ブロードバンドの使い道

先月、この欄を更新してから、usenのFTTH開通加入数が1000加入を超えたり[biztech]、KDDIがFTTHの実験[biztech]をアナウンスしたり、NTT地域会社が10Mbpsの無線アクセス[biztech]へ参入したりと、それなりにブロードバンドの話題が出ています。でも、ついにファイバーが家庭に届いたと騒ぐよりも、だいたい出揃ったブロードバンドのカードを使って、どのようにビジネスを展開していくかを真面目に考える時期に入っているように見えます。10Mbpsや100Mbpsといった超高速ブロードバンドでつなぐことが可能であることは、usenやNTT地域会社が示してくれた。あとは、それがビジネスになるかどうかということです。

つなぐ技術自体は、CATV、ADSL、FTTH(Fiber To The Home)、無線接続のいずれかになりそうです。そして、人口密集地域から普及せざるを得ないのは、前回書いたように、ブロードバンド接続の技術的な性格によります。中でも高速なFTTHについては、usenが100Mbpsでつないでしまったおかげで、少なくともusenと競合する地域では、10Mbpsを飛び越えて100Mbpsが入ることになるでしょう。おかげで、10Mbpsでもよいからあまねく広くFTTHをつないで欲しいと、切に希望する地方在住者は、何年も後回しになるでしょう。逆に、usenや電力会社系の100Mbps版FTTHが来ないところから、10MbpsのFTTHが先に入っていくと言う現象が起きるかもしれません。なになに、せっかくファイバーを引くなら東京と同じ100Mbpsでなくちゃ納得できない?でも、本当にブロードバンドは100Mbpsでなくちゃ足りないのでしょうか。

実は、画像圧縮技術の進んだ現代では、一度に映画をそっくりダウンロードするということが無い限り、100Mbpsを使い尽くすことは現実的ではないように思います。例えば、あるアメリカのCATV会社の報告書[adventnetworks]に、ブロードバンドサービスが要求するビットレートの表(Table1)があります。これを見ると、2チャンネルのDVD品質!ストリーミングビデオが10Mbps、3本のIP電話(VoIP)が256kbps、ネットワークゲーム1Mbps、テレビ会議3Mbps、3チャンネルのMP3音楽放送600kbpsとあります。つまり、お父さんが洋画、おじいちゃんが日本映画を、それぞれ別の部屋で見ている時に、お母さんと娘二人がMP3放送で音楽を聴きながら同時に長電話して、おばあちゃんがアメリカとアジアのお友達とテレビ井戸端会議でして、さらに、息子が韓国の友達とネットワークゲームをしている状態で、やっと15Mbpsということ。もしもし、そこで100Mbpsでなきゃやだと、ごねているおっさん、おたくって何人家族?(^_^;

もちろん、10Mbpsのサービスでもそれがフルに使えるかどうか分からないから、100Mbpsという発想はありますが、それでも100MbpsはDVDソフトをそのままダウンロードするのでもない限り、使い切れない帯域であると言うことですね。それよりも、コンスタントに10Mbpsが出せるネットワークが重要だということになります。すると、1000人で1Gbpsを共有する都会の100Mbps接続よりも、100人で1Gbpsを共有する地方の10Mbps接続の方が高速という逆転現象もありうるかも。もっとも、現実は高くていつまでも来ないFTTHよりも、とりあえず安くて近いADSLを選択することになるんでしょう。ただし、主流となっている1.5MbpsのADSLではDVD品質のストリーミングビデオは通らないな。そこは、アナログビデオ品質で我慢しとくのか。

目をインターネットに戻せば、家庭までつなぐような本当のFTTHが本格的に入り始めているのは、世界でも日本の他は、北欧くらいなものです。あちらは、集合住宅に光LANをつなぐタイプですが。世界の企業は、日本でFTTHが成功するかどうか、様子を見ているところです。そして、それが行けると判断されれば、一気にFTTHサービス会社への投資が増えて、世界的にもFTTHが普及することになるでしょう。それはそれで景気がよい話ですが、その前に、10Mbpsのデータを長時間必要とするサービスがなきゃ、誰も使わないでしょうね。つまり、FTTHに限らず使われないサービスは何の景気のたしにもならないということです。流行だからと言ってレーシングカーを買っても、それが意外に燃費ばかりかかって使えないしろものと分かれば、後から続いて買おうとする人は居なくなります。まずは、燃費はともかく使って満足できるものにしなきゃならない。ということで、企業の皆さんはブロードバンドサービスに使えるコンテンツを模索し始めています[biztech]

韓国のように特定のネットワークゲームでブレイクする方法もありますが、いつかは廃れてしまいます。いったい、何がキラーアプリなのでしょうか。そういえば、浜崎あゆみのコンサート[biztech]をライブでインターネット放送したという話が載ってましたね。その内容に「感動したっ!」とある(笑)。その場にどっかの総理大臣がきて、感動したりすればブロードバンドの普及も加速したろうにね。ブロードバンドも愛だ、とか意味不明なことを叫んでたりして。それはともかく、このライブ、ビットレートで値段が決まってて、高いほうの1600円コースは384kbpsだったんだそうな。感動するのに100Mbpsもいらないってことかな。でも、ここで注意しなきゃいけないのは、384kbpsをインターネットを通して受けることができないと1600円コースに入れないということ。ブロードバンドで契約しているのに、いざ放送サイトで1600円コースを頼もうとしたら、実効速度が足らないと門前払いされる事態も考えられる。

これからのブロードバンドは、その会社がローカルに提供しているサービスの評判をチェックすること、そして、次に、そこからインターネットにどれくらいの実効速度でつながっているかといった情報が大切になります。多分、パソコン雑誌のお決まり記事は、ブロードバンド接続会社のベンチマークテスト比較と、利用者評判特集になりますね。ニュースサイトでは、既にそういったページ[pcgaz]があるので、そこでチェックするのもよいでしょう。私も、まめに読んでおこう、64kbps接続で。(^o^)

2001.7.20
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