三段階のレベルに設定できて、「通常利用者」はすべてのソフトが使えます。次の「制限付きの利用者」は、管理者がソフトを制限することができます。三番目の「パネル利用者」になると、デスクトップが消えて、でかいアイコンの並んだパネルだけになります。このパネルには、与えられたソフトと、与えられたディレクトリのアイコンだけが出ますから、決まったソフトだけを使うユーザー、あるいは危ないユーザー向けですね(^_^;。ブラウザの設定やブックマークはユーザーごとに独立していますから、互いにどこのWebを読んでいるかといったプライバシーは守れる。ファイルについても、個人ごとのフォルダーが作られて、互いに中身は読めないようになっています。しかし、よく考えると、管理者にはぜんぶお見通しなのですな。はたして、生意気な中学生が、おやじが管理者のパソコンを使いたがるかどうかは、別の問題ですね。自分の部屋を欲しがるように、自分のパソコンを欲しがるのが当たり前かも。

ほかにも、音声をパスワードに使えるとか、英語だけど言葉でソフトを起動したり操作したりできるとか、面白い機能もあります。こういうのは、手が不自由だったりする人の補助になるかなとも思いますが、まだ、言葉による文字入力とか、すべてのソフトの機能が音声で使えるわけでもないので、ユーザーの反応を見るために試しに入れてみたという感じもします。音声パスワードは声紋を認識するので、言葉は日本語でも大丈夫です。ほんとうに自分以外の人間がしゃべっても識別できるのかは興味津々ですが。音声によるソフト操作の方は、英語しか認識できませんが結構感激でした。自分の英語にMacが反応すると、なんか奇跡を見たような感じがします(^_^;。このソフトは日本語版Mac OS9では、インストールCD内の特別付録フォルダーに入っていて、OSのインストーラからは選択できません。専用のインストーラでインストールすると、女性の顔が表示されます。これは、ほかにもアメリカ人的な顔を選べるのですが、私にはこの顔がいちばん人間に見える(^_^;。なんかキーを押しながらしゃべるか、キーワードで呼びかけてしゃべると、音声認識が起動して女性の顔が反応します。たとえば、"Open Simple Text"としゃべると、エディタのシンプルテキストが起動する。でも、通じないと女性が困った顔をしたり「ソフト名がわかりません」とかメッセージを返します。この返事も、やっぱり特別付録フォルダのテキスト朗読ソフト(英語)を入れておくと、女性の声で返事をしてくれる。これも英語ですけど(^_^;。こうした音声にからんだ機能は、職場で使うというよりも、家庭で使って楽しい機能を狙ったように思います。だって、職場でパソコンとしゃべってたらうるさくて仕方ないもんね。

家庭にインターネットというと、家庭内ネットワークとか通信機能付き家電の話題がかかせませんね。ここでも、「家電ネットワークのその後(1999.03.05)」などで、何度か触れていますが、いよいよインターネット対応の電子レンジ[sharp]が売り出されましたね。正確には、インターネットからダウンロードした料理方法ファイルで、インタラクティブに料理ができる電子レンジ(^_^)ですが。この電子レンジには、専用のインタフェースボックスへのポートがついています。ユーザーはこの箱にパソコンをつないで、インターネット経由でダウンロードした料理法ファイルを電子レンジに読み込ませます。すると、材料の下ごしらえから順番に料理方法が液晶ディスプレイに表示され、それにしたがって料理すれば料理本なしで料理ができるというもの。もちろん、電子レンジを使う部分については、設定は自動的にされます。ただし、この料理法ファイルはシャープ独自の形式なので、この会社の用意したホームページ[sharp]からしか提供されません。だから、インターネット対応とはいっても、世界中のサイトから名物料理の作り方をダウンロードできるわけではありません。このホームページへの接続は、どのプロバイダーからも可能で、つかうパソコンもWindows 95/98マシンであればシャープのパソコンでなくても、データのダウンロードと受け渡しができます。家庭とインターネットというと、すぐに家電製品をネットワークにつなぐことを考えてしまいますが、シャープのようなアプローチから入っていけば、自然に家電をインターネットにつなげば便利かなと消費者も考えるようになるように思います。まだ、何が家庭にネットワークを普及させるかわからない時期ですからね。

企業向けのパソコンが行き渡ってしまったのか、メーカーはネットワーク対応の家電や、家庭向けパソコンの売り込みに熱心なようです。もっとも、メーカーの方もインターネットと家電製品がなぜ結びつかねばならないのか理屈に頭をひねっているようにも思います。上に紹介したシャープの電子レンジホームページのQ&Aコーナー[sharp]を読むと、「パソコンに対する主婦の抵抗感はないか」「なぜすべてのPC対応できないのか」「ザウルスからもアクセス可能か」「(インタフェースボックスの)メモリ容量は」「CPUの処理速度は」など、どっちかというとネットワーク、またはパソコンオタクが聞きそうな質問が並んでますね(^_^;。きっと、開発担当者が考えた質問がそのまま出てるに違いない。むしろ、おくさまは、メモリー容量やCPU速度よりも、本当にメニュー通りの料理ができあがるのかどうかに興味があると思うんだけど。

1999.11.19
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