ホームネットは自分の城?

ホームネットワークという言葉がメーカーやマスコミの間で広がる気配があります[nikkeibp]。昔ながらのネットワーク感覚を持っている私などは、ホームネットワークは自分の城だからよそ者に任せることはできない、などと思ってしまいます。一方で、ほとんどの利用者は、ネットワークを使ったアプリケーションには興味があっても、ネットワーク自体には興味がないわけで、ネットワーク全体から見ると、ホームネットワークの構築やメンテナンスをするサービスの普及は、悪いことでもないともいえます。ただ、これも業界の良識次第ですが。

ネット家電の流れは、インターネット冷蔵庫に象徴される(?)ように、数年前からありましたが、今回の流れは、ホームネットワーク・サービス・プロバイダの出現という、サービス面のトレンドになります。すでに、自前でネットワークをお持ちのユーザーは、常時接続をしていて、DSLモデムやメディアコンバータの出口に、ルーターをつないでいる人がほとんどでしょう。ルーターから複数のパソコンやゲーム機に接続する形です。この場合、ルーターに接続しているパソコンは、MicrosoftネットワークやAppleTalkといったOSメーカーの提供するサービスを、自分で設定して使います。例えば、リビングにあるデスクトップパソコンのフォルダーやプリンタを、和室のコタツで使っているノートパソコンから共有するといった形です。こうした、簡単な使い方でも、実際の運用には注意が必要です。例えば、ネットワーク・ウイルスへの備えは、おやじの仕事です。メールはガードしても、2階の高校生が、怪しげなサイトから変なトロイの木馬をつれてくるかもしれません。何もしなくたって、インターネットからのIPアドレス・スキャンは日常茶飯事です。だから、常時接続してホームネットワークを立ち上げた人は、本当はそうした知識を勉強しないといけないのかもしれません。

だからといって、私だって最新のセキュリティ情報を、全てチェックしていられるほど暇ではありません。もちろん、セキュリティ情報のメール配信サービスは読んでいますし、定期的に、共有のパソコンのウイルスチェックソフトが正しく動いているか調べたり、ルーターのログを読んでみたりもします。ただ、われわれが相手にしている敵は、誰かにいっぱい食らわしたいだけで、あるいは、ウイルスチェックソフトメーカーのリストに、自分のコードに潜ませたIDを登録させたいために、24時間体制でプログラムや、ネットワークスキャンロボットを作っている、言ってみればプロフェッショナルです。そこらのおじさんがかなう相手ではない。そこで出てくるのが、プロバイダのファイアウォールサービスとか、ウイルスチェックサービスです。もちろん、ほとんどは有料になります。少なくとも、そうしたシステムは、プロフェッショナルが運用しているはずです。だから、少なくとも、ルーターを使わずに、パソコンを直接インターネットにつないでいる利用者は、迷わずに、こうしたサービスを使うべきでしょう。なぜなら、ルーターなしでインターネットに接続するなんて、無防備すぎるからです。

実際にホームネットワーク・サービスが、どのように入ってくるかはわかりませんが、きっと、こうしたセキュリティ面の不安を回避するというメリットから、入ってくると思います。ただ、私が思うに、こうしたセキュリティは、残念ながらネットワークに興味のない人にとっては、さほど必要に思わない項目なのです。いくら、ウイルスチェックがどうのこうのと雑誌に出ていても、何千円も払ってそれをインストールする人、さらには、ちゃんと定義ファイルを更新している人は、想像するほどもいないように思います。じゃ、サービスプロバイダは、何を売り込んでくるでしょうか。きっと、エンターテイメント系のサービスが表に出ます。画像、音楽、ビデオ、ゲーム等等。例えば、携帯電話で写した画像をメールで自宅のサーバーに送れば、帰宅後に自分のパソコンでネットワーク越しに開くことができる。外出先から、インターネット経由で携帯電話を使ってビデオの予約を操作することは既にできますが[zdnet]、録画した映画を、自分の机のパソコンで見る、あるいは、イーサネット接続機能つきのテレビで、家のサーバー機からダウンロードしながら見る、そういう遊びからホームネットワークは普及するのではないでしょうか。

すでに、プロバイダが人を派遣してパソコンのセットアップをやってくれるサービスはあります。最近のパソコンは、DVDも、テレビ放送も見ることができるものですから、それが、さらに家庭内のネットワークのセットアップサービスにつながるのは、簡単な機能拡張といえます。テレビが見えるとか、DVDビデオが見えるといった機能は、旧来のパソコンの機能しか使っていない私からすれば、なんだ、おもちゃじゃないかと思ってしまいますが、実際に、そうしたパソコンを買って使っているところを見ていると(実は、私の親父ですが)、実に楽しそうなんですね。そのパソコンは、ボタンひとつでメールが読める、Webにつながる、テレビが映る、録画もできるというおもちゃですが(^_^)、きっと、あれをしばらく使うと、ハードディスクに録画した番組を、テレビの大画面で見たいと思うでしょうね。それは、100MbpsのLANで十分できるのです。テレビにLANケーブルがつながっていれば、ですが。音楽だってそうです。プロテクトがかかっていないCDであれば、ハードディスクに、トラックのコピーを置くことは、実に簡単です。それを、もっと音のよいオーディオからアクセスして聞けたら、ちょっとうれしいかも。つまり、ホームネットワークの下地は、十分にできているのです。あとは、イーサネットにつながる家電と、面倒なネットワーク構築をしてくれるプロバイダがいれば。

仮に、こうしたホームネットワークができると、サービスはさらに広がるでしょう。プロバイダーからのニュース番組配信、音楽番組配信、映画配信、医療情報配信。もちろん、そこにあるのは、プロバイダーの利用者抱え込みですから、家電メーカーとプロバイダーのタグマッチになります。もっとも、すでに家電メーカーとプロバイダーはくっついていますけど。それでは、利用者の側から見た場合、利用料金が払えるかどうか以外に、何の問題も起きないかというと、そうでもないのです。まず、パソコンに家計簿をつけている人は、全部プロバイダーに見えちゃうし、アドレス帳も、銀行口座番号やら、クレジット番号やら、お父さんのエッチ画像集(^o^)も、全部アクセスできます。(実際は、OSにもよりますが。)これは、企業がネットワーク管理をアウトソーシングしても言える話で、そうだからこそ、ちゃんと秘密保持契約を締結しておくのです。でも、そんなことは、一般利用者は無頓着でしょうね。逆に、プロバイダーも、あえて自分を縛るような契約書は作らないでしょう。これは、利用者にとって大きな危険です。

手取り足取りネットワーク接続サービスを契約したパソコンが壊れたとき、プロバイダーからパソコンの修復にやってきたとして、そうしたプライバシーがどこまで守られているかは知りません。多分、そうした技術者は、知りえた秘密を漏らさないように、ちゃんと訓練されているものと思います。ただ、これは、法律で縛られている訳でもないので、今後、十分にホームネットワークが普及した後で、問題が顕在化する可能性は大きいと思います。ある日、「プロバイダの方から来ました」と、男がやってきて、ホームサーバーをひとしきりいじって帰っていく。数ヵ月後に、銀行口座は空になり、クレジット会社から山のような請求がやってくる。こういう事件にあわないように、他人が触るかもしれないパソコンには、プライバシーは置かないようにしましょう。エッチ画像は、喜んでもらえるかもしれないからどうでもよいですが。(^_^;

2003.2.2
ひとつ戻る HOME つぎに進む