spamとの終わりなき戦い

メールソフトを起動する、メールリスト読みでしばし止まり、それからメールが1つずつダウンロードされる。ここで、しばし待たされる。多分、1分もかかっていないにしても待たされる。かといって、席をはずすとウイルス検出の警告窓で止まっていたりするから、じっと待っている。人間は、パソコンに待たされるのを嫌うのだ。10秒と待てない。しかも、待った挙句に受信トレイを開くと、半分以上が、す・ぱ・む。そう、spamという悪質な宣伝メールがずらりと並んでいるのだ。(ちなみに、大文字のSPAMは商品名なので小文字のspamが正しい表記だそうな。)このspamの何が問題かというと、トラフィックがどうのこうのというより、ともかく邪魔なのだ。どっか、よそで商売してくれ、と言いたい。(^_^;

最近、spamがいやに増えてきたので、ちょっとspamの配信経路を見てみたら、以前とは違う傾向が出ていました。数年前は、メールの基点となるサーバが、いろいろなドメインにありましたが、最近のは私が入っているプロバイダのメールサーバを使っています。業者は、自分のパソコンから直接、私の場合であればbiglobeのメールサーバにメールを送っています。以前のspam業者(っていうのか?)は、自分とは無関係なメールサーバに多量のメールを送りつけて、そこからターゲットとなるインターネット利用者にspamメールを配信していました。しかし、その後、メールサーバの運営者は、これを防ぐために、自分のメールサーバにアカウントを持っている人しか、そのメールからメールを発信できない設定にするようになりました。あるいは、自分以外のドメインへ大量にメールを出せないようにしています。そんなわけで、最近の業者は、わざわざアカウントをプロバイダにとって、そこから、プロバイダのドメインの中にいる人たちに大量発信しているようです。

プロバイダというのは、アパートみたいなもので、そこに来るメールは管理人が受け取って、住民のポストに配ります。アパートの外に出るメールは、管理人がまとめて郵便局に送る仕組みです。また、よそのアパートの管理人から頼まれて、メールを中継してあげることもあるでしょう。電子メールの仕組みとして、メールを読むときには、パスワードを入れて認証が必要ですが、送るときには認証は要りません。ですから、以前はアパートの送信箱に、通りすがりのspam業者が大量の郵便の束を放り込んでいました。管理人は、自分のアパート向けであろうとなかろうと、それを処理したので、世界はspamだらけになったのです。それを防ぐために、送信者が自分のアパートの住民であることを確認したり、アパートの外への多量送信が起きないように規制することにしました。ところが、アパートに部屋を借りて、そこの住人に多量のメールを送りつけるという手が残っていました。部屋さえとっておけば、そこに住んでいなくてもアパートの外からspamメールを放り込むことが可能です。いま、私のところに来ているspamも、外部のプロバイダから放り込まれています。さらには、盗まれたパスワードが流通している可能性もあります。サーバにメールを残す設定にしておけば、盗まれた本人は自分のアカウントが使われていることに気がつきません。プロバイダは送信記録をチェックできる方法を提供すべきです。

大量に送る点では、ダイレクト・メールも同じですが、spamには客を自分のビジネスに引きずり込むために、いろいろなトリックが仕組まれています。

(1) 送信元の偽装(返信先の偽装)
普通のメールは、メールソフトの返信ボタンを押せば送信元にメールが送れますが、spamは決して送信元にもどりません。あるspamは、biglobeのメーラが送信元になっています。もちろん、これに返信すればエラーになります。あるspamは、私のアドレスが送信元になっていました。biglobeドメインの誰かの名前になっているものもありましたが、その人が送信元とは限りません。こうした偽装をしたり、ランダムな文字列を送信元やタイトルに使っているメールは、メールサーバがspamと認識しないようにするのが目的ですから、逆に言えば自分がspamだといっているのと同じことです。

(2) 間違いメールへの偽装
あたかも、間違いメールであるかのようなメールがきます。たいていは女性の名前で、内容は、そのまんま寂しいから付き合って的なものから、友達に出したつもりが相手をまちがっちゃったしぃ的なものまでいろいろ。共通点は、数日後に同じネタでくること。完全に、おっさんを馬鹿にしておる。でも、ひっかかるんだろうな。(^_^;

(3) 問合せアドレスの偽装
これは、とても悪質です。問合せ先のアドレスに、あたかもプロバイダの顧客対応窓口のようなアドレスを指定します。アドレスには、簡単にメールアドレスを入手できるウェブメールが使われます。中でも、サブドメインがないYahoo!メール[yahoo.co.jp]などは良く使われます。例えば、「あなたの無料サービスが期限切れです、来週までに下の窓口にメールで送ってください。無料のサービスが継続されます。メールアドレスは、service@xxxx.co.jp」といった内容のメールが来ます。メールアドレスのドメインがyahoo.co.jpなら、いかにもyahooの窓口といった感じに仕上がります。返信するとどうなるかは知りませんが、あえて試す必要も無いでしょう。

(4) htmlメールによるメールアドレスの収集
htmlメールを開くと、表示される画像をspam業者のサーバーからダウンロードするタイプのspamです。これで、メールを開いたことが検出できるので、ランダムに送ったメールアドレスから、確実に使われているメールアドレスを抽出できます。このリストは、高く売れることでしょう。私は、あやしいメールは開きません。どうしても興味がある場合は、開かずにソースを読みます。メールを選択しただけで、別の窓にメールの内容が表示されるメールソフトだと、それだけで相手サイトにアクセスします。まず、その画面を表示しない設定にすることが、インターネット人のエチケット。なら、なんでそんな機能があるの?

この他にも、メールサーバーからのエラーメッセージに偽装して、自分のサイトに誘導するspamもあるようですが、ここまでくると一線を超えてますね。こうしたspamを撃退する方法はいろいろ紹介されていますが[yahoo.co.jp]、決定打はありません。メールソフトやメールサーバのフィルタ機能で、ゴミ箱に直行させる方法も使えますが、あまり一網打尽な設定をすると、spamでないものまで捨ててしまうことになります。例えば、yahooからspamがくるからといって、yahoo.co.jpをフィルタしたら、yahooのウェブメールからの通信を受けられなくなります。では、送信元のパソコンを追跡して、それが使っているプロバイダの管理者にクレームを送りましょうか。これも、あまり効果があるようには思えません。単に、そのアカウントを別名義で取り直せばよいだけですから。

かくして、spamとの終わりなき戦いは続くわけです。そもそも、spamは相手を引っ掛けて自分の商売に誘導する目的で、とことん練り上げた罠ですから、引っかかるなという方が無理です。あれだけ陳腐なウイルスのスカイネットすら、いまだに生存しているインターネットです。一番安易な「あたしって寂しいのぉ」的なspamに、「そっかぁ、おっちゃんが相手してあげよう」と返事をする人が皆無になる時代は来ないでしょう。問題は、引っ掛けた獲物がどういう運命をたどるのか、という情報が意外と報道されないところです。多分、ひっじょーに業者にとっておいしい商売になっていることは、これだけのspamが来ていることを見れば推測できますが。とは知りつつ、おっさんも、あんちゃんも返信するんだな。そんなわけで、spamは形を変えながら生き続けるのだ。

2004.10.30
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