<5〜8面>
10月度広布唱題会の砌
さて、今月から11月にかけまして、全国の末寺において御会式(おえしき)が奉修されます。この御会式におきましては、導師を勤める住職・主管による『立正安国論』の捧読(ほうどく)をはじめ、出席の布教区内僧侶による宗祖日蓮大聖人、第二祖日興上人、第三祖日日上人、第4世日道上人、第5世日行上人、第9世日有上人の「申状(もうしじょう)」が捧読されます。
御会式におきまして『立正安国論』をはじめ申状を捧読申し上げますのは、本宗のみに伝わる行事でありますが、それは大聖人様の立正安国の御精神を現代に示し、広宣流布を御宝前にお誓い申し上げるためであります。
御承知のとおり『立正安国論』は、大聖人様が日本国の上下万民がたび重なる謗法の重科によって、今生には天変地夭、飢饉疫癘ならびに自界叛逆難、他国侵逼難等の重苦に責められ、未来には無間大域に堕ちて、永劫にわたって阿鼻の炎にむせぶことを深く憂えられ、末法の御本仏としての大慈大悲をもって、一人ひとりの幸せはもとより、国家社会の恒久平和実現のためには、万民が一刻も早く「実乗の一善」すなわち三大秘法の大御本尊に帰依し奉ることであると、身命を賭して、当時の最高権力者である北条時頼ならびに万民をお諌めあそばされたところの折伏諌暁書であります。
申状も同様、大聖人をはじめ奉り日興上人等、歴代の法主上人が一切衆生救済、仏国土実現の大願のもとに、心血を注いで認められ、国家へ提出された折伏諌暁書であります。
今、その申状を拝しますると、宗祖大聖人様は、「抑(そもそも)去(い)ぬる正嘉元年八月二十三日成亥(いぬい)刻の大地震、日蓮諸経を引いて之を勘へたるに、念仏宗と禅宗等とを御帰依有るがの故に、日本守護の諸大善神、瞋恚(しんに)を作(な)して起こす所の災ひなり」(御書370ページ)と仰せであります。
すなわち、正宗の大地震をはじめ、いわゆる天災と言われる災難は、実は単に偶発的に起きたものではなく、厳然と存在する仏法の透徹した因果の理法の上から見れば、それは日本国の人々が皆、正法に背き、念仏宗や禅宗等の間違った教え、謗法に帰依しているが故に、日本守護の諸大善神が瞋恚をなして起こすところの災いであると仰せられているのであります。つまり、国士の混乱と不幸の根源はすべて謗法にあり、その謗法を退治し、正法を立ててこそ、初めて国家社会の平和と幸せは実現する旨を仰せられているのであります。
また、日興上人の申状には、「末法に入って、法華本門を建てられざるの間、国土の災難、日に随って増長し、自他の叛逆、歳を逐うて蜂起す・・・然れば則ち、早く爾前迹門の謗法を対治し、法華本門の正法を立てらるれば、天下泰平国土安全たるべし」と仰せられ、天変地夭等の国土の災難、自界叛逆難、他国侵逼難等の生起は、法華本門の正法を立てられざるが故である。よって天下泰平・国土安全のためには、一刻も早く爾前述門の謗法の念慮を断ち、法華本門の正法、すなわち本門戒壇の大御本尊様に帰依することであると仰せられているのであります。
また、日目上人は、「仏滅後二千余年の間、正像末の三時流通の程、迦葉、竜樹、天台、伝教の残したもうところの秘法三あり。所謂(いわゆる)、法華本門の本尊と戒壇と妙法蓮華経の五字となり。之れを信敬せらるれば、天下の安全を致し、国中の逆徒を鎮めん・・・然れば則ち、爾前迹門の謗法を退治せば、仏も慶び、神も慶(よろこ)ぶ。法華本門の正法を立てらるれば、人も栄え、国も栄えん」と仰せであります。
このほか、日道上人、日行上人、日有上人等の申状は、いずれも御三師同様、国家の安寧と万民の幸せは爾前迹門の諸宗の謗法を退治し、法華本門の正法を立ててこそ実現すると、強く諌暁あそばされているのであります。この歴代法主上人の一天広布へかけられた不自惜身命の振る舞いを、我らもまた堅忍不抜の精神をもって継いでいかなければなりません。
現代は主権在民の時代であります。一天広布への闘いは、直接、国主・国家への諌暁ではなく、一人ひとりに対する折伏をもってする時代であります。つまり、大聖人、日興上人以来の不自惜身命の国家諌暁の精神を精神として、一人ひとりが強い意志と、いかなる反対、困難が惹起しようとも、断固たる決意をもって折伏を行じていくことが、国諌をあそばされた大聖人および歴代法主上人の意志を継ぐことになるのであります。
そこに、今日、私どもは日顕上人よりいただいた平成21年の御命題、地涌倍増と大結集の達成へ向けて、僧俗が一体となって進んでいかなければならない大きな意義が存していることを忘れてはならないのであります。
『守護国家論』には、「爾前の浄土は久遠実成の釈迦如来の所現の浄土にして実には皆穢土(えど)なり。法華経は亦方便寿量の二品なり。寿量品に至りて実の浄土を定むる時、比の土は即ち浄土なりと定め了(おわ)んぬ」(御書155ページ)と仰せであります。末法の一切衆生救済の秘法たる法華本門寿量品文底秘沈の大法の御出現と弘通によって初めて、娑婆即寂光の原理が実現し、真の世界平和も安穏なる国土世間も実現するのであります。
故に『法華初心成仏抄』には、「法華経を以て国土を祈らば、上一人より下万民に至るまで悉く悦び栄へ給ふべき鎮護国家の大白法なり」(同1313ページ)と仰せであります。
されば、私どもはこの時こそ、この御金言を心肝に染めて、一人ひとりが勇躍として奮起し、真剣に折伏に励んでいかなければなりません。眼前に諸法の害毒に犯されて苦しんでいる人を見て、折伏の手を差し伸べないということは無慈悲の極みであります。「仏法中怨(おん)」の謗(そし)りを免れません。私どもは、けっして無慈悲の侮(あなど)りを受けてはなりません。
御命題達成まであと2年、明年は全国4カ所で「地涌倍増大結集推進決起大会」も開催する予定であります。なにとぞ各位には、いよいよ信心を励まし、一人ひとりが地涌の菩薩の眷属として、近くは平成21年の御命題達成を目指し、遠くは一天広布の願業を目指して御精進くださることを念じ、本日の挨拶といたします。
雪山坊・常灯坊の起工式
平成19年10月7日 於 総本山客殿
本日は、総本山の10月度の広布唱題会に当たりまして、支部総登山の方々を含め多数の御参加、まことに御苦労さまでございます。本年も早(はや)、10月となり、いよいよ残り3カ月となりましたが、皆様方には御命題の「地涌倍増」と「大結集」の達成へ向けて、日夜、御精進のことと存じます。
先日の新聞によれば、日本の国民の7割の人が生活に不安を持っているとのことであります。外形的には一見、幸せそうに見えても、その内実は皆、苦しんでいるのであります。私どもは、こうした現状を見逃すことなく、今こそ世のため人のため、苦しみや不幸の根源がなんであるのか、間違った教えがいかに人を不幸に陥れているのか、正しい教え、すなわち末法の一切衆生救済のために御出現あそばされた久遠元初の御本仏宗祖日蓮大聖人の仏法によって初めて、人も社会も国土も安穏にして幸せになることを仏法の道理の上から心を込めて訴え、一人でも多くの人々の心田に妙法を下種し、折伏をしていくことが肝要であります。