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朝比奈 無制限一本勝負
ブルックナー 交響曲第2番


 この曲は全集としてまとめられた3種の演奏しか残されておらず、そのうち最初のものが録音用演奏会、最後のものはスタジオ録音、と純正のライブ録音は2回目のもののみとなっています。
 余談ですがこの曲、演奏時間が70分を超え(8番、5番に次ぐ長さ)、巨大な楽章を両端に構えた大きなスケールと共に詩情と激情がこもった交響曲となっています。

ブルックナー…交響曲第2番

1976.8.25 L 大阪フィル 神戸文化ホール ★★★★
LP ジャン・ジャン JJ-1600/16 全集・限定盤
CD ジャン・ジャン JJ-008/019 全集・限定盤
CD グリーンドア JJGD-2001/17 全集・限定盤
演奏について
 一応ライブだが、少人数の客を入れただけの録音用ライブだった。ただし一発録りのようで、修正はほとんどしていないようだ。
 最初こそ各旋律を歌い切れていないもどかしさを感じるが、曲が進むのにつれて安定感を増し、音楽に大きな流れが生じるようになる。全体的に無骨な手触りで、各楽想をゴリゴリと演奏している。しかしその分パワーが炸裂する箇所での力強さは非常に心躍るもので、野暮ったい響きと躍動感が大変魅力的だ。
 第2楽章がやや物足りないが、残り3つの楽章が大変良く、各楽章ともコーダに向かって盛り上がっていく熱狂的とでも言える昂揚感が素晴らしい。特にスケルツォでの豪放さは引き込まれるものがある。
録音について
 ややオフマイク気味で奥行きを少し感じることが出来る。全体的に繊細な音色で、ホールの雰囲気を感じることの出きる録音となっている。
1986.9.11 L 東京都交響楽団 東京文化会館 ★★★★
CD Victor VDC-1211 単売
CD Victor VICC-40190/9 全集
CD Victor VICC-60281/91 全集
演奏について
 とてもなだらかに曲想がつながっていく演奏だが、淡々と進んでいるように感じる。またテンポが少しだけ速めに採られているためか、音符一杯に伸ばすいつもの歌い口がこの演奏では薄い。しかしジャンジャン盤と比べて響きに広がりがあり、曲を進める歩みの確かさに熟成を感じさせる。
 曲が進むのにつれ尻上がりに調子が上がって行き、終楽章ではかなりの熱演となっており、音楽に深くのめり込ませる瞬間があって、なかなか盛り上がるものとなっている。
録音について
 全集盤の方は、非常に楽器へ接近した音取りで、ソロなどはこちら飛び込んでくるように浮かんでくる。音場は充分に広がっているが、音の分離にはやや甘さがある。
 単売の方は更にオンマイクが強調されるが、なにより音に力があり、明晰さも上がって大変好ましいものとなる。
1994.1.24-27 大阪フィル 大阪フィルハーモニー会館 ★★★
CD Pony Canyon PCCL-00230  
CD Pony Canyon PCCL-00400 全集
CD Pony Canyon PCCL-00470 HDCD
演奏について
 ゆったりとした曲の流れが大河のようで、懐の深い響きと併せて、優しく包み込むような感覚が心地良い。あらゆるパートが充実して鳴っているので、ハーモニーは厚く広々としていて安定感がある。加えてバランスの取れた各楽章は一分の隙もなく、曲の冒頭から終結まで一貫した大きな流れが生じている。
 また、フォルテでの迫力はかなりのものだが、全体的に力みがないため、その最強音ですら極めて自然な鳴り方をしているのが大きな特徴で、どの楽章にも突出した部分がなく、前の2盤では大いに盛り上がったスケルツォも抑えられたものとなっている。
 とは言っても終楽章のコーダではきちんと充実感を得られる終わり方をしているだけに、ただ単に枯れた演奏ではないことだけは言えるものとなっている。
 
 ちなみにこの演奏はブルックナーが省略可能とした部分をかなりカットしていて、ライナーでは宇野氏が不満を述べていた。しかし、この演奏ですら既に71分を超えていて、もしカットを行わなかった場合は75分を超えてしまい、発売はCD2枚組となってしまっただろう。そうなると値段が倍になってしまい、ブル2にそんな大枚をはたく人がどれだけいるだろうかと疑問に思ってしまう。カットは制作サイドの判断で行われたのだろうが、仕方ないことかもしれない。
録音について
 やや木管が前に出てくる録音で、奥行き感には欠けるもの、楽器の分離はなかなか良く、低音から高音までヌケの大変良い音をしている。
 HDCDの方が細かい音を良く捉えられており、奥行き感も生じ、ぐっと自然なものとなっている。

リハーサル

1976.8.25 大阪フィル 神戸文化ホール −−−
CD グリーンドア JJGD-2001/17 全集・限定盤
演奏について
 グリーンドアによって再販されたジャン・ジャン全集に特典盤として付いていたもの。
 指示の中心は弦楽器で、3連符や16分音符などを確実に弾けるように、同じ所を何度も繰り返し練習させる。
 このリハーサルは本番直前のものだが、緊張感はあるものピリピリした所はなく、良いコンディションにあることが判る。また練習を進めるに従って、徐々にテンションが上がって行く所など、リハーサルの進め方が非常に上手いと感心してしまう。
 あるパートが、自分は主題を吹いているのにハーモニーに埋もれてしまう、と言ったのに対し、他のパートも別の主題を弾いているので抑える訳には行かない、と対応する所など朝比奈の強いポリシーを感じてしまう。

《 総 評 》
 3種の演奏を聴いてみましたが、技術的には一番ヘタクソなジャンジャン盤が最も面白く聴けた、という結果になりました。
 ビクター盤も最初は全然良くないのですが、後半2楽章の熱気が非常に良く、次点にお薦めできます。ただし、追悼盤として発売された全集のマスタリングは余りほめられたものではありませんでした。
 現在、入手が容易なのはキャニオン盤ぐらいですが、一番完成度が高い割にはほんのちょっと緩んだ印象なのが惜しくて仕方がありません。
 
 いずれにせよ、どの演奏も高い水準であることから、朝比奈とって2番は意外と相性の良い曲だったのかもしれません。
 
 当ページで使用した略称
・大阪フィル=大阪フィルハーモニー交響楽団

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