ブルックナー好きの中では不思議と人気のない6番ですが、よく聴くと魅力的な旋律に溢れ、全体の構成も引き締まったいい曲なのです。
楽想間にブリッジがあるなどブルックナーらしくない所もありますが、意外と「ブルックナーは好きじゃないが、この曲だけは好きだ」と言うひとが結構いる曲でもあります。
朝比奈隆に関しては朝比奈一本勝負の方に詳細なのがありますので、よろしければそちらもお願いします。
行 | 指揮者 | 管弦楽 | 録音年 | ★ | 登録日 | 備考 |
あ | アイヒホルン | リンツ・ブルックナー管弦楽団 | 1994年 | 5 | 03/10/5 | |
朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1977年 | 4 | 03/11/2 | New!! | |
朝比奈隆 | 東京交響楽団 | 1984年 | 3 | 03/11/2 | New!! | |
朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1994年 | 4 | 03/11/2 | New!! | |
う | ヴァント | ケルン放送交響楽団 | 1976年 | 4 | 03/10/26 | |
ヴァント | 北ドイツ放送交響楽団 | 1995年 | 5 | 03/10/26 | ||
き | ギーレン | 南西ドイツ放送交響楽団 | 2001年 | 5 | 03/10/5 | |
く | クレンペラー | ニューフィルハーモニア管弦楽団 | 1964年 | 4 | 03/10/5 | |
す | スクロヴァチェフスキ | ザールブリュッケン放送交響楽団 | 1997年 | 4 | 03/10/26 | |
ち | チェリビダッケ | ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 | 1991年 | 5 | 03/10/5 | |
て | コリン・デイヴィス | バイエルン放送交響楽団 | 1997年 | 3 | 03/10/12 | |
コリン・デイヴィス | ロンドン交響楽団 | 2002年 | 3 | 03/10/12 | ||
ティントナー | ニュージーランド交響楽団 | 1995年 | 4 | 03/10/12 | ||
は | ハイティンク | バイエルン放送交響楽団 | 1985年 | 4 | 03/10/12 | |
ふ | フルトヴェングラー | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1943年 | 4 | 03/10/12 | |
よ | ヨッフム | アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 | 1980年 | 4 | 03/10/12 | |
ら | ライトナー | 南西ドイツ放送交響楽団 | 1982年 | 3 | 03/10/12 | |
れ | レーグナー | ベルリン放送交響楽団 | 2000年 | 2 | 03/10/12 |
アイヒホルン | リンツ・ブルックナー管弦楽団 | 1994.3.28-31 | |
カメラータ東京 | 30CM-345 | ||
演奏について
全集を目指して進められていたが、1・3・4番を残しついにアイヒホルン最後の録音となった演奏。 柔らかい響きによる優しい音楽が包み込むような心地よさを感じさせてくれる演奏だ。それでも演奏にだれた所はなく、キビキビとした曲運びとなっている。 普通、第1楽章にはギクシャクとした所が聴こえてくるものだが、その部分でさえも穏やかに聴かせ、アダージョでは優しい歌い口のなかにハッとするような官能性を感じさせて、知らず知らずのうちにこの演奏に引き込まれてしまう。スケルツォもしっとりとしており、薄っぺらさはなく、フィナーレは見事な構築性を待っており、コーダで原主題が回帰する際にも唐突な感じはあまり受けさせない。 6番をこんなにも優しく慈愛に満ちて演奏しているものは他にないと言える。 お薦め度 ★★★★★
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朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1977.9.1 L | |
ジャン・ジャン | JJGD-2007 | ||
演奏について
遅いテンポと重い響きで音楽が進められて行くが、力強いリズムで豪快に曲が進んでいく。全体の構成もきちんとしており、最後までしっかりと聴かせる演奏となっている。 またその遅いテンポがほの暗い情感を生み出し、瞑想するような神秘さを少しだけ醸し出しているが、総体的にとても躍動感のある、聴いていて愉しい演奏となっている。特に終楽章では曲の展開に強い説得力があり、心を奪われるものとなっている。またコーダの超スローテンポには思わずビックリしてしまう。終楽章だけ取ってみれば屈指の魅力を持った演奏だ。 しかしアンサンブルの出来がひどく、その点がかなりのマイナスとなってしまうのが残念だ。 お薦め度 ★★★★☆
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朝比奈隆 | 東京交響楽団 | 1984.1.28 L | |
Victor | VICC-60285/88 | ||
演奏について
これまでビクターから単発で発売された演奏をまとめて全集として出される際に発表された演奏で、全集にのみ収録されている。 ジャンジャン盤より速めのテンポでスッキリとしており、流れるように音楽が進んでいく。第2楽章の沈み込むような情感が素晴らしく、全体に力みが取れ、構成も無駄が取れたフォルムをしている。しかしスッキリしすぎていて幾分面白みに欠けているのも実感としてある。 お薦め度 ★★★☆☆
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朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1994.4.1-4 | |
Pony Canyon | PCCL-00318 | ||
Pony Canyon | PCCL-00474 | HDCD | |
演奏について
ゆったりとしたテンポでじっくりと踏みしめるように音楽が進んでいく。朝比奈特有の見通しの良い響きが隅々まで徹底されている。 ひとつひとつのフレーズを噛んで含ませるように示して行くが、曲想の移り変わりを滑らかに継ごうとはせず、素のまま提示するので、ゴツゴツとした手触りがし、その点が大変ユニークに聴こえる。しかし聴いているとこの曲にはこれ以外の解釈はないと思わせるだけの説得力があり、曲の構成には一分の隙もない。 特筆すべきは第2楽章の沈み込み漂うような情感だが、終楽章は何の小細工もせず素のまま演奏してしまうので、カタルシスは若干薄いと言える。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
ノーマルの方は左右への広がりが良く、奥行きも感じさせる録音だが、音にベールを被せたような明晰さなため、全体としては普通の録音と言える。 一方、HDCDの方になると、音の明晰さも上がり、もやっとしたイメージは後退する。 |
ヴァント | ケルン放送交響楽団 | 1976.8.16-25 | |
RCA | BVCC-38176~77 | ||
演奏について
スコアが透けて見えるように細かい所まで楽譜通りに演奏しているが、小さくまとまっているような感じはなく、硬質な響きをタップリと鳴り響かせている。2連符と3連符がぶつかり合う部分をこれほど正確に際立たせている演奏はそうはない。その分、アダージョでの官能性は少ないが、フィナーレでは疾走するようなスピード感があり、ぐいぐいと音楽が進められて行き、コーダでは多層的な音の重なりを充分に示しながらキッチリと曲を締めくくる。 生真面目ながらスケールの小さい所は全くない演奏だ。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
90歳を記念して発売された2枚組み(もう1曲は5番)CDだが、音質はフレッシュで良好だ。 |
ヴァント | 北ドイツ放送交響楽団 | 1995.5.15 L | |
RCA | BVCC-733 | ||
演奏について
ケルンと特色は同じだが、ほんの少しだけテンポがゆっくりとなり、細部の描き込みが緩くなっているが、その代わり音楽のスケールが非常に大きくなっており、各旋律が自然に生き生きと歌われていく。特に終楽章をこれほどまで愉しく聴かせるものは他になく、コーダでの盛り上がりも極めて自然で、大きなカタルシスを得られる演奏となっている。 6番においてもっとも優れた演奏のひとつに数えることの出来る演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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ギーレン | 南西ドイツ放送交響楽団 | 2001.3.29 L | |
hanssler | CD 93.058 | 輸入盤 | |
演奏について
ギーレンの生誕75年を記念して発売された5枚組CDの1曲。 やや速めのテンポを採ってキビキビと進む。オケを結構華々しく鳴らしているのに落ち着いた印象があるのはピッチが低いためかもしれない。 スコアの指示には徹底的に従っているので、理知的な表現をしていると言えるが、実際に聴いてみた印象はとてもロマンティックだ。しかし対位法をあざとい位に強調しているので、普通なら聴こえない旋律が突然耳に飛び込んできてギョッとすることがある。 何よりスコアの読みと全体の構成が(ややくどいが)素晴らしく、硬質な響きとどっしりとした虚飾のない歌い口で曲を最後まで一気に聴かせてしまう。またこじんまりとまとまらず、豪快な所も併せ持っているのが非常に好ましい。 お薦め度 ★★★★★
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クレンペラー | ニューフィルハーモニア管弦楽団 | 1964.11.6&10-12&16-19 | |
EMI | TOCE-6127 | ||
演奏について
遅いテンポを採ってフレーズのひとつひとつを踏みしめるように進んで行くが、それが無味乾燥な音楽にはならず、適度な潤いを感じさせるものとなっている。全楽器が存分に鳴っているのに、どの楽器もクッキリと聞こえて来る響きは大変クリアーだ。またどっしりとしていて、つんざくような金管の咆吼はなく、重量級ではあるが口当たりの良いマイルドな響きはこの指揮者特有の音色かもしれない。 全体を把握する構成力は抜群で、曲の冒頭から終結まで大きな流れを持って進んでいき、聴き終わった後には大きな充実感が残る。特にフィナーレのコーダで第1楽章の第1主題が回帰する際、唐突な感じを与えず、他の主題群と自然に融和しているあたりは大変素晴らしい。 お薦め度 ★★★★☆
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スクロヴァチェフスキ | ザールブリュッケン放送交響楽団 | 1997.3.3-4 | |
ARTE NOVA | BVCE-9710 | ||
演奏について
ピアニッシモからフォルテシモまでの音量の差が大きい演奏で、弦のppは非常に小さい。また他の演奏では良く聞こえない旋律(大音量の中に埋没してしまうメロディ)を強く吹かせることでクッキリと浮かび上がらせているのが面白い。比較的繊細な響きをしているが、音楽の造型はこじんまりとはしておらず、幾分ひなびているが自然体な感じが田舎っぽい素朴さを感じ、好ましい。 曲の構成も非常にしっかりとしており、音楽の進行にギクシャクした所はない素朴な演奏と言える。 お薦め度 ★★★★☆
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チェリビダッケ | ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 | 1991.11.27-29 L | |
EMI | TOCE-9805 | ||
演奏について
チェリの死後に発売された正規録音による全集からの1枚。 この指揮者にしては特異と思えるほどに速いテンポ(他から見れば普通だが)が採られる。最初はこの曲が持つ複雑なリズム処理を慎重に行っている感じがするが、演奏が流れに乗るとたくましいほどの推進力で曲が進む。特に第2楽章後半以降はオケの鳴り方までがぐっと良くなり、スケルツォからは急激に訪れるffでさえもスパッと音量を切り替え、そのキレも良さは気持ち良いくらいだ。これが終楽章になると畳み掛けるような迫力で生き生きと曲が展開し、気を緩ませる暇をまったく与えない。 チェリを聴かずに敬遠しているひとにまず聴いて欲しい演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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コリン・デイヴィス | バイエルン放送交響楽団 | 1997.6.13 L | |
En Larmes | ELS01-68 | 海賊盤 | |
演奏について
少し響きが独特だが、暖色系の音色が優しく、サラサラと音楽が流れて行くが、そこには歌心が満ち、聴いていると心地よい気分になる。 2連符と3連符がひしめき合う第1楽章ですら大らかに歌い、第2楽章では遅めのテンポのなか細かい所では結構テンポを揺らし、広がりのある心優しい歌が溢れる。(指揮者も歌っている) 何より終楽章での集中力の高まりがとても良く、最後までじっくり聴くことの出来る演奏だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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コリン・デイヴィス | ロンドン交響楽団 | 2002.2.19-20 L | |
ロンドン交響楽団 | LSO0022 | 自主制作 | |
演奏について
ロンドン響が自主制作で出している(とは言っても販売規模は大きいが)C・デイヴィスとの協演CDから。 暖色系の柔らかい音色は少し独特だが、優しく歌心に満ちている点はバイエルン盤と同じと言える。それでも細部の磨き込みではこちらの方が細かく、全体的な曲の流れ方もこちらの方がスムーズだが、録音のせいか弦に潤いが足りないため、幾分乾いた音色をしている。それでも終楽章のコーダに向かって段々と高まっていく集中力はきちんと最後まで聴かせるものとなっている。 お薦め度 ★★★☆☆
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ティントナー | ニュージーランド交響楽団 | 1995.7.31-8.2 | |
NAXOS | 8.553453 | 輸入盤 | |
演奏について
柔らかい音色をしているが甘さはなく、広がりのある響きをしている。特に第1楽章では厳かな曲の進め方が大変素晴らしい。 第2楽章ではしみじみとした雰囲気が心に染み入る風情を醸しだし、終楽章では心地よいくらいに伸びやかと各楽想を描き、全曲を一切の無駄のないスマートなフォルムでまとめ上げている所が非常に素晴らしい演奏となっている。 お薦め度 ★★★★☆
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ハイティンク | バイエルン放送交響楽団 | 1985.1.18 L | |
Rucky Ball | LB 0034 | 海賊盤 | |
演奏について
耳を引くような派手な所はない演奏だが、いぶし銀とでも言える渋い音色を持ち、懐の深い響きが非常に心地よく、味わい深いものとなっている。 音楽の進め方が自然で、作為的な所は少なく、聴いているとブルックナーの書いた音符のみが鳴っている気にさせる。 そこそこのテンポで進めているのにゆったりとした印象があるのはそれぞれの対位法を構成する旋律を無理なく鳴らし切っているためだろう。 派手さはないが、無印良品(本当は無印ではないが)の良さがある演奏と言える お薦め度 ★★★★☆
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フルトヴェングラー | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1943.11.13(or14,15,16) L | |
仏フルトヴェングラー協会 | SWF963 | 輸入盤 | |
演奏について
残念ながら第1楽章は欠損。 フルベンらしく積極的にテンポが動き、叙情的に歌うところはしみじみと歌い抜く。そして激しい所は烈火のごとく激烈に煽り立てるが、音楽が薄っぺらくなることは決してなく、壮大な英雄伝を聴くような充実感がある。 特に終楽章ではとても速いテンポで突き抜けるように演奏され、一気呵成にコーダを締めくくってしまうが、それが逆に愉しく、音楽にのめり込んでしまうものとなっている。 つくづく失われた第1楽章が聴けないことが非常に残念だ。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
ヒスノイズが多く、ややメタリックで良いとは言い切れないが、音自体のフレッシュさは目を見張るものがあり、生々しい。 |
ヨッフム | アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 | 1980.11.2 L | |
TAHRA | TAH440-443 | 輸入盤 | |
演奏について
ゆったりとした流れによる大きな包容力を持った演奏だ。しかし響きはやや内省的で寂寥感があり、秋の木漏れ日のようなセンチメンタルがある。 それでもこの音楽の流れに身を任せてしまえば、どっぷりと浸り込める心地よさがある。 一方、音楽の見通しは大変良く、主題の移り変わりや切り替えが非常に判り易いものとなっている。 いささか地味な仕上がりだが、穏健で味わい深い演奏と言える。 お薦め度 ★★★★☆
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ライトナー | 南西ドイツ放送交響楽団 | 1982.10.27-28 | |
hanssler | CD 93.051 | 輸入盤 | |
演奏について
余り人間くささを感じさせない透明な音色を持ち、音楽の流れにも引っかかるような所はなく、サラサラと滑るように流れていく。 鳴らす所はしっかりと鳴らしているのに全体的に粛々と進んでいく印象があり、終楽章ではそれが特に強い。 見事に整頓された構成と美しい音響をしているが、こう少しコクがあればさらに素晴らしいものになったと思う。 お薦め度 ★★★☆☆
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録音について
各楽器の明晰さに加え、奥行きを感じさせるなかなかの録音。 |
レーグナー | ベルリン放送交響楽団 | 2000.5.28 L | |
En Larmes | ELS01-54 | 海賊盤 | |
演奏について
やや遅めのテンポを採って進められるが、要所でテンポを揺らしたり、急なクレッシェンドをしたり、かなりロマンティックな表情付けを行う。 絹のようなしっとりとした艶やかさを持った音色をしており、それを音符一杯に伸ばすので、伸びやかな美しさがある。 大胆な表現はこれはこれで面白いが、ブルックナーの音楽に対するこちらのイメージとはちょっと違うような気がする。 お薦め度 ★★☆☆☆
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