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第4回(平成9年11月10日)
フィリョの右フックで風が吹いた!(K−1)
11/10 1997.

行ってまいりました、K−1GRANDPRIX’97東京ドーム大会。張り込んで3万円の席に座っていたのだが、その価値あったね今回は。いやあ、流行もんを一緒になってプッシュするのは私の芸風に合わないような気もするのだが、この大会は満足っす。もう、休憩時間の段階までで元取っちゃってたもの。

とりあえず、細かく話していくと終わらなくなるので感想をいくつかのパートごとにまとめて挙げておこう。

<K−1JAPANフェザー級トーナメント>

大成功でしょう(唯一、小野寺力が抜けたのが悔やまれるが)。だいたい日本人の体格を考えれば、このクラスの層が厚いのが自然なわけだし。笑えるほど強引なメンバー構成ばかりが目立った名古屋でのヘビー級トーナメントの100倍よかった。
 それにしても村浜武洋は強いねえ。単にスピードがあるだけじゃなく、打撃のひとつひとつがカチっとしていて相手に与えるダメージの程が分かる。しかも最後までペース落ちないし。攻撃も防御もひとつひとつ的確だし。名古屋では柳沼慶太郎が笑いだけ取ったシュートボクシングだが、今度は世間に強くアピールすることができた。これでSBの興行も上昇気流に乗るか?
 個人的には準優勝の佐藤賢一がかなりお気に入り。後先考えずがっつんがっつん打ってくタイプが好きなもんで。ドラマに出てくる悪人(ただしメインの人ではなくその横にいる役)風味な風貌もグー。また試合見てみたい。

<ワンマッチ 金泰泳vs港太郎>

いい試合だったとは思うんだけど、お互い力があるぶん均衡が取れてしまい、「祭り」向きの試合ではなくなってしまったかも。注目度の高い組合せだからこそドームでやるという考え方と、K−1グランプリの合間にやっちゃ勿体ないという考え方と、どっちが正解なのか難しいところだ。「金vs弱い人」というマッチメークで派手に倒すという手もあったか?

<K−1グランプリ2回戦>

(フィリョvsグレコ)
 フィリョの15秒KOはぶったまげた。K−1参戦前のフィリョは顔面への適応うんぬんが言われていたわけだが、ディフェンスはともかくオフェンスに関してはプラスに出てるんじゃないの? 「極心に『顔面殴っていいよ』って言ったらもっと強くなっちゃった」みたいな。とりあえず、あれ見てトレーニング用のゴムチューブ買うヤツ、1000人くらいいるね。

(ホーストvsバンナ)
 ホースト、上手いわ。チャンス逃さないし。ジェロム・レ・バンナも優勝級の選手なのに、今回は組合せが悪かった。

(アーツvsベルナルド)
 2人とも調子悪いんじゃないかなあ。アーツは準決勝でそれが顕著だったわけだが、ベルナルドも……ねえ。「いつもものすごく怖い借金取りが今日に限っては元気がなく、強い口調で取り立てることもせずにあっさり帰ってった」みたいな(私の中で、格闘家を借金取りに例えることが流行っております)。

(フグvs佐竹)
 15秒ってのはあくまでアンラッキーだったわけだが、私個人は佐竹に対して厳しい見方でいる。とりあえず日本人というだけで応援してもらえる環境から脱して、ものすごいどん底から這い上がるプロセスを経なきゃ駄目なんじゃないだろうか(フグはそれに近いことをしてきたわけだし)。名古屋のトーナメントみたいにお膳立てしてもらっちゃダメだってば。ちょっとキツい書き方になってしまったかもしれないが、希有なナチュラル100kg日本人・しかもかなりいいキャラという点で、私はまだ佐竹を諦められずにいるのだ。いつかいい思いさせてくれ。

<K−1グランプリ準決勝>

(ホーストvsフィリョ)
 ものすごい緊張感だった。間合いの取り合いだけであれだけの緊張感を生むという、そのレベルの高さに感動。派手なKO劇が連続した1回戦・2回戦とは対照的な試合内容であった。やはり目立ったのはホーストの試合上手ぶり。リスクを冒さずフィリョに勝つには(少なくとも現段階では)あれだけしかないもんなあ。逆に言えば、フィリョの側としては勝つためには、リスクを冒してでも打ち合いを挑むべきだったかもしれない。

(フグvsアーツ)
 アーツはチャクリキ離脱の影響なしということになってたけど、ここにきて「やっぱり影響あったんかなあ」という感じ。でも、人間悪い時もあれば良い時もある。まだまだこれから。逆にフグは、昨年の優勝でグランプリに自信を持って戦っている印象。フィリョ戦の後遺症はもはやない。

<K−1グランプリ決勝>

ホーストがラッシュした時はこれで終わるかと思ったが、フグの粘りも見事だった。ホーストはフィリョ戦で受けたダメージ(下段の)があったのかもしれない。3Rは押されぎみだったし、あそこでローを返していかなかったら判定引き分けとなり、延長で逆転されてたかも。

ともあれ、ホースト初優勝おめでとう。私のようなプロレスファンはモーリス・スミス戦のハイキック(スミスの顔が波打ってた)でK−1に興味をもったっていう部分が大きいので、ホーストの優勝は感慨深い。思わずちょっと踊りかけたが、「あれはスリナム系アフリカ人が踊ってこそ。デブの日本人には合わん」という天の声が聞こえて即座に中止。それでもなかなかテンションを上げることができた今年のK−1グランプリであった。
 最後に、今大会の個人的ベストシーン。それは表題にあるフィリョ(対ホースト戦)の豪快な右フック。思いっきりの空振りとなったのだが、「ブン!!」という劇画の書き文字が見えると同時に、パンチの巻き起こした風が自分のところまで届いた気がした。いや、南19列まで風が届いたんだって。本当だってば。

追記:判定負けしたが、フィリョはたぶんこれからがすごいよ。連勝のプレッシャーから開放されてもう一段階上に行くかも。閉会式でリラックスしたすごいいい表情してたし。



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