ブロードバンドが変えるもの(その2)

先日、我が家にFTTHがつながりました。今のところ、水道管を太くしても、蛇口を変えなきゃ、ちょろちょろしか水がでないって感じだな。使い始めて見えたものは、家の中の通信環境がFTTHの速さにおっつかないってことです。家庭内LANも、パソコンも、所詮ADSLが限度な仕様。光が来たからって、いきなりパソコンで光の速さが見えるわけでもないのだ。

まぁ、愚痴よりも導入の状況から書きましょうか。私の場合は、プロバイダを通して頼んだのですが、プロバイダのWebページで申し込んでから、開通するまで2週間でした。3営業日でNTTから電話が来て(ちなみに、田舎なもんでNTTしか選択できないのね)、それから3営業日で工事日程が決まって、翌週開通ですね。これが、早いのか遅いのか分かりませんが、特に対応が悪いという感じでも無かったです。工事の方も朝の9時頃から始めて11時には終わってたし。ぼろ家とはいえ、一戸建てだと工事も簡単らしいですね。なんの下見もなしに、いきなり来ましたから。どうやら隣の電信柱までファイバが来ていたようで、そこから、電話線と同じ経路で引っ張ってきました。ファイバは一見電源コードのようですが、二本のゴム線の間にファイバが挟まれるように埋め込まれているものです。

家の中に、ファイバを引っ張ってきて、先端にSCコネクタPDF[sei.co.jp]がついた黄色いファイバをスプライサ[mmm.co.jp]でつなげ、それをくるくると終端装置(ONU)[e-words.jp]の中で巻いてコネクタにはめ、蓋をしめれば工事は終わりです。ファイバをつなぐのも簡単ですね。細長いケースに両側からファイバを差し込んで、パチンとはめ込むだけです。逆に言えば、ADSLと違って自分で光コネクタをはめたり、はずしたりすることはできません。おじさんは、ONUの蓋を閉める前に、光の強さを測っていました。報告書に書き込んでいるのを横から見ていると、最大許容値の10分の1位の値になっていました。このONUは2桁くらい弱い光も受かるようです。そのあと、おじさんは、やおらバッグを開けると、でかいラップトップとONUをイーサネットケーブルでつないで速度計測を始めました。多分、Flet'sのエリア内速度測定サイトを使っていますね。このサイトは、測定専用のPPPoE接続をするので、インターネットの影響なしに、NTTの通信網からパソコンまでの速度を測定できます。5回くらい計っては報告書にスピードを書いてましたが、平均すると80Mbpsくらいの数字でした。でもね、おじさんが帰った後で、家の無線LANにつないだパソコンから、インターネット越しに一般の速度計測サイト[musen-lan.com]で測定したら、せいぜい4Mbpsだった(^_^;。でも、これを工事のおじさんに抗議しちゃいけません。

とりあえず、20分の1しかスピードが出ない原因を探るために、速度測定マニアになることにしました。まず、愛用のラップトップ(Celeron 650MHz:遅くてわりーな)をルータのスイッチング・ハブポートにつないで、同じインターネット上の速度測定サイトで計りなおしてみました。今度は12Mbpsだった。この差は、無線LANのスループットが原因です。次に、ルータがどれくらい遅くしているのか、見てみることにします。まず、ルータの接続先にFlet'sのエリア内測定サイトを登録して、同じように速度を測定したら、無線LANを通すと4.5Mbps、ハブに直結すると19Mbpsでした。無線LANの結果はインターネット上の速度測定サイトの結果(4Mbps)と大差ないので、やはり無線LANがボトルネックです。次に、ラップトップにフレッツ接続ツール(パソコンを直接Flet'sに接続するときに使うPPPoE接続ソフト)をインストールして、直接ONUにパソコンをつないで、Flet'sのエリア内速度測定サイトに行きました。こっちは、だいたい50Mbps出ていました。(おじさんとの差はパソコンっすかね。)ということは、ハブに直結した19Mbpsと、ONUに直結した50Mbpsの差が、ルータの処理能力ということですね。ま、一世代前のルータなんてこんなもんすか。

ルータは、インターネット側(WAN)からの信号を、IPアドレスの変換とかポート番号の変換とか、いろいろ処理してから、お家のネットワーク(LAN)に受け渡すので、その処理能力と、信号に含まれる目的地アドレスなどのデータ以外の情報よって、LANとWANの間の転送速度は、必ずプロバイダが宣伝している100Mbpsより遅くなります。最近のブロードバンド用ルータは、家庭用であっても、理論限界[melcoinc.co.jp]に近い90Mbps程度の能力があると言われています。これが、最近の廉価版ルータだと40Mbps位になります(私のはさらに半分かぁ)。FTTHが普及するにつれて、ルータの速度競争も熾烈なようですね[impress.co.jp]。数字に踊らされるのは、パソコンのクロック周波数競争と同様に目的をはずしています。本当に大事なのは、設定のしやすさ不正アクセス防御の強さだと思います。スピードの話に戻れば、上にも書いたように、無線LANを使っている場合には、これもルータのスループットを制限します。54Mbpsと言われるIEEE 802.11g[e-words.jp]でも、実際のスループットはルータの隣にいて20Mbps、離れると15Mbpsといったところ[impress.co.jp]なんだそうです。ま、実行速度が制限されるといっても、15Mbpsを家のどこに居ても使えるなら、たいていのブロードバンドのコンテンツは何のストレスも無く使えるでしょう。むしろ、我が家のルータをバージョンアップしても、実際には、3Mbpsのストリームコンテンツすら、私のパソコンで開けないことの方が問題だったりして。

ルータのハブポートに直結した状態であれば、3Mbpsくらいのストリーム画像配信を余裕で表示できるかと思ったのですが、実際にFlet's Squareの画像配信を表示してみると、これが「こ・・・ま・・・お・・・く・・・り」状態になる。動画じゃなくて静止画コンテンツじゃないか。1Mbpsのストリーム画像はきれいに写るのに。これが、つまりはパソコンの性能限界ですね。ソフトは確かに3Mbpsで受信していると表示していても、その信号を処理する能力が追いつかない状態です。この場合は、MPEG圧縮した動画を復元して表示する能力が追いつかなかったということですね。工事のおじさんのごっついパソコンと、私のスリムで遅いパソコンの間の30Mbpsの差もこれかもしれません。もちろん、PONでは、同じスプリッタを共有している他の利用者が同時に接続していれば、その分速度は遅くなりますから、それが原因の可能性もありますが。まぁ、どっちの理由にしても、ブロードバンドで50Mbpsを家の中まで引っ張ってきても、つぎつぎに邪魔が入って、最後はせっかくのHDTV品質な動画映像が超美麗コマ送りコンテンツになってしまうという現実は、消費者を次なる支出へ誘うわけですな。おいおい。

FTTHをこれから入れようとしている皆さんは、工事の日にはメモ帳を忘れずに。おじさんがラップトップパソコンを出したら、すかさず速度測定結果を書き写しましょう。光を入れたんだぜと自慢するときには、その数字を使おう(^o^)。それから、インターネットの速度測定サイトに行っても、がっかりしないようにしましょう(^_^;。ましてや、その数字をADSLユーザに言わないこと。下手したら、あっちのほうが速いかもしれんし。それにしても、高速・高出力ブロードバンドルータと、高性能パソコンをそろえたとしても、そのパソコンが使えるのは、無線LANを使うとせいぜい15Mbpsですね。余った40Mbpsは何に使おう。4th Mediaでテレビにつないだとしても、それが使うのは4Mbpsです。50Mbpsでもこうなのに、さらに、GE-PON(NTT)[nikkeibp.co.jp],(Yahoo)[itmedia.co.jp]でスピードアップしますと言われても、家のLANで使いきれる人いないんじゃなかろうか。50Mbpsを超えるようなブロードバンドが変えるのは、Webにアクセスする速度ではなく、お家のLAN自体の使い道そのものということになるのかも。それが、なにかはわかりませんが。テレビ放送?VOD?テレビ電話?...なんですかねぇ。

2004.11.27
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