旧世代パソコンに触れて新しきを知る?

最近、職場の5年ほど使ったパソコンを再インストールしていて、この5〜6年のパソコン界の変化は異常に速かったという感慨を持ちました。その前はどうだったのだろう。ワンボードマイコンと呼ばれる、おもちゃのようなコンピュータを相手にしていた1970年代の終わり。8086系CPUのパソコンで文字表示のソフトをMS-DOSで動かしていた1980年代前半。そしてPentiumプロセッサとWindows 3.1の1990年代。でも、誰も後戻りできないないような本当の変化は、インターネットが生活や仕事に入り込んだ、この5年ほどに凝縮されているように思います。

最近、Windows 95が出る直前に買ったキャノン製ノートパソコンにOSを再インストールしました。こいつは、16MBのメインメモリーに340MBのハードディスクを持った80486 CPUのパソコンです。マニュアルの再インストールの項目には、fdiskは使わずにformatコマンドを使えと書いてある。そう、これは独自仕様のパーティションを持っていて、スリープ時にそこにメモリー内容を退避させます。fdiskするとそのパーティションが壊れるので、起動するたびにBIOSが警告を出すようになります。言われるままに、format c:と入力すると、今度は、formatコマンドは使えない、dblspace /format c:と入力しろという警告がでました(^_^;。ハードディスク容量10GBが基本の今のパソコンを使っている人に、このコマンドは無縁です。dblspaceは、DOSに標準でついていたディスク圧縮ソフトなのです。これを使うと、リアルタイムでファイル圧縮してくれるので、見かけの容量が倍になる。ソフト的にディスクを倍増したり、メモリーを倍増するソフトは、1995年前後には当たり前に使われていました。でも、メモリーもハードディスクも十分に装備された今のパソコンでは、あえてCPUの負荷になるこんなソフトを使う人はいないでしょう。

話を戻すと、警告にしたがってdblspaceコマンドを入れたら、今度はコンベンショナルメモリーが不足していてコマンドが起動できないというエラーが出ました。このメッセージはWindows 3.1を使っていた時代には誰もが遭遇したものです。懐かしいが本能的に腹が立ってくる(^_^;。私は、エディタでconfig.sysファイルを開くと、これ以上削除すると漢字が表示できなくなる位まで、デバイスドライバーの行をコメントアウトしました。これで、dblspaceが起動できました。圧縮状態の解除は、メニュー画面から機能を選択するだけで簡単に解除できる...はずだったのに、いきなりこのソフトはディスクの最適化を始めました。これは、5時間たっても終わらなかった(^_^;。当時は、この時間が当然だったのですな。今の人は5時間もパソコンのソフトを走らせたまま放置したりしないでしょう。ほぼ半日掛けて圧縮を解除したハードディスクを改めてフォーマットしなおし、OSをインストールしました。MS-DOS Ver.6は1MBのFDが6枚。Windows 3.1はFDが12枚です。言われるままにフロッピーディスクを差し替えて、一時間もかからずに作業は終わりました。DOSという世界を通らないとWindowsに入れなかった時代は、エディタでconfig.sysファイルがいじれないと何も始まらなかった。これは、少なくともパソコンを道具としてだけ使いたい利用者には向かない家電製品だったということです。では、プラグアンドプレイが売りだった、Windows 95では改善されたでしょうか。

次に96年に購入したパソコン(COMPAQ)の動作が不安定になったので、再インストールすることにしました。このパソコンはWindows 95のプリインストール版で、マニュアルによると、再インストール用のデータはハードディスクに収まっているはず。でも、ディレクトリを見たところでは、すでに消去されているようでした。自分でやっておいて、すっかり忘れている。あきらめかけて何気なく近くの引出しをあさっていたら、10枚入りのフロッピーケースを5個発見。シールを見るとどうやら、このパソコンのOSのバックアップのようです。全部で約50枚。我ながら、よくぞこれだけのFDにハードディスクのデータを吸い上げたものです。でも、それをしないと再インストールができなかったのです。CD-ROMでプリインストールソフトが同梱されたのは、97年頃からです。見ると、Windows 95のインストールディスクが41枚で、残りはデバイスドライバのようでした。インストールはインストーラの言われるままに進めばよいし、ディスク圧縮もやっていないので簡単に進みました。でも、フロッピーディスクを延々と入れ替える作業の繰り返し。一枚平均一分かかったので、40分でWindwos 95がインストールされ、一時間経過したころに、再インストールが終わりました。でも、4年前は、50枚のフロッピーディスクでOSをインストールするくらいなんてことなかったのね。腕の筋肉も鍛えられてヘルシーだたかも。CD-ROMに慣れた今、これをやらせたら誰も買わないでしょう。でも、再インストールCD-ROMがつき始めた頃は、それでも、まだ初心者には難しかったのです。

再インストールマニアと化した私は、97年に購入したThinkPadを初期化することにしました。これには、Windows 95をインストールするCD-ROMが付いていますが、起動ディスクにはこの会社の純正CD-ROMドライブのドライバしか入っていません。このパソコンの場合、CD-ROMドライブが外付けなので、純正品のドライブのない人は、ここでこけます。なにはともあれ、使用するCD-ROMのドライバが入った起動用フロッピーディスクを作ってCD-ROMが認識できれば、後は勝手にファイルをコピーしてインストールしてくれます。そこまでは良い。でも、このパソコンの場合、ここまでだと画面はVGAだしUSBも使えないのです。しかも、PCカードを使うには、OSR2にバージョンを上げなくてはいけない。私は、マニュアルに書かれた通りに、Windows 95のCD-ROMのWin95フォルダーの内容をコピーして、それに添付されていたFDからOSR2の差分ファイルを移し、そのフォルダーからインストーラを起動しました。見かけ、なんのエラーもなくバージョンアップが終わったが、パソコンを再起動したら、いきなりエラーがでてシステムが壊れていました。理由はともかく、OSR2へのバージョンアップは失敗したようです。もう一度最初からやる?いーや、私は以前に、このパソコン用に買っていたWindwos NT 4.0をインストールするほうを選びました。

Windows NT 4.0のインストールは非常にスムーズでした。一度、CD-ROMのドライバを入れたWindows 95の起動ディスクで立ち上げて、CD-ROMからインストーラを起動し、インストールデータをハードディスクにコピーしておく。あとは、インストーラが作った3枚のディスクを使って、インストールします。さらに、USBやPCMCIA、ディスプレイも、あらかじめハードディスクから吸い上げてあったドライバディスクで、完璧に使えるようになりました。なんか知らんが、プリインストールされたWindows 95よりもパッケージで買ったWindows NT 4.0の方がまともに動くという結果になった。これは、こういう再インストールの面倒なパソコンを動かすときの手だと思いますね。初代Windows 95にOSR2を入れていくよりも、Windows NTを入れて、サービスパックを当てちゃうほうが簡単です。ただし、拡張ボードやビデオインタフェースなど、Windwos NT用のドライバーをあらかじめ入手できないと意味ないですけど。一方で、再インストール技術はさらに進んでいて、99年に買ったパソコンでは、再インストールCD-ROMから起動すると、自動的にハードディスクの初期化から、OSのインストール、ドライバのインストール、全部やってくれるまでになっています。もちろん、BIOSでCD-ROMから起動する設定に変えるという、ちょっと初心者には難しいところもありますが。それを除けば、究極の簡単さと言えます。

1980年のはじめ頃に出ていたパソコンは、OSが別売りでしたね。起動すると、ROM-BASICなんかが立ち上がるけど、それだけでは何もできない。だから、初めから再インストールと同じ作業をしていたと言うことになります。そして、多くのソフトを使いこなすようになった利用者は、コンベンショナルメモリー不足との戦いを、1980年代から1990年代の初めまで延々と続け、最近になって、OSがプリインストールされたパソコンの出現によって、やっと家電製品のようにパソコンが使えるようになった。これが、ここ数年の大きな変化の背景でしょう。プリインストールが一般的になっても、まだ利用者に負担となっていた再インストールの方も、最近では自動化されるようになりました。これでやっと、利用者はただの道具としてパソコンを使えるようになったわけです。逆にいえば、もう、あの日には戻れない。そして、逆に自動化でカバーできない故障やバグには、利用者はもはや対処できなくなっているのです。これからは、パソコンの中身は知らないのがあたりまえの時代になる。これって、車の大衆化にも似てますね。これでパソコンも車なみの大衆化を迎えるだろうか?それとも、用途は限定されてもOSが壊れることの無い情報端末(PDA)が本命になるのか、まだまだ先は見えていません。

2000.10.26
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