大白法

平成10年9月16日号


主な記事

<1面>

<2・3面>

<4・5面> 第2回海外信徒総登山会より

<6〜8面>


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第2回海外信徒総会開催

世界32カ国より、2,844名が御登山


8月20日から24日にかけての5日間、総本山において、第二回海外信徒総登山が開催された。これには海外から2,800余名のメンバーが、あらゆる困難を乗り越えて登山。期間中総本山は、閻浮第一の霊場にふさわしく、各国メンバーの華やかな信心の国際交流の場となり、全山は終日歓喜に包まれた。また諸行事を通して、それぞれ生涯忘れ得ぬ信心の思い出を胸に刻んだ。

4年前の第一回海外信徒総登山以降、中華民国・ガーナには寺院、香港・アングラドスヘイス(ブラジル)など5カ所には布教所等が、それぞれ建立開設され、また僧侶も相次いで常駐するなど、海外の布教は大きく進展してきた。こうした姿を反映して、参加国は前回より6カ国多い32カ国から、多くのメンバーが参加することになったのである。この総登山を契機に、参加したメンバーは2002年の立宗七百五十年に向けて一層の成長と、各国の広布の前進を誓い合った。


総登山開始三日前の8月17日には、広布の広場北側に第二回海外信徒総登山の開催を告げる白のシンボルタワーが設置され、また総一坊バスターミナルには、八カ国語で書かれた歓迎幕も張られ山内には開催ムードが盛り上がった。また19日には、海外部を中心に準備を進めてきた受け入れ態勢も万端整い、あとは海外メンバーの到着を待つばかりとなった。20日午前9時、総一坊一階に総指揮本部となる海外部センターが開設。その頃から総登山を支える各国担当教師、海外派遣要員の御尊師方やサポートスタッフが全国から続々と参集した。期間中全国から集まったサポートスタッフ、また空港や総本山での整理誘導に当たった連合会輸送班・整理班なども285名にのぼった。

20日から21日にかけて、世界各国から成田などの各空港に降り立った海外メンバーは、空港に出迎えた僧俗のサポートスタッフの協力によって順次、総本山に向け出発。20日昼過ぎには、タイのメンバーが乗るバスを皮切りに、出迎えの僧俗の待つ総一坊バスターミナルに次々と到着した。総一坊登山事務所で受付を済ませたメンバーは、宿泊坊に荷を解いた後、長旅の疲れを癒し、しばし心の故郷での解放感に浸りながら、思い思いに山内を散策し、同志との再会を喜び合い、22日からの諸行事の参加に備えた。


明けて22日の未明、最初の行事である丑寅勤行に参列するため客殿に誘導されたメンバーから、新築なったばかりの客殿内部の威容に、期せずして感嘆の声が上がった。午前二時半より、御法主日顕上人猊下の大導師に随従して、世界広布を真剣に祈念した。午前九時半、メンバーは御目通りのため再び客殿に集合、御法主上人猊下は順次各国メンバーの前に進まれて、親しく遠来の労をねぎらいながら、各国広布の進展に期待を寄せられた。その後、全メンバーに対し甚深の
御言葉を賜った。

小憩をはさみ、午前十時半より、同じく客殿において、海外広布に尊い命を捧げた海外信徒物故者に対する追善の満山供養が奉修された。この法要は、本年3月の客殿新築落慶大法要に参列できなかった海外信徒に対する御法主上人猊下の深い御慈悲の上から、特に行われたものである。まだ寺院のない国や地域からのメンバーも多く、初めて目にする塔婆の意義を尋ねたり、焼香も初めて体験するなど、メンバーにとっては法悦歓喜を味わうとともに、貴重な経験となった。終わりに願主を代表して海外部長・尾林広徳御尊師より丁重な挨拶が述ぺられ、その後、客殿について概要の説明があり、メンバーは改めて客殿再建の意義と壮大な建物の規模に感嘆した。

午後からは二回に分けて御開扉が行われた。4年前は正本堂で行われた御開扉が、今回は本年4月に戒壇の大御本尊様が御遷座あそばされた新奉安殿である。海外メンバーは、SGIから決別した信心の正しさを改めて確認し、間近に拝する戒壇の大御本尊様に感激を新たにした。


明けて23日は日程も4日目、スケジュールも後半に入り、各国メンバー同士の交流も一層深まって互いに打ち解け合い、心から霊山での滞在を満喫しているように見える。山内を行き交うどの顔も歓喜に満ち満ちている。いよいよ主要行事である第二回海外信徒総会開催の当日。会場となる広布坊は前日までに準備がすべて整い、あとは本番を待つばかり。前日に引き続き、この日も午前中に二回に分けて御開扉を受けたメンバーは、午後になり続々と広布坊へ入場を開始した。開会に先立ち、海外部主任・中本代道御尊師から、32の参加国名がアルファペット順に紹介されると、互いの参加を讃え合うように盛大な拍手が湧き、しばし麗しい交歓の光景が続き、定刻二時、総会の開会が宣言された。

この総会には、総監・藤本日潤御尊能化、重役・吉田日勇御尊能化、高野日海御尊能化、宗会議長・土居崎慈成御尊師、宗務院各部部長・副部長、大石寺主任理事・八木信瑩御尊師をはじめ大石寺各理事、山内教師、海外各国寺院住職、布教所・事務所責任者の各御尊師、海外担当教師、派遣要員の御尊師など、有縁の御僧侶方が多数御出席。連合会からは来賓として法華講総講頭・柳沢委員長、同大講頭・石毛副委員長はじめ20名の代表が参列したほか、妙光寺支部・宣行寺支部の鼓笛隊120名も参加し、総勢3,000余名の僧俗が一堂に会しての盛大な総会となった。<P> はじめに、尾林海外部長より挨拶があり、次いで各国32名の代表から2002年・立宗七百五十年に向けての力強い「決意表明」がなされた。ここで御法主上人猊下が御登壇され、甚深の御言葉を賜った。その後、日本の信徒を代表して塚田久美子さん(宝浄寺支部)、海外信徒を代表して中華民国の楊麗雲さん(本興輿院支部)の2名から体験発表が行われ、参加者は妙法の広大無辺な功徳の偉大さを物語る体験談に聞き入った。小憩の後の第二部では、各国の代表メンバーによるパフォーマンスが披露され、参加者を魅了し総会に花を添えた。最後に各国代表5名ずつによって混成された合唱団が、日本語で「地涌讃徳」の歌を高らかに歌い上げ、総会はまさに最高潮に達してフィナーレを迎えた。<P> 24日、最後の行事となった丑寅勤行に参加したメンバーは、名残を惜しみながら、自国の広布の進展と4年後の再会を約束し、順次総本山を後にし、帰国の途に着いた。期間中は諸天に見守られて好天が続いた。また御法主上人猊下の大慈悲に包まれながら参加した海外メンバーとサポートしたメンバーとが、僧俗一体となって大成功裡に終幕を迎えた今回の総登山は、これからの世界広布の前進を約束するとともに、真の世界広布へ向けての新たな出発を示す、まことに意義ある総登山でもあった。



第2回海外信徒総登山会より


◇御法主上人猊下御言葉 御目通りの砌

ただいまは各国の御信徒の前をお通りいたしましたが、皆様方が実にお元気な姿ではるばる総本山に参詣をせられまして、本当にうれしく存ずる次第でございます。


宗祖大聖人様は、その深く尊い御境界の上から、大聖人様のおわします所、つまり当時としては身延山でありましたけれども、「彼の月氏の霊鷲山は本朝此の身延の嶺なり」(御書 1569ページ)と仰せになっておりまして、一切の教えの一番の根本である法華経の尊い功徳がはっきりと顕れるのは、法の尊さによるのであるということをお示しであります。その法のところに深い信仰をもって登山をする方々の功徳は、実に大きいのであります。

南条時光という方が、この上野の土地の地頭としておいでになりましたが、しばらく身延山への参脂が中絶された時期がありました。大聖人様はその時に、「参詣遥かに中絶せり。急ぎ急ぎに来臨を企てつべし。是にて待ち入って候べし。哀れ哀れ申しつくしがたき御志かな、御志かな」(同)と、登山に対する深い意義の込もった呼び掛けをされました。つまり「あなたも早くこの尊い法華経の山に詣でて、いよいよ正法を護持し、罪障消滅をするように」という尊い御指南でございます。その根本はどこにあるかと言えば、その御書のなかの、「教主釈尊の一大事の秘法を霊鷲山にして相伝し、日蓮が肉団の胸中に秘して隠し持てり。されば日蓮が胸の間は諸仏入定の処なり、舌の上は転法輪の所、喉(のんど)は誕生の処、口中は正覚の砌なるべし。かかる不思議なる法華経の行者の住処なれば、いかでか霊山浄土に劣るべき。法妙なるが故に人貴し、人貴きが故に所尊しと申すは是なり」(同)という尊い御指南にあるのであります。

ここで大聖人様が仰せの「一大事の秘法」とは、仏法の根源である法華経の文底の上から、その一番の元としての久遠元初の本門の本尊の御当体を示されております。これを大聖人様が霊鷲山の法華経の会座において釈尊より相伝あそばされたのであります。この相伝は本尊の相伝でありますから、ただ単に品物を受け取ったというようなものでは絶対にないのであります。それは名体宗用教といって、名前も実体も因果の道も用きも教えも、そのすべてが妙法蓮華経の一大秘法に具わっておるのであります。そこに本門の本尊として法に即して人という仏様がおいでになる、その人法一箇の御本尊を一大秘法と申し上げるのであります。この一大秘法を相伝して今、日蓮の胸中にある。そして「法妙なるが故に人貴し、人貴きが故に所尊し」というところにおいて真の寂光土が存するのであります。ここに、大聖人様のましました身延山に登山するところの大きな功徳の意義を込めて上野の地頭・南条時光殿に申し送られた次第であります。

ただいま皆様方の所をお回りいたしましたが、皆様方は日本の裏側をはじめとする、この地球上の至る所から、今回、はるばるこの総本山に御登山になり、宗祖大聖人様が御一期の御大事として御魂を染め流して顕されました、本門戒壇の大御本尊様の御元に御参詣をされました。このことがどれほどの大きな功徳であるかは、私が申し上げることもできないほどの、過去よりの深い深い因縁があるとともに、さらに未来に向かっての大きな功徳を成就されたのであるということを、ここにはっきりと申し上げる次第であります。今日、皆様方が、あの不純な創価学会のもとから断固として手を分かって、日蓮正宗の清浄なる信徒として、それぞれの国にあって日夜、信行に倍増せられておる信仰の功徳が、今回の結集に顕れておることを深く感ずるものであり、仏祖三宝尊にも深くお喜びのことと存ずるのであります。


さてここに新しく、本年の3月25日に、この客殿が完成をいたしました。この客殿建立についても、実に不思議な経過があるのであります。六万総登山という行事が、4年前の平成6年に行われましたその六万結集の大成功を収めた総会において私は、8年後の平成14年、西暦2002年に向かって、いよいよ僧俗が正法護持興隆、広布への実践を呆たし、三十万総登山を目標にお互いが頑張ってまいりましょう、ということを申し上げたのであります。そして私は、その8年間には、特に大きな行事は全く考えておりませんでした。

ところが不思議な事に、平成7年にあの阪神・淡路の大震災が勃発したのであります。この時に、あの地域の創価学会会員の者達が、大挙して大謗法を行いました。それ以前にも、平成2年の11月16日に、池田大作がその邪心・邪義をもって日蓮正宗を誹謗しました。特に私に対して誹謗しましたが、その翌日、直ちに、日本の九州にある普賢岳という名称の山が噴火をしたのであります。この普賢岳の普賢という名前については、法華経の最後に普賢菩薩勧発品という品があり、さらにこのあとに、法華経の行法を括った形での普賢菩薩行法経とい経典があります。普賢菩薩という方は、釈尊減後において「この法華経をどこまでも正しく持ち、正しくこれ受持する人を護る」というところ誓いを立てておる方であります。その普賢菩蔭という方の名前を冠したところの普賢岳が、池田大作の謗法の現証の翌日に大噴火を起こし、長い間、噴火を続けておりました。その後、さらに平成7年の1月に、神戸等の地域において御本尊消却等の大謗法を行ったあと、即座にあの大惨事が起こったのであります。

仏法の眼から考えますと、池田大作を中心とするところの創価学会の大謗法が、まさしくあのような惨事を引き起こしたと言って、決して過言ではないと私は信ずるのであります。その状況において考えましたときに、この建物となる前の、あのコンクリート造りによるところの大客殿は、今後、あのような震災等があった場合に、非常に心配される建物でありました。またその危険性がはっきりとしてきたのであります。そのところから、私は仏祖三宝尊の深いお示しだと確信いたしておるのでありますが、この大客殿の建て替えを決意し、それを行ってまいりました。その後、様々な準備と実施によりまして本年の3月25日に落慶大法要を、また、翌26日から4月の5日に至るまでの10日間にわたって、慶祝記念大法要を執り行った次第であります。

この建物は特に屋根が軽く出来ております。それに対して御覧になるとお判りのように、たくさんの柱がありますが、このなかにはたいへん堅牢な素材が入っております。その柱や梁が全部、有機的に組み合わされておりますので、日本は地震国と言われておりますが、今後、いかなる大地震が起こりましても、この建物は、皆様方信徒の参詣のなかにおいても、心配するような状況が全く存在しないということを、ここにはっきりと申し上げる次第であります。

また、客殿は、昔から日蓮正宗の行事を執り行っておるという意味におきまして、古来の在り方をもって入母屋(いりもや)造りにして、このようなたたずまいでお造り申し上げたのであります。この客殿で最も重要な法要は、毎朝行われておるところの丑寅の勤行であります。これはその時その時における法主が、必ず自ら毎目、執り行っておることでありまして、宗祖大聖人、御開山日興上人以来の御相伝としての「丑寅の勤行怠慢なく、専ら事の広宣流布の時を待つべし」という御指南に基づいて行われておるのであります。

その上から、この日蓮正宗は、一人ひとりの幸せを真に確立していくところの妙法の大功徳の教えが存するとともに、自分のみならず隣の人々を、そして世界中の人々を救済し、妙法の大功徳をもって真の仏国土を建設し、平和な社会を建設することを目標とする、折伏教化によって前進をしていくところの、唯一の清浄なる仏教団であります。ただし、きれいなもののなかに、汚いものが少しでも入ってしまったならば、すべて駄目になってしまうように、本当の正しい仏法は、どこまでも正しく、かつ純粋に伝えられなければならないのであります。身延派等の日蓮宗においても、さらに近くは創価学会においても全部、不純のもの、つまり池田大作等の我見・我意がそこにはっきりと入り、表れてまいりました。つまり、宗祖大聖人、日興上人の正しい仏法を純粋に持っていくというところから明らかに背反し、大謗法の団体となっておるのであります。


今日、大聖人様の正しい仏法をどこまでも正しく受持し、一人ひとりの幸せとともに、世界の民衆に真の幸福の根本をはっきりと示し、広布に邁進をしておる宗団は、この日蓮正宗のみであります。皆様方はその思いを抱いて大御本尊様にお目通りのために、はるばる総本山においでになったことと思うのであります。ですから、客殿における法要は丑寅勤行が一番根本でありますけれども、さらに様々な意味で各々の命のなかにおける三世の生命という上から、そこに行うべきところの、また、考えるべきところの様々な内容があるのであります。

そこで一つは御先祖に対する追善回向が挙げられると思います。皆様方一人ひとりは、今日そこに突如として現れたのではありません、すべて父母さらにその御先祖の方々の存在によって、皆様方がここにおいでになるのであります。今日ここに皆様方が受けておる身体は、御先祖から受けたものでありますから、その御先祖の本当の幸せを願い、また、功徳を送ってその方々を安穏に成仏させてあげるということが最も大切なのであり、そこに仏法の上の追善回向ということが存するのであります。特にこの客殿は、古来、その意味における追善回向を申し上げる道場でもあります。有縁の方々が総本山に参詣し、この客殿において御先祖の追善を願うという行事が行われるところの堂宇なのであります。

今回、海外部の企画によりまして、本日お集まりになっておる皆様方の御先祖の追善法要がこれから行われるということでありますが、これは今までに行われたことのなかった尊い行事であるということを、ここに申し上げる次第であります。追善を申し上げ、御先祖を真に成仏させてあげることによって、皆様方の信心が確立し、また皆様方の信心によって御先祖も真に救われていく。そこに現在より未来に向かっての真の幸せが存続するのであります。

御承知のように仏法においては、個々の霊魂としての存在をけっして正しい考え方とはいたしませんけれども、生命の永遠の法則の上から、業によって今世から来世へ移っていくところの因縁果報の筋道が説かれておるのであります。現在より未来へ、「現世安穏後生善処」という言葉がありますが、本当の我々の未来は亡くなったあとに控えておるのであります。現在において本当に幸せになるということも大事であるけれども、未来に向かって真の幸せを開いていくところに、正しい仏法の筋道があるのであります。御先祖の方々の現在の姿は、それが法界のなかの様々なところに至って、また、その方々の過去からの業によって色々な、姿が存するのでありますが、宗祖大聖人様の南無妙法蓮華経の広大なる功徳をもってことごとく回向するところに、その方々が真に成仏得脱をしていくということが存する次第であります。

その意味におきましても、今回の行事を心の底に深くお入れいただきまして、お帰りになりましたら、この大聖人様の仏法の真の尊さを自覚し、毎日の勤行を怠慢なく行い、仏の命を常に持って、たとえ一人でも皆様方の縁のある人々を折伏し、共に正法に精進していかれることを心からお祈りする次第であります。


以上、色々と申し上げましたけれども、これをもって本日の言薬に代える次第であります。



◇御法主上人猊下御言葉 総会の砌

四年前の第一回海外信徒総会に続いて、本年ここに海外信徒登山による第二回総会が、このように盛大に執り行われましたことを、心からお喜び申し上げます。おめでとうございます。世界全民衆を救う大仏法の先駆たる方々、すなわち、アルゼンチン共和国・オーストラリア国・オーストリア国・ブラジル連邦共和国・カナダ国・チリ共和国・コロンビア共和国・ドミニカ共和国フランス共和国・ドイツ連邦共和国・香港・インド国・インドネシア共和国・イタリア共和国・大韓民国・マレーシア国・オランダ王国・ネパール国・ノルウェー王国・パナマ共和国・フィリピン共和国・シンガポール共和国・スペイン国・スリランカ国・スウェーデン王国・スイス連邦・中華民国・タイ王国・トーゴ国・トリニダードトバゴ国・ユナイテッドキングダム・アメリカ合衆国・ウルグアイ共和国の代表の皆様がここに集い、正法護持の誓いとともに洋々たる未来への御仏の真の浄業広宣流布への実践と実証を顕し、また、堂々たる前進を誓願することは、なにものにも増して尊いことであると信ずるのであります。仏祖三宝尊にもこの大集会を御覧あおそばされ、皆様方一人ひとりの信心を深く嘉(よみ)し給うことと拝します。皆様、はるばる世界各国より遠路のところ、本当に御苦労さまでした。

勤行(19Kb) さて、今日の世界の相は、物質文明の発展に次ぐ発展に反比例して、様々な矛盾と対立抗争の渦巻きのなかで喘ぎ、苦悩する民衆で充満しております。このことは、いかに物質文明が発達しようとも民衆の苦悩を解決することはできないということが、まことに明かであります。それは、三世を了達された御仏がその真実の悟りを説かれた法華経において既に示されております。すなわち、『三界は安きこと無し 猶火宅の如し 衆苦充満して 甚だ怖畏(ふい)すべし』(新編法華経 168ページ)との、三世を一貫する一大金言であります。

その「衆苦」とは、生活の悩み、病気の悩み、愛する者との別れる苦しみ、種々の人間関係の複雑な苦しみ、目的のない生活の苦悩、不安・失望の苦悩等、その他あらゆる苦しみがありますが、これはすべて生命の無知によるのであります。この生命の如実相を正しく教えるとともに、真の幸福を築く道を示すものが正しい宗教であり、それは仏教、特に末法出現の久遠の本仏日蓮大聖人の示された仏法であります。


ただし、この世界唯一の大仏法も、それが妙中の妙なる所以としてかえって邪魔の魔性が内外より競って、この大法を妨げるのであります。特に外からの魔性より、内から大法を護り支える形を取りながら、いつしか仏法より外れた邪道に導くのが大障魔の仕業であり、それが彼の池田大作率いる創価学会であります。

その仏法上、世法上の誤りは数限りもありませんが、特に大なることは、本仏大聖人の三大秘宝中、広布実現のための最重要事たる戒壇の本義を歪曲した大謗法に存します。それは、池田大作ならびに創価学会の似て非なる信心による思い上がりとうぬぼれをもって、仏法の正義・大義を己の眼下に見下したところにあります。このところより、その正法護持の功徳も善悪の判断も、一切が逆転し、顛倒(てんどう)して、自己の利益と勝利への執着のみに傾注し、そのためには、いかなる不道徳も嘘も、圧力と迫害も平気で行う、おぞましい体質と成り果て、なかんずく、その彼等の信仰の大本である日蓮正宗の三宝を蔑視し、あらゆる攻撃を図るに至りました。故に、あらゆる罰の姿が彼等会員のなかに現出しております。

特に不思議な仏法の現証は、彼等が『ニセ本尊』をもって兵庫地域会員を騙し、大謗法の所業を犯した、まさにその時、その逆罪を責める現罰として起こったのが、彼の阪神の大震災でありました。そして、このことが因縁となって、池田大作の自慢の寄進建造物たる前客殿を立て直す必然的経過が生じたのであります。

さらに、それが法華講全信徒の真心からの御供養の功徳の積聚を生じ、理想的な耐震耐火、堅牢優美な新客殿の造営となり、また、本年3月下旬より4月5日の10日間における10万登山の見事な達成となったのであります。まことに仏法の不思議、これに過ぎたるものはありません。故にこそ、日蓮正宗の仏法が真の正法正義に基づく大法であることが実証されたのであります。

しかしながら、真の大法広布はその破邪顕正の大綱より、なすべき整備をことごとくなし終わってこそ、真の出発が存することを知るべきであります。すなわち、本門戒壇の正義を我見によって蔑(ないがし)ろにし、『三大秘宝抄』の戒壇を前もって建立すると偽り、我見による「広布第二章」の邪義をもって、本仏大聖人御化導の正義を歪めた大悪人・池田大作と傘下の創価学会にかかわる唯一・最大の謀略物件たる正本堂を解体し、来る立宗七百五十年に向かって真の広布への実践をなすべき時なのであります。


さて、法華経には、『我が滅度の後、能(よ)く竊(ひそか)に一人の為にも、法華経の、乃至一句を説かん。当に知るべし、是の人は則ち如来の使いなり。如来の所遣として、如来の事を行ずるなり。何に況んや、大衆の中に於いて、広く人の為に説かんをや』(同 321ページ)と説かれてあります。

およそ、あらゆる道徳・宗教のなかで、人々の苦悩の根源を明かし、過去・現在・未来の三世における因果を正しく説く仏教こそ、最も勝れた宗教であります。この仏教のなかでも、小乗経より大乗経が、また、権大乗より実大乗たる法華経が最も勝れております。それは、久遠元初の本仏日蓮大聖人の悟られた妙法はまた、三世を一貫する諸仏の出世の本懐として説かれるところであり、その法華経において、如来の真実の悟りたる境智冥合の法体、すなわち「如来事」が存するために、これを受け持つ人、また、竊に一人のためにもこの功徳を説く人は、如来の使いとして仏の尊極無上の悟りと力と用(はたら)きのすべてを、そのままその身に行ずるのであると説かれておるのであります。そこにこそ、まことの、また、最高の功徳と大善が存することを、私は断言するものであります。

本仏大聖人が上行菩薩の再誕として、法華経の広・略・要のなかの要の妙法五字を、末法の一切衆生のために釈尊より譲り受けられました。この妙法蓮華経は久遠元初仏法の本源、人法一箇、本門の本尊の当体であります。この本義より先程の法華経法師品の文を見れば、その「一句」とは、まさに三世の諸仏の帰趨たる本門本尊の妙法であり、無量無辺の功徳を具える故に、よく竊に一人のためにもこの大法を示し説くことが仏の振る舞いであり、仏の徳と智慧を顕すものであります。しかも、このことは少しも難しいことではなく、相手に対してこの人を救おうという思いがあれば、だれにでもできることであります。 すなわち、この妙法を示すことは、相手の低く狭い人生観を破って、最高・最善の仏徳・仏智に導くことであり、これすなわち折伏であります。この折伏は多くの苦悩の人々を救うとともに、これを信じ説く我等自身が無量の徳を積むことになります。いわゆる「一人が一人の折伏を」という意義がそこに存するのであります。そして妙法を受持する信仰生活に入ったとき、群がり来る様々な試練や悩みこそ、まさに佳き妙法の功徳実証の材料と見るべきであります。

宗祖大聖人は、『今末法は南妙法蓮華経の七字を弘めて利生得益(りしょうとくやく)有るべき時なり。されば此の題目には余事を交へば僻事(ひがごと)なるべし。此の妙法の大曼陀羅を身に持ち心に念じ口に唱へ奉るべき時なり』(御書 1818ページ)と仰せであります。御本尊の功徳を信じて10分、30分、50分と心ゆくまでの唱題行に打ち込むところ、必ず確然とした解決のひらめきや、大心、安住心、勇健な心、不可思議な心と身体の用き等、その状況・状態にしたがって言い知れぬ尊い体験実証を得るものであり、すなわち、あらゆる人の生活の根本指針がこのところに存するのであります。そして、この体験を元に、さらに一人が一人に語り、天転(てんでん)の功徳を連ねていくことが「行如来事」であり、広宣流布の原点であります。


世界各国の信徒皆様、今まさにこの日蓮正宗の大正法が過去の邪鬼・悪鬼の跳梁(ちょうりょう)、すなわち、池田大作等の大謗法を取り払って、真の揺るぎない広布の根本態勢が整った時であります。そして、2002年には宗祖大聖人の宗旨建立七百五十年の佳節を迎えるのであります。この時こそ、まさに世界民衆のため、国々の皆様の隣人のため、そして自己の幸福と開覚のために勇躍して一人が一人の折伏を行じ、四年後の佳節にはさらに多くの喜びに燃えた同志と共に、この本仏大聖人まします総本山へ御参詣願いたいと思います。

全世界よりの皆様、今回は本当に御苦労さまでした。皆様の御健康といよいよの信心倍増を祈り、本日の御挨拶といたします。

※この原稿の掲載に当たって、明倫寺支部の若山さんの御協力をいただきました。


◇挨拶 宗務院海外部長 尾林広徳御尊師

総本山第六十七世御法主日顕上人猊下の御臨席を仰ぎ奉り、ここに第二回海外信徒総会を開催させていただくに当たり、宗務院海外部並びに実行委員会を代表袋して、一言ご挨拶を申し述べさせていただきます。御法主上人猊下には、御法務きわめて御繁多の中を、咋目の海外信徒物故者追善法要、御開扉に引き続いて、本日の海外信徒総会への御臨席を賜り、海外信徒への甚深の御教導と、来るぺき立宗七百五十年を目指しての信心の方途を御指南賜りますことは、正信の信徒の誇りであり、無上の喜びとするところでございます。本日参集の全海外信徒と共に、御法主上人猊下に謹んで御礼を申し上げます。御法主上人猊下、まことにありがとうございました。

また、本日の総会に当たり、日蓮正宗総監・藤本日潤御尊能化、重役・吉田日勇御尊能化をはじめ、宗務院、総本山大石寺内事部の諸役職員の諸大徳、並びに全海外寺院住職、海外担当教師の諸尊師、塔中・山内教師各位のご出席をいただきまして、まことにありがとうこざいます。さらには、日本の法華講連合会を代表して総講頭・法華講連合会委員長・柳沢喜惣次氏をはじめ、各地方部長、寺族の代表の方々、そして全世界より集われた32カ国2,844名の日蓮正宗海外信徒の代表の方々と、皆様のお世話をしてくださっている285名のサポート・救護・通訳・輸送班・整理班のメンバーが、一堂に会して本総会が開催されているのであります。皆さん、本日の晴れやかな第二回海外信徒総会、まことにおめでとうこざいます。


さて、私たちは去る1994年8月28日の第一回海外信徒総会の会場において、御法主日顕上人猊下より、私共が、このように全世界から本門戒壇の大御本尊と御法主上人猊下の在します総本山に集い、総会を開催するについて、三つの意義をお示しいただきました。第一には、世界中の多くの人々の迷いを救い、特に宗教の誤りによる一切衆生の不幸を救うために、破邪顕正の精進を誓い実践するためとの御指南でありました。第二には、凡夫即極の御本仏宗祖日蓮大聖人の御内証、人法体一の御本尊を唯一の正境と確信し、唱題の功徳によって、互いに真の幸福の境界を倍増するためであるとの御指南をいただきました。第三には、宗祖日蓮大聖人の三大秘法の大法を世界に広宣流布していく使命を自覚し、互いに僧俗一致してあらゆる困難を克服し、新たなる世界広布に邁進し、前進させるために集っているのであります。この御法主日顕上人猊下の御教示を本日共々に想起し、共々に自覚し、改めて本総会の意義として皆様の心に銘記していただきたいと存じます。

本年はこ承知の通り、総本山において御法主日顕上人猊下の御発願による新客殿が威風堂々と完成し、去る3月25日より4月5日にかけて10日間にわたる、日本の法華講10万人の慶祝総登山が敢行され、これを見事に成就し、創価学会が破門されてより、日蓮正宗の法華講こそが日本の広宣流布の主体者であることを名実共に実証されました。そしていよいよ立宗七百五十年を目指して、平成14年・西暦2002年には、法華講30万人の登山という命題に向かって、正法広布の誓願を立て、本年をその「革進」の第一歩として新しい出発をせられました。すなわち本宗の全寺院において現在の所属信徒の2倍乃至3倍への広布進展の精進を開始されているのであります。

マレーシア法華講員(15Kb) どうか、本日御参集の世界各国の御信徒も本日より立宗七百五十年をめざして全員が自ら誓願を立て、また寺院にあっては寺院の、国にあっては国の指導教師と共に目標を立てて、各国広布の進展に精進し、実践継続し、誓願を達成成就していただきたいと存じます。そのために、私は、本日ここに集った2,844名はもとより、全海外信徒の生涯を通しての信仰の基本の姿勢として、三つの提案をいたしたいと存じます。そして、御法主日顕上人猊下にお誓い申し上げていただきたいと存じます。

その第一は、私たちは勤行・唱題を退せず、常に信心の発心をし、一切の障魔や苦難に打ち勝ち、生涯にわたって総本山に連なる日蓮正宗の清純な信仰を貫き、各国広布の先駆けとなろうという誓いであります。皆さん、お誓いいただけますか。いかがですか。第二の提案は、私たちは日蓮正宗の信仰の実践の功徳と喜びを家族みんなで分かち合い「正法の家」を作り、家族の和を広げ、法統を相続させ、家族・親族全員の永続的な幸福を確立していけるよう精進努力していくことをお誓いしようではありませんか。信仰は決して自分だけのものではありません。今世だけのものでもありません。現当二世にわたって正法の灯を決して絶やしてはならないと決意していただきたいのであります。

第三には正法広布、下種弘通への精進であります。御法主日顕上人猊下は、常々「一年に一人が一人の折伏」という御指南を賜っております。そのために、どうか皆様は、あらゆる機会をとらえて、一人ひとりが生涯に50人から100人の人への下種と対話を目指して、まず立ち上がっていただきたいと存じます。下種に励めば励むほど、対話を試みれば試みるほど、悪口を言われ、憎まれ、脅されることも重なることでしょう。しかし、日蓮大聖人は『阿仏房尼御前御返事』に、「弥(いよいよ)信心をはげみ給ふべし。仏法の道理を人に語らむ者をぱ、男女僧尼必ず憎むべし。よし、憎まぱ憎め。法華経・釈迦仏・天台・妙楽・伝教・章安等の金言に身を任すべし。如説修行の人とは是なり」(御書906頁)、と励ましてくださっていますし、最後には皆様方の真心と誠意は、必ず相手の心を開き、仏性に感応するものだということを知っていただきたいと存じます。

妙法は信じ難く持ち難く行じ難いが故にこそ、実践修行する人の功徳ははるかに大きく、一切の諸経諸宗に勝れ、また御本尊の力用によって仏法・世法相共に厳として守られるということを確信していただきたいと存じます。また皆様方の正法弘通への御精励のその福徳は、必ずや我が身の上に、家族の上に注がれ、さらには国家・国土の平安と繁栄となって現れて来ることでしょう。皆様方のいよいよの精進と、本総会の成功と世界各国における広布の進展を心からお祈り申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。



◇体験発表 『御本尊一途で克服した茨の道』 楊麗雲(台湾)

私は1963年、17歳の時、母について入信しました。今の台湾は、主権在民に基づく自由の保障をされた素晴らしい国です。しかし当時は、日蓮正宗の信仰は、政府の弾圧の対象となっていました。この理由としては、創価学会が純粋な宗教活動を離れて政治活動を行い、それも文革当時の中国の共産主義政権を擁護するなどしていたことが挙げられます。したがって、私たちは、政府の目を逃れて信仰活動を行わねばなりませんでした。常に警察の厳しい検査のもと、母と隠れて信心していました。もしも御本尊様が見つかれば、直ちに没収されてしまいます。さらに厳戒令が敷かれていて、集まることもできません。お互いに励まし合うことさえ隠れて行わねばならなかったのです。すなわち、当時、日蓮正宗の信仰に入ることは、茨の道に入ることでもありました。しかし、私たちに躊躇の心はありませんでした。台湾の日蓮正宗信徒が、戒壇の大御本尊を渇仰恋慕する心は、当時も今も変わりません。誰にも止めることはできないのです。そのような中、母は偶然手に入れた日本の信心の出版物を、日本語で話してくれていました。私は、それによって日蓮正宗の信心を少し知ることができ、自分なりに信心に励んでいきました。そして気付けば、いつの間にか以前から患っていた鼻の病気が治っておりました。このことにより、信心の凄さを深く確信するようになりました。

1965年に、私は一人で大石寺に登山をし、その時に御授戒を受けさせていただきました。そして、帰国してすぐ結婚をしました。結婚後は、家に仏具を準備して、御本尊様のない空の仏壇に向かい、朝夕の勤行に努めました。ある日、先輩の奥さんが、私の内得信仰の様子を見て、「御本尊を受けてはどうか」と言われました。私も御本尊下付を望んでおりましたので、その方に手続きをお願いし、御本尊をお受けいたしました。やっと自分の家に御本尊様を御安置することができました。それからは、不思議と主人の熱心な働きも実を結びはじめ、たまには家計の困難もありましたが、すべて御本尊様のお陰で困難を乗り越えることができました。そして、私も強い信心、不退転の信心へと鍛えられました。

1990年、私たちは都合で台北縣の三峡という所に引っ越すことになりました。ここで再び経済的な困難に遭い、大変自信を失い絶望を感じかけました。しかし、「これも宿命転換の道である。この茨の道を乗り越えねばならない」との思いで、一日七時間の唱題行を決心しました。これに対して主人は、仕事の不調から来る焦りで気分は最低、性格も一変して凶暴になり、私の信心に反対しはじめました。私としては「何とかして主人を助け、困難を乗りきりたい」との一念のみでした。私には、題目の力を説明する能力もありませんし、その方法も全く知りません。ただ一途に一日も早く、題目の功徳が顕益として現れるよう、それを主人が納得できるようにと、毎日の食事準備以外のことをする気持ちにもなれず、ただ唱題行に励みました。この頃には、長く続いた厳戒令も解除され、信心への弾圧も全く無くなっていました。しかし私は過去の信心過程での恐怖心からでしょうか、御本尊様に御不敬があってはならないと思い、御本尊様をお巻きして隠し、夜中に隠れて唱題したのです。その頃、弟から創価学会が宗門から破門されたことを知り、宗門に帰依する手続きをお願いしました。


そんな矢先、ある信徒の方から、私の近況について心配しているという暖かい電話がかかってきて、私に板橋市での唱題会に出席するよう、お話がありました。ひどく落ち込んでいる時だったので、その暖かい強い言葉が天の助けのように、私の不安を一掃してくださり感激で胸が一杯になりました。早速、主人の車に便乗して出かけました。しかし、よく場所も判らず、おまけに大雨の中、わずか数分の距離をぐるぐる回って、二時間かけても探せません。ひょっとしたら唱題会に来てはいけないのかと、迷いの心まで生じてきました。引き返そうかと思いながら、心の中で御本尊様に道を教えていただきたいと祈念しましたところ、やっと路地の奥にある王さんのお宅にたどり着くことができました。

後で考えると、途中で引き返そうと思ったことは、邪魔をして功徳を積ませまいとの魔の用きだったのです。なぜなら、その日の唱題会は私の信心の最も重要な起点となったのです。王さんご夫妻は、正しい日蓮正宗への道を案内してくださったのです。王さんたちは、私の信心状態について聞かれた後、家庭訪問をしてくださると言いました。私は主人の心情を考慮して、せっかくのご親切を台無しにしてはと心配しました。しかし、王さんご夫妻の自信に満ちたご様子に私は断る言葉が出ません。ところが意外にも王さんのその真心のこもった優しい様子に感動し、また浅いところから深きに至る強い一念のこもった仏法の話を、主人は態度を変えてしっかり聞いていました。二日後、信心の確信を得た主人の了解のもと、現副講頭の許さんの協力で、お巻きしてあった御本尊様を、きちんと仏壇に御安置することができました。私は気持ちよく学会を離れ、主人の反対もなく正しい信仰を持つことができましたことを深く感謝しています。そして、しばらくして三峡という地の家を処分、龍潭という所に理想的な家を買い、経済的にも徐々に余裕が出てきました。

それから月田諭道御尊師の御指導のもと、報恩謝徳のため、王婦人、許婦人と二度目の登山をしました。初登山から30年の月日が流れていました。感慨無量でした。こうしてまた、茨の道を乗り越えたのです。


そんな状態の中、三年前から私は生理不順、原因不明の分泌物と断続的な出血を自覚しはじめました。検査結果は「子宮癌」と診断、お医者さんは手術を勧めてくださいましたが、私は主人の衝撃を心配して、「良性の腫瘍」であると軽く話しました。一方で、唱題に挑戦して癌に打ち勝ち、その現証で主人を入信させようと決心しました。またもや茨の道を克服しなければならない時が訪れたのです。そして、昨年の元旦から状態が急激に悪化し、激痛と大量出血が始まりました。私は、「この出血で業を消すんだ」との一念で、唱題時間を増やしていきました。時には痛みのあまり仏壇の前に昏睡して、醒めてはまた唱題を続けたこともあります。もっと題目を唱え、病魔を克服しようという心掛けを持ち続けました。

二月初旬、許婦人からの電話で、楽しく話しをしているときに突然またも激痛が起こり、声も変わってしまったのです。許さんは電話の向こうで私の異常に気付いたのでしょう。「事情を話してごらん」と言ってくださいました。意識が朦朧とする中で、癌について今までの一部始終を話しました。許さんは、私の苦しみを理解してくださり、御主管さんに個人指導を受けてはと勧めてくださったのです。私は躊躇と不安がありましたが、許さんたちの指示と激励に押されて、恥ずかしさと葛藤の中で御主管・黒沢糾道御尊師に御指導を受けました。御主管さんは、厳粛ながらも大変優しく、私の病状と信心について、病気は信心の力、人の力、そして医療の力の三つが揃って治るものであり、決して我を通してはいけないと御指導くださいました。私は、その足で病院に行き、詳細な全身検査をしました。そして、八ヶ月前の検査結果と照合したところ、癌細胞は小さくなって、わずかに子宮壁にしこりが残っている状態でした。

お医者さんは大変不思議がって、あまり見ない症例であり、ちょっとした手術でしこりの周りを取り除いて、後は定期的に看病をすればよいとのことでした。私は、死の影から逃れられたのです。すぐに手術の準備を済ませ、局部麻酔をして手術に入りました。しかし、手術の途中で麻酔が切れてしまいました。心臓への負担も考えて、麻酔を増やさないまま手術を続け、私は麻酔なしで23針の縫合を受けたのです。私は、一針ずつ数えながら、生命の宿業が一針一針ずつ抜き出されるようにと、一心に祈りました。手術後は、体力の回復も順調で顔色も良く、癌を患い、手術を受けた人とは思えないと言われました。病魔に打ち勝てたのは、黒沢御主管の正確な御指導のお陰と感謝申し上げています。手術の後、元来病気がちであった主人も元気になり、今年は一緒に登山することにしています。

私が「一緒に唱題しよう」と呼びかけてから、主人が発心するまで、丸26年かかったのです。長女も婿も前後して、御授戒を受けることができ、たった一人の信心から、今は、家族全員でこの信仰を持っています。これは、私が入信して以来、最も嬉しいことの一つです。私の歩んできた信心の道程は、まさに、茨の道そのものでしたが、すべて御本尊様を命の中心、一家の主と仰いでまいりました。私は、常に静かに仏壇の前に座り、御本尊様に生活上のあらゆる方面について、御報告し、心は常に満たされています。御本尊様のお導きで多くの心を打ち明けられる信心の友を得ました。そして、この山あり谷ありの道程で、常に私を支え、激励くださり、生命を豊かに、私の視野を広げてくださっております。

私の他にも御本尊様の御加護によって、偉大な功徳を得た方はたくさんいらっしゃいます。拙い文ですが、私の体験発表によって、少しでも皆様方の信心の励みになり、また新たな体験を積んでいかれることを願っております。本日は、大変ありがとうございました。



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