アンケートから個人情報は流出しないか

電子メールは便利ですが、よく使えば使うほど、見知らぬ会社からの宣伝メールが増えてくるように思います。私の経験だと、日本国内よりも海外からの宣伝メールが多いですね。どちらも、アダルト系の宣伝がほとんどで、あとは転職の勧めとか(^_^;。電子メールや、うるさくかかってくる電話勧誘を見ていると、個人情報というのは、すでに市場ができていて、随時にデータを更新できるシステムになっているとしか思えません。中でも、インターネットを使って収集した情報は、個人が入力した時点で電子化されているから、最初から流通しやすい形態になっていると思います。例えば、アンケート系のサイトで入力する個人情報とかって、いちばん商品にしやすいのではないでしょうか。

私のところに送られてくるメールを読んでいると、毎週のように懸賞付きのアンケートが出ています。例えば、楽天市場というサイトの懸賞広場[rakuten]のページを開くと、豪華客船旅行から野沢菜の油炒めまでいろんな懸賞が並んでいます。そして、必ず、応募に付き物なのが住所・氏名・年齢・電話番号といった個人情報を書き込むアンケートページです。応募するほうも、賞品が届かなきゃしょうがないから最低、こうした情報は送信しますね。中には、もっと詳しく、勤め先とか年収とか、興味のある賞品とか、何ページもアンケートを書かせる所もあります。それはそれで、その会社のマーケティング手法の一つですから、悪い手ではないとは思います。でも、いまひとつ、こうしたアンケートをしている日本の会社は、個人情報に対する意識が低いように思うのです。なぜ一言、「ここで得た情報は、当社のマーケティングにのみ使用し、第三者に情報を渡すことはしません」と書かないのでしょうね。

個人情報の保護については、いろいろ議論が合って、専門家にもそれぞれの意見があるでしょうが、現実は企業の良識に任せるところが多いように思います。特に、訴訟の少ない日本では企業の個人情報保護に対する責任感が薄いのではないですか。さらに、最近気になったのは、懸賞による情報収集を大手の会社がアウトソーシングしているということです。実は、プロバイダのInfoSphere[sphere]が、アントラーズ戦のチケットを賞品に会員向けにアンケートをやっていたのです。会員向けのアンケートというのは、基本的に会社の方には、応募する会員の個人情報がすでにあるし、会員もすでに利用している会社であるという安心感もあります。そんなわけで、わたしもアンケートページを埋めて応募しました。アンケートの内容は、どれくらいアクセスしてるとか、どんな情報をインターネットから取っているかとか、どんなサービスが欲しいかとか、ま、プロバイダのアンケートとしてはリーズナブルな内容でした。しかし、それをポストするときに、一つ不思議なことに気がついたのです。それは、応募の時に出すアンケートページのURLのドメイン名が、いつのまにかsphere.ad.jpではなくて、recuruit.co.jpになっていたのです。リクルート?

この疑問について、InfoSphereに問い合わせたところ、丁寧な回答をもらいました。それによると、InfoSphereでは、リクルートリサーチ社にアンケートの作成と集計を委託していたようです。リクルートリサーチ社はリクルート系列の調査会社ですね。この会社のホームページ[rresearch]に行くと、調査サービスの内容が出ていますがWebを使った調査については、記述がありません。むしろ、本家のリクルート社のホームページにこうした市場調査を代行する話[recruit]が出ていました。ここに出てくるアクセスネットは、電話やファクシミリを使ったアンケート収集とデータベース化のサービスですが、絵にはネットワークからのデータ収集もイメージしているようです。たしかに、アンケートを企業がしようとしても、得られたデータの整理とか解析には専門的なテクニックや手間が必要ですね。それを、代行する会社が出てくるのはニーズにかなっていると言えます。ただ、ここで気になるのが、ほんとうはAという会社に渡したつもりのアンケートが、関係ないBという会社を経由しているということです。

アンケートに書き込んだ内容が、そのアンケートを出した会社に対して開示した個人情報だとすれば、その個人情報を第三者が見ているという事実は、なんか私を不安にさせます。間に入った会社が、その個人情報をデータベースにして、さらに他の第四者に売ったりする可能性は無いのでしょうか。アンケートが終わって、データが依頼した会社に渡った後も、集計データが、その会社のコンピュータに残されている可能性は大きいのではないか。こうした、不安の原因は、アンケートをポストした人には、アンケートを出した会社と、集計を代行している会社の間の契約内容が見えていないという点にあります。ただ、私も、いちいちそうした契約内容をアンケートのページに載せる必要はないように思います。この場合、「アンケートで得た情報は、第三者には漏らさない」と書けないのなら(いきなり漏れてるものね)、「アンケートは調査会社に委託するが、外部には漏らさない契約をしている」と書けば済むように思います。InfoSphereの担当者からの回答にも、そうした点は今後注意すると書かれていました。

海外のサイトでは、個人情報保護に対するポリシーが明記されているところが多いように思います。例えば、アップルのサイトにも、マイクロソフトのサイトにも、プライバシー・ポリシーというページを持っていて、自分が個人情報保護をどう考えているかを宣言しています([アップルのページ][apple][マイクロソフトのページ][microsoft])。さらに言えば、これらのページは、必ずホームページ(サイトの表紙)からリンクしているのです。これは、そうしないと客が安心しないからでしょう。日本でも、もっと、自主的に自分の会社は個人情報を保護しているんだと宣言して欲しいと思います。試しに、パソコンを販売している会社のホームページをざっと当たった感じでは、ヒューレットパッカード(HP)、IBM、DELLといった外資系の会社は、ちゃんと、個人情報保護について書いたページへ表紙からリンクしていますね(例えばHP[hp])。しかし、それに比べて、日本の企業はきれいなアイコンはちらつかせても、個人情報保護については、まったく表に出していません。これからは、問題が起きる前にちゃんと個人情報保護について、ホームページに明記するカルチャーを身に付けるべきではないでしょうか。特に、リクルートリサーチ社のように、情報収集を仕事にしている会社はそうあるべきでしょう。しかし、みたところ、この会社のホームページも個人情報保護については触れていません。この会社の個人情報保護は大丈夫なんでしょうか。

2000.4.7
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