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第16回(平成10年 5月 8日)
プロレスの特殊性を認識
 5/ 8 1998.

X JAPANのhide自殺でスポーツ紙・ワイドショーともそれ一色になっているが、その間私のハートをキャッチしたニュースといえば「プロレスマニア館に覆面強盗」の方だ。関係ないけど、築地本願寺にかかってた看板(←別な呼び名があるのだろうが)、「故hide儀」っちゅう表記はどうかと思うんだけど。不謹慎っすか。

 で、プロレス強盗の方だが、事件そのものは「単なるマニアックな強盗」ということで説明し尽せるだろう。ただ、驚いたのはこれが「なごみネタ」という方向性で報じられていたことだ。
 確かに、事件そのもののマヌケさはけっこうなものである。しかし、現金も奪っているし、女性従業員に暴力もふるい負傷させてもいる。これ、十分に立派な犯罪だし、おそらく結構な量刑となるはずだ。
 にもかかわらず事件報道は「マニア”反則”逮捕」とか「女性従業員に”凶器攻撃”」とか、すっかりなごみネタであった。テレビでも、ちょっと半笑いで報じられる感じだったし。よくある「『やめなさい』と言われて『はい』と帰った銀行強盗」などと同等のノリだったと言える。
 そこに何を見出すか、なんておおげさな話にもっていくのはどうかと思うが、なんていうんすか、プロレスファンは世間からすっかりオミソ扱いされてるんだなあ、という感慨みたいなものはあるね。サブカルみたいなエリアを通り越して、もう世間一般としては「どうでもいいっすわ」みたいなところまで行ってしまったというか。声優マニアの隣あたりか。どっちからも怒られそうだが。

ターザン山本&週刊プロレスはかつて、「プロレスを八百長扱いし、馬鹿する世間」を仮想敵国として置き、プロレスマニアに選民思想を持たせることで読者の支持を取りつける手法を取った。しかし、世間はプロレスを悪く言おうという意志なんて持っていないのである。なんていってもオミソだから。その辺の位置感覚というか、客観的認識を持っていないとプロレス&プロレスファンはますます偏狭化し、マニアのためのマニアだけによるプロレスになってしまうだろう。

ま、マスクコレクターと(いまプロレスを最悪な方向に導いている)インディー系ファンとじゃ違うので、厳密な議論はもうちょっと詰めなきゃならんところだが、今回は大ざっぱなところで書いてみた。私の読みでは週プロとかに「一人の犯罪者のために、プロレスファンがみんな悪者のように報じられるのはヒドい」とか、勘違いした投稿が載りそうなので、先手を打っとこうという意味もある。言っとくけど、今回メディアはものすごく好意的だったよ。そして、好意的になられてしまう=まともなジャンルとして認められていない、ということでもあり、どちらかというとそっちの方が憂うべきことなんじゃないかと思うんだけど。

なんか結論があるようなないようなコラムで失礼。とりあえず最後に実用的な情報として、「プロレスマニア館の1階にある中華料理屋はあんまりおいしくない」ということを記しておこう。



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